中央区人権啓発連絡会議だより こうろ 第33号 おもて面 発行/中央区人権啓発連絡会議 事務局/中央区総務部生涯学習推進課 電話 718-1068 ●心がモヤモヤ「マイクロアグレッション」 私もしてしまうかも? ほめたつもりの小さな攻撃  「お箸の使い方が上手ですね!」  「そうですか。ありがとうございます・・・。」  友達の紹介で会った外国人との会話のひとコマです。  こちらはほめたつもりですが、相手は微妙に困ったような顔で、あまり嬉しそうではありません。  そんな経験はありませんか?  悪気や不快にさせる意図は全くないけれど、何気ない言葉や行動で相手を微妙に傷つけてしまうことを「マイクロアグレッション(小さな攻撃)」といいます。  冒頭の場面、言われた側は「日本に住んで随分長いんだけどなぁ・・・」と戸惑い、モヤモヤしているのかもしれません。  この「マイクロアグレッション」は、誰でもしてしまう可能性があります。  それは、私たちには子どもの頃から形成されてきた「無意識の思い込みや偏見(アンコンシャス・バイアス)」というものがあるからです。  外国の人に「お箸が上手ですね」とほめる心には、「外国の人はお箸をうまく使えない」という、自分でも気づかないうちに根付いてしまった偏りのある感じ方・考え方があるのかもしれません。  このような思い込みは、誰もが持っているものなので、自然にそれが言葉や行動に出てしまい、「マイクロアグレッション」になってしまう、というわけです。  このような無意識の思い込みや偏見を減らすことにつながるような動きが、近年みられるようになりました。  たとえば、多くの人が見るテレビCM(コマーシャル)。  調べてみると、1970年代から90年代には、洗剤、掃除機、洗濯機、炊飯器など、家庭用品のCMに登場するのは、ほとんどが女性でした。  子どもの頃から、そのようなCMを毎日のように見て育った世代には、無意識のうちに「家事は女性の仕事」という思い込みや偏見が育っているかもしれません。  そのことが、「男性なのに家事をするなんて偉いね」といった、言われた側が戸惑いそうな「ほめ言葉」を生む元になるのです。  では、最近はどうでしょうか。  男性が起用された家庭用品のCMをよく見かけるようになったと思いませんか。  これらを見て育つ子どもたちには、「家事は女性がするもの」という意識は育ちにくいかもしれません。  それでは、悪意のないひとことがマイクロアグレッションにならないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。  まずは「そもそも自分には、多かれ少なかれ、無意識の思い込みや偏見があるのだ」ということを受け止めてみてはどうでしょう。  そのうえで「自分はマイクロアグレッションをしてしまう可能性がある」と思っておくのです。  そうすると、会話の後に「もしかしたら、今のはマイクロアグレッションだったかもしれない。」という気付きにつながり、「次からは気を付けよう」と意識することができます。  「委縮して何も言えなくなる」と感じるかもしれません。  でも、「マイクロアグレッションをしてはいけない」と構える必要はありません。  冒頭の場面でもそうですが、同じ言葉でも、その受け止め方は、受け手によって、またお互いの関係性によって、ほめ言葉にも、モヤモヤ言葉にも変わります。  大切なのは、「言ってはいけない」ということだけに捉われず、自身の気づきに向き合い、少しずつ減らしていこうと努めることだと考えます。  その積み重ねが、人間関係をスムーズに、そして絆やつながりを強く豊かにしていくことにつながるのではないでしょうか。  相手のことを理解し、お互いの関係性を深めることで、きっと優しくて素敵な会話が生まれることでしょう。 ●中央区人権啓発連絡会議主催 令和4年度中央区人権を考えるつどい 「一人芝居先生のメッセージ」 演者 福永宅司さん トークと笑って泣いての一人芝居「学校」(山田洋次監督作品より)  令和4年9月20日(火)、中央市民センターにおいて、「中央区人権を考えるつどい」を開催しました。  元小学校教諭で、現在はフリースクールの運営や“一人芝居活動家”としてご活躍の福永宅司さんに、前半はユーモアたっぷりの「トーク」、後半はお一人で何役も演じる白熱の「一人芝居」を届けていただきました。  「ぬくもりのある人権のまちづくりを目指して」と題したトークでは、自宅を拠点に開設した、不登校の子どもたちを支えるフリースクール「みんなの学び館」の活動を紹介されました。  また、「人権を身近なところから考えてみましょう。たとえば、家族に『ありがとう』と伝えていますか。こんな小さな積み重ねが人権問題の解決につながりますよ」と笑顔で語られました。  一人芝居は山田洋次監督作品の「学校」。  さまざまな理由で学校に行けなかった人たちが通う夜間中学校が舞台です。  前半は、担任の黒井先生が作文に思いをつづる生徒たちとの思い出を振り返ります。  境遇も年齢も違う個性的な生徒たちを演じる福永さん。  まるで目の前で何人もの俳優さんが演じているかのような熱演から「誰でも一生学ぶことはできる」という福永さんの思いが伝わってきます。  物語の後半、クラスメイトの「いのさん」の訃報が届きます。  生徒たちと黒井先生は、純粋で不器用な「いのさん」の苦労多き人生と学びを求めた姿、その死を通じて「人の幸せとは何か」を語り合います。  「いのさん」の人生や仲間たちの想いから、自分の人生を振り返り、今まで、そしてこれからの幸せについて考えた方も多かったことでしょう。  