暮らしを守る検査室福岡市保健環境研究所

市保健環境研究所(以下、保環研)は、市民の健康と快適な暮らしを守るために、保健衛生や環境に関するさまざまな検査・研究を行っています。「保健科学課」と「環境科学課」の2部門で生活の安全が守られています。

保健
感染症と食の安全
 
保健科学課は、「感染症」と「食の安全」の二つの分野を担当しています。感染症の拡大防止や原因究明のための検査・研究、食品に関する理化学検査、食中毒の原因となる微生物の検査・研究など、暮らしに関わるさまざまな検査を行っています。
 腸管出血性大腸菌の分離培養血液中の梅毒抗体検査
●体と健康
 
食中毒や、麻しん、腸管出血性大腸菌O-157などの感染症が発生すると、各区保健所や医療機関などで採取された検体が持ち込まれ、原因となるウイルスや細菌の検査を行います。また、市民からの依頼に応じて、梅毒などの性感染症の検査も行っています。
 新型コロナウイルスのPCR検査も実施しており、検査開始当初は市内唯一の検査機関として重要な役割を担っていました。現在はクラスター(感染者集団)発生などに伴う緊急の検査や、オミクロン株などの変異株の検査に対応しています。
 
●暮らしの衛生
 検査の様子食品中の農薬や添加物の測定
井戸やプール、公衆浴場の水の細菌検査などを行い、安全な生活環境が保たれているかを調べています。
 飲食店で提供される貸しおしぼりにも、細かく衛生基準が設けられています。おしぼりから大腸菌や黄色ブドウ球菌などの病原菌が検出されないかを確認します。
 
●食の安全
 検査の様子ほうれん草の農薬検査
食品の製造が衛生的に行われ、食中毒の原因となる細菌は付いていないか、加工食品に使われている食品添加物のルールは守られているか、直売所の野菜に使用されている農薬は基準に適合しているかなどをチェックしています。
 さらに、遺伝子組み換え食品やアレルギー物質が正しく表示されているかについても、検査して確認しています。
 さまざまな検査を通じて食の安全確保に努め、食品による事故を未然に防ぎます。
佐藤秀樹主任研究員
 保健科学課の佐藤秀樹主任研究員(44)は、「保環研には25メートルプールに入れた角砂糖1個の成分を測れるほどの、検査機器や装置を備えています。市内で食中毒などが発生した際には、原因究明のための検査も行います。地道な作業ですが、見逃しがあってはならない大切な検査ばかりです。安全管理を徹底し、気を引き締めて業務に当たります」と話していました。

■ 専門知識と技術で健康をサポート
 
保環研職員は、常に新しい情報を取り入れ、災害や感染症などの緊急時にも対応できるよう、日頃から検査技術を磨いています。検査用の食品の抜き取りや、何か問題が起きたときに施設への衛生指導を行う各区保健所と緊密に連携を取りながら、市民の健康と快適な暮らしを支えています。
 
■問い合わせ先/市保健環境研究所(中央区地行浜二丁目) 

電話 092-831-0660 

FAX 092-831-0726

食品に混入した異物の検査
 
保環研では、食品にプラスチック片や虫などの異物が混入していた場合などの検査も行っています。
 
●形を分析
 金属異物写真
電子顕微鏡で微細な構造を調べ、虫や毛なのか、植物片等なのかを推定します。エックス線を当てて分析すると、物質が何の成分でできているか分かります。
 
●カタラーゼ(酵素)テスト
 カタラーゼ(酵素)テスト
虫が入っていた場合は、カタラーゼテストを行い、いつ混入したのか推定します。製造中に混入し加熱された虫であれば過酸化水素水をかけても反応しませんが、製造後に混入した場合は泡が出ます。


食品衛生分野で論文賞を受賞
 宮崎主任研究員
食品化学担当の研究員(戸渡寛法、宮崎悦子、赤木浩一)が、「魚に含まれる有機ヒ素化合物の新規分析法の開発」について国立医薬品食品衛生研究所と共同研究を行い、そこで得られた知見を論文にまとめ、令和2年に食品衛生分野の学術誌に発表しました。その論文が、食品衛生研究への貢献が期待されるとして「日本食品衛生学会論文賞」を受賞しました。
 受賞者の一人である宮崎主任研究員(46)は「戸渡研究員(現在は環境保全課)を中心に行った地道な研究が実を結びました。将来、この研究成果が市民の食の安全につながることを期待しています」と話しています。

