○福岡市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例
平成27年3月19日
条例第49号
目次
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 対象建築物の登録等(第3条―第6条)
第3章 保存建築物等に関する制限
第1節 現状変更の規制(第7条・第8条)
第2節 保存のための措置(第9条―第13条)
第4章 雑則(第14条―第17条)
第5章 罰則(第18条―第21条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、歴史的な建築物について、現状変更の規制及び保存のための措置並びに安全性の維持及び向上を図るための措置に関し必要な事項を定めることにより、当該建築物の歴史的価値を維持しつつ、利活用を促進し、もって良好な状態で文化的遺産を将来の世代に継承することを目的とする。
(1) 対象建築物 法の規定が適用されるに至った際現に存し、又はその際現に建築、修繕若しくは模様替えの工事中であった建築物のうち、次のいずれかに該当するものをいう。
ア 文化財保護法(昭和25年法律第214号)第57条第1項の規定により登録された有形文化財
イ 福岡市文化財保護条例(昭和48年福岡市条例第33号)第35条第1項の規定により登録された福岡市登録有形文化財
ウ その他市長が前条の目的に適合するものとして指定するもの
(2) 移築 建築物を他の敷地に移して新築することをいう。
(3) 増築等 建築物の増築、改築、移転、移築若しくは用途の変更又は修繕若しくは模様替えをいう。
(4) 保存活用計画 次に掲げる事項を定めた対象建築物の保存及び活用に係る計画をいう。
ア 当該対象建築物の保存を図りながら、これを活用するために必要な増築等の工事の内容
イ 当該対象建築物の安全性に関する事項
ウ 当該対象建築物の維持管理に関する事項
エ その他市長が当該対象建築物の良好な保存及び活用並びに当該対象建築物が存する敷地の周辺の環境の保全を図るために必要と認める事項
(5) 保存建築物 対象建築物のうち、第4条第1項の規定による登録を受けたものをいう。
(6) 保存対象敷地 保存建築物が存する敷地(保存活用計画において、対象建築物を移築することとする場合にあっては、移築後の敷地)をいう。
第2章 対象建築物の登録等
(所有者による登録の申請)
第3条 対象建築物の所有者は、当該対象建築物の保存及び活用を図るため、法第3条第1項第3号の規定に基づく指定を必要とするときは、市長に対し、当該対象建築物を保存建築物として登録することを申請することができる。
2 前項の規定による申請を行おうとする者は、当該対象建築物に係る保存活用計画を策定し、市長に提出しなければならない。
3 第1項の規定による申請を行おうとする者は、その者以外に当該対象建築物が存する敷地(保存活用計画において、当該対象建築物を移築することとする場合にあっては、移築後の敷地)について所有権又は借地権を有する者があるときは、あらかじめ、当該申請の内容について、これらの者の同意を得なければならない。
(対象建築物の登録等)
第4条 市長は、前条第1項の規定による申請を受けた場合において、当該対象建築物の保存及び活用を図るために法第3条第1項第3号の規定に基づく指定を行う必要があり、かつ、当該対象建築物に係る保存活用計画について交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、当該対象建築物を保存建築物登録簿に登録するものとする。
2 市長は、前項の規定による登録をしようとするときは、あらかじめ、福岡市建築審査会の意見を聴かなければならない。
3 市長は、第1項の規定による登録をしたときは、当該保存建築物の所有者に通知しなければならない。
4 市長は、第1項の規定による登録をしたときは、遅滞なくその旨を公告するとともに、保存対象敷地及び当該保存対象敷地内に存する建築物の位置その他規則で定める事項を表示した図書をその事務所に備えて、一般の縦覧に供さなければならない。
6 市長は、第4項の規定による公告をしたときは、当該保存建築物について、法第3条第1項第3号の規定に基づく指定に係る福岡市建築審査会の同意を得られるよう努めるものとする。
(登録の変更)
第5条 保存建築物の所有者は、保存建築物に係る保存活用計画の変更(規則で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、市長に対し、変更の登録(以下「変更登録」という。)を申請しなければならない。
3 市長は、第1項の規定による申請を受けた場合において、当該申請の内容が当該保存建築物の保存及び活用を図るために必要であり、かつ、変更後の保存活用計画について交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、変更登録をすることができる。
(登録の抹消)
第6条 市長は、保存建築物について、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、遅滞なく当該保存建築物の登録を抹消しなければならない。
(1) 法第3条第1項第1号又は第2号に規定する建築物に該当するに至ったとき。
(2) 滅失、毀損その他の事由によりその登録の理由が消滅したとき。
2 市長は、保存建築物について、公益上の理由その他の特別な理由があると認めるときは、その登録を抹消することができる。
3 市長は、前2項の規定により保存建築物の登録を抹消したときは、遅滞なくその旨及びその理由を公告するとともに、当該抹消を受けた保存建築物の所有者に通知しなければならない。
第3章 保存建築物等に関する制限
第1節 現状変更の規制
(増築等の許可等)
第7条 保存対象敷地内において増築等をしようとする者又は保存建築物に関しその形状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、あらかじめ、市長の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他規則で定める行為及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
3 市長は、第1項の許可の申請があった場合において、当該保存建築物の保存のために必要があると認めるときは、許可に必要な条件を付することができる。
4 第1項の許可は、法第6条第1項若しくは第6条の2第1項(法第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による確認の申請又は法第18条第2項(法第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による通知を要するものであるときは、当該申請又は通知をしようとする日までに受けなければならない。
5 第1項の許可に係る工事は、当該許可を受けた後でなければ、これを施工してはならない。
(完了の届出)
第8条 前条第1項の許可を受けた者は、当該許可に係る工事を完了したときは、その旨を市長に届け出なければならない。
第2節 保存のための措置
(所有者の管理義務等)
