資料4−2 区障がい者基幹相談支援センターの事例から導かれる福岡市の地域課題 複合的な課題等 テーマ1 本人に困り感がなく、相談支援の介入が難しい。必要な医療や障がい福祉サービスの拒否があるため、生活の質の改善につながらない。 テーマ2 家族が高齢、または障がいがあり(見立て含む)、家族まるごとの支援が必要。生活困窮を含む複合的な問題がみられ、様々な立場の支援機関が関わるが、効果的な連携と支援の構築が難しい。 テーマ3 障がいの特性や状況に対応できる社会資源や支援者が不足しており、サービスに繋がりにくい。または、サービスに繋がっても継続が難しい。 テーマ4 障がい者の在宅生活支援で必要となる支援が現状のサービスでは不足している。また、ゴミ屋敷状態やペット飼育について問題を抱えている等、複合的な課題が生じ支援が難しい。 テーマ5 障がいへの誤解や偏見などから、権利が守られず、差別を受け、生きづらさを解消しにくい。 障がい種別 テーマ6 精神障がい者の地域移行支援において、居住の場の確保が難しい。また、地域生活の体験の場や特性に対応できるサービスが不足している。 テーマ7 発達障がいの特性に対応できる事業所が少ない。また、特性に合った支援を受けられず、生活の中で適応が難しいことが多い。 テーマ8 強度行動障がい者の受入先を見つけることが極めて困難であり、安定した生活を築きにくい。 テーマ9 身体障がい者の就労先、日中活動の場が少ない。 テーマ10 身体障がい者、精神障がい者の外出や通院について、福祉サービス体制が十分に整っていない。 テーマ11 医療ニーズが高いが、サービスの対象要件を満たさず希望する支援をうけられない。また、重症心身障がい者や医療的ケアに対応できる短期入所やグループホームが少なく、家族の負担が大きい。 その他 テーマ12 ひきこもりの状態で、対人関係や外出に不安を抱え、障がい受容が難しい場合、医療機関や福祉サービスにつなげることができない。また、障がい疑い・障がい者手帳未所持方への介入が難しい。 テーマ13 罪を犯した障がい者への支援に対応する関係機関が少ない。 テーマ14 日常的な金銭管理を必要としている障がい者は多いが、支援機関が不足し、支援体制も十分整っていない。 テーマ15 異性関係や性への理解が難しいことで、想定外の妊娠・中絶、育児に対応できずに虐待につながるケースがある。売春、DVなど触法領域に及ぶ課題がみられる。 テーマ16 本人あるいは家族の性格や気性、障がい特性上、対応が難しく、引き受けられる障がい福祉サービス事業所や医療機関が見つからない。また、支援者の精神的負担が大きく、支援の継続が難しい。 テーマ17 災害時、パンデミック状況下で、避難・安全確保が困難である。また、収束後においても影響が大きい。 福岡市の地域課題(複合的な課題等) テーマ1 本人に困り感がなく、相談支援の介入が難しい。必要な医療や障がい福祉サービスの拒否があるため、生活の質の改善につながらない。 主な内容 *本人に困り感がなくても、家族や地域住民が困っている。本人の困り感と、周囲が考えるニーズとのズレが大きい。 *本人(家族)に、必要な医療や障がい福祉サービス利用に拒否があり、健康を損なう、あるいは死亡に至ることもある。 *障がいがあることを受容できずに、相談支援の手続きが進まない。また、「障がい者」の相談支援センターという名称・立場での介入が難しい。 *定期訪問など、つながり続けるアウトリーチ型の支援が必要だが、区障がい者基幹相談支援センター(以下「区基幹」という。)区基幹以外に担える機関や対応できるサービスが極端に少ない。 *医療の介入の必要性があっても、本人が介入拒否をした場合、医療につながることが難しく、福祉的支援の困難さが増す。 *関係機関も本人の動きを把握できない場合が多く、本人の状態に対する情報が不足している。 区基幹で検討したアイデア ・各事業所が積極的に地域へのアウトリーチを出来るようにする。 ・一人の対象者について、情報共有を行うため、サポートブックのような情報集約されたものを共有できるようにする。 ・区基幹で把握した多様なニーズの情報発信を事業所に行う。必要に応じて、対象者の拡大や支援内容の再検討を求める。 ・往診できる医師、病院を増やす。 ・民生委員等地域の関係者が、行政や区基幹に気軽に相談できるよう、顔の見える関係を作る。 ・民生委員等地域の関係者が、見守り支援の協力対象者や対象者家族へ継続的な関わりを持てるような仕組みを作る。 ・コミュニティソーシャルワークが機能する地域を増やす為に、社協を中心とした関係者で、協議する場を作る。 ・行政の関係部署に対して、障がい特性やサービスについての研修を行う。 ・未受診訪問医の有効活用について検討する。 ・課題を抱える児童を対象としたアウトリーチ支援員(教員)の学校での配置を検討する。 今後の方向性  キーワード… アウトリーチ(注1)、地域での支援 ●訪問型福祉サービスの充実 ●障がい福祉サービスの利用に至るまでの支援の拡充 注1:「アウトリーチ」とは、ソーシャルワーカーが持ち込まれる相談を待つのではなく、問題を抱えた人がいる生活空間や地域社会に出向き、相談援助サービスを提供することである。 しかし、本資料においては、上記の他に、訪問型の福祉サービスや医療等を含んで「アウトリーチ」と表現する。 テーマ2 家族が高齢、または障がいがあり(見立て含む)、家族まるごとの支援が必要。生活困窮を含む複合的な問題がみられ、様々な立場の支援機関が関わるが、効果的な連携と支援の構築が難しい。 主な内容 *世帯で複数の支援対象者(障がい者・高齢者)がおり、障がいや病状、現状について適切に理解できるキーパーソンが不在で、家庭への介入が困難。 *障がい児の相談援助で介入しても、実際には親の精神状態や障がい(見立て)が問題の要因であるケースも多々あり、支援方針を立てることが難しい。 *養護者・保護者に障がいがある場合、育児に課題を抱えるケースも多いが、育児を支援する機関は少ない。 *親子で高齢・障がいの状態である場合、就労や生活困窮、育児、家庭内トラブルなど複数の課題を抱えるケースがあり、支援機関が異なるために支援方針の共有が困難となる。 区基幹で検討したアイデア ・家族それぞれに関わる相談機関が丁寧なアセスメントと関係づくりに注力した上で、障がい、介護、児童、行政(複数の課)などの多機関(多職種)で情報を共有するネットワークを構築できるようにする。 ・家族支援が必要な世帯に関する研修(福祉事業者、医療、保育、教育向けの研修)や事例検討を実施する。 ・区基幹で把握した多様化するニーズを地域社会に発信する。 ・世帯の中で複数の障がいのある場合、医療機関で統一した見解で治療方針を持てる横のつながりが求められる。 ・地域の中で気になる家庭があれば、積極的に区基幹へつなぐ。 ・ヘルパーの業務開始ができるよう、専門業者やボランティアによる清掃や環境整備等を実施する。また、ヘルパー事業所は、育児支援を積極的に受け入れる。 ・家庭支援が必要な世帯への福祉サービス拡充(通院同行、通学支援、金銭管理サービスの民間事業化、特例的取扱の緩和)。 ・子育てについて、幼児期から就学後も相談できる場にて、親同士の交流、つながりがなく孤立することを防ぐ。 ・計画相談支援において、本人や家族との関係づくりや、家庭に踏み込む支援を行うためのモニタリング訪問頻度の設定が必要である。あるいは、地域定着支援の対象要件を柔軟に設定し、相談体制を整える。 今後の方向性  キーワード…関係機関の連携、複数の行政機関・相談機関の調整、アウトリーチ ●複合的な課題がある家族について、それぞれの家族に関わる関係機関で情報共有して支援できるネットワークの構築 ●行政の各所管、各相談機関との調整を図る役割のあり方の検討 ●自立生活援助の拡充 テーマ3 障がいの特性や状況に対応できる社会資源や支援者が不足しており、サービスに繋がりにくい。