INTERVIEWインタビュー

2021.10.6 (Wed)
アジア映画を観に行こう!3つの映画祭で観るアジアの世界

アジアの玄関口である福岡で、良質なアジア映画の発掘と発信を行ってきたアジアフォーカス・福岡国際映画祭は2020年までに延べ39カ国・地域の3,152作品を上映し、約66万人が来場しました。その想いと歴史を継承する新しい年となる2021年は、約1ヶ月の期間を通して3つの民間映画祭がバトンつなぎで、それぞれの映画祭の色を表した映像作品を上映します。今回は、各映画祭の楽しみ方と作品の見どころについて伺ってきました。奥深いアジア映画の魅力を知って、アジア映画の世界に浸る秋にしてみては?

第1弾!福岡アジアフィルムフェスティバル

▷10月7日(木)~10月12日(火)
▷福岡アジア美術館8階あじびホール
https://www.ship-s.jp/faff/

今年で24年目となる「福岡アジアフィルムフェスティバル」。映画を通して、アジア各国の文化の紹介を目的とした映画祭です。アジア・太平洋地域へ農村開発や環境保全活動を展開する公益財団法人オイスカ西日本研修センターを支援しており、映画祭では収穫されたお米や加工品を販売。アジア文化との交流や技術的支援など、福岡とアジアをつなぐ架け橋にもなっています。
本年は、ミャンマーの新旧作品をはじめ、フィルム復元映画やアニメーション、ドキュメンタリーなど幅広いジャンル10作品を上映。アジア映画ビジターはここからスタートするのがおすすめ。

―今年はアジア映画の中でもミャンマー映画をピックアップしているのはなぜでしょうか?

ニュースでも見聞きすることがあると思いますが、現在ミャンマーでは歴史的な政権交代でクーデターが起こっており、国内は混乱の真っ只中です。そんなミャンマーを応援する意味も込めてこの企画をスタートしました。1935年、当時まだビルマだった時代に公開された「日本の娘(当時の作品名は「にっぽんのむすめ」)」と、2020年に製作、日本では未公開の「マネー・ハズ・フォー・レッグス」の新旧2作品を迎え、上映します。特に「日本の娘」では、どうしてその時代にこの映画が作られたのかといった時代背景にも注目してもらいたいですね。ミャンマーは、本当は危険な国ではなく、個性豊かな文化が息づく素晴らしい国であることを映画で知ってもらいたいという願いも込めました。「マネー・ハズ・フォー・レッグス」はブラックジョークを交えた作品で、危うさもありますがコメディ要素もある作品なので気軽に観てみてくださいね。また、35mmフィルムを復元した技術的な面もレストレーションアジアさんのご協力のもとトークイベントにてご紹介します。古い映画を今に残す技術を知ると映画の見方も変わってきますよね。

マネー・ハズ・フォー・レッグス
カネは四つ足〜金果応報〜
2020年 ミャンマー 98分 日本語字幕製作/神保慶政 監督/マウン・サン

ミャンマー最大の都市・ヤンゴンに住む映画監督のウェイ・ボンは、銀行員の妻と小さな娘を育てながら慎ましく暮らしている。やっとの思いでデビュー長編の機会を得たウェイ・ボンだったが、トラブルメーカーの義兄と行動を共にする内に、現代ミャンマーの闇に巻き込まれていく…。

引用:https://www.ship-s.jp/faff/

―今回の映画祭の見どころやイチオシ作品を教えてください!

福岡アジアフィルムフェスティバルでは、国を問わず幅広いジャンルでセレクトしていて、いろんな角度からアジアを感じていただければなと思っています。台湾映画の巨匠 ホウ・シャオシェン氏の特集では、監督を務めた初期作品から監修作品を集め、彼のこれまでの映画人生を振り返るラインアップになっています。作品の面白さだけでなく、その時代の台湾も知ることもできる、映画好きにおすすめの作品ばかりです!
今年初の試みとして、アート映画を観るきっかけになればと、児童文学をモチーフにしたアニメーション作品も2本上映します。2作品併せても40分と上映時間も短いため、お子さま連れでも安心してご覧いただけます。
アジア映画ってわかりづらい作品が多いとよく言われますが、それもアジア映画のミソになる部分。今回、新作旧作はもちろん、短編、ドキュメンタリーとアジア5カ国の作品を分散的にセレクトしているので、ぜひたくさんの作品を鑑賞していただいて、いろんな感情を抱いて帰っていただけるとありがたいな、と思います。期間中、お得な特典もご用意しているので、ぜひ年に一度の映画祭を楽しんでいってください!

