新しい風―愛されるパブリックアートに

市制130周年・市美術館40周年を記念して、インカ・ショニバレCBE氏が制作した大型屋外彫刻《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》が、市美術館公園口に設置されました。市の未来を象徴する、福岡のまちの新しいシンボルです。

 一昨年リニューアルした市美術館に、大型屋外彫刻《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》が仲間入りしました。
 ウィンド・スカルプチャーは「風の彫刻」という意味で、柄は市美術館が所蔵する日本製の布「アフリカンプリント」を基にデザインされています。布が風に翻る姿は、古くから海に開かれた福岡市の交流の歴史や、帆を張り、風を受けて前進する市のイメージと重なります。
《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》高さ7m、幅2.5m、奥行2m。
■ 公共空間の芸術作品・パブリックアートとして
アジアの染織などが専門分野の岩永館長の写真
市美術館・岩永悦子館長に話を聞きました。
 市美術館で平成26年に開催した特別展『更紗(さらさ)の時代』で、インド更紗の500年の歴史とともに、「アフリカンプリント」と呼ばれる布を紹介しました。
 アフリカンプリントとは、アフリカで現在も生産され、服地に用いられているプリント綿布のことで、原色を多用する鮮烈な色使いや奇抜で大きな柄が特徴です。ショニバレはこの布を作品に使用することで知られています。
 この布、実はアフリカが発祥ではありません。インド更紗を模してプリント布を製造していたオランダが、アフリカに輸出したことが始まりです。アフリカ人の好みに合わせ、色鮮やかなデザインに変わっていきました。日本でも昭和30~50年代を中心にアフリカンプリントが製造・輸出されていました。
 ショニバレは、自身のルーツでもあるアフリカを象徴する布が、複雑で多様な文化が入り混じって誕生したことを知り、この布を積極的に作品に用いるようになりました。人種、性別、階級、文化、国境等に対するメッセージを発信し続けています。
 当館にある日本製アフリカンプリントの中から、彼がこの柄を選びました。この作品は、日本とアジア・欧州・アフリカをつないで、多文化交流の歴史とこれからの未来を表しています。古来、多様性を受け入れ交流によって発展を続けてきた福岡市そのものではないでしょうか。

 複雑に波打つしなやかな布の形状は、ショニバレが実際に布に風を当てて得た形を基に作られました。布を立てることはできませんが、ポリエステル樹脂という工業素材を使用することで、布の軽やかな形状を再現し、重力に逆らうかのような彫刻を実現させました。この作品は、不可能を可能にする力、そしてしなやかさと強さを秘めています。
 コロナ禍で英国の工房での作業がストップして完成が大幅に遅れ、輸送中には欧州の主要港が渋滞し到着も遅れました。幾多の困難を乗り越え、船ではるばる海を渡ってきたのです。美術館に作品が到着した時の胸の高鳴りは、今も忘れられません。

 コロナ禍による休館で、芸術の果たす役割や美術館の存在意義を改めて考えさせられました。この作品は、大濠公園でウオーキングを楽しむ人、子どもと散歩する人、たくさんの人の日常に溶け込んでくれることでしょう。誰もがいつでも触れられるパブリックアートとして、市民の皆さんの心に安寧をもたらす存在になってくれることを期待しています。

インカ・ショニバレ CBE プロフィール

1962年英国生まれ。ナイジェリアにルーツを持つ英国在住の現代美術作家。2019年に大英帝国勲章三等爵位(CBE)を受ける。

カフェ・レストランから眺める
 市美術館にはホテルニューオータニが運営するカフェとレストランが併設されています。大濠公園に面した1階のカフェ「アクアム」では、軽食やデザート、ドリンク類などが気軽に楽しめます。この夏、屋外彫刻公開を記念して、オリジナルソフトクリーム「ウィンド大濠」(770円)が登場しました。フラッペなどの氷菓もおすすめです。

 また、2階のレストラン「プルヌス」には、冷麺御膳(2,420円)など夏季限定メニューもあります。彫刻のある風景とともに、食事をお楽しみください。


市美術館の展示と催し

「キングダム展」開催

【日時】 8月3日(火曜日)~9月26日(日曜日) 

【場所】 特別展示室

「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載中の人気漫画『キングダム』の原画展「キングダム展―信―」が開催されます。
 第1話「無名の少年」から第438話「雄飛の刻(とき)」までのストーリーの中から、仲間や敵との出会いと別れを糧に成長を遂げる主人公・信を中心に構成します。原作者の原泰久氏自らが監修し、400点を超える直筆の生原画や、本展のために描き下ろされたイラスト約20点を展示します。
 会場では、展覧会のオリジナルグッズを販売するほか、チケット(有料)を持っている人全員に、卓上カレンダーを進呈します。また、毎週金・土曜日午後5時半以降には、各日先着100人に「山の民」のお面をプレゼントする「山の民ナイト」を実施します。詳しくは、ホームページ(「福岡 キングダム展」で検索)をご覧ください。