または、サービスに繋がっても継続が難しい。 主な内容 *既存のサービス内容や人員配置では、個別対応の支援が必要な障がい特性を持つ対象者への支援が難しい。 *長時間にわたって話を聞ける支援や、支援関係を築くために時間を費やせるサービス等がない。 *精神障がい、発達障がい、高次脳機能障がい、各種依存症に対応できるスキルを持った支援者が少なく、利用受入に対して消極的な事業所や支援者が見受けられる。 *障がいの理解や支援の必要性について、関係機関同士での認識や価値観を調整していくことに時間や技術を要する。 区基幹で検討したアイデア ・各種精神障がいや発達障がい等の特性、支援スキルを学ぶ機会をつくる。医師やMSWにも福祉サービスの現場を知ってもらい適切な助言や指導をしてもらう。 ・通所サービスにおいて、集団が苦手な人に対応できる仕組や特性に合った活動メニューを用意する。 ・就労系の通所サービスにおいては、在宅ワークを推進する。 ・自立生活援助や訪問型自立訓練などのアウトリーチサービスを提供する事業者を増やす。 ・地域住民への理解促進を図り、自治会や民生委員等による見守り体制を構築する。 ・最重度の障がい者や集団が苦手、または聴覚過敏症、各種持病がある障がい者など、個別ニーズに対応できるグループホームを充足させる。 今後の方向性  キーワード…日中活動の開発、アウトリーチ ●通所サービスにおける活動プログラム・環境整備の見直し ●アウトリーチサービスと就労支援事業所による在宅ワークの拡充 テーマ4 障がい者の在宅生活支援で必要となる支援が現状のサービスでは不足している。また、ゴミ屋敷状態やペット飼育について問題を抱えている等、複合的な課題が生じ支援が難しい。 主な内容 *ヘルパーの絶対数が不足していること、利用希望時間帯が集中していることから、ヘルパーを利用したいが調整ができない。 *障がい者の一人暮らしの安全・安心を担保するための、見守り・安否確認など隙間を埋めるサービスや社会資源がない。 *連泊に対応している事業所や段階的及び継続的に受入れが可能な短期入所事業所が少ない。 *介護保険への移行時にサービスに変化が生じるなどし、本人の適応が難しく、現状の暮らしを維持することが困難。 *ゴミ屋敷支援には生活困窮、困り感のなさ、障がい特性、家事能力の無さ、症状などからくる複合的な課題があり、支援の手立てが困難。 *障がい特性から適切なペット飼育ができず、様々なトラブルの原因になるが、ペット飼育も含めた支援を行えるサービスはない。 *ヘルパーの担い手不足が大きな課題となっているなか、喀痰吸引等の医療行為を実施する居宅介護事業所が少なく、訪問看護だけでは不足するため、家族の負担が非常に大きい。 区基幹で検討したアイデア ・ヘルパーへの就業者が極めて少ない現状において、通所サービス等の職員が兼務する働き方を推奨する。複数法人の提携に  よって、職員が兼業する仕組を提案する。 ・居宅介護等の訪問系サービスに加え、自立生活援助や相談支援の地域定着支援等を兼務することで、ヘルパーの概念を  超えて、アウトリーチサービスの担い手として活躍できる業態に転換する。 ・計画相談のなかで、ヘルパーの利用から通所サービス等の利用へ切り替えることでのQOL向上を推進する。 ・社会福祉法人の地域貢献事業として、ゴミ屋敷の清掃費を出し合う団体を組織し、資金調達する。 ・社会福祉法人の存在意義を再確認し、最もニーズの高い一つである短期入所の実施を促す。 ・グループホームの新設の際に短期入所の併設を推奨する。 ・動物病院や動物保護団体に障がい者のペット問題を共有し、地域トラブルや飼えなくなった際の対応を協議する。 今後の方向性  キーワード…アウトリーチ、現状サービスの補完 ●ヘルパー支援の供給体制の見直しと公的サービスを補完する支援(自立生活援助・地域定着支援)の構築 テーマ5 障がいへの誤解や偏見などから、権利が守られず、差別を受け、生きづらさを解消しにくい。 