INTERVIEWインタビュー

2021.9.17 (Fri)
アートは買える!現代美術と交流するアートフェアアジア福岡

現代美術の祭典 アートフェアアジア福岡

今回で6回目の開催となる「アートフェアアジア福岡2021」。9月22日(水)から26日(日)までの5日間、今年で創業10周年という節目を迎える博多阪急を会場に、現代美術作品が一堂に会す現代美術の祭典が開催されます!昨年の中止を乗り越え、1年のブランクを勢いにかえた2年ぶりの開催となる今回、これまでの3日間の会期を5日間に延長し、過去最多の来場者を見込んでいます。9月15日(水)から9月28日(火)までの11日間にわたり博多阪急で開催される「HAKATA ART STATION」のメイン企画がこの「アートフェアアジア福岡」。『九州の玄関口として様々な文化が交差する“博多”をアートの始発駅に』をテーマに、人とアートが交流する特別な空間へと変貌します。忙しなく人が行き交う博多駅ですが、この期間だけは作品の前で一歩立ち止まって、アートとの対話を愉しんでみるのはいかがでしょう。

今回は、福岡市中央区赤坂にある「Gallery MORYTA」のオーナーであり、アートフェアアジア福岡の実行委員長を務める 森田俊一郎氏 にアートフェアの愉しみ方や世界と比べた日本のアート文化についてインタビューしてきました。

アートフェアとは?

―様々なアートイベントや展示会が各地で開催されていますが、アートフェアとは一体どんなイベントなのでしょうか?

アートフェアとは、アートギャラリーが一堂に集まり、美術作品を展示・販売するギャラリーショーです。美術館が主催する展覧会と大きく異なるのが、美術作品を鑑賞するだけにとどまらず、購入できるという点ですね。展示されている作品を会場から家に持ち帰ることができるんです。売買が主と思われがちですが、新しい作品の発表、それを制作する作家との出会いの場でもあります。美術館ではキャプションなどで技法や込められた思いを読みとるかと思いますが、アートフェアでは、作家本人、もしくはギャラリストが作品についての説明を行います。こういった対話や交流もアートフェアの醍醐味ですね。

―買えるアート!というのが新鮮に感じてしまうくらい日本ではまだまだ馴染みがないように思います。一方、世界のアートフェアとはどういうものなのでしょうか?

日本ではアートフェアという言葉自体がまだまだ浸透していないのが現状ですからね。そういう点で、日本は遅れをとっているように感じます。世界では年間300〜400のアートフェアが開催されていると言われ、香港、台湾、中国ではすでに世界的な規模のアートフェアが開催されています。コロナ前、世界のアート市場は7〜8兆円近くあり、日本では想像もできないビックビジネスが世界に存在しているのも事実です。ただ、お金だけで語れないのがアートの世界。アートを介する人との出会いや新しいアート作品との出会い、情報や文化が行き交うアートの祭典は、街全体を巻き込み、人々をワクワクさせるビックイベントなのです。

―アート作品を買うとはどういうことなのでしょうか?

美術作品を買うとなると日本ではとてもハードルが高いように思えますが、日本以外の国のアートフェアではごく自然なことに思えます。こうしたアート作品を気軽にゲットする、絵と暮らすといった文化がもっともっと広まってほしいですね。自分が持つエモーショナルな感覚をより研ぎ澄ます必要があると思うんです。作品と対峙することで、自分の本質と出会わせてくれる場面もある。アートを自分の人生に取り入れることは、自分を創造すること、人生を美しく構築することだと思っています。たとえば自分の買ったアーティストの作品が世界的なアートフェアに出品される、それってアーティストだけのことではなく、自分の人生も刺激的なものに変えていくことだってあるのです。アートに関わることで、より世界を身近に感じられるはずですよ。

