子どもたちの笑顔のために~子どもの権利を守る「子どもアドボカシー」~

12月4日から10日は福岡市人権尊重週間です。市は、全ての子どもが自分らしく健やかに成長できるよう、子どもの権利を守り、社会全体で支える仕組みづくりを進めています。
 子どもには、「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」の四つの権利が保障されています=下記参照。これらを定めた「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が、1989年の国連総会で採択されました。子どもにとって最も良いことは何かを第一に考え、18歳未満の子どもに対し、大人と同様に一人の人間としての人権を認めています。
 子どもの権利擁護のために活動する「子どもNPOセンター福岡」の代表理事・重永侑紀(ゆき)さん(58)に話を聞きました。
重永侑紀さん写真
■子どもアドボカシーとは
 
子どもアドボカシーとは、子どもの意見を丁寧に聴いて、それを表明できるようサポートし、子どもの権利を守るための取り組みです。子どもが自分の中にある、もやっとした思いを言葉にする「意見形成」と、その思いを誰かに伝えられるようにする「意見表明」を支援します。
 しかし実際には、「子どもだから」という理由で、大人から理不尽に制限をかけられたり、言いたいことが言えなかったりする子どももいます。
 また、声を上げたとしても大人が受け止めきれず、子どもの命が失われる悲しい出来事も後を絶ちません。「言いたいことを言えて、聞きたいことを聞けること」が子どもの権利であり、その権利が守られることが、子どもアドボカシーの狙いです。

■「聴かせて」という姿勢が大事
 子供たちが学ぶ様子
子どもが言いたいことを言えて、聞きたいことを聞けるようになるには、大人も子どもも「練習」が必要です。
 子どもの話ばかりを聴いていると、子どもがわがままになるのではないかと心配する人もいますが、むしろその逆です。しっかり話を聴いてくれる相手がいると、子どもの心と体が安定します。「ねえ、ねえ」と子どもが話し掛けてくるのは、あなたといると安心だからです。
 もちろん、子どもの言う通りにできないこともあります。そのときは、理由をきちんと説明しましょう。それが大人の義務であり、責任です。
 もし、子どもの様子が気になったら、「何かあった?」「手伝えることはある?」と声を掛けてみてください。大人の物差しで判断したり、決めつけたりせず、子どもを一人の人間として接し一緒に考えましょう。
 子どもが言いたいことをうまく言葉にできないとき、その気持ちを受け止めることは容易ではないかもしれません。「聴くこと」は人権の基盤であり、一緒に考えることです。たくさん練習して、大人も成長していけばよいのだと思います。
 アドボカシー(権利擁護)は、子どもに関することだけではなく、社会全体に関わることです。みんなで取り組めば、誰にとっても安心して暮らしやすい社会になっていくのではないでしょうか。

福岡市の取り組み
 
国が来年4月に施行する「こども基本法」は、子どもが意見を表明する機会を確保するよう定めています。市は、全国に先駆け、意見表明を支援する「子どもの権利サポート事業」を開始し、「子どもアドボカシー」を推進しています。
 児童養護施設などでは、親の病気や虐待などの事情で家族と生活できなくなった子どもたちが暮らしています。抱えている不安や悩みを打ち明けやすい環境づくりを進めるため、「NPO法人子どもアドボカシーセンター福岡」に委託し、アドボケイト(子どもアドボカシーを実践する人)を定期的に施設に派遣しています。同センターは、アドボケイトの養成講座や、子どもの意見表明の支援等を行っています。
 子どもアドボカシーについての問い合わせは、こども家庭課(電話 092-711-4238 FAX 092-733-5534)へ。

子どもの権利条約

生きる権利
 食事を与えられること。病気を防ぎ、命を奪われないこと。病気やけがをしたら治療を受けられることなど。
育つ権利
 自由が守られ、自分らしく育つことができるよう、教育を受け、休養を取ったり遊んだりできること。
守られる権利
 暴力や、むごい扱いを受けることのないように守られ、子どもの幸せが奪われないことなど。
参加する権利
 自分の意見を表明したり、グループをつくったり、自由な活動を行ったりできることなど。

子どもアドボカシーの二つの支援

意見形成
悩みや困っていることを聴いて、子どもの意見をまとめる手助けをする
意見表明
子どもの望みや、してほしくないことを周囲の大人に伝えるのを手伝う
子どもが話し掛けてきたら…
 次の言葉を使うと、対話がスムーズに進みます。「聴いているよ」という態度を示しましょう。

●「なになに?」「なぜ?」「へぇー」「ほう」
 
まずは子どもの声に応えましょう。相づちを交えると効果的です。

●「なるほど」「そう思ったのね」
 
子どもの話に同感できないときも、否定せず受け入れましょう。共感を示すと、子どもの話したい気持ちを促すことができます。

●「あらら」
 
子どもの言葉に、感情が高ぶってしまいそうなときは「あらら」と言って、自分の気持ちを落ち着かせます。子どもとの間合いも取れます。

大人が子どもの権利について学ぶ子どもアドボカシー出前講座
 出前講座の様子
「子どもNPOセンター福岡」は、子どもアドボカシーについて、より多くの人に理解してもらおうと、「子どもアドボカシー出前講座」を開催しています。
 昨年は、地域の自治会やPTA、里親会、子どもの居場所づくりのグループなどからの依頼を受け、計19回開催し、約500人が参加しました。
 講座では、子どもの権利について動画などを活用し、分かりやすく伝えています。子どもを取りまく現状などに触れながら、日常生活で実践できる、子どもへの具体的な声掛けや話の聞き方なども紹介しています。
 同センターの牛島恭子さん(39)は、「子どもがちゃんと意見を言えるようになるには、大人の私たちが『アドボカシー文化』を育てていくことが重要です。アドボカシーが必要とされるのは、社会的養護下にある子どもたちだけではありません。あらゆる場面で実践されるようになれば、子どもも声を上げやすくなります。出前講座は、3人以上のグループを対象に、対面とオンラインで実施しています。ぜひご活用ください」と話しています。
 