主な内容 *理解が不十分で信用してしまい、詐欺被害等のトラブルに巻き込まれることがある。 *治療方針やそれに伴うリスクの理解が難しく、治療に同意するか否かの意思決定が困難な場合がある。 *進行性の難病などの疾患があることで、仕事の上で業務を継続することが困難となることがある。職場から明確な根拠の提示や意思確認もないままに離職に追い込まれることがある。 *ハイリスクな世帯において、他者との関係が希薄なこともあり、虐待が発生しているかどうかの判断が難しい。 *精神障がいがあることを隠して住居を賃借しなければならないことが常態化している。また、グループホームの開設においては近隣の同意を得るのに苦慮することがある。 区基幹で検討したアイデア ・サービス事業所においては詐欺被害、虐待(疑い含む)を確認した際の通報・関係機関への連絡連携を徹底する。 ・本人や家族の理解が困難な場合、意思決定支援会議を積極的に実施する。 ・訪問診療ができる医療機関を拡充する。 ・入院時の意思決定支援のため重度訪問介護、重度障がい者入院時コミュニケーション支援を活用する。 ・障がい者差別解消法について地域・企業等への普及啓発を行う。 ・当事者団体・事業所とも連携し、障がい者110番等の窓口を広く周知する。 ・ハイリスク世帯への介入を目的とし、自立生活援助の対象者を拡大する。 今後の方向性  キーワード…普及啓発、意思決定支援、医療・福祉のアウトリーチ ●市民、社会参加の場である店舗、雇用する企業に対して、障がい者差別の啓発、相談窓口の周知 ●医療、障がい福祉サービスにおける自己選択、自己決定、意思の表出の支援拡充 福岡市の地域課題(障がい種別) テーマ6 精神障がい者の地域移行支援において、居住の場の確保が難しい。また、地域生活の体験の場や特性に対応できるサービスが不足している。 主な内容 *退院準備をしている精神障がい者が、グループホーム入居や一人暮らしを始める前に在宅生活を体験できる場がない。 *精神・発達障がいについて理解があり、夜間の支援体制があるワンルームタイプのグループホームが不足している。 *精神障がいのある方の入居に関して、オーナー、管理会社、周辺住民等からの理解が得られにくい。 *精神障がい者を対象とした賃貸物件は限られている。また、物件が見つかっても保証人や緊急連絡先がいなければ賃貸契約を結ぶことが難しい。 *入退院を繰り返す方はその都度物件を探す必要があり、居住の場を確保することが難しい。 *対人関係を築きにくく、関係調整が必要。体調不良による急なキャンセルなどもあるため、継続してサービスを提供できる事業所が見つかりにくい。 *退院してから就労できるようになるまでの期間、静かに過ごせるような日中活動の場が少ない。また、入所中や入院中の障がい者が体験入居できる場や支援体系の仕組が脆弱なため、地域生活への移行(一人暮らしやグループホーム等)が進まない。 *短期入所は介護者のレスパイト等を目的としているため、独居の精神障がい者などが休息を取る必要がある時や、状態が安定していない時に利用できない。 区基幹で検討したアイデア ・地域定着支援、訪問型自立訓練、自立生活援助等アウトリーチサービスを拡充し、地域での見守り体制を整える。 ・精神障がいの理解のため、市民に対し研修・普及啓発活動を実施する。 ・グループホームの体験利用や宿泊型自立訓練など、地域生活の練習が出来る場を拡充する。 ・地域活動支援センターや地域のサロンなど、地域で気軽に過ごせる居場所を増やす。 ・医療機関においてはサービス事業所、相談支援事業所等への情報共有を行い、相互に連携し地域生活を支える体制を作る。 ・障害者差別解消法、福岡市障がい者差別解消条例の普及啓発及び「合理的配慮」に関する研修を実施する。 ・福岡市においては利用者の入院に対応できるようグループホームに対する家賃保証を検討する。 