第9条 保存建築物の所有者は、保存活用計画に従って、当該保存建築物の保存及び活用を図らなければならない。
2 保存建築物の所有者は、当該保存建築物の管理に関する責任者(以下「保存管理責任者」という。)を選任することができる。
3 保存建築物の所有者は、前項の規定により保存管理責任者を選任したときは、遅滞なくその旨を市長に届け出なければならない。保存管理責任者を解任し、又は変更したときも、また同様とする。
4 第1項の規定は、保存管理責任者について準用する。
5 保存建築物の所有者又は保存管理責任者は、その氏名若しくは名称又は住所を変更したときは、遅滞なくその旨を市長に届け出なければならない。
6 保存建築物の所有者が変更したときは、新たに所有者となった者は、遅滞なくその旨を市長に届け出なければならない。
(維持管理の報告等)
第10条 保存建築物の所有者又は保存管理責任者は、当該保存建築物について、当該保存建築物に係る保存活用計画の維持管理に関する事項に従い、定期的にその状況の調査を行い、その結果を市長に報告しなければならない。
2 市長は、前項に定めるもののほか、必要があると認めるときは、保存建築物の所有者又は保存管理責任者に対し、当該保存建築物の現状又は管理若しくは工事の状況について報告又は資料の提出を求めることができる。
(管理に関する助言、勧告及び命令)
第11条 市長は、保存建築物の所有者又は保存管理責任者に対し、当該保存建築物を保存するために必要な助言を行うことができる。
2 市長は、保存建築物の構造若しくは建築設備又は保存対象敷地の管理が適当でないため当該保存建築物の損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば保安上著しく危険な状態となり、又は衛生上著しく有害となるおそれがあると認める場合においては、当該保存建築物若しくは当該保存対象敷地の所有者又は保存管理責任者に対し、相当の猶予期限を付けて、管理の方法の改善その他管理に関し必要な措置をとることを勧告することができる。
3 市長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、当該勧告に係る措置をとることを命じることができる。
(監督処分)
第12条 市長は、この条例の規定又は第7条第3項の条件に違反した保存建築物又は保存対象敷地内の保存建築物以外の建築物(以下「保存建築物等」という。)の建築主、当該保存建築物等に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該保存建築物等若しくは保存対象敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、工事の停止を命じ、又は相当の猶予期限を付けて、建築物の外観の変更、除却、移転、移築、改築、増築、修繕、模様替え、使用禁止、使用制限その他違反を是正するために必要な措置をとることを命じることができる。
2 市長は、この条例の規定又は第7条第3項の条件に違反することが明らかな増築等の工事中の保存建築物等については、緊急の必要があって福岡市行政手続条例(平成7年福岡市条例第56号)第13条第1項に規定する意見陳述のための手続をとることができない場合に限り、当該手続によらないで、当該保存建築物等の建築主又は当該工事の請負人若しくは現場管理者に対し、当該工事の停止を命じることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対し、当該工事に係る作業の停止を命じることができる。
(権利義務の承継)
第13条 所有者の変更により新たに保存建築物の所有者となった者は、この条例の規定により市長が行った助言、勧告又は命令その他の処分による旧所有者の権利及び義務を承継する。
第4章 雑則
(建築物の設計及び工事監理)
第14条 第7条第1項の許可を受けた保存建築物の工事のうち、建築士法(昭和25年法律第202号)第3条第1項(同条第2項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)、第3条の2第1項(同条第2項において準用する同法第3条第2項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)又は第3条の3第1項(同条第2項において準用する同法第3条第2項の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)に規定する建築物の工事は、それぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければ、することができない。
2 第7条第1項の許可を受けた保存建築物の工事のうち、建築士法第2条第7項に規定する構造設計図書による同法第20条の2第1項の建築物の工事は、構造設計一級建築士(同法第10条の2の2第4項に規定する構造設計一級建築士をいう。以下同じ。)の構造設計(同法第2条第7項に規定する構造設計をいう。以下同じ。)又は当該保存建築物が構造関係規定(同法第20条の2第2項に規定する構造関係規定をいう。)に適合することを構造設計一級建築士が確認した構造設計によらなければ、することができない。
(平成31条例39・一部改正)
(立入調査等)
第16条 市長は、この条例の施行に必要な限度において、市長が指定する職員に、保存対象敷地若しくは保存建築物等に立ち入り、その状況を調査させ、必要な検査をさせ、又は関係者に質問させることができる。ただし、住居に立ち入るときは、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。
2 前項の規定により立入調査、立入検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
(委任)
第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
第5章 罰則
第19条 次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
(2) 第7条第3項の条件に違反した者
(3) 第10条第2項の報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
第20条 第16条第1項の規定による立入調査若しくは立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述せず、若しくは虚偽の陳述をした者は、10万円以下の罰金に処する。
第21条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前3条に規定する違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成27年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の際現に解体され、その建築材料の全部又は一部が保管されている建築物で、当該建築材料の全部又は一部を用いてその原形を再現しようとするものについては、解体されていないものとみなして、この条例の規定を適用する。
附則(平成31年3月14日条例第39号)抄
この条例は、公布の日から施行する。