「認知症フレンドリーセンター」オープン~認知症フレンドリーシティ・プロジェクト~

 市は、認知症になっても住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らせるまちを目指す「認知症フレンドリーシティ・プロジェクト」を推進しています。プロジェクト開始から6年目の今年、9月に拠点施設となる「認知症フレンドリーセンター」がオープンしました。
受付、相談室、AR体験、分かりやすい表示のトイレの写真
 プロジェクトの新たな拠点施設となる「認知症フレンドリーセンター」を、健康づくりサポートセンター・あいれふ(中央区舞鶴二丁目)2階に開設しています。
 センターでは、認知症の人やその家族が気軽に相談・交流できます。また、認知症に関する講座やイベント、情報発信等も行います。視野が狭くなる傾向にある認知症当事者が、実際にどのように見えているのかをAR(拡張現実)で体験できるコーナーがあるほか、認知症の人と企業が共同開発した製品等の展示も行っています。
 認知症フレンドリーセンターの党一浩センター長(49)に話を聞きました。
 党センター長の写真
 オープン以来、多くの人が見学や相談に訪れ、「居心地が良い」「こんな施設が欲しかった」といった声が聞かれます。優しさを伝えるためのケア技法・ユマニチュード(マルアール)講座も定期的に開催しますので、学びの場、認知症を知る場としてもご活用ください。
 30年近く介護関係の仕事をしてきて、認知症の人とのコミュニケーション方法が、介護する側からの一方的なものから認知症の人に寄り添う方向に変わってきていると感じます。
 認知症になったから何もできなくなるわけではありません。認知症の人だからこそ分かることや感じることを、社会に役立てることができます。私たちも、認知症の人から学ぶことがたくさんあります。
 活動の場を求める人には、センターの受付業務や、認知症の当事者としてのピアサポート業務等を依頼しています。今後は認知症の人や家族、地域住民、専門職などが集う「認知症カフェ」の支援も行っていきます。
 介護をしていると、どうしても孤立しがちになります。認知症の人同士やその家族が交流することで笑顔を取り戻していく姿を、介護の現場でずっと見てきました。ぜひこのセンターを、誰でも自由に使える交流の場としてご利用ください。

 同センターは「認知症の人にもやさしいデザイン」を導入し、認知症の人が暮らしやすい環境づくりのための知見を有する「英国スターリング大学DSDC」の最上位ゴールドに認定されました

認知症本人ミーティング
 認知症と診断された人や物忘れで悩んでいる人が、日々の暮らしや出来事、思いなどを語り合える場所です。
 付き添いの家族同士で話をする場所も設けています。各開催日の前日までに認知症支援課に電話で予約の上、お越しください。
 ※お茶などの飲み物は各自で持参してください。
 
【日時】10月27日(金曜日)、12月8日(金曜日)、来年3月15日(金曜日)午後2時から午後3時 

【場所】 認知症フレンドリーセンター 

【料金】 無料
 
■問い合わせ先/認知症支援課 

電話 092-711-4891 

FAX 092-733-5914

認知症の人にもやさしいデザイ~より過ごしやすい住環境のために~
 
 市は、認知症の人を含む全ての人が安心してストレスなく暮らせるまちをつくっていくため、ユニバーサルデザインの理念に基づいた「認知症の人にもやさしいデザインの手引き」を令和2年に策定しました。
 ▽トイレの扉など目立たせたいものは、周囲の壁や床とのコントラストを付ける▽目線の位置に、分かりやすい文字とピクトグラムを掲示する―など、簡単な工夫で、誰もが行動しやすく、より過ごしやすい環境をつくるための30のポイントをまとめています。
 詳しくは、市ホームページ(「福岡市 認知症の人にもやさしいデザイン」で検索)をご覧ください。 ※冊子は市ホームページから無料でダウンロード可。※9月に改訂された冊子は情報プラザ(市役所1階)他で販売(550円)。
 同デザインは、博多区役所、公民館、老人いこいの家、地下鉄の駅など49施設に導入されています(令和5年3月末現在)。
 認知症フレンドリーセンターでは、ショールームとして見学を受け入れています。高齢者施設や公共施設等からの相談も随時受け付けます。
 9月に改訂された冊子の写真
■問い合わせ先/認知症フレンドリーセンター 