今後の方向性  キーワード…アウトリーチ、体験の場、普及啓発 ●アウトリーチサービスによる伴走型支援体制の拡充 ●病院や施設からのスムーズな地域移行を目指した体験の場の拡充 ●障がい福祉サービスの普及啓発 テーマ7 発達障がいの特性に対応できる事業所が少ない。また、特性に合った支援を受けられず、生活の中で適応が難しいことが多い。 主な内容 *発達障がいを専門的に診察できる医療機関が不足しており、受診するには数ヶ月待つことが多い。 *学齢期において、家族、教育機関などが障がい特性を理解することが難しく、適切な対応ができずに、不登校と結びつくことが多い。 *医療機関も含め、特性に応じた環境設定・整備に必要な知識がある支援者も少ない。そのため、本人への支援の組み立てが難しくなる。 *学齢期に特性に合った支援を受けられず、成人期になって障がい特性がより顕著になり、介入困難になる。 区基幹で検討したアイデア ・ゆうゆうセンターもしくは療育センター、児童発達支援センターの機能を拡大し、保護者や学齢期の児童への支援に力を入れられるようにする。 ・事業所がゆうゆうセンターと連携し、個々の障がい特性に応じた支援を受けることができる環境を作る。また、対応できる事業所を増やす。 ・就労系事業所の在宅ワークや自立生活援助等のアウトリーチ型のサービスの拡充。 ・療育型の放課後等デイサービスを増やし、不登校児の対応を行う。 ・教育機関でもアウトリーチによる支援に対応できるよう、専門コーディネーターの配置等を検討する。 ・発達障がいについて積極的・専門的に受診対応を行っている医療機関が対応等を発信する機会を設け、各医療機関が発達障がい者の受診に活用することで、発達障がいに対応できる医療機関や関係者を拡充する。 ・地域生活、教育の場で発達障がいへの理解を深めてもらう機会を設け、地域全体での理解を高める。 今後の方向性  キーワード…発達障がいの特性理解、アウトリーチ ●特性について理解を深めた障がい福祉サービス事業所による環境設定の工夫や支援メニューの工夫 ●専門機関等との連携体制の構築 テーマ8 強度行動障がい者の受入先を見つけることが極めて困難であり、安定した生活を築きにくい。 主な内容 *強度行動障がいに対応できるグループホーム、短期入所、通所サービスが不足している。また専門的人材の質や量が不足している。 *入所施設やグループホームへ移管後、行動問題へのアプローチと支援の般化、生活に合わせた環境と支援体制作りが十分に行えず、行動問題が再発することもある。 *強度行動障がい者支援者養成研修受講者数と実働支援者の数の差があり、行動援護事業を実施している事業所が増加しない。研修受講後のフォローアップ体制がない。 *頻回の難治性てんかん発作がある場合、通所や趣味を楽しみたい等のニーズがあっても、受け入れ先が少ない。 *親が高齢になっても自宅にて対応するしかない現状が続いている。 区基幹で検討したアイデア ・居住地域事業所において、強度行動障がい者の積極的な受け入れが進むよう、加算の見直し(強行体制加算でなく、サービス提供実績加算に変更)や受け入れ事業者に対する補助等を検討する。 ・強度行動障がい支援者養成研修受講者への実践機会の提供と、研修受講者がいる事業所での強度行動障がい者の受け入れ促進について検討する。 ・強度行動障がいや難治性てんかんを持つ利用者の受け入れ実績や経験のある事業所に、支援方法や運営についてのノウハウを発信する機会を作る。 ・専門的人材の育成や支援方針共有のため、積極的に共同支援を活用するなど、関わる事業所間において相互の連携体制を構築する。 ・医療機関において、往診や訪問看護等によるアウトリーチや緊急時や急性期の受け止めを行う等、地域生活の支えとなる体制を構築する。 ・医療法人による医療型グループホームや療養介護の設置と拡大。 ・学校、療育機関等が行動障害について理解を深め、2次障害を生み出さない環境作りと個に応じた柔軟な教育・療育を行う。 ・難治性てんかん発作のある重度知的障がい者に対応できる福祉サービス体制の検討。 ・他害、自傷の頻度が高い強度行動障がい者については、人的体制と環境、立地の面で受入が極めて難しいため、行政の施策により専門施設をつくる。 今後の方向性  キーワード… 事業所を増やすための施策、医療体制の強化、共同支援 ●強度行動障がい者を受け入れる障がい福祉サービス事業所を増やすための施策の検討 ●専門研修受講者が積極的に強度行動障がい者への支援を行うため、共同支援の活用等、実践力の向上と受け入れ体制の強化を検討 ●医療機関と障がい福祉サービスの連携強化 テーマ9 身体障がい者の就労先、日中活動の場が少ない。 主な内容 *身障トイレやエレベータ―等の設備がないことや、一部の介護が必要なことで、障がい者枠の雇用であっても就職が困難。 *中途障がいの身体障がい者に対する機能訓練の場、余暇支援が少ない。 *補装具の支給要件に該当しないが、屋外移動が困難である身体障がい者は、引きこもりに繋がる場合がある。 *身体障害者手帳のない(該当しない)人は、福祉サービスの利用や福祉用具の給付申請ができず社会参加が困難となる。 *車いす使用者に対応できる広さがあり、安価で住める住居が見つからない。 区基幹で検討したアイデア ・在宅で取り組めそうな作業を準備し、選択の幅を広げる。 ・オンラインを活用した講座や研修、交流イベントなどを実施する。 ・身障者用トイレを設置し、車椅子用の通路を確保するなど、バリアフリー化に取り組む。 ・通所が困難な方に対して、送迎を実施する。 ・通所困難な状態になっても対応ができるように、訪問型サービスを併設する。 ・リハビリ継続を希望する方が、訓練期間終了後もリハビリに取り組んでいけるように、支援や助言、訓練を行う場を提供する。 ・地域行事に身体障がい者も一緒に参加できるよう、会場のバリアフリー化に取り組む。 ・宅配サービスや、移動販売を増やす。 ・本人の状態や社会参加状況も考慮できるよう、移動支援の支給要件を見直す。 ・身障者用トイレを設置しやすくなるような、助成制度を検討する。 今後の方向性  キーワード…バリアフリー、通所系サービスの充実、機能訓練の拡充 ●バリアフリーが整った就労継続支援事業所の拡充 ●通所サービスにおける文化・芸術を含んだ多様なプログラムの展開 ●能力に応じた多彩な就労形態の拡充 ●通所できる機能訓練の拡充 ●住宅改造や日常生活用具を検討して、車いす使用者が生活できるような住環境づくりを支援する機関の確保 テーマ10 身体障がい者、精神障がい者の外出や通院について、福祉サービス体制が十分に整っていない。 主な内容 *移動支援の対象(3肢麻痺以上)ではないが、屋外の車いす自走が困難な身体障がい者は、外出することが難しい。 *通勤・通学の利用が認められない等の移動支援の利用内容の制限により社会参加できない。 *移動支援の場合は車両を使用することができないため、体温調整が難しい障がい者は、やむなく外出を控える場合がある。 *移動支援は、事業所を発着点にすることが認められていない。そのため、通所後に一度自宅に戻る必要があり、不便を強いられる場合がある。 *精神障がい者の場合は、診察に支援者が付き添うことができず適切な医師の助言を受けられない。 *精神科病院の長期入院患者やひきこもり生活による筋力低下、転倒のリスクは高いが移動支援に該当しない場合、外出時の見守り・訓練などの支援を行うサービス事業所が少ない。 区基幹で検討したアイデア ・本人の状態に応じて移動支援の対象、内容(通勤通学等)、条件等を緩和する。 ・コミュニケーションや理解に支援が必要な方について、通院等介助における院内介助の条件を緩和する。 ・外出付き添いボランティア等を拡充する。 ・医療機関において、退院後の生活環境のアセスメントを行った上でリハビリを実施する。 