INTERVIEWインタビュー

2021.10.1 (Fri)
アジア映画を観るならシネラへ

福岡市早良区百道浜にある福岡市総合図書館は、図書資料、映像資料、文学・文書資料の3つの柱のもと、市民の生涯学習推進の総合拠点施設として創設されました。特に映像資料に関しては、映像ホールやミニシアターなど本格的な映像施設を有しており、図書館でありながら映画鑑賞ができるエンタメ性に優れた大規模文化施設です。

アジアンパーティー2021年で開催される2つのフィルムイベントもこちらの映像ホール・シネラで開催!今回は、知る人ぞ知るアジア映画の宝庫「映像ホール・シネラ」についてと上映作品の見どころについて教えていただきました。

日本で最もアジア映画を所蔵する施設

—福岡市総合図書館が行う映像資料事業について教えてください。

「フィルムアーカイヴ」として映画を収集・保存し、上映する事業を行っています。映像は貴重な文化財ですから、適切な保存方法で長期保存して調査、研究も行っています。所蔵映像本数は3000本にもなりますね。その中の約900本以上がアジア映画です。ここまで多くのアジア映画を保有しているのはここだけ。日本で一番アジア映画を持っている図書館であることは間違いないです。製作された国ではすでに保管されていない貴重な作品もここには保管されています。

—映像ホール・シネラではどんな映画を鑑賞できますか?

アジア各国で製作された映画を上映しています。近い国だと韓国や中国、遠方になるとトルコまで。各国の代表作や昨年まで開催されていたアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された作品を扱っています。幅広い見方ができるように古典的名作やアニメーションなどジャンルを問わず収集しています。所蔵映像作品以外にも配給会社から借りて上映することもありますよ。福岡ではここでしか観られない作品がほとんどですね。1ヶ月に18本ほどの作品をコンスタントに上映して、年間で200本くらいになります。同じアジアといえど言葉も文化も顔も違う。国によって雰囲気がガラッと変わるのもアジア映画のおもしろいところです。

—日本一アジア映画をもつアーカイヴが福岡にあるのは何か理由があるのでしょうか?

アジアに拓かれた国際都市ということもあって、国同士の交流の歴史も深く、アジア文化の発展と発信の地としてのバックグラウンドが確立されているのが福岡です。各国から映画監督や関係者が来福する映画祭を開催していたこともこの事業を後押しする大きな理由ですね。アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された作品の多くがここシネラで観ることができます。国際文化の交流の場でもあった映画祭の歴史と遺産を引き継ぐことも私たちの役割だと思っています。

傑作を一度に鑑賞できる特集企画は必見!

—特別企画「アジア・シネマ・アンソロジー」はまさにアジアフォーカス・福岡国際映画祭を感じられるイベントになりそうですね!

そうですね。過去に映画祭で観客賞を受賞した作品を中心にセレクトした作品をリバイバル上映します。観客賞というのは、期間中に映画を鑑賞した一般市民の皆様の投票により選ばれた作品に贈られる賞です。受賞作品を予想するのは意外と難しくて、毎年楽しみにしていました。娯楽性が高いものが人気かと思えば、メッセージ性の強い誠実な作品を選ぶ傾向にもあって、市民の見識の高さを感じましたね。第一回観客賞受賞作品「私はガンディーを殺していない」は、現在のインドの平和主義について問う作品で、考えさせられる内容に引き込まれます。他にも涙あり、笑いありの傑作ばかりを集めたラインナップですので見応えがあると思いますよ。
この期間中には、石原香絵氏を招いての講演会も開催します。私たちが行う「フィルムアーカイヴ」についての必要性と方法についてお話いただきます。年に数回ほど上映作品に関連した内容のイベントを開催しています。映画の知識を広げるきっかけ作り、アジア映画に触れる機会を作れたらと思っています。

私はガンディーを殺していない
監督:ジャヌ・バルア 出演:アヌパム P.ケール ウルラミー・マートーンドカル
2005年/35ミリ/カラー/104分/インド/日本語・英語字幕付き

ヒンディー文学の教授ウッタム・チョウドリーは、大学を退職後認知症の兆候が現れる。彼は次第に「自分がガンディーを殺した」という妄想にとりつかれる。ウッタムの娘は知人の精神科医に相談する。医者は彼の妄想の原因は、子ども時代のトラウマにあると診断し、治療のために偽装裁判を提案する。
インド独立の父といわれるガンディーは、1948年狂信的なヒンドゥー教徒により殺害された。ガンディーは平和の象徴として知られているが、監督が本作に込めたメッセージは、現在のインドでガンディーの平和主義が忘れられようとしているのではないかという事だ。2006年アジアフォーカス・福岡映画祭で日本初公開され、第1回の福岡観客賞に輝いた傑作。

引用:特別企画「アジア・シネマ・アンソロジー」
http://www.cinela.com/gaiyou_20211020.html

—通常上映「アジアのドキュメンタリー」の特集も気になります。ドキュメンタリー作品の魅力はどこにあるのでしょう?

特集企画の場合、インド特集や韓国特集といった国ごとで分けることが多かったのですが、今回は新しい試みとして、アジアのドキュメンタリー作品を集めてみました。収蔵作品にはなるのですが、「ビルマ・ストーリーブック」、「父の選択」、「子どもたちは死を恐れないが、お化けは怖がる」の3作品は初上映作品となっていますので、楽しみにしていてください。ドキュメンタリー作品の大きな特徴としては、リアルな生活が映し出されているということですね。時代の移り変わりと人間ドラマ、社会情勢が色濃く出る作品が多いのも特徴です。子どもたちにカメラを持たせ、子どもたちの目線で撮影された作品もあります。世界を知るにはドキュメンタリー映画というコンテンツはいい資料になると思います。

ビルマ・ストーリーブック
監督:ペテル・ロム
2017年/デジタル/カラー/81分/ミャンマー=ノルウェー=オランダ/日本語・英語字幕付き

マウン・アウン・プインは反体制的な詩を作り、何度も拘束され投獄されてきた。本作は、70歳近くになりパーキンソン病を患うプインに密着したドキュメンタリーである。手が動かないため彼の妻が詩を口述筆記する。彼の日常と、ミャンマーが民主化への向かう希望が映画には描かれる。随所にミャンマーの美しい映像が挿入され、プインの詩が多くの人に愛されている様が描かれる。

引用:アジアのドキュメンタリー
http://www.cinela.com/gaiyou_20211003.html

シネラで上映されるアジア映画のリストを見るだけで、私たちが想像するよりはるかに多くの映像作品が世界では撮影され、上映されていることがわかります。アジアと括るにはあまりにも多様な文化、生活を映画という作品を通して知ることができます。これまで出会ったことのない世界を見ることができるかもしれませんね。そして、観覧料が500〜600円というお手頃価格で映画鑑賞ができるのも魅力的!国ごとに見比べてみるのもそれぞれの国の発見がありそうです。新しい趣味にアジア映画鑑賞はいかがでしょう♪アジア映画を観るならシネラへ。

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