中央区人権啓発連絡会議だより こうろ 第31号 おもて面 発行/中央区人権啓発連絡会議 事務局/中央区総務部生涯学習推進課 電話 718-1068 STOPコロナ差別 お互いの頑張りにエールを!  新型コロナウイルスの感染者や医療従事者などに対する誹謗中傷・差別が問題になっています。コロナ禍の今こそ、人との絆を大切にしましょう。  新型コロナウイルスに感染した方や医療・福祉分野に従事する方、そのご家族、海外から帰国された方、外国人の方、感染者が多い地域で生活する方などに対する誹謗中傷や差別が問題になっています。  人は未知のものに対して不安や恐れを感じ、警戒して距離を置こうとします。しかし、未知の存在である新型コロナウイルス自体は見えません。このため、本来の敵であるウイルスではなく、「感染症に関わる人を遠ざけよう」という心理に転じて偏見や差別につながります。  大阪大学の三浦麻子教授らが2020年7月から8月にかけて行った調査によると、「感染は自業自得だと思うか」との質問に「そう思う」と答えた割合は、アメリカが約4.9%、イギリスが約1.4%であったのに対し、日本は約17%と高く、感染者への眼差しが厳しいことが分かります。  このような状況では、「自分は感染したかもしれない」と思っても、誹謗中傷や差別を恐れて受診をためらうことで感染が広がり、差別も更に広がってしまいます。  先がなかなか見通せない今の状況に不安を感じるのは自然なことです。  しかし、差別することで不安が解消することはありません。  また、新型コロナウイルスには、誰もが感染する可能性があります。  今日の自分が誰かに向けた眼差しや振る舞いは、明日は自分に向けられるかもしれません。  この瞬間も、感染者や医療従事者をはじめ様々な立場の方々がウイルスと闘っています。  これを読んでくださっている皆さんも、不便でご苦労が多い生活を送りながら、日々頑張っておられると思います。  お互いの行動に目を光らせるのではなく、お互いの頑張りにエールを送ってみませんか。  感染を広げないために   一 身体的距離の確保や密集・密接・密閉の回避、こまめな手洗いや手指消毒、マスクの着用や咳エチケットなどをしっかり行いましょう。   一 バランスのよい食事や十分な睡眠で免疫力を高めましょう。  不安を静めるために    一 出所不明の情報や噂話など不確かな情報に惑わされず、行政機関が発信する情報を確認しましょう。   一 情報収集は大事ですが、悲観的な情報だけに注目しがち。情報から少し距離を置く時間を持つのも大切です。  差別をしたり広めたりしないために   一 あれこれ詮索したり、不確かな情報を広めることは禁物。良かれと思って広めた話や何気ない一言で、誰かを傷つけてしまうかもしれません。   一 無意識のうちに差別する側にならないよう、何が差別なのかを冷静に考え、差別的な言動や行動に同調しないようにしましょう。   第49回福岡市人権を尊重する市民の集い  福岡市では、昭和23(1948)年12月10日に世界人権宣言が採択されたことにちなみ、毎年12月4日から10日を「福岡市人権尊重週間」と定め、あらゆる差別の解消を目指して、様々な取り組みを行っています。  そのひとつとして、令和2年12月7日(月曜日)に中央市民センターホールにおいて、「第49回福岡市人権を尊重する市民の集い」(主催/福岡市人権尊重行事推進委員会)が開催され、弁護士の南和行さんが講演されました。 「LGBTのこと、そして人権 〜 誰もが生きやすい社会へ 〜」 弁護士 南和行さん  弁護士の南和行さんは、同性愛者であることを公表し、同じ弁護士である同性パートナーと法律事務所を開設して、家族に関する様々な案件や性的マイノリティ差別の問題などに精力的に取り組んでいます。  講演では、LGBTに対する偏見や差別、自身が経験してきた苦悩、母との衝突、社会での生きづらさなどについて語っていただきました。 ●自分自身のこと  「男性と女性の組み合わせが当たり前。それを外れた同性愛は異質で嘲笑の対象」という社会の中で、同性に惹かれる自分を「まともではない」と葛藤する十代を過ごした南さん。  学生時代の共感できる人達との出会いで、同性愛が社会のイメージと異なることを知り、自分自身をやっと受け入れることができたと同時に、社会の同性愛者への厳しい視線のもとでは、一生隠していかなければならないと強く思ったそうです。  