電話 092-791-9115 

FAX 092-791-9550 

【開館時間】 午前10時から午後6時 

【休館日】 日曜日・月曜日、祝休日、年末年始

【講座のご案内】
 
市内在住または通勤・通学する人を対象に、次の通り講座を実施します。※いずれも無料。

<1>一般市民向け講座「初めて知るユマニチュード」
 
【日時】 12月10日(日曜日)午後2時から午後4時 

【場所】 ふくふくプラザ601研修室(中央区荒戸三丁目) 

【定員】 100人(先着) 

【申し込み】 10月16日(月曜日)から日本ユマニチュード学会ホームページで受け付け 問い合わせ 日本ユマニチュード学会福岡講座窓口 電話 03-6427-6894(平日午前10時から午後5時) メール fukuoka@jhuma.org

<2>ユマニチュード一般向け講座
 
ユマニチュードを初めて学ぶ人のための入門講座です。
 
【日時】 11月22日(水曜日)午前10時30分から午後12時30分 

【場所】 認知症フレンドリーセンター 

【定員】 30人(先着)

<3>認知症サポーター養成講座
 
認知症を正しく理解し、認知症の人と家族を温かく見守る「認知症サポーター」の養成講座です。
 
【日時】 11月9日(木曜日)午前10時30分から午後12時30分 

【場所】 認知症フレンドリーセンター 

【定員】 30人(先着)
 
※<2><3>の申し込みは、どちらも10月17日(火曜日)以降に電話(電話 092-791-9115)またはファクス(FAX 092-791-9550)、メール( contact@fdfc.jp )に住所、氏名、電話番号を記入して認知症フレンドリーセンターへ。

優しさを伝えるケア技法「ユマニチュード」~認知症の人とのコミュニケーションのために~
 
 ユマニチュードは「人間らしくある」という意味を持つフランス語の造語で、認知症など介護を要する人とスムーズにコミュニケーションを取るための、フランス生まれのケア技法です。
 ユマニチュードは、「見る」「話す」「触れる」「立つ」を四つの柱に、「あなたは大切な存在です」と伝えるための技術と、「なぜそれを行うのか」という考え方(哲学)からできています。
 市は、平成28年度から病院・介護施設向けの研修や、家族介護者向けの講習会を始めました。
 講習を受けた人が実践したところ、ケアを拒んだり突然怒り出したりしていた被介護者の行動や態度に改善が見られたとの報告がありました。
 介護者から「表情が穏やかになった」「ありがとうと言ってくれた」など喜びの声や負担軽減の効果も報告され、その有効性が確認できたことから、市は平成30年度に市民向けのユマニチュード講座をスタートさせました。
 
●ユマニチュード講座の普及
 
 これまでユマニチュード講座は、全国でも限られたインストラクターしか実施することができませんでした。
 市はユマニチュードを地域に広めていくために、平成31年度にユマニチュード講座を実施できる講師として、独自で「ユマニチュード地域リーダー」20人を養成しました。
 令和4年度には地域リーダーが実施する講座の対象を企業にも拡大し、講座の受講者は累計で8千人を超えました。
 市は今後も、講座や啓発活動を通じてユマニチュードのさらなる普及に取り組んでいきます。

■ユマニチュード講座を開催しませんか
 
皆さんの身近な地域や学校、企業等にユマニチュード地域リーダーを講師として無料で派遣し、出前講座を行います。
 
●一般向け講座
 
▽福岡市の認知症高齢者の現状▽認知症を知る▽ユマニチュードとは▽ユマニチュードの基本的な技術を学ぶ▽ユマニチュード実践家族のその後―など、ユマニチュードを「知る」ための講座です(1から2時間)。
 
