SDGs(エス・ディー・ジーズ)への貢献未来につながる下水道

下水道は、海や川などの自然環境を守り、私たちの快適な暮らしを支えています。普段私たちには見えない場所で、汚れた水や雨水がどのように処理され活用されているのでしょうか。可能性を秘めた下水道資源も紹介します。


福岡市の下水道は、昭和5(1930)年に整備が始まり、普及率は、現在99・7%です。下水道が整備されたことで、自然を守りながら清潔な生活環境が保たれるようになりました。持続可能な開発目標・SDGsの達成に向けた、重要な取り組みの一つです。

■ 下水道の果たす役割

循環型の都市づくり
 水は、主に海水が蒸発して雲となり雨や雪になって地上に降り注いで、川から再び海へと流れていきます。この「水の循環」の中で、私たちは毎日、トイレや風呂、炊事、洗濯などで1人当たり約200リットルの水を使用して生活しています。
 汚れた水は、地下に網の目のように張り巡らされた下水道管(汚水管)を通って市内7カ所にある水処理センターに運ばれ、汚れを沈めたり微生物の力を借りたりしてきれいにした後、川や海に流されます。
 きれいにする過程で発生した汚泥や処理水は、さまざまな形で資源としてリサイクルされます(3面参照)。

浸水を防ぐ

平成11年や15年の甚大な浸水被害を踏まえ、市は天神・博多駅周辺を対象とした「雨水整備レインボープラン」や、その他の市内全域が対象の「雨水整備Do(ドゥ)プラン」を策定し、浸水対策を進めてきました。
 都心部の限られたスペースを活用して整備された、山王公園(博多区)の雨水調整池には、全体で約3万立方メートル(25メートルプール約83杯分)の雨水がためられます。平成21年の九州北部豪雨の際には、すでに完成していた雨水調整池が効果を発揮しました。令和2年からは、地下街が広がる博多駅周辺の「下水道水位情報」も提供し、防災対策に役立てられています。
 天神周辺には、直径5メートルに及ぶ雨水貯留管が平成30年に整備されました。ここで、約6万立方メートルの水をためることができます。下水道管(雨水管)を通ってきた水は、ポンプなどにより川や海に流されます。

■ 下水から水素を

水素リーダー都市へ

 水素は、利用時に二酸化炭素を排出しない環境に優しいエネルギーです。
 市は、中部水処理センター(中央区荒津二丁目)で下水汚泥を微生物が分解する過程で発生する下水バイオガスから水素を製造し、併設する水素ステーションで燃料電池自動車(FCV)に供給しています。これは世界初の取り組みで、下水から水素をつくる「エネルギーの地産地消」として注目されています。


耐久レースに水素を提供

 市は、昨年11月に岡山で行われた「スーパー耐久レース」で、トヨタ自動車の水素エンジン車に、下水からつくった水素を提供しました。レースで水素エンジン搭載車に下水バイオガス由来の水素が使用されるのは世界初で、脱炭素社会の実現に向けて、トヨタ自動車の取り組みに協力しました。
 水素ステーションに関する問い合わせは、新産業振興課(電話 092-711-4901 FAX 092-733-5748)へ。

燃料電池自動車に乗っています

燃料電池自動車・MIRAI(ミライ)に乗り、日頃から中部水処理センターの水素ステーションを利用している秀電社・顧問の秀嶋秀文さん(70)に話を聞きました。
 水素ステーションが開設された平成27年当初から、このミライに乗っています。市の取り組みを知り、環境に優しい車に乗ることで社会に貢献できるならとすぐに購入を決めました。下水がエネルギーになるなんて素晴らしいですね。乗り心地も最高です。もっとFCVが増えれば、SDGsにも貢献できると思います。何事も、自ら積極的に動くことが私の信条です。皆さんもアクションを起こしてみてはいかがですか。
 ※新型MIRAIの場合、水素5.6kg(約3分で補充完了)で約850km走行可能。