環境
海・河川・大気の保全
 

境科学課は、水や大気などの「環境」分野を担当しています。
 ●きれいな水
 
博多湾、河川、地下水などの水質検査や、工場・事業所の排水基準に適合しているかを確認する検査のほか、市民からの依頼に応じた井戸水の理化学検査などを行っています。河川などで大量の魚が死んでいたり、色の付いた水や油の流出等が発生したりしたときには、原因究明のための検査を行います。
 また、市内を流れる五つの河川(多々良川、御笠川、那珂川、樋井川、室見川)で、水質の指標となる水生生物の調査を行い、長期的な自然環境の変化を調べています。
 川の中には、きれいな水でしか生きられない生き物と汚れた水でも生きていける生き物が生息し、その生き物たちが水質を教えてくれます。網を使って川底の昆虫など水生生物を捕獲し、採集した生き物を分類して調査地点ごとに水質を判定します。1階にある保健環境学習室「まもるーむ福岡」に、採集した川の生き物たちの標本を展示しています。
 顕微鏡による水生生物の確認生物調査化学物質や油の測定PM2.5採取装置
●澄んだ空気
 
大気中のPM2.5や有害な大気汚染物質などの検査を定期的に行っています。また、依頼に応じて、悪臭物質やアスベストなどの検査も行うほか、他都市との広域的な共同研究として光化学オキシダントや酸性雨の調査などにも取り組んでいます。
 黄砂等が飛来しPM2.5が高濃度になった場合には、保環研の屋上でPM2.5の粒子を採取し分析しています。その中に含まれる成分等を分析することで、排ガスなど燃焼によるものか、黄砂や火山の煙など自然によるものかなど原因を推定することができます。
 環境科学課の大平良一主任研究員(52)は「私たちは身近な水や大気などについて日々調査研究を重ねています。得られた結果は、市の環境保全に関する施策等に生かしています。安心して生活できる豊かな環境を、次の世代につないでいきたいと思います」と話していました。
 保環研は、これからも社会の変化に対応しながら地域に根差した検査・研究を進め、市民の暮らしと安全を守ります。
 大平良一主任研究員
■問い合わせ先/市保健環境研究所 

電話 092-831-0660 

FAX 092-831-0726

保健環境学習室まもるーむ福岡
ヒナモロコ写真
電話 092-831-0669

FAX 092-831-0726

【開館時間】 午前10時から午後5時

【休館日】 月・火曜日(祝休日の場合は翌平日)
 
保環研の1階にある保健環境学習室「まもるーむ福岡」は、子どもから大人まで、保健や環境について体験しながら学べる施設です。
 
●体験学習ゾーン
 体験学習ゾーン写真
科学実験や生き物の観察を通して学ぶ「ミラクルラボ」や、映像クイズに答えながら学ぶ「ミニシアター・ガイア」、専門家による講座などを行う「多目的スペース」があり、週末には多彩なイベントを開催しています。
 
●展示学習ゾーン
 展示学習ゾーン写真
絶滅危惧種に指定されている魚・ヒナモロコや「生きている化石」カブトガニの展示(夏季のみ)のほか、パネルなどの展示で学習できます。ライブラリーには、環境や生き物、保健関連の書籍900冊とDVD60本があり、無料で借りることもできます。

催し

見て触って博多湾の魚と漁業を学ぼう~おいしい魚と危険な魚~
 
【日時】 7月23日(土曜日)午前10時半から正午 

【対象】 小学生以上 

【定員】 30人 

【料金】 無料 

【申し込み】 6月15日以降に電話かメール(mamoroom@fch.chuo.fukuoka.jp)で申し込みを。※1申し込みにつき5人まで。
 
博多湾で取れる魚の種類や量は、どのように変わってきているのでしょうか。漁業者から話を聞きながら、博多湾の環境保全や生物多様性について考えます。

 催しは全て無料です。詳細は、ホームページ(「まもるーむ」で検索)で確認を(本紙8面に関連記事)。

環境保全活動を応援します
 
まもるーむ福岡は、環境活動に興味がある人向けに、専門家と自然や生物多様性をテーマに語り合うトークカフェなどの交流イベントを開催するほか、環境活動に関する相談を受け付けています。
 また、市内で活動する環境保全団体等を応援するため、研修スペースの貸し出しや団体間の交流会なども行っています。
 
●アドバイザーがサポート
 環境分野で活躍する3人の専門家
環境分野で活躍する3人の専門家が、環境活動に取り組む市民の皆さんからの相談に応じ、アドバイザーとして協力します。
 詳しくはホームページでご確認ください。

環境活動ニュース
 環境活動ニュース写真
まもるーむ福岡の活動は、「環境活動ニュース」で読むことができます。市内外のNPOの活動紹介、アドバイザーのコラムなど、さまざまな視点から自然や生き物、環境について解説しています。ホームページにも掲載しています。







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