福岡をアートの最前線の地に

―福岡はアジアの玄関口ともいわれます。今回はコンセプトに“始発駅に”というワードがあるように、福岡からアートの波が広がっていくといいですね。

福岡は、韓国や台湾、香港などアートが盛んな国とも近く、グローバルな目線を育てられる環境ですよね。スタートアップに適した地ともいわれますが、スタートアップの原動力とは?アイデアの根源とは?と考えたときに、すべては文化が源だと言っても過言ではないはずです。その文化を育てる意味でも、世界と直結する「アートフェアアジア福岡」は重要です。日本のアート文化の先陣をきる役割を福岡が担うことだって起こり得ますよ。今回、全国から45のギャラリーが参加し、100名以上の作家、1000点以上の作品が展示販売されます。世界に比べれば規模は小さいながら、現代アート作品を一度に観られる貴重な場になります。

前回の開催時の様子

―現代アートの祭典とありますが、いま現代アートが注目されているのはなぜですか?

現代アートはわからない、難しいと敬遠される風潮もありますが、世界のアート市場を動かしている中心は現代アートです。同時代を生きる作家との交流は、書籍や研究では得られないものがあり、その体験、コミュニティーを求めてアートフェアに人々は訪れます。
現代アートに対する認識でもわかるように、日本のアート文化は世界と比べると“ズレている”場面が多くあります。たとえば、日本人に好きなアーティストは?と尋ねると、100年近く前のフランス印象派の巨匠の名前はよく出てくるけれど、国内の現代アーティストとなると皆目分からないと言う。なぜ日本人は、自国で現在活躍するアーティストのことを知らないのでしょうか。世界に出ると、このギャップに驚かされます。こんな風だから、国内のアートの価値観と世界の価値観とが全く違っていても気にならない。アートはグローバルなものだということをもっと認識したいですね。
アートを感じることは、今の世界を知ることでもあり、それは自分にとって大切なものを発見し、掴み取ることであり、真の豊かさを知るきっかけとなります。アートとの交流で福岡の人の意識が変わっていくといいですね。

―これまでではなく、これからを生きる現代アート。同時代を生きる作家がてがけたアート作品をぜひ会場で観たいです。これから福岡がもっとアートな街になっていく兆しがありますね。

福岡は日本のアートの最前線になれば良い。1950年代には「九州派」とよばれる前衛美術集団がここ福岡を拠点に誕生したんです。当時、日本各地で、そうしたムーブメントが起きていたのですが、中でも「九州派」は突出していたといわれる方がいます。エッジの効いた前衛的なアートこそ、世界が認める日本のアートとなると思っています。

桜井孝身「パラダイス」 P30

桜井孝身 「ジル・ドゥルーズへの道」 42x75

9月15日(水)から28日(火)に開催される「Fukuoka Wall Art Project」では、福岡市を拠点に活動する勢いのあるアーティストの作品を展示・販売します。
さらに9月16日(木)から20日(月)には、国内で広く知られているわけでもないのに、Instagramの世界では、日本人コンテンポラリーアーティストとして異例の5万人を超えるフォロワーを持つ福岡在住の平松宇造さんという画家がいます。彼とSNSを通じて繋がる国内外の著名な作家とのグループ展を開催します。SNSは、自分たちの作品を発表する新たな場となり、作品の話題が瞬時に世界を駆け巡ります。アートも作家も発信方法も成長していっています。世界を知ることで、これからより多くの芸術家がここ福岡から誕生する可能性があると思います。

―最後に、森田さんが考えるアートフェアの愉しみ方を教えてください。

アートフェアは自分の人生を美しく彩ってくれるであろう人と人とを繋ぐ、交流の場でもあります。作品との対話、アーティストとの対話を愉しむとともに、アートに関わる素敵な方たちと巡り会ってほしいですね。アートが持つ才能や思考に触れることで、アートの捉え方も変わってくると思います。そんなアートワールドを感じて、自分の中に取り入れてみてください。これだけ多くの作品が並ぶ中で自分はどの作品を選ぶのか、なぜ立ち止まるのか。その瞬間、あなたは自分を構築する表現者になります。自分の人生を美しくするためのアートとの出会いがあるはずです。

九州を拠点に世界へ進出するアーティストたちの勢いとこれからの福岡カルチャーの発展を感じるアートイベントになりそうですね!あなたも最前線のアートワールドに飛び込んでみませんか?

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