※オンライン講座も可。
 
●児童生徒向け講座
 
 実技体験を通して、「見る」「話す」など認知症の人への接し方を学びます(約45分)。
 このほか、認知症キッズサポーター養成講座も実施しています(45から90分)。認知症の症状や認知症の人の気持ちなどについて学び、後半は劇やDVDなどで理解を深めます。
 各講座実施の申し込みは、開催希望日の6週間前までに各区地域保健福祉課へ。
※企業等は認知症フレンドリーセンター(電話 092-791-9115 FAX 092-791-9550)へ。


【問い合わせ先】
各区地域保健福祉課
各区地域保健福祉課の連絡先
区 電話 ファクス
東 092-645-1087 092-631-2295
博多 092-419-1099 092-402-1169
中央 092-718-1110 092-734-1690
南 092-559-5132 092-559-5135
城南 092-833-4112 092-822-2133
早良 092-833-4362 092-833-4349
西 092-895-7078 092-891-9894

優しさを伝えるケア技法・ユマニチュード
 
認知症の人を支えるためには、「あなたのことを大切に思っています」と相手が理解できるよう、技術と哲学を通じて伝え続けることがとても重要です。

「見る」
「見る」イラスト
 認知症の人は視野が狭くなることもあるため、同じ目の高さで正面から顔を近づけて見つめる。

「話す」
「話す」イラスト
 ゆっくり、低めの声で話す。相手に反応がなくても、無言ではなく話し掛けながら介護を行う。

「触れる」
「触れる」イラスト
 つかむのではなく、下から支えるように、広い面積で触れて安心感を与える。

「立つ」
 「立つ」イラスト
寝たきりでは筋力も認知機能も衰えてしまうことから、可能な限り立つことを援助する。

私もユマニチュードを実践しています
草場進さんの写真
特別養護老人ホーム「りんごの家」(博多区井相田三丁目)施設長・草場進さん(55)
 私たちの施設では、4年前にユマニチュードを取り入れた介護を始め、現在はユマニチュードの認証取得に向け、より質の高いケアの実践に取り組んでいます。ユマニチュードの技法は、コミュニケーションの基礎だと思います。たとえ相手の目が見えなくても、きっと気持ちは伝わります。認知症の人に対してはもちろん、自分の大切な人にこの考え方で接することができれば、もっと優しい社会になると思います。

「支援」から「活躍」へ~認知症の人が自分らしく暮らすために~
 
 認知症の人やその家族が生き生きと暮らしていくために、社会参加できる場、活躍できる場が求められています。
 市は、認知症の人の「支援」からステップアップし、認知症の人が生き生きと「活躍」できる環境づくりを進めています。
 
●福岡オレンジパートナーズ
 
 認知症の人とその家族、企業・団体、医療・介護・福祉事業者、そして市が一緒になって、認知症になっても自分らしく生きるために何ができるかを考え、実際の取り組みにつなげていきます。
 平成30年度から勉強会を重ね、これまで約90の企業・団体等が参加しました。その中から、認知症の人が従業員として働く事例なども生まれています。
 
●オレンジ人材バンク
 認知症の人の声を生かした製品をの写真
 認知症の人がいつまでも自分らしく活躍できる場の創出につなげようと、市は国内で初めて、認知症の人だけが登録できる「オレンジ人材バンク」を設立しました。
 オレンジパートナーズ参加企業が、人材バンクに登録した人に就労や講演、製品モニターの依頼をするほか、企業と認知症当事者が「この製品どう?」「こんなのあったらいいな」など意見交換を行います。
 認知症の人が使いやすいものは、みんなに優しい、使いやすい製品です。これまでに、「高齢者や認知症の人が安心して使い続けられるガスコンロ」「モノがなくならないガーデニングトートバッグ」「結ばなくていいエプロン」など、当事者の声を生かした製品開発が進んでいます。
 厚生労働省の発表によると、認知症高齢者の数は2025年には約700万人となり、65歳以上の高齢者の約5人に1人に達すると見込まれています。
 市はこれからも、さまざまな団体との連携・取り組みを進め、「認知症にやさしいまち」を目指します。一人一人の心豊かな「認知症フレンドリーシティ」をみんなでつくっていきましょう。
 
■問い合わせ先/認知症支援課 

電話 092-711-4891 

FAX 092-733-5914







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