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これは湖州鏡という鏡です。中国の宋代(960〜1279年)に作られました。「湖州」とは、鏡の製作地を示しています。宋と活発な交流があった博多やその周辺では20枚ほどの出土例があり、それほど珍しいものではありません。では、なぜここに展示されているのか。それは、通常の湖州鏡とは違った部分があるからです。 肉眼では非常に分かりにくいですが、鏡背面(顔を映す面の裏側)に、先のとがった道具で、文字と、それを囲う四角い線が二重に彫られています。文字は「四五六・六七八九十」と、漢数字が並んでいます。線刻文字の鈕(ちゅう)(紐を通す突起)をはさんで反対側には、鏡の製作地などを示す文字が四角い枠とともに鋳出(いだ)されており、それを真似て後から文字を彫ったと考えられます。 誰が何のために彫ったのかは分かりません。何か意味があったのか、はたまた単なる遊び心か。いずれにしても、中世に生きた人の動きが生々しく感じられる資料といえるのではないでしょうか。 |