未来へ、つなぐ。100th ANNIVERSARY福岡市水道100周年

これからも安全でおいしい水道水を
水道 100年の歩み

 福岡市の水道事業が、今年3月1日に創設100周年を迎えます。市民の暮らしを支えてきた水道の歴史と、これからも安全でおいしい水道水を供給し続けていくための市の取り組みを紹介します。 

 市内に一級河川がなく、水資源に恵まれない福岡市は、水の安定供給のために、ダムの建設や筑後川からの導水、海水の淡水化など、さまざまな取り組みを行ってきました。

市水道事業の始まり
曲渕ダムの写真
 水道水が供給されるようになるまで、市民の生活用水には主に井戸水が使用されていました。しかし、井戸水の多くに塩分や鉄分が含まれ、水質には恵まれていませんでした。
 明治以降、人口の増加と生活の近代化によって水不足と水質低下が深刻化します。コレラや赤痢なども流行し、衛生面からも水道の創設が望まれました。
 平尾浄水場跡の写真
●ダムと浄水場の完成

 市制が施行された明治22(1889)年、市は英国人技師を招き上水道計画を立てますが実現には至らず、明治35年に再び上水道設置計画が本格化します。そして、大正12(1923)年3月1日に曲渕(まがりふち)ダムと平尾浄水場が完成し、ついに水道水の供給が始まりました。
 曲渕ダムは、現在も市の水源の一つとして活躍しています。平尾浄水場は昭和51(1976)年にその役割を終え、跡地は現在市植物園として市民の憩いの場になっています。また、その名前は平尾浄水町や浄水通りの名称の由来となりました。

市を襲った2度の大渇水
干上がった南畑ダムの写真
 戦後、隣接町村との合併や、都市化が進むにつれて人口が増加し、水の需要はますます増えていきます。給水人口に水資源開発が追い付かず、しばしば断水騒ぎが起きるなど、市は常に水不足に悩まされていました。
 バケツに給水を受ける市民の写真
●未曽有の異常気象

 昭和53(1978)年、市は福岡管区気象台始まって以来の大干ばつに見舞われ、ダムの貯水率は10%を割り込みました。国や県の協力による他ダムからの緊急放流や人工降雨の実験など、あらゆる対策を講じますが状況は改善せず、給水制限は287日間に及びました。
 1日5時間しか水が出ない日も続き、給水車に行列ができました。市民はバケツやポリタンクにためた水を使い、食器を洗う水の節約のために紙皿や紙コップを使用するなど、不便な生活を余儀なくされました。
 
●大渇水に負けないまちへ

 昭和53年の大渇水を教訓に、市は同56年に水道局本庁舎(博多区博多駅前一丁目)内に「水管理センター」を設け、主要な水道管の流量や水圧を24時間体制で監視・集中制御する市独自の「配水調整システム」の運用を開始しました。
 同58年には、市の念願だった「筑後川から福岡都市圏への導水」が、水源地域・流域の皆さんや関係団体などの理解と協力を得て実現しました。現在、市内で使用される水のおよそ3分の1が筑後川の水によって賄われています=下記参照。
 平成6(1994)年は昭和53年を上回る少雨となり、295日間の給水制限が行われました。この時の給水制限は昭和53年の1日平均14時間を下回る8時間で、給水車の出動もありませんでした。これは、筑後川からの導水はもちろん、配水調整システムの運用、そして市民の皆さんの高い節水意識が大きな要因といえます。
 令和3年、県内最大の貯水容量を誇る五ケ山(ごかやま)ダム(那珂川市・佐賀県吉野ヶ里町)が完成し、これをもって、計画していた全ての水資源開発計画が完了しました。九つある市の関連ダム※で水道などに使える容量がこれまでの約1.7倍になり、大渇水が起きた時でも、市民生活への影響を大幅に緩和できるようになりました。
 ※市の水がめとして建設された九つのダムのうち、市内には三つのダム(長谷(ながたに)、脊振(せふり)、曲渕)があり、残り六つのダム(五ケ山、江川(えがわ)、南畑(みなみはた)、猪野(いの)、久原(くばら)、瑞梅寺(ずいばいじ))は市外に位置しています。

●福岡市の水源別取水割合
(平成28年度~令和2年度の平均値)
福岡市の水源別取水割合のグラフ
市内の近郊河川 29.8%
筑後川からの導水など福岡地区水道企業団※からの受水 33.1%
市関連の九つのダム 37.1%
 ※福岡地区水道企業団=福岡都市圏の17市町で構成
福岡市関連の水源の地図
筑後川の水はどうやって運ばれるの?
 
筑後川から水を引くために造られた筑後大堰(おおぜき)上流側の取水口から、ポンプで水がくみ上げられます。水は「福岡導水」という長さ25kmに及ぶ大きなパイプ等を通って、大野城市の牛頸(うしくび)浄水場を経由し、福岡都市圏の市町に届けられています。