最後に、福永さんは「知らないことが差別につながる。だから学びが必要。人をこうだと決めつけず、物事を多角的にみることができる知識が必要。そうすることで差別がなくなり、私たちのまちも住みやすくなっていくはずです」と呼びかけました。 ●第51回福岡市人権を尊重する市民の集い 働く幸せ実現のために「社員から教わったこと」 日本理化学工業株式会社代表取締役 大山隆久さん 令和4年12月7日(水)、福岡市人権尊重行事推進委員会主催の「人権を尊重する市民の集い」(中央市民センター)において、日本理化学工業株式会社代表取締役社長の大山隆久さんが講演されました。 (日本理化学工業とは)  昭和12年創業のチョーク製造・販売会社で、全社員94名のうち66名が知的障がいがある社員です。 (障がい者を雇用する理由)  障がい者の雇用は、昭和34年に、先代の社長であった父が、2週間の限定の実習生2名を受け入れたことがきっかけです。  私は、「障がい者雇用を続けていたら会社の未来はない」と思っていましたが、それは間違いでした。  自分が理解したことにしっかりと向き合う集中力、ひとつのことをやり続ける持続力など、彼らはまさに職人です。  現場には彼らが必要です。  彼らが生産ラインのすべてを担っており、彼ら抜きでは会社は成り立ちません。 (障がい者雇用は大変?)  相手の理解力に合わせることを大事にしています。  当社には、誰かに教えて相手ができない時は、教えた側が悪いとの教えがあります。  とても厳しい教えですが、教える側の社員は皆「あきらめず、伝わる教え方を考える」という経験をしています。  また、仕事は人が決まった手順に合わせるのが普通かもしれませんが、逆の発想で人に手順や工程を合わせています。 (社員から教わったこと)  人間は“共感脳”といって、みんな人のために役立つことに幸せを感じるそうです。  職場での「ありがとう」が、自分の存在意義を確認し、働く幸せの実感につながっていくことを教えてくれました。 (目指すべき社会の姿)  当社の取組みの説得力を高めるうえでも安定した経営を続け、当社ができていることを社会に発信することが我々の役割だと思っています。  多くの人が社会や誰かの役に立ち、「ありがとう」と言われる社会、誰もが必要とされる社会を目指したいと思っています。 中央区人権啓発連絡会議だより こうろ 第33号 うら面 ●人権尊重作品入選作品  12月4日から10日の人権尊重週間にあわせて、福岡市が募集した標語やポスターのうち、中央区内の入選作品をご紹介します。(順不同) (ポスターの部) 上段右から  ・赤坂小学校6年 湯元風羽南さん  ・当仁小学校3年 横尾望七さん  ・高宮小学校3年 李天心さん  ・当仁小学校2年 上谷チャールズさん 中段右から  ・赤坂小学校6年 相浦蓮介さん  ・草ヶ江小学校6年 下川二葉さん  ・赤坂小学校4年 園和香那さん  ・小笹小学校3年 葛西琴さん 下段右から  ・赤坂小学校6年 小山夏輝さん  ・赤坂小学校6年 羽迫大展さん (標語の部) 下段右から  ・文字を打つ あなたの指が 凶器だよ  当仁小学校5年 宮ア理咲子さん  ・イジメも差別も 見てみぬふりする 君は共犯者 草ヶ江小学校6年  大和こはねさん  ・相談しよう 悪いのは いじめられてる あなたじゃない  警固中学校3年  今中あず沙さん ●中央区人権啓発連絡会議 構成機関・団体(順不同)  中央区人権啓発連絡会議は、部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消を目指し、「中央区人権を考えるつどい」の開催や街頭啓発の実施、広報紙「こうろ」の発行など、人権を尊重し人の多様性を認め合う明るく住みよいまちづくりの実現に向けて活動しています。  ・中央区校区自治協議会等代表者会  ・中央区人権啓発地域推進組織(校区・地区人権尊重推進協議会14団体)  ・中央区体育振興連絡会  ・中央区交通安全推進協議会  ・中央区青少年育成連絡会  ・中央区民生委員児童委員協議会  ・中央区老人クラブ連合会  ・中央区公民館長会  ・中央区小学校長会  ・中央区小学校PTA連合会  ・中央区中学校長会  ・中央区中学校PTA連合会  ・中央区子ども会育成連合会  ・福岡市身体障害者福祉協会中央区支部  ・中央保護区保護司会  ・中央区男女共同参画連絡会  ・中央区役所 ●編集後記  “コロナ禍”で日常が大きく変わったことのひとつに「距離」があります。  三密回避による物理的距離だけではなく、親しい人と会えないことで「心の距離」が生じてしまいました。  コロナ差別や孤独、孤立などの問題を考えると、人のつながり、ふれ合い、絆が、生きる支えになる大事なものだということに、改めて気づかされました。  “コロナ禍”の生活も4度目の春を迎え、少しずつですが、以前の日常を取り戻しつつあります。  引き続き、感染対策に気を付けながら、長く会えずにいる大切な人や、親しい仲間、友人たちとの距離が縮まっていくことを心から願っています。  「そういえば、ご先祖様にもご無沙汰だな」と思い、先日お墓参りへ。  コロナで日が空いたことを詫びつつ、ろうそくの灯を消そうと手であおいだとき、指を墓石に強くぶつけてしまい・・・。  「先祖への無沙汰にコロナは関係ないぞ」と叱られたのかもしれません。  改めて無沙汰を詫びるとともに、体を動かすときは、周囲の人やものとの「距離」に気を付けなければ、と文字どおり“痛感”した出来事でした。