第2弾!台湾映画祭2021

▷10月15日(金)~10月17日(日)
▷福岡アジア美術館8階あじびホール
https://faam.city.fukuoka.lg.jp/event/12904/

映画を通して、台湾の風土や文化を知るきっかけを作り、台湾と日本のより一層の友好を目的とした映画祭。福岡と台湾は地理的距離も近く、旅行者も多く行き来しており、古くから交流の深い関係にあります。映画という作品の中で観る台湾は、またちょっと違う印象と発見があるかもしれません。
本年は、九州初上映となる4作品を3日間に渡り上映。台湾でも話題を集めた人気作品の世界観へ引き込まれるうちに、気分は台湾へトリップ。スクリーンに映し出される台湾の風景に、現地の香りまで届いてきそう。今は旅行に行けない想いを馳せて。映画で台湾を感じてみませんか。

―厳選の4作品!セレクトした経緯を教えてください。

今年から台湾映画コーディネーターの江口洋子さんにご協力いただき、この4本をセレクトしていただきました。注目すべきなのは全て九州初スクリーン上映であるということですね。お客様からアンケートでいただいたご要望にお応えして、これまで上映がなかった最新作品を揃えました。東京で開催された映画祭でも話題を集めた人気作品のラインナップです。どの作品を観てもおもしろいのでぜひ全作品鑑賞していただきたいです!上映時間も2時間未満と比較的短く、飽きずに観ることができるので、この日だけは朝から晩まで映画を観る日にしてみるのはいかがでしょう。DVD化もされている作品もあり、動画配信などで観る機会が昔に比べて多くなってきているとは思いますが、大きなスクリーンで観る楽しさをぜひ会場で体感していただきたいです。映画好きな方はもちろんですが、台湾からの留学生の方も多く来場されるようになってきたので、現地の言葉が会場で飛び交っていることがあります。そういう意味でもこの映画祭では、台湾を感じていただけるのではないかなと思います。

アリフ・ザ・プリン(セ)ス
2017年 台湾 91分 監督/ワン・ユーリン

25才のパイワン族の青年阿莉芙(Alifu)は、手術で完全な女性になることを目標に台北でヘアスタイリストとして女装して働いている。しかし、台東の実家に帰るときだけは自分を偽り男にもどらなければならない。阿莉芙の父は部落の頭目で、到底彼の真の姿を理解してもらえないからだ。同僚でルームメイトの佩貞(ペイチェン)はレズビアンだが、一番の親友。ふたりは互いの悩みを相談し励ましあって生きている。ある日、阿莉芙は健康に不安を感じた父から戻って来て頭目を継いでくれと言われ、困惑する。

引用:https://faam.city.fukuoka.lg.jp/event/12904/

―作品の見どころや台湾映画祭の楽しみ方とは?

今回の4作品は、いまの社会問題を題材にした作品が多いですね。同性婚をいち早く受け入れた国として台湾は知られていますが、実際のジェンダーフリーとは?と考えさせられる作品やいまの台湾をうつし出す社会派ミステリー作品など見応えがある作品ばかりです。最新のもので2019年に公開された作品もあるので、リアルな台湾の実状を作品から感じ取れると思います。各作品の上映後に、今回4本をセレクトしていただいた映画コーディネーターの江口洋子さんのアフタートーク(映像)も予定しているので、楽しみにしていてくださいね。台湾映画祭は、台湾の映画のみをセレクトした映画祭です。前後で開催される福岡アジアフィルムフェスティバルと福岡インディペンデント映画祭で上映される台湾以外のアジア映画と見比べてみるのもおもしろいかと思います。同じアジアであっても国が違うと表現も映し出される日常生活も変わります。映画を通してアジアの暮らしを観て知って発見のある1ヶ月にしてみてください。週末の映画鑑賞に台湾映画を観にいらしてください!