■問い合わせ先/子どもNPOセンター福岡 

電話 050-1743-5971 

メール info@npoccf.jp

意見表明の仕方を学ぶ子どものためのワークショップ
 
●SOSの出し方教育
 SOSの出し方教育の様子
市は、児童虐待防止の取り組みの一環として、子どもがいち早くSOSを発信できるよう、「NPO法人にじいろCAP(キャップ)」によるワークショップを実施しています。10月には元岡小学校(西区)で行われ、3年生の児童119人が参加しました。
 「どこにいると安心する?」「どんなとき、自信がある?」「自由を感じるのはどんなとき?」と、3人のスタッフが問い掛け、子どもたちは自分に安心・自信・自由の三つの権利があることを理解していきます。
 友人からいじめられそうになったとき、知らない大人から誘拐されそうになったとき、知っている大人から嫌なことをされそうになったときのSOSの出し方や、信頼できる大人への相談の仕方などをロールプレイ(役割劇)を通して学んでいきます。
 元岡小学校の教務主任・赤星航史郎さん(41)は、「子どもたちからは、『劇がとても分かりやすかった』『教えてもらったことをいざというときに使って自分の身を守りたい』などの感想が聞かれました。学校でも、5年生と6年生を対象にした性暴力対策の特別授業や、いじめを早期発見するための全校生徒へのアンケートなどを行っています。子どもの成長過程を考えても、3年生という早い時期に学ぶ意義は大きいと思います。子どもたちにも貴重な経験になったようです」と話しています。
 ロールプレイの様子
■問い合わせ先/こども家庭課 

電話 092-711-4238 

FAX 092-733-5534


ご相談ください子どもに関する無料相談窓口
 
●こども総合相談センター(えがお館)
 
子どもやその保護者を対象に、さまざまな相談に応じています。
 子どもの発達、家庭内暴力や虐待の心配、不登校やいじめ等の学校生活のことなど、何でもご相談ください。
 
【場所】 中央区地行浜二丁目
 ▽相談電話 電話 092-833-3000(24時間対応)※12月29日(木曜日)午前8時から1月4日(水曜日)午前8時は休み。
 ▽女の子専用電話 電話 092-833-3001(午前9時から午後5時)※12月29日(木曜日)から1月3日(火曜日)は休み。

虐待かもと思ったら児童相談所虐待対応ダイヤルへ
電話 189(いちはやく)

 ●子ども家庭支援センター
 
「子どものことが心配」「親子関係に悩んでいる」など、家庭での子育てに関する悩みについて、臨床心理士等の資格を持つ相談員が面談で対応します(要予約)。
 子どもやその家族、関係者などを対象に、次の3カ所で実施しています。
 ▽SOS子どもの村 場所 中央区赤坂一丁目 電話 092-737-8656 休館日 水曜日
 ▽はぐはぐ 場所 南区長住三丁目 電話 092-408-1985 休館日 火曜日
 ▽ちあふる 場所 東区筥松二丁目 電話 092-612-2020 休館日 木曜日
 ※いずれも、対応時間は平日=午後5時から8時、土・日曜・祝休日=午前10時から午後5時。12月29日(木曜日)から1月3日(火曜日)は休み。
 
●各区家庭児童相談室
 
各区保健福祉センターの子育て支援課には、子どもや子育てについて気軽に相談できる「家庭児童相談室」があります。電話や面談で相談員が対応します。

各区家庭児童相談室(午前9時から午後5時)
問い合わせ先は以下参照
区 電話 ファクス
東 092-645-1072 092-631-1511
博多 092-419-1084 092-402-2703
中央 092-718-1104 092-771-4955
南 092-559-5124 092-559-5149
城南 092-833-4104 092-822-2133
早良 092-833-4357 092-831-5723
西 092-895-7069 092-881-5874

 ●スクールソーシャルワーカー
 
市立の小・中・高校・特別支援学校に、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持つスクールソーシャルワーカーを配置しています。
 学校生活や家庭生活の中で起こる、さまざまな困難を改善していくため、地域や児童相談所、福祉事務所などの関係機関とも連携しています。
 
■問い合わせ先/教育相談課 

電話 092-832-7120 

FAX 092-832-7125

友人、家族、学校のことなど何でも市こどもタブレット相談
 
市立の小・中・高校・特別支援学校に通う児童生徒に貸与しているタブレット端末を活用し、悩みや不安を気軽に相談できる「市こどもタブレット相談」を行っています。
 「市こどもタブレット相談」にログインし、チャットか音声のどちらかを選ぶと、臨床心理士などの資格を持つ専門の相談員につながり、対応します。匿名で相談でき、秘密は守られます。対応時間は毎日午後5時から10時です(受け付けは9時半まで)。※12月29日(木曜日)から1月3日(火曜日)は休み。
 
■問い合わせ先/こども相談企画課 

電話 092-707-7557 

FAX 092-832-7830






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