乱用される薬物には,様々な種類のものがあります。
また,罪悪感や恐怖感を感じにくいよう,別の名前で呼ばれているものもありますが,体に与える悪い影響は変わりません。
薬物に合法も安全もありません。正しい知識を持ちましょう。
有機溶剤とは、揮発性で非水溶性の物質をよく溶かす化合物の総称です。私たちにもっとも身近なものとして、塗料用のラッカー・シンナーや接着剤のボンドなどがあり、誰でも簡単に手に入れることができます。
これらの有機溶剤を本来の目的以外に使用すると酩酊感や興奮がおこります。しかし、恒常的な摂取は脳を侵し、失明や難聴などの障害を一生残し、精神の異常まできたします。また急激な摂取は突然の死をもたらすことさえあります。
覚せい剤には、メタンフェタミンとアンフェタミンがあります。これらを摂取すると、一時的にとても高揚した気分になりますが、薬の効果が薄れるにつれ、不安と狼狽、混乱が一気におとずれます。乱用を続けると、こうした強烈な高揚感と混乱を繰り返すことになるため、猛烈な疲労感といらいらにおそわれ、また覚せい剤に手を出すことになります。
そのうち慢性的な精神症状として、幻覚や幻聴、幻視、幻臭など五感に異常が現れます。続いて妄想、不安、不眠、鬱へと移行してゆきます。また、この頃になると、覚せい剤を摂取していないにも関わらず、その時と同様の感覚がよみがえったり、禁断症状のように突然不安感や幻覚に襲われるようにもなります。これをフラッシュバックといい、薬物をやめた後ですら、精神に異常を来す原因となっています。
大麻を摂取すると、五感に異常が起こり、いつもより感覚が鋭くなったような錯覚に陥ります。その状態には独特の心地好さやリラックス感があり、からだもほぐれるような気分になります。しかしそれは真のリラックスではなく、ただやる気がなくなったり、物事がどうでもよくなる、などの投げやりな気分になっているに過ぎません。
大麻にはそれほどの依存性がないとの誤解から、繰り返し乱用する人も多くみられます。 しかし慢性的な摂取は、徐々に精神に障害を及ぼします。最初は情緒不安や集中力、忍耐力の低下、自発性のなさなどの障害ですが、それらは幻覚や妄想の引きがねとなり、常に朦朧とした意識状態に陥ったり、うつや偏執病的症状が現れてきます。
こうなると、ちょっとした刺激や、もしくはまったく何の理由もなく、突然恐怖にかられたり、錯乱を引き起こしたりもします。また、長期乱用者には知的障害も起こることが報告されており、小学生程度の読み書き、計算しかできなくなるケースもあります。
コカインを摂取すると、いわゆる「ハイ」な感覚に包まれます。ハイとは、極めて幸福な感覚で、やる気に満ち自信にあふれた人物になったような気持ちになることです。しかし、依存性がたいへん高いこの薬は使用量もどんどん増え、アッと言う間に中毒者へとなってゆきます。
薬の効果が切れると、不眠や疲労困憊、焦燥感、鬱などの症状が始まり、妙に多弁になったり、何かをせずにはいられないような衝動(例えば椅子から立ち上がったりまた座ったりといった無意味な行動)にかられます。この衝動はたいへん脅迫的なもので、自分で止めようとしても止められません。
乱用の繰り返しによる慢性的な症状としては、幻覚や思考の異常、精神錯乱、そしてコーク・バグと呼ばれる特殊な感覚が起こります。コークとは「コカイン」、バグとは「虫」の意味で、日本語では「蟻走感」と呼ばれています。その名の通り、体中を小さな虫に這い回られるような気味の悪い感覚です。ことに皮膚と筋肉の間に虫が走る感覚がし、皮膚が裂けるまでかきむしらずにはおれない状況に陥ります。
こうした症状が常に繰り返されるようになり、まともな精神状態を保つことが難しくなってきます。最終的には錯乱に陥り、完全な精神障害を受けることになるのです。
向精神薬とは睡眠薬や鎮静剤などの総称で、バルビツール酸という成分を含む医薬品をさしています。もともとは不眠やいらいらなどをなくすための薬ですが、これらも乱用すれば麻薬となります。
向精神薬を乱用すると酩酊感が得られます。からだの緊張をときほぐし、リラックスした気分をもたらすのです。しかし乱用が重なると慢性的な倦怠感があらわれ、筋肉の運動機能も低下してまともに歩けなくなってゆきます。感情は不安定で妄想も現れ、突然凶暴になったりもします。
MDMAとは、覚せい剤と似た化学構造を有する薬物で、覚せい剤のような興奮作用と、LSDのような幻覚作用を持つ化学薬品から合成された錠剤型の麻薬であり、「麻薬及び向精神薬取締法」の規制の対象となっている違法薬物です。
MDMAは、覚せい剤と同じような興奮作用と、LSDのような幻覚作用を持っており、脳や神経系を破壊するなどの悪影響があります。また、特に強い精神的依存症があり、乱用を続けると錯乱状態に陥るほか、腎・肝障害や記憶障害などの症状が現れることがあります。
危険ドラッグとは,覚醒剤や大麻に化学構造を似せて合成された物質などが添加された物です。
ビデオクリーナー,芳香剤(アロマ),観賞用植物,ハーブ,お香などを装い販売されているものがありますが,人体への使用により危害が発生するおそれがあります。
危険ドラッグの使用により,中毒等の健康被害や事故(死亡例を含む)が発生しています。
さらに,危険ドラッグの使用をきっかけに麻薬や覚醒剤の使用に発展したと思われる事例もあり,危険ドラッグを通じて薬物乱用に対する罪悪感や抵抗感が薄れる,あるいは,より強い刺激を求める欲求が生じることで,麻薬や覚せい剤等へのゲートウェイ(入り口)となる危険性が高く問題となっています。