福岡アジア美術館 Fukuoka Asian Art Museum【連載】アジアのトップアーティストたち

来年4月9日(火曜日)まで、ベストコレクション展が開催されています。この連載では、同展に展示するアジアのトップアーティスト10人の代表的な作品を紹介します。

■第1回 ファン・リジュン
ファン・リジュン
 同じ顔、同じ表情、同じ格好のスキンヘッドの青年は、作者自身です。革ジャンのポケットに手を突っ込み歩く姿は、まるで徒党を組む無頼漢のようでしょう。
 この作品が描かれた1992年、中国北京郊外の円明園(清の時代に築かれた離宮の遺構)に若い画家たちが集い、スタジオを構えていました。1989年の天安門事件の余波が残る時代です。自由に表現することは難しく、画家たちは先の見えない不安を抱えながらも、状況を打ち破ろうと模索していました。その中から、矛盾に満ちた体制や社会の息苦しさを風刺する絵画が、新しい潮流となっていきます。その渦の中心にいたのが、不遜な笑みを浮かべた自画像で一世を風靡(ふうび)したファン・リジュンでした。本作は、彼の代表的なシリーズのうちの一点です。
 同シリーズには、暗雲を予感させる空の下、ゆがんだ顔に薄笑いを浮かべる青年が何人も登場します。作者は、「同じ」青年をコピーするように繰り返すことで、個性を奪われた無抵抗な人々を生み出す抑圧的な世の中を映しています。こうした表現自体が、閉塞的な社会に対する作者のささやかな抵抗でした。(学芸員 ラワンチャイクン寿子)

福岡アジア美術館アジアギャラリー(博多区下川端町 リバレインセンタービル7階) 

電話 092-263-1100 

FAX 092-263-1105 

【開館時間】 午前9時30分から午後6時(金曜日・土曜日は午後8時まで)。入室は閉室の30分前まで 

【休館日】 水曜日(来年1月3日、3月20日は開館)、12月26日から1月1日、3月21日 

【料金】 一般200円、高大生150円、中学生以下と市内に住む65歳以上は無料




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