しかし、身近な人との関係が壊れることを恐れて隠し続ければ、その関わりは希薄になると感じ、急逝した父に「本来の自分」を伝えなかった後悔もあって、22歳の頃、母に自分のことを伝えます。  息子の告白に戸惑い「同性愛は異質で不幸な存在」と受け入れられない母と、理解してくれない母にいら立つ息子。  その衝突は約十年続きましたが、いつしか南さんは「母が抱える戸惑いや苦しみは、十代の頃の自分と同じだ」と気づき、母は「理解してもらおうと懸命の息子を悩ませてはいけない」と思い至り、互いを理解しようとすることで雪解けを迎えたそうです。 ●LGBTという言葉への誤解  南さんは「『LGBT』という言葉は浸透してきたが、言葉の印象が独り歩きしている」と言います。  「LGBT」とは、レズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(性別に関わらず恋愛対象になる人)、トランスジェンダー(体や戸籍などの性別と自分の認識が一致しない人)のそれぞれの頭文字を取った造語で、社会から「変だ」と遠ざけられた人たちが連帯して「それは違う」と声を上げる中で生まれた言葉だそうです。  「L」・「G」・「B」は「性的指向」即ち恋愛感情や性的関心が向く「相手の性別」に関わることで、「T」は「性自認」、自分はどういう性別なのかという「自分の性別」に関わることであり、本来は別のものなのです。  しかし、社会の大半の認識では、これを混同して「LGBTの人」と一括りにしてしまい、それぞれの問題にあまり目が向けられていません。  また、体や戸籍などの性別に違和感がなく、異性に好意を抱くのが「普通」であり、そうではない人を「普通じゃない」と考えている人が多いのではないでしょうか。 ●「普通」って何?  「LGBT」は性のあり方を示す言葉のひとつであり、無性愛者、性自認や性的指向が揺れ動く人など、性のあり方は多様です。  自分の性別に違和感がないのは「シスジェンダー(性自認が一致している人)」であり、異性を好きになるのは「ヘテロセクシュアル(異性愛者)」であって、いずれもそれが「普通」なのではなく、多様な性のあり方のひとつであると知ってほしい。  そして「自分と違うから普通ではない」と考えるのではなく、一人ひとりが違うという前提で、もっと多くの人が性の多様性について関心を持ち、お互いの違いを受け入れ、ともに生きていける社会にしていきましょう、と優しく、また力強く語りかけました。 中央区人権啓発連絡会議だより こうろ 第31号 うら面 中央区人権を考えるつどい 映画「蹴る」上映  中央区人権啓発連絡会議では、令和3年1月27日(水曜日)、福岡市立中央市民センターにて、「中央区人権を考えるつどい」を開催し、映画「蹴る」を上映しました。  このつどいは、多くの市民の皆さんが人権尊重の大切さについて一緒に考え、人権意識を高めあう場として、中央区人権啓発連絡会議が中央区役所との共催により、毎年開催しているものです。  今回のつどいでは、電動車椅子サッカードキュメンタリー映画「蹴る」を上映しました。  新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下での開催となりましたが、定員の制限や事前申込制、手指消毒・検温の徹底、座席間隔を広く取るなど感染拡大防止対策を徹底し、81名の参加がありました。 ●電動車椅子サッカーとは  この作品は、重度の障がいを抱えながら、電動車椅子サッカーワールドカップ出場にすべてをかける選手たちを6年にわたり撮影したドキュメンタリーです。日本代表を目指す日々の闘いや、日常生活に垣間見せる人生の苦悩や恋愛模様、競技にかける彼らの想いや葛藤、その生きざまを描いています。  電動車椅子サッカーとは、4名の選手(男女混合)が、ジョイスティック形のコントローラーを手やあごなどで操作し、車椅子の足元に付けたバンパーでボールを操り、ドリブル、パス、回転シュートを駆使して対戦チームとのゴール数を競うスポーツです。選手の多くは脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィー、脳性麻痺、脊髄損傷等により自立歩行できないなどの重い障がいがあります。 ●中村監督が込めた思い  この映画の監督である中村和彦さんは、福岡県のご出身で、2007年に知的障がい者サッカーをテーマにした「プライドinブルー」を、2010年にはろう者サッカー女子日本代表を追った「アイ・コンタクト」を発表し、本作は障がい者サッカードキュメンタリーの3作目となります。  