現在位置:福岡市ホームの中の健康・医療・福祉の中の健康・医療・年金の中の福岡100から福岡100食サミット(トークセッションⅡ「食×観光」)
更新日: 2020年7月8日

福岡100食サミット

 開催日:21日 場所:Fukuoka Growth Next

100歳まで生きるのが当たり前になるといわれる時代。
そのなかで、生活にもっとも密着し、重要な役割を果たすのが「食」です。
これからの「人生100年時代」において、「食」の可能性を考える場として、先日
Fukuoka Growth Next福岡市中央区大名)で、「福岡100食サミット」が行われました。
スタートアップ、観光、健康、高齢者という4つの切り口で、各テーマに造詣が深いゲストを迎えて行われたトークセッション、事前に募集し選ばれた「#がめ煮つくろう」レシピコンテストの表彰式など、貴重な話題が盛りだくさんだったイベントの模様をご紹介します。



トークセッションⅡ「食×観光」

●モデレーター 
 (株)インアウト・ツーリズム研究所 代表取締役 帆足 千恵氏
●パネリスト     
 (株)ぐるなび 九州沖縄セクション セクション長兼福岡営業所長 大塚 史也氏
 (株)JTB福岡支社 営業二課長 加藤 大輔氏

(株)インアウト・ツーリズム研究所代表取締役帆足千恵氏の写真おいしい食べ物が多い「食都」として国内外から注目される福岡。インバウンド、飲食情報サービス、旅行業界のプロフェッショナルたちが、観光資源としての「福岡の食」の存在感や、競争力向上に向けた、新たな発想やアイデアを語り合いました。モデレーターを務めるのは、(株)インアウト・ツーリズム研究所 代表取締役の帆足千恵氏。帆足氏は、タウン誌《シティ情報ふくおか》で、旅行情報誌制作に約4年間従事し、その間、約250日、世界60エリアを取材した経験から、日本をもっと世界へ発信すべく2001年よりインバウンド事業をスタート。現在は福岡・九州と世界を、旅による交流で活性化するために、インバウンド、アウトバウンドの企画・調査・編集・プロモーションなどを行い、「やまとごころjp」にてコラムなども執筆しています。

帆足:30年ほど前、《シティ情報ふくおか》の編集部時代に、門司から鹿児島まで、国道3号線沿いでラーメンがどう変わっていくかを食べ歩く“麺街道”という企画の取材をしたことがあります。その時に実感したのが、「どこの地域にもおいしいものがある」ということです。その後、世界各地を取材する機会を得て、改めて気づいた日本や九州・福岡の魅力を世界に発信したいと思いました。どこの地域に行っても、食は大変重要な要素です。今日は、経験豊富な「ぐるなび」の大塚さん、JTBの加藤さんと一緒に、観光資源としての「福岡の食」をテーマに話をしていきたいと思います。


福岡の食は国内外に誇る観光(福岡に来てもらうための)コンテンツ



福岡の「食」の写真(ラーメンや,水炊き,もつ鍋,すし等)帆足:おいしいものがたくさんある福岡の食は、福岡市民にとっても、自慢ですよね。どこに行っても思いますが、食は生活文化そのものです。

先日、東京の友達に「かしわ飯」を勧めたのですが、その人は全然かしわ飯のことを知りませんでした。地元では当たり前のことが、他県の人には、まったく知られていないということはよくあります。

私は、海外からの旅行者を誘致するプロモーションや、MAPやHPなどの受入環境を整備するインバウンドビジネスをしています。去年10月には「ワールドカップラグビー2019日本大会」もあり、ヨーロッパをはじめ、いろんな国から多くの人が日本に来てくれました。しかし、九州も福岡も、世界的知名度はまだまだ高くありません。そんななかで、うれしいニュースが飛び込んできました。CNNトラベルの「2019年に訪れるべき19の場所」で、福岡が“フーディ・パラダイス(グルメ・パラダイス)”として、日本で唯一紹介されたのです。私たちもそうですが、旅行に行くときは、観光スポットだけでなく、そこで何が食べられるかをチェックしますよね。

ここで、食という観光資源で有名な地域の例をいくつかご紹介したいと思います。海外では、スペインのサン・セバスチャンが“美食の街”として有名です。ここは、JTBの加藤さんも行ったことがあるということなので、後ほど話を聞かせてもらいたいと思います。日本では、新潟県の村上市が「酒と鮭のマリアージュがすばらしい」ことで知られています。旅行業界では、いまその土地の食材や食文化の魅力で観光客を誘致する“ガストロノミーツーリズム”が活発で、ほかに、大分県佐伯市と宮崎県延岡市の「東九州バスク化構想」、新潟を中心とした雪国観光圏では、自分たちでキノコを採り、シェフに教わりながら、調理して食べるという、外国人限定の体験企画などもあります。

