福岡アジア美術館 Fukuoka Asian Art Museum

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【連載】アジアのトップアーティストたち
 
「福岡アジア美術館ベストコレクション展」(来年4月まで開催)に展示されるアーティスト10人の作品を紹介します。

第3回 ラシード・アライーン
 ラシード・アライーン《ティグリス》の写真
作者は、1935年生まれのパキスタン出身のアーティストです。南部のカラチ大学で土木工学を専攻し、その後イギリスへ渡り、画家、彫刻家、評論家としての道を歩み始めます。
 1947年にパキスタンはイギリスの植民地支配から独立しますが、作者がイギリスで経験したのは、独立後も決して対等に扱ってもらえないアジア人としての苦悩でした。
 本作には、虎の置物、木枠の立方体、そして無数の古い靴が登場します。タイトル《ティグリス》は、「メスの虎(Tigress)」とメソポタミア地方の「ティグリス川(Tigris)」に由来します。十字に積み上げられた古い靴は、植民地時代に欧州に搾取された人々の足跡を表現し、木枠の立方体は「内部」と「外部」、「上」と「下」のない理想の形として、彼の作品にたびたび登場します。
 一方で、虎の置物とタイトルは、かつてはアジアが世界文明の中心を誇っていたことを思い起こさせ、西洋中心主義へ挑戦する作家の意図を読み取ることができます。
(学芸員 柏尾沙織)




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