福岡市美術館 アートのミカタ<最終回>

福岡市美術館が所蔵する約1万6千点のコレクションの中から、えりすぐりの逸品を紹介します。個性豊かな学芸員が、それぞれの見方で解説します。
《青白磁刻花花文輪花鉢》
青白磁刻花花文輪花鉢
景徳鎮窯 北宋時代12世紀
 中国を代表する窯業地・景徳鎮窯(江西省)で900年ほど前に焼かれた鉢です。真っ白な磁土を使った白磁なのですが、全体に掛けられた透明のうわぐすりが鉄分を含むため、ほんのりと青色を帯びているのです。
 これがなんとも清浄感に満ちた水色で、見るほどに心が洗われるようです。内側にはササッと迷いのない線で花文様が彫り表され、その線にたまったうわぐすりが、文様に絶妙な陰影を与えています。
 大きさは口径19・6センチ、高さ7・5センチ。ちょっと浅めのラーメン鉢といったところでしょうか。重さは347グラムで缶ビール1本分ぐらいです。ややずっしりくる感じを想像されるかもしれませんが、実際は驚くほど軽く感じます。両手のひらで持ち上げるとフワリと上に浮き上がってしまうかのよう。それだけ薄く、手触りよく、繊細に作られているのです。
 かくも優れた品質の器が、大量に生産されたのだから驚きです。培われてきた製陶技術や研ぎ澄まされた美的センスが、随所に見え隠れしています。
・後藤恒
 ■問い合わせ先/市美術館(中央区大濠公園) 電話 092-714-6051 FAX 092-714-6071

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