【中央区】身近な芸術作品に親しむ
アートの世界へ ようこそ

水彩パレットイラスト
 大濠公園の池のほとり、市美術館の入口に、高さ7メートルの大きな屋外彫刻《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》が設置されています。市美術館の学芸員に、この彫刻について話を聞きました。
屋外彫刻 ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ写真
■存在感を放つパブリックアート
 来園者の目を引きつけているこの彫刻、皆さんは何に見えますか。ある小学生は「一反もめん」と即答し、ある大人はしばらく考えて「生命の水が噴き出したもの」と答えました。作品名の「ウィンド・スカルプチャー」を直訳すると「風の彫刻」。布が風にはためく瞬間をかたどった作品だと分かります。目に見えない風を視覚化しているのです。

■始まりは1枚のアフリカン・プリント
 青、黄、赤で彩られた複雑な柄は、1枚の布の模様から表現されたものです。同館が多数所蔵する「アフリカン・プリント」の中から作者自身が選びました。
 アフリカン・プリントとは、大航海時代に交易品として流通したインドやインドネシアの「ろうけつ染め」の布をルーツとして、ヨーロッパ、日本でも生産されアフリカに輸出された布です。
 作者のインカ・ショニバレCBEは英国を代表するナイジェリア系の美術家で、アフリカン・プリントを用いて、植民地時代から続く人種や階級などの社会構造に対し鋭く切り込む作品を制作しています。
西澤株式会社デザイン、山陽染工株式会社製造(植物文様スーパーおアックスプリント)写真
■作品からイメージする
 本作は船の帆のイメージから生まれたデザインで、日本で製造されたアフリカン・プリントの模様が採用されています。大きな1枚の布にアフリカの歴史、アジアの伝統、ヨーロッパの技術革新、日本の繊維産業の繁栄が詰まっているのです。
 かつて大濠公園は海でした。風を読み、帆を張り、風を受けて、福岡市が次のステージへと前進するイメージを作品に重ねることができます。
 「美術の"び"は、びっくりの"び"」と言われます。一見不可解なアート作品は、見るほどにいろいろな感情をかき立ててくれます。感性に直接訴えてくる「何か」に向き合い、自分の直感と想像力を働かせることで、アートの楽しみ方は無限に膨らみます。
 興味を抱き、作品を知って理解が深まれば、より充実した鑑賞体験となることでしょう。

【問い合わせ】 
市美術館
電話 092-714-6051
FAX 092-714-6071










 








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