下水道はこんなにすごい!
無駄なく使う・生まれ変わる


■ 市の優れた下水道技術

下水は、脱炭素社会に向けたサステナブル(持続可能)な資源として期待されています。下水を処理する過程で発生する処理水や汚泥は、水素のほかにもさまざまなものに形を変え再利用されています。

下水汚泥の固形燃料化

西部水処理センター(西区小戸二丁目)内の下水汚泥固形燃料化施設で、昨年2月から汚泥が持つエネルギー(熱量)を生かして固形燃料を製造しています。下水汚泥を乾燥させて製造した固形燃料を、石炭に代わる燃料として活用することで、二酸化炭素を減らし脱炭素社会に貢献しています。

下水からリン資源回収

市は、下水汚泥からリンを回収するシステム「MAP(マップ)法」を日本で初めて稼働させ、化学肥料の原料に利用しています。
 リンは生命活動に必要な元素で、特に農作物の生産に不可欠な肥料の材料です。日本は、リン資源のほとんどを輸入に頼っています。世界的にリンの枯渇が危惧されているため、下水中のリンが新たな資源として注目されています。

道路を造る材料に
下水汚泥や汚泥を燃やした灰が、セメントの原料や道路を造る際の土質安定材として有効利用されています。

下水バイオガス発電
微生物が下水汚泥を分解する際に発生するバイオガスは、発電の燃料としても使用され、有効利用されています。

■ 誇れる下水道技術を未来へ

市は、これまで水質汚濁・渇水・浸水問題を解決してきた経験を生かし、アジア諸国等に職員を派遣して現地で指導などを行い、下水道技術を伝えています。
 市は、老朽化に伴う下水道施設の維持管理や地震対策など、快適で安全・安心な市民生活を確保しながら、これからも自然災害に強く環境に優しいまちづくりを進めていきます。

■問い合わせ先/下水道経営企画課

電話 092-711-4613

FAX 092-733-5596


私たちにできること
下水道を守るために、次のことに気を付けましょう。▽台所では、生ごみや油を流さない(水処理センターの微生物は油が苦手です)▽トイレ使用時にトイレットペーパー以外の物は流さない▽洗濯時には泥や糸くずなどのごみを流さない▽道路にごみや空き缶などを捨てない

日本初の再生水利用

市は、287日間の給水制限が行われた昭和53(1978)年の大渇水を機に、渇水対策の一つとして昭和55年から再生水の供給を始めました。日本初の広域的な下水処理水の再利用事業で、供給区域・供給個所数ともに日本一です。天神や博多駅周辺を中心に、約500カ所に供給し、トイレや公園・街路樹の散水などに使用されています。



福岡市
下水道博物館
FUKUOKA CITY SEWERAGE MUSEUM


【場所】 博多区祇園町

電話 092-262-5027

FAX 092-262-5047
 
【開館時間】 午前10時~午後7時 

【料金】 無料 

【休館日】 第3水曜日

地下1階に向島ポンプ場、4階に演劇ホールを備えた「ぽんプラザ」の1・2階に、市下水道博物館があります。ここでは、普段見ることのできない下水道の仕組みや役割を、動画や体験型の展示で楽しく学ぶことができます。

下水道経営企画課の橋爪将治郎さん(35)に話を聞きました。

 下水道博物館は、プロジェクションマッピングなどを備え、展示物を一新しました。また感染症対策として、展示物は、全て手を触れずに安心して楽しめるようになっています。
 「下水道ってなんだろう」「汚れた水はどうやってきれいになるの」など、素朴な疑問をゲーム感覚で知ることができます。ぜひお立ち寄りください。


「マンホールカード」をもらおう

福岡市版マンホールカードを、下水道博物館2階受付で配布しています。市役所1階の情報プラザでは、福岡ソフトバンクホークス版のマンホールカードも配布しています。


恋する「FUKU51(フクコイ)マンホール」

市は、ハートが入ったデザインのマンホールふたを市内51カ所に順次設置しています。市ホームページ(「フクコイマンホール」で検索)に掲載している写真集を参考に、探してみてください。





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