飲酒運転ゼロを目指して

東区の海の中道大橋で幼い3人の命が奪われた飲酒運転事故から、8月25日で15年がたちます。飲酒運転事故は減少傾向にあるものの、依然として悲惨な交通事故は後を絶ちません。今、私たちにできることを考えます。

 昨年、市内で発生した飲酒運転事故の件数は31件で、統計が残っている昭和40年以降、最も少ない数字でした。平成17年には年間309件発生していたことを考えると、大幅に減少したことにはなりますが、根絶には至っていません。
 飲酒運転は、極めて悪質で危険な犯罪です。市は事故を風化させることなく、飲酒運転をゼロにするための取り組みを進めていきます。

■ 飲酒運転は犯罪です

飲酒運転には、免許取り消しや免許停止など厳しい処分が科されます。車両の提供者、酒類の提供者、車両の同乗者など、運転者以外も厳しく処分されます。飲酒運転をしないことはもちろん、絶対に「させない」という意識を持つことも重要です。
 また、飲酒運転事故が起きているのは夜だけではありません。その4割以上が日中に発生しています。昨年の31件のうち、午前6時~午後6時に発生した事故は13件でした。前夜に摂取したアルコールが分解されずに残っていたことが原因で、20~39歳の若年層が約半数でした。「一眠りしたから」「風呂やサウナで汗を流したから」などで、アルコールが早く抜けるということはありません。

■ 飲酒運転をしない、させない、絶対許さない。そして見逃さない

危ない運転を見て飲酒運転かもしれないと思ったら、迷わず110番に通報してください。今年1月~5月末の飲酒運転の通報件数507件のうち、52件が検挙に至りました。通報が検挙に結びついています。
 飲酒運転が疑われる車には▽信号が青になってもなかなか発進しない▽ふらついて走行している▽急発進や急加速を繰り返している▽速度が異常に速い(または遅い)ーなどの特徴があります。
 このような車を見つけたら、110番通報して車の特徴と場所、進行方向を伝えてください。
 ※通報した人の氏名等を当事者に伝えることはありません。また、運転中の場合は、必ず停車してから電話をかけてください。

■ 関連イベント

市は、8月19日(木曜日)~25日(水曜日)午前10時~午後6時に、市役所1階市民ロビーで「生命(いのち)のメッセージ展」を開催し、飲酒運転事故などの犠牲者の等身大パネルや遺族のメッセージなどを展示します。また、飲酒運転撲滅への思いを込めた折り鶴を8月24日(火曜日)まで募集しています。折り鶴を同ロビーにお持ちください。
 ほかにも8月25日(水曜日)に飲酒運転撲滅大会が開催され、その模様はインターネットで配信されます。詳しくは、防犯・交通安全課へお問い合わせください。
 市民一人一人の強い意志で、飲酒運転を根絶しましょう。

■問い合わせ先/防犯・交通安全課 

電話 092-711-4061 

FAX 092-711-4059

アルコール分解には時間がかかります

体重60キロの男性がビール1杯(500ml)に含まれるアルコールを処理するのにかかる時間は、約4時間(女性は約5時間)です。深夜0時にビール3杯(1,500ml)を飲み終えた場合、12時間後の翌日正午までは、体内にアルコールが残っていることになります。睡眠時間や体調によっては、さらに時間がかかります。
 飲酒する場合は、当日の体調と翌朝運転を開始する時間を考慮し、アルコールの量を調整するなど翌日に影響しないよう十分注意してください。
 翌日アルコールが残っているかどうかは、自分だけの感覚では分かりません。運転前にアルコールが残っているか少しでも不安な場合は、絶対に運転しないでください。家族に送ってもらったり、公共交通機関を利用したりして、運転しないようにしましょう。

「被害者も加害者もつくらない」優しいまちへ

飲酒運転撲滅を目指し活動を続ける、NPO法人「はぁとスペース」(東区)代表の山本美也子さん(52)に話を聞きました。
 車いすマラソン選手の夫との生活を通じて、社会のモラルやマナーを改善したいと、平成21年に「はぁとスペース」を立ち上げました。翌年、粕屋町の路上で高校生だった長男を飲酒運転の事故で亡くしてからは、飲酒運転をなくすための活動も行っています。
 活動を始めた当初は、チラシを破られたり、「飲食店をつぶす気か」と暴言を吐かれたりしましたが、「私たちも同じ気持ちです」と飲食店や酒造メーカーの皆さんが応援してくれました。とても心強かったです。
 昨年まで毎月25日に行っていた啓発活動には、地域の人たちはもちろん、東区役所や県警の皆さんも手伝ってくれるようになり、多い日には100人を超えることもありました。
 講演会は1200回を超え、子どもたちに配布したステッカーの数は20万枚を超えました。当時小学生だった子どもたちも立派に成長し「頑張ってください」と声を掛けてくれます。「飲酒運転が犯罪だと教えてくれてありがとう」と手紙をくれた子もいました。ゼロが当たり前という彼らの成長は頼もしく、とてもうれしく思います。

 通報は社会の優しい見守り活動です。少しでも怪しいと思ったら、ためらわず通報してください。その行動が事故を未然に防ぎ、誰かの命を救うかもしれません。
 この10年で福岡は明らかに変わりました。市民の皆さんの飲酒運転への意識の高さは、日本一だと感じます。この誇れる意識や官民一体となった活動を、全国に広げたいと思います。



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