それでは、パネリストのお二方に、福岡の食には、実際にどんな魅力があると思うかを、それぞれの経験と仕事上の関わりも踏まえて、お聞かせいただければと思います。



(株)ぐるなび九州沖縄セクションセクション長兼福岡営業所長大塚史也氏の写真大塚:ぐるなびの大塚です。私たちの会社はもともと駅中交通広告の会社でした。その時、駅の地下にタッチパネル式の案内板を設置していたのですが、そのなかで一番検索されていたのが飲食店でした。会社が創業した23年前は、ちょうどYahoo!が創業した年で、インターネットの普及が始まった頃です。そこで、インターネットを使ったメディアを作ることで、チェーン店や駅近の店舗が圧倒的に有利といわれていた外食業界に一石を投じることができるのではないか、と始めたのが「ぐるなび」です。現在は、検索サービスだけでは外食事業の力にはなれないと、飲食店のコンサルティング業務をメインに、経営者のパートナーとして、メニュー考案や人材育成などにあたっています。

ここから、自己紹介を兼ねて、僕に関わる数字をいくつか紹介します。

まずは「8」。僕は茨城県出身なのですが、茨城県は魅力度ランキングで「8」年連続最下位です。そんな街から3年半前、福岡にやって来ました。

次に「300」。これは、僕が1年間に行った飲食店の数です。どんな店が流行っていて、どんな店が負けているか、それを調べるために行ったのですが、おかげで「福岡の食はめちゃくちゃおいしい」と実感することができました。それと同時に、福岡の食に関して、知らないことが多いということにも気づきました。つまり、福岡の食の魅力を広められる余地は、まだまだあるということです。

また、福岡の飲食店のすごさ、それは「1.5」です。福岡の刺身は、他の地域と比べて1.5倍分厚いのです。理由は、他のエリアに比べ、福岡では家賃などの諸経費が比較的安く抑えられるからではないかと思っています。
ほかにも、福岡市のデータ(FUKUOKA FACTS)によると、1000人あたりのレストランの数が東京、パリ、ミラノに続き、第4位。ミシュランガイド公式リストで県別の星付き料理店・レストランの数も、東京、京都、大阪に次いで4位。

ということで、福岡の食(飲食店)は、やはりすごい。そして、ここで一番大事なのは、飲食店は街のプレゼンテーターになれるということです。なぜなら、観光客の飲食店への滞在時間は平均約2時間で、観光案内所などに比べて断然長いからです。
ですから、飲食店が潤い、街のプレゼンターとしての役割をもっと高めていければ、福岡の魅力をより効果的に発信できるのではないかと思っています。



(株)JTB福岡支社営業二課長加藤大輔氏の写真加藤: JTBの加藤です。私は、ルックJTBの店頭業務から、修学旅行の添乗員、職場旅行の担当、さらに本社海外旅行部で飛行機のチャーター便を担当するなど、JTBで約20年間、旅行業務に携わってきました。

私が人に旅行を提案するとき、一番気をつけているのは、泊まる場所と、そこで味わえる食べ物です。旅で一番記憶に残るのは、「あれがおいしかった」「あの人の感じが良かった」という感覚的なものだからです。そのなかでも特に「あそこのあれがおいしかった」という舌の記憶はとても大切です。そのため、私も旅先では日ごろから、いろんなものを食べるようにしています。

福岡の食の魅力について、私が感じているのは、福岡には黒豚しゃぶしゃぶも、佐賀牛も、関サバも、馬刺しも、地鶏やチキン南蛮も、九州中のおいしいものがあるということです。もちろん、水炊き、明太子、ラーメンといった福岡ならではのおいしいものもいっぱいあります。

例えば、イタリアに行く場合は、ローマにも、ミラノにも、ベネチアにも行くという人がほとんどです。移動距離としては、約400キロ離れていますが、私たちが海外に行くとは、そのくらいの距離は平気で観光しています。パリと世界遺産のモンサンミッシェルも同様です。

福岡から鹿児島までは直線距離で240キロくらいなので、福岡空港に到着する海外観光客のなかには、福岡だけにとどまらず、鹿児島、長崎、宮崎、もしかしたら広島くらいまで行く人が多いのではないかと思います。とはいえ、近県のおいしいものがほとんどそろう福岡は、食べ物においても非常にアドバンテージが高い街だといえます。


