日時 平成30年12月10日(月曜日)午後7時から午後9時
場所 福岡市スタートアップカフェ
2012年に日本で初開催された「英国CMI認定サスティナビリティ(CSR)プラクティショナー資格講習」を受講し,CSRの基礎やCSR各分野における世界的なトレンドや事例,実際の推進手法などを体系的に学び、,州地域として初の資格取得。中小企業を中心にCSR導入のための講習・社内組織づくりやCSRレポート等のコミュニケーションツール作成支援サービスを実施し,企業のCSRトータルサポートを行っている。
CSRが広まったのは,企業の不祥事からである。
【事例1:バングラデシュのラナ・プラザビル崩壊】過酷な労働が行われており,違法な増改築で危険な建物だった。事故当日,ビルに亀裂が入っていることが発見されていたが,それをビルのオーナーが無視し,働かされていた。発注元はファストファッション企業で,不買運動にも繋がった。
【事例2:日本の4大公害】発生原因はすべて企業の事業活動からである。不祥事が起こるたびに企業の社会的責任が叫ばれるようになった。
結果として,大手企業がCSR専門部署を設置するなど、企業が経営課題としてCSRに取り組み始めた。また,マイケル・ポーターが発表した論文「共通価値の戦略」を機に,CSVの概念が多くの企業に刺激を与えた。
CSR(企業の社会的責任)とは,事業活動を行っていく上で,経済だけではなく社会や環境に与える影響に対しても責任を持ち,利害関係者との関係を重視しながら,その影響に対応することで,より持続的な企業と社会の実現を目指すという考え方である。
第一歩は自社の事業活動がどんな人たちに影響があるのか、その影響はどんなものなのかを考えることから始まる。何かしらの関係がある,たくさんの人たち(ステークホルダー)が企業の周りにいる。直接的または間接的に影響を与える人がいるが,特に大きいのは直接的に影響を与える人である。また,経済・環境・社会の3つの側面からあらゆる影響があるのではないかと考えてみる必要がある。
CSV(共有価値の創造)とは,社会のニーズに応え,社会の抱える課題を解決するというような成果をもたらす方法で、経済的価値を生み出すことであり,CSRとは全く違うものである。CSRはあらゆる事業活動において不可欠であり,CSVはCSRの代替とはならない。また,CSVはCSRを前提として進められるべきであり,CSVが作り出そうとしている社会的価値の検証と評価が必要である。
CSVを考えていくアプローチとしては,まず,自社の事業から考えることである。組織として目指す姿に社会課題のヒントはないか,自社の商品・サービスの普及によって解決できることはなにかを考え,事業活動を通じて期待できる効果を整理し,社会課題解決への貢献を関連づけてCSVを推進する。次のアプローチは,社会課題から考えることである。世界の社会課題(SDGs),地域資源を活かした発展に向けて考えるべき項目(『地域の力』診断ツール),具体的な地域の課題(自治体基本計画等)等,関心の高い課題を重点項目に決めて経営戦略に落とし込み,CSV推進する。
社会的価値を生み出すCSR、CSVを行うにあたって一番重要なことは、「なぜ?」というところをしっかり紐付けることである。また,継続することが大事であり,長期的に行うことで成果が出る。まずは,皆さんに考えてもらって何か行動を起こすきっかけにしてもらいたいと思う。
3年前ほどからGreen propさんの支援を受けている。もともとやっていた活動をCSR活動として意味づけていっている。CSR活動は事業活動の位置づけとして考えている。地元が抱える地域課題に向かって,改めて自社は何ができるか,何を必要とされているかをGreen propさんに整理してもらっている。
どうして活動を始めているのか,どのように事業に結び付けているのか,どのようにして継続しているか(モチベーション)をお伝えしたい。
当社の事業内容は建設業,一般・産業・廃棄物処理業,農業であり,社会問題解決への挑戦を通じて地域に恩返しを行い,明るく朗らかにお客様,お取引先と共に信頼関係を構築し,夢を語り,成果と喜びを分かち合える企業創りの実現を経営理念としている。
3つの事業を通じて,どのように自社の価値を発信していくかを考えており,理念と同様に「このまちのくらしを,もっとやさしく,うつくしく」というモットーを大切にしている。自分自身も工事現場監督を行っているが,その中でも住民の方がどうやったらもっと,やさしくうつくしく生活できるかを常に考えながら提案している。
CSR活動といっても,全てボランティア活動というわけではない。例えば「やさしくうつくしい」住まいをつくる,これは,単純に何軒家を建てるかではなく,その家に住む人が環境に負荷をかけずに暮らしていくことになる。特別に新しいことをするのではなく,その事業活動がどのように環境に影響を与えるのかを考えている。
また,KPI,重点管理目標を記載したレポートを作成している。それとは別に会社の事業計画書を作っているが,このレポートが将来の会社の事業計画書になればよいと考えている。環境負荷削減を意識しながら自社の付加価値を地域住民に発信し,その目標を達成していきたいと考えている。
CSR活動の中で,5年前から地元の小学校で環境出前講座を実施している(年間60~100人の子どもたちが参加)。きっかけは,産業廃棄物を扱うという悪いイメージを払しょくしたいと考えたことであり,当時はCSRの位置づけではなかった。また,出前講座を行うことは,社員教育としての位置づけもある。
自社のステークホルダーは社員,取引先,お客様,地域社会,銀行,株主の6つであり,お互いギブ&テイクがある。お客様は分かりやすいが地域社会には何があるか。この点が,CSR活動に関して重要になる。例えば,地域からはインフラの整備,治安,教育と文化の伝承。企業からは納税,雇用,無くなっては困るという会社の存在価値。地域の繋がりを強めていくことで会社の付加価値を高めていき,ステークホルダーに発信していくことが重要であるから,CSRレポートは大切で,これによりお客様からの信頼を得ることができる。CSRを進めていくには、最初はトップマネジメントだと考えている。社員に実体験をさせて一緒にCSR活動を行う。それにより,業績が上がるのが見えるようになるといい。
CSVの話としては,現在,地域が抱える問題である「ごみ問題」に何か役に立てないかを考えている。地元のごみは100%北九州市で処理している。しかし,地域にごみ処理場がない,ごみの処理料金が高いといった課題もある。10年前から人口が減り,ごみは減っているがごみ処理料金は倍になっている。全体のごみ量の一部でも自社で処理できると,ごみ処理料金も減るし自社の売上もあがる。
何を行うにしてもコンセプトはモットーに帰着する。常に何か解決できることはないかと考える。その際に顕在化しているものもあるが,潜在化しているものに関しては提案することが必要である。将来は,地元に皆さんが集まるような場所をつくりたいと思っている。
最後に名刺交換、交流会を行いました。
地域活動に取り組んでいる参加者のみなさまの話に花が咲く様子が伺えました。