福岡市の水道を未来へ
 淵上所長と柳原さんの写真
市は、2度の大渇水を教訓に、貴重な水資源を有効かつ合理的に利用する「節水型都市づくり」に取り組んでいます。
 水管理センターの淵上敏則所長に話を聞きました。
 水管理センターが運用する「配水調整システム」の役割は、限りある水資源の有効利用と、水道水を市民の皆さんに安定的に供給することです。浄水場から蛇口までの水の流れや水圧を24時間体制で監視しながら、配水管に取り付けた185カ所の電動弁をきめ細かに操作し、日々の配水をコントロールしています。このようなシステムは他都市にはない、福岡市独自のものです。
 例えば、市民の皆さんの関心の高いサッカーワールドカップなどのスポーツ中継があった場合、ハーフタイムや試合終了後に水道使用量が急激に増えます。すると、配水管の水圧が下がってうまく供給できなくなる恐れがあるため、事前に水圧を調整して、市民生活に影響が出ないよう努めています。
 水の使用量は、天候、気温だけでなく、突発的な事故や災害などでも大きく変動します。これからも、常にさまざまな状況の変化を注視しながら、安定して水が届けられるよう努めていきます。

限りある水を大切に
 
●世界トップの「低い漏水率」

 日本は世界で最も漏水率※が低く、中でも福岡市の漏水率は2.0%(令和3年度実績)で、5年連続日本一です。 ※漏水率=浄水場から家庭等に届くまでに水道管から漏れる水の割合。
 市は、水を有効に活用し、漏水による道路陥没などを防ぐため、専用の機器を使った漏水調査や老朽管の取り替えなど、計画的な漏水防止対策に積極的に取り組んでいます。
 また、海外に水道局職員を派遣したり、現地の研修員を受け入れたりして、長年培った水道技術を伝え、SDGsの達成にもつながる水の有効利用に貢献しています。
 フィジー共和国の漏水率は50パーセント以上。
●市民の皆さんの節水意識

 令和4年度の市政アンケート調査で、節水を心掛けている人の割合は91.1%でした。多くの市民に「水を大切に使う」意識が浸透しています。市民一人一人の高い節水意識は「市民ダム」とも呼ばれ、貴重な水資源になっています。
 もし、福岡市民全員が毎日バケツ1杯(10リットル)節水すると、1年間で曲渕ダムの貯水量のおよそ2.5杯分に当たる約580万立方メートルの水が節約できます。これからも、限りある資源である「水」を大切に使いましょう。

市の水道事業を未来につなぐために
 
近年、気候変動に伴う災害が頻発しています。市は災害時にも水道水を安定して供給できるよう、浄水場など全ての重要施設を耐震化しました。今後も、計画的に配水管を耐震管に取り替えていきます。
 また、将来の水需要を想定して、浄水場の統合・再整備を行うほか、積極的にICT技術を活用して業務の生産性と効率性を高め、施設の長寿命化やコストの最適化を図ります。
 
●安全でおいしい水道水プロジェクト
 水道水をそのまま飲める国は、日本を含め世界で約10カ国しかありません。市は、国の水質基準よりも厳しい目標を設定し、安全性はもちろん、さらに「おいしさ」を追求しています。
 市の水道事業の100年の歩みや、事業全般、新たな取り組みなどについて詳しくは、市ホームページ(「福岡市水道局」で検索)をご覧ください。
 
■2・3面に関する問い合わせ先/水道局総務課 

電話 092-483-3139 

FAX 092-482-1376

福岡の「水」に歴史あり「上水之栞(じょうすいのしおり)」
 上水之栞(じょうすいのしおり)の写真
大正11年、市内でコレラが大流行し、患者176人中79人が死亡しました。市は、翌12年の水道供給に合わせ、「上水之栞」を配布。「コレラでも、チブス赤痢もなんのその、水道ひけば家内安全」と、市民に水道の利用を呼び掛けました。

市政だよりにダムの貯水量を表示
 市政だより平成6年8月15日号の写真
大渇水の時には、「福岡市政だより」でも節水への協力を呼び掛けました。市民の関心も高く、平成6年8月15日号から現在まで、表紙にダムの貯水率を掲載しています。

プレゼント
 プレゼントの市水道局オリジナルマイボトルの写真
市水道局オリジナルマイボトルを抽選で5人に差し上げます。はがきに住所・氏名・年齢と市政だよりの感想を書いて、3月10日(必着)までに広報課「水道」係(〒810-8620住所不要)へ。当選者に直接マイボトルをお送りします。

海の中道奈多海水淡水化センター「まみずピア」
 まみずピアの施設内の写真
まみずピア(東区奈多)は、気象条件に左右されることなく安定的な給水を行うため、平成17(2005)年に福岡地区水道企業団が主体となり完成させました。日本一の規模の海水淡水化施設です。
 まみずピアでは、逆浸透法の技術で海水から塩分や不純物を取り除き、良質な真水にしています。この水は、ダムや川の水と同様に市の水道水の一部として使用されています。
 また、まみずピアで作られた水は、災害用備蓄水「飲む海水」として市役所1階のユニバーサルカフェで1本140円で販売しています。
飲む海水の写真
〈市博物館企画展示〉福岡市水道創設100周年記念「水とくらし」
 
古代から近現代にわたる水と人々の関わりを振り返りながら、当時の写真や資料と共に市の水道事業の歩みを紹介しています。
 
【日時】 開催中から3月26日(日曜日 ) 

【開館時間】 午前9時半から午後5時半(入館は閉館30分前まで) 

【場所・問い合わせ】 市博物館企画展示室4(早良区百道三丁目) 

電話 092-845-5011 

FAX 092-845-5019 

【料金】 一般200円、高大生150円 ※中学生以下と市内に住む65歳以上は無料 

【休館日】 月曜日

節水シンボルマーク
節水シンボルマーク 
山などに降った雨は川に流れ、毎日の暮らしに使われます。そして水は海に流れ、雲となり、また雨に戻ります。こうした水の流れを示したこのマークには、水を無駄なく使おうという意味が込められています。












 












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