帆足:サン・セバスチャンの話も聞かせていただけますか。


加藤:サン・セバスチャンは、とにかく美食の街です。人気のレストランも多く、スペインで7つしかないミシュランの三ツ星レストランのうち、3つがこの街にあります。ただ、そういった高級レストランだけでなく、手ごろな金額で楽しめるバルが多いのも特徴です。ですから、昼はそういった三ツ星レストランに行って、夜は1000円~2000円でワインとタパスと呼ばれる小皿料理を楽しめる地元のバルを食べ歩きするというコースが人気です。

また、食べるだけでなく、料理教室などの体験もできます。サン・セバスチャンはフランスにも近く、車を使えばボルドーまで2時間半くらいで行けるので、グルメ好きの人には、サン・セバスチャンとボルドーをセットにしたルートなども案内しています。
 

帆足:サン・セバスチャンは、高級レストランから親しみやすいバルまで、いろんなレベル感の飲食店を楽しめるところが魅力的ですよね。先ほど大塚さんの話で、旅行者にとって、「飲食店はその土地の情報を得る絶好の場所だ」という話がありました。確かに、食の拠点である飲食店が、その街の印象を決めることは多くあります。また、福岡は食都だといわれていますが、その魅力はまだまだ知られていません。だから、もっと世界の人に知ってもらい、国内外からわざわざ来たくなる街にしたいですよね。



―国内外に福岡の食の魅力を発信するにはどうしたらいいか?


体験や多様性,特別感,地産地活をイメージした写真
帆足:食の魅力を発信しようと考えたときに、私は3つのキーワードがあると思います。

1つ目は「体験」。さきほど、ガストロノミーツーリズムで、自分たちで食材をとって、食べるという話をしましたが、やはり料理教室など、地元の人と一緒に体験できるものがあると食はより魅力的になります。私のインバウンド仲間の一人は、宮崎で家庭料理教室をしていますが、シンガポールから来たお客さんに、チキン南蛮と冷や汁の作り方を教えたら、「チキン南蛮は家庭でも食べられるのですね」と感動されたそうです。

2つ目は「多様性」。西新の「極味や」では、イスラム教徒の人も食べられるハラルのもつ鍋を提供しています。ベジタリアン、ビーガン、小麦粉を食べない人など、食の志向が多様化している時代、そういう情報やサービスを提供することも大切だと思います。

3つ目は「特別感」「ここにしかない感じ」。例えば、福岡では牡蠣小屋が人気ですが、東京の人からすると、「牡蠣小屋って何ですか」というくらいの認知度しかありません。福岡では唐泊恵比寿牡蠣(からとまりえびすかき)も有名なので、ここでしか食べられないもの、ここでしか体験できないことを一緒に楽しんでもらうことが、観光の活性化につながるのではないでしょうか。

それでは、加藤さん、国内外に福岡の魅力を発信するのに必要なことは何だと思いますか。


加藤:質問に対する明確な答えはありませんが、1つ言えることは、福岡は海外と直行便が繋がっている、だから海外からも人が来やすいということです。

韓国、中国、台湾、香港、シンガポール、ベトナム、インドネシア、マレーシアなど、特にアジア各国との便は多いですね。欧米豪に関していえば、直行便が出ているのは唯一、フィンランドのみですが、直行便があるということは、直接外国人が来るということです。これをもっと活かすべきだと考えています。

最近、福岡にヨーロッパからの観光客が増えたと思いませんか。福岡に来る外国人観光客の約3割が、このフィンランド航空に乗って福岡へ来ています。ですから、この直行便を永続させるためにも、みなさんに、この飛行機にぜひ乗っていただきたいと思います。なぜなら、私たち自身が海外を知らないと、日本の本当の良さをきちんと外国人に伝えることはできないからです。魅力を発信する手段の一つとして、私たちもそういう貴重な直行便を積極的に活用しながら外の世界を見て、外国から観光客にたくさん来てもらえる環境を作っていくことが必要だと考えています。




帆足:確かに、来てもらうだけではなく、相互に行き来することで、観光も活性化されるという面はありますね。大塚さんはいかがですか。


大塚:海外旅行者がよく見る「トリップアドバイザー」という情報サイトに、「日本のベストレストラン30」というランキングがあります。このなかに福岡のお店は何店舗入っていると思いますか。実はゼロです。福岡には、すばらしいレストランがこんなにあるのに、信じられませんよね。

ただ、理由は明白で、単に知られていないだけです。そして、「70.7%」という数字。これはオープンして5年以内に閉店する飲食店の割合です。福岡の大きな魅力である食(飲食店)が危機的状況であることが分かります。