中村監督は、自らの思いをこう述べています。  「生まれて一度も歩いたことがない選手もいれば途中から歩けなくなった選手もいる。常時、呼吸器を使用している選手もいる。自力で座位をとれず車椅子に縛り付けられたような状態でプレーする選手もいる。そういった選手たちが自らの体形に合わせ改造した電動車椅子を自在に操り、時には2Gの重力を受け、車いす同士がぶつかる衝撃にも耐えながら、鍛え抜かれた技と強烈な意思で試合に挑む。  これほど重度の障がいを持ちながら、これほど激しいスポーツが他にあるだろうか?選手たちに共通するのは電動車椅子サッカーに対する想いの強さだ。多くの選手にとって“電動車椅子サッカーは生きることそのもの”だ。そんな選手たちの想い、生きざま、生きている証(あかし)を映像に刻み込みたいと思った。」 ●バリアフリー上映を実施  当日は、聴覚障がいがある方向けに字幕付きで上映するとともに、視覚障がいがある方にも鑑賞していただくため、ボランティア団体「バリアフリーシアター エイムing(えいみんぐ)」さんにご協力いただき、映像の情報を副音声で補う音声ガイドを導入しました。  今回の作品は字幕・音声ガイドに対応しており、エイムingさんには音声ガイドの受付や使用方法の説明、会場案内などにご協力いただきましたが、普段は副音声や字幕の制作、バリアフリー上映会の開催などを行っておられます。  代表の川アさんは、「活動には苦労もありますが、利用された方からの『映画鑑賞は諦めていたが、おかげでまた楽しめる』という嬉しい声に励まされながら活動を続けています」と笑顔で話されました。  バリアフリーシアターエイムing(えいみんぐ)へのお問い合わせは   ・視覚障害者友情の会(月曜日・水曜日・金曜日の10〜18時)電話092-472-6762 ●参加者の声  参加した皆さんは、電動車いすサッカーの迫力、選手の熱い思いや初めて見る日常に心を揺さぶられたようです。  参加した皆さんからの声を一部紹介します。  ・それぞれの人生をいかに生きるべきか、自分のあり方を考えさせられました。  ・障がいがある若者達がスポーツに打ち込む姿、そして、サポーター達の温かい心、応援の姿、感動しました。  ・電動車椅子サッカーというものを初めて知りました。生きることは当たり前ではないという言葉、心にしみました。毎日を充実させたいと改めて思いました。  ・子どもたちに見せたいと思いました。自分の身体と心と懸命に向き合い、頑張る選手の姿、選手を支えている周りの多くの人々。胸がいっぱいになりました。  ・命がけのスポーツ、人としても強さを感じました。コロナなんかに負けられません。  ・副音声がとても分かりやすく、電動車椅子サッカーのことがよく分かりました。 中央区人権啓発連絡会議 構成機関・団体(順不同)  中央区人権啓発連絡会議は、部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消を目指し、「中央区人権を考えるつどい」の開催や街頭啓発の実施、広報紙「こうろ」の発行など、人権を尊重し人の多様性を認め合う明るく住みよいまちづくりの実現に向けて活動しています。  ・中央区校区自治協議会等代表者会  ・中央区人権啓発地域推進組織(校区・地区人権尊重推進協議会14団体)  ・中央区体育振興連絡会  ・中央区交通安全推進協議会  ・中央区青少年育成連絡会  ・中央区民生委員児童委員協議会  ・中央区老人クラブ連合会  ・中央区公民館長会  ・中央区小学校長会  ・中央区小学校PTA連合会  ・中央区中学校長会  ・中央区中学校PTA連合会  ・中央区子ども会育成連合会  ・福岡市身体障害者福祉協会中央区支部  ・中央保護区保護司会  ・中央区男女共同参画連絡会  ・中央区役所 編集後記  「新型コロナウイルス」という言葉を聞かない日はないという日々が続いています。  マスクの着用やこまめな手洗い・消毒、身体的距離の確保など、普段の生活様式も一変しました。  子どもたちの学校生活も大きく変わりました。先日行われたオンライン授業では、小3の息子に「絶対に映り込まんでね!」とくぎを刺されてしまい、親は家の片隅で息を潜める羽目に。  感想を聞くと「マスクをしていないみんなの顔が見られて嬉しかった!」とニッコリ。  我慢続きで少し心がトゲトゲしがちですが、息子からの思ってもみない答えと、嬉しそうな表情に心を癒された一コマでした。