第3弾!福岡インディペンデント映画祭2021

▷10月29日(金)~10月31日(日)
▷福岡市科学館6階サイエンスホール
https://fidff.com/

インディペンデント映画作品(自主映画・ドキュメンタリー・ 実験映像など)の上映を通じて、福岡と、アジア・世界の映画人との「交流・育成」の「場」づくりを目的とした映画祭です。開催9回目までは毎年、映像作品を一般からコンペティションし、上映してきました。10回目以降は隔年での公募に切り替え、13回目を迎える本年は、これまで上映された作品の中から優れた作品をピックアップしたセレクション上映となります。日本国内のみならず海外でも活躍する映像作家の短編から長編作品全32本をセレクトしました。未来の映像界を担うまだ見ぬ新しい才能をご覧あれ。

―インディペンデント映画(自主制作映画)の魅力とは?

自主制作映画を作成しても発表する場が福岡にはあまりなかったんですよね。映画は上映されてはじめて完成するもの。上映の場所を提供する目的で、この映画祭ははじまりました。初期の開催では公募に寄せられた作品全てを上映することもありました。年々応募数も増えているのでそれは叶わなくなりましたが、映画の多様性も高くなってきた印象ですね。この映画祭の特徴は、映画監督を夢見て映像を制作する人もいれば、俳優としての才能を発揮する人もいる。これからのスターになる逸材が集まる未来へ向けた映画祭であるということ。有名な俳優さんも自主制作映画出身というのも少なくはないんですよ。ここ数年のスマートフォンの普及で気軽に撮影できるようになった背景もあり、若い層の応募も増えてきています。自主制作映画は、自費で制作しているからこそ監督が撮りたいものを撮れるという点が自由さもあり、こだわりが光る部分でもあります。そのストイックさと作品に込められたメッセージにも注目してみてください。これまで出会ったこのない映画との出会いがあるはずです!

PUI PUI モルカー
2021年 日本 2分40秒 監督/見里朝希

“舞台はモルモットが車になった世界。癒し系の車“モルカー”。くりっくりな目と大きな丸いお尻、トコトコ走る短い手足。常にとぼけた顔で走り回るモルカー。渋滞しても、前のモルモットのお尻を眺めているだけで癒されるし、ちょっとしたトラブルがあってもモフモフして可愛いから許せてしまう?!クルマならではの様々なシチュエーションを中心に、癒しあり、友情あり、冒険あり、ハチャメチャアクションもありのモルだくさんアニメーション!”

引用:https://fidff.com/2021/invitation/tomokimisato/516/

―それぞれの特集についての見どころを教えてください。

アニメーション作品「PUI PUI モルカー」で一躍有名となり、ストップアニメーションの新星として世界から注目を浴びている見里朝希監督の特集上映を行います。マスコット人形が動く可愛らしい作品が多いかと思いきや過去の作品ではダークな部分も垣間見えて作家としての幅の広さも感じられるラインナップです。台湾映画特集では、これまで数々の映画人を輩出してきた国立台北芸術大学映画学科が主催する台湾最大の学生映画祭で入選し、台湾でも話題の3本を上映します。クオリティも高く、これからの台湾映画はアツイ!と予感し、この素晴らしさを知ってもらいたいと思いました。トランスジェンダー特集は、現代らしいテーマかと思われがちですが、自主制作映画はとにかく自分が撮りたいものを撮れるからこそ、昔から多く制作されていたテーマでもあります。宗教的な観点でもこの問題には国ごとに差があって、リアリティある描写が見どころです。最後に、九州ドキュメンタリスト特集は無料観覧枠です。過去にあったことを知ることは学びの場にもなりますし、後世に残していく遺産でもあるので多くの人に観てもらいたいですね。さらに、招待作品以外にも昨年の受賞作品も再上映します!俳優としてブレイク中の若葉竜也さんが監督を努めた作品や昨年にはなかった新バーションもお披露目もありで、こちらも見ごたえがありますよ!
自主制作映画は撮り手の工夫も時代によって変化していきます。この時代だから生まれる新しい撮影の発想は観る側の楽しみの一つです。これまでインディペンデント映画を観たことがなかった人も、ぜひこの機会に未来のスターの作品をご鑑賞ください。

OTHER ARTICLES

ページトップ