僕は、飲食店のプレゼンターはシェフだけではないと思います。お客さんもその店のプレゼンターになりえるのです。そこで、僕がみなさんと一緒に進めていきたいのが「食がつくる、また来たい街・福岡」です。食を目的に、福岡にまた来たいというリピーターを、みんなと一緒に作っていきたいのです。観光客が店のリピーターになるのか、と疑問に思う人もいるかもしれませんが、アンケートをとって調べたところ、「複数回同じ店を利用したことがある人」は56%。「お店に季節限定のメニューがあるとまた来たくなる人」は85%。「季節ごとの旬のメニューをもっと知りたい」は79%もいました。やり方次第で、リピーターを増やすことは、間違いなく可能です。

そのために必要なのは、「失敗させない」こと、「魅力や価値を正しく深く知ってもらう」こと、「続きを見せて、また来させる」ことの3つです。

例えば、「なぜ福岡のうどんは柔らかいのか」「なぜ福岡のサバは生で食べられるのか」「なぜ福岡の醤油が甘いのか」「なぜ福岡は優れたお茶がとれるのか」。

そういった、県外の人が知らない素朴な疑問を、積極的に伝えていくことが重要だと思います。そもそも、うどん発祥の地は福岡です。福岡は商人の街です。だから、忙しい人が多い。そこで、注文されたらすぐに出せるように、うどんを1回ゆでて、それを湯通しするだけで出せるようにした。それが、博多うどんの柔らかさのルーツだ、ということちゃんと説明しないと、博多うどんの良さが正しく伝わりません。

また、日本には47都道府県があって、その地域ごとに違う食文化がある。それは、すべて地理や、気候、食材、歴史背景に関係しています。そこをしっかり伝えることで、おいしさの感じ方は2倍にも3倍にもなると思います。

先ほど帆足さんの話にあった体験や、多様性もそうです。また、春夏秋冬の旬を使うことで、また来たいと思わせることもできます。そして、「失敗させない」ということが、何より重要です。

そのために、僕たちが作ったのが「目利きグルメガイド」です。「ぐるなび」は本来広告会社ですが、これには、自分たちが納得しておすすめできる店しか載せていません。日本語版と英語版があって、現在ホテルや観光案内所に設置しているので、ぜひ一度手にとって、よかったら観光客にも伝えてください。


帆足:今、お二人からいろんな提案がありましたが、それでは、私たち一人ひとりにできることは何だと思いますか。


大塚:まずは、自分の周りにいる友達に話すことですね。それから、インスタなどで写真を上げるときに、「なぜ福岡の福岡で柔らかいうどんが食べられるのか」という話を添えてアップするというのもいいと思います。

 
帆足:さきほどトリップアドバイザーの話もありましたが、トリップバイザーは日本人も外国人も見ますよね。


加藤:私も英語をしゃべれるほうではないので大きなことは言えませんが、Twitterやインスタグラムなど、SNSをしている人が、英語でアップするのと、日本語でアップするのとでは、読む人の絶対数が違うと思います。


帆足:そうですね。私もインスタグラムで写真を上げるとき、「#fukuoka」と英語で入れるだけで、写真を見てくれる海外の人が増えることを実感します。地道なことですが、そういうことなら、市民一人ひとりにもできますね。また、食に限らず、道を聞いたり、話をしたりする人の雰囲気が、街の印象を決めることも少なくありません。幸い、福岡の人はおせっかいな人が多いので、みなさん一人ひとりが福岡のガイドという感覚で、観光客に接することも、食で福岡を活性化することにつながるかもしれません。

ぐるなび大塚史也氏とインアウト・ツーリズム帆足千恵氏とJTB加藤大輔氏が並んだ写真

セッション後の質問コーナー。会場から「70%以上の飲食店が、開業から5年以内に廃業する飲食店の理由は、店側の情報発信不足以外にもあるか」という質問が出ました。

それに対して、「いろんな要因があるが、第一に、人口の減少で、飲食業界は、胃袋の取り合いになっている。そのうえ、消費税が上がって、食材の仕入れ値も上がっている。また人材不足という現状も大きい」とぐるなびの大塚氏。

一方、JTBの加藤氏からは、「海外と比べても、福岡は食べ物が安すぎる。以前は、日本より物価が安い国も多かったが、今は経済状況も変わり、日本より物価が高い国も多い。それなのに、私たち日本人はいまだに“500円でお昼が食べられる”という金銭感覚のまま。そのため、飲食店は、材料費や人件費は上がっているのに、料理の値段は上げられない、というギャップに苦しんでいるのではないか」という意見が出ました。

「確かに、外国人の友人からは、3500円の食べ飲み放題で、こんなにおいしいものが食べられるなんて、日本は不思議な国だと言われる」とモデレーターの帆足氏。「コストがかかっているものには、ちゃんとした対価を払うという気持ちを、私たち自身も持っていかなければならない」と付け加えました。