コレクション展示室の催し

【料金】 企画展・コレクション展(共通)=一般200円、高大生150円、中学生以下と市内に住む65歳以上は無料

夏休みこども美術館「これなあに?謎がいっぱい、古い美術

【日時】 開催中~9月12日(日曜日) 

【場所】 古美術企画展示室

「どうやって使うの」「誰を描いているの」など、古美術には不思議な「謎」を持つ作品があります。作品をよく見て考えてみると、面白い気づきや発見があるかもしれません。

和田三造《博多繁昌の図》ができるまで

【日時】 8月3日(火曜日)~10月17日(日曜日) 

【場所】 近現代美術室

和田三造(1883-1967)の代表作の一つ《博多繁昌(はんじょう)の図》は、江戸時代初期に貿易都市としてにぎわった博多の街を空から眺めるような作品です。和田が残した膨大な習作の一部を紹介し、大作の制作過程を探ります。

ミュージアムショップ オリジナルグッズ

1階ミュージアムショップでは、当館所蔵品をモチーフにしたオリジナルグッズや展覧会図録をはじめ、博多人形等の伝統工芸品などを販売しています。

【開館時間】 午前11時~午後5時半(土日祝日は午前9時半から、金・土曜日は午後8時まで)

 博多人形 絵付けシリーズ Master Road(マスターロード)

子どもから大人まで、気軽に人形の絵付け体験ができる素焼きの博多人形「マスターロード」。干支(えと)のほかに、レオナール・フジタの絵画をモチーフにした「フジタの猫」(1,760円)、松永コレクションから《地獄草紙断簡・勘当の鬼》をモチーフにした「勘当の鬼」(1,980円)があります。創業100年を越える博多人形工房「中村人形」が制作・監修しました。水彩絵の具や色鉛筆などを使って、思い思いの色で自由に彩色してください。
博多人形・寅(とら)素焼き(1,980円)

仙崖さんのゆるかわLINE(ライン)スタンプ


仙崖義梵(せんがいぎぼん・1750‐1837)は、日本で最初の禅寺・聖福寺(博多区)の住職を務めた禅僧です。仙崖義梵の当館所蔵作品を用いたLINEスタンプ(120円)が登場しました。ラインストアから購入できます。「仙崖さんのゆるかわスタンプ」で検索してください。

市美術館

【場所】 中央区大濠公園

電話 092-714-6051

FAX 092-714-6071

【開館時間】 午前9時半~午後5時半※金・土曜日は午後8時まで(入館は閉館の30分前まで) 

【休館日】 月曜日(祝・休日の場合は翌平日)


バーベキュー・キッチンカー・マルシェ
この夏は舞鶴公園へ

舞鶴公園(中央区城内)には、広大な芝生が広がる三ノ丸広場があります。この夏、広場に市緑のまちづくり協会が運営する新スポットが登場しました。自然の中で、楽しい時間をお過ごしください。

バーベキューガーデン

【開館時間】 毎日午前11時~午後9時半

家族や友人同士など、用途に合わせて選べるプランがあり、手ぶらで来てもバーベキューが楽しめます。ホームページ(「舞鶴公園BBQ」で検索)で予約してください。
バーベキュープラン3,480円~。感染症対策を講じて、11月頃まで営業予定
キッチンカー

【開館時間】 土日曜・祝休日午前10時~午後5時

ホットドッグ、ケバブサンド、ベトナム料理、焼きそば、スープ、ソフトクリーム、クレープなどバラエティに富んだキッチンカーが週替わりで登場します。

みどりのまちマルシェ

有機・無農薬野菜、米、畜産加工品、焼き菓子等を販売します。
マルシェは8月28日(土曜日)、9月25日(土曜日)、10月23日(土曜日)、11月3日(水曜日・祝)午前10時~午後2時に実施
記事に関する問い合わせは、舞鶴公園管理事務所(電話 092-781-2153 FAX 092-715-7590)へ。

プレゼント

 市美術館のマスコット「こぶうしくん」とロゴマークを使ったオリジナルグッズセットを3人に、《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》の公開記念オリジナルマスク(非売品)を5人にプレゼントします。
 はがきに住所、氏名、年齢、希望の品(グッズかマスク)と「最近幸せを感じたこと」を書いて8月8日(必着)までに広報課「市美プレゼント」係(〒810-8620市役所10階)へ。当選者にはプレゼント引換券をお送りします。





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