今後の方向性  キーワード…移動支援の緩和 ●移動支援の要件や内容の緩和など、社会参加を促進するための施策の協議 テーマ11 医療ニーズが高いが、サービスの対象要件を満たさず希望する支援をうけられない。また、重症心身障がい者や医療的ケアに対応できる短期入所やグループホームが少なく、家族の負担が大きい。 主な内容 *医療的なケアや常時の見守り・支援が必要な障がい児・者に対応できるサービス事業所(通所・短期入所・居住サービス等)が不足している。常時の医療的ケアが必要でも歩行可能であれば療養介護の主たる対象になりにくく、家族の負担が大きい。 *医療的ケアに対応できる居宅介護事業所は、喀痰吸引研修受講費用が高額であることや、研修に人員を割けないことから人材育成が十分に行えない。 *難病等により多数の医療機関(診療所)と福祉サービスの連携が必要な場合、医療ソーシャルワーカー等が配置されていない医療機関との連携が難しい。 *介護者の高齢化・病気等で施設見学、同行、送迎が困難。また送迎が利用できない場合の代替サービスがなく金銭的負担が大きい。 *従来の障がい児保育制度がサポート保育に名称も変更され、看護師配置の拡大など保育園での受入体制の整備は進んではいるが、実際の受入事業所はまだ少ない。 区基幹で検討したアイデア ・重症心身障がい者のレスパイト入院の受け入れを柔軟に行う。 ・医療機関に併設する24時間体制のグループホームを設置する。 ・24時間対応の巡回型訪問看護など、訪問看護の柔軟な運用を検討する。 ・看護師資格を持つヘルパーは日常的な医療行為にも対応していけるようにする。 ・喀痰吸引研修修了者は確実に喀痰吸引を行えるように体制を整える。 ・医療的な行為に対して適切に評価する加算制度を整える。 ・事業所一覧に、喀痰吸引研修、24時間対応、年中無休などの情報を加える。 今後の方向性  キーワード… ●レスパイト入院の受け入れ拡充、医療機関併設のグループホーム開設等、医療法人参入の促進 福岡市の地域課題(その他) テーマ12 ひきこもりの状態で、対人関係や外出に不安を抱え、障がい受容が難しい場合、医療機関や福祉サービスにつなげることができない。また、障がい疑い・障がい者手帳未所持者への介入が難しい。 主な内容 *他者との関わりを拒否して介入ができない。障がい受容ができていない為に障がい福祉サービスや受診を拒否され、介入継続や支援導入が難しい。 *在学中から不登校となり、卒後もひきこもりが常態化してしまうケースもある。 *訪問診療もあるが、数が少なく費用が高いこともあり、利用しにくい。 *訪問型の福祉サービスを考えたいが、アウトリーチ型支援を提供する事業者が少ない。また、訪問診療も実施機関が少なく、費用面も対応できない。 *外出のきっかけになる場所や気軽に体験できる機関が少ないために支援が進まない。 *各種依存症の発症や家庭内暴力に繋がるケースもある。 *障がい者手帳未取得・非該当の場合、福祉サービスが受けられない等、支援の手立てが少ない。 *対象像が明確でない場合について、主となる支援機関の設定や役割分担、支援の組み立てが困難。 区基幹で検討したアイデア ・ヘルパーや相談支援専門員は、「障がい」を受容してもらうための説明方法を考える。 ・日中活動については、「昼ごはんを食べに行く」など、はじめの一歩として通所できる環境を用意する。体験機会の確保。 ・地域活動支援センターは、契約等の事務手続きがなく、計画相談・個別支援計画も必要ないことをPRする。また、本人が主体的に取り組むスタイルなど、福祉サービスとは違う特徴をさらに活かしていく。 ・通所サービス事業所を含めて、柔軟な利用時間の仕組や空間の保証に努める。訪問型生活訓練を取り入れる。 ・児童において、それぞれの発達期に応じた専門性や障がいごとの専門性のある放課後デイサービスの構築も検討する。また、発達障がい児童の療育や不登校児の受け入れについても考えていく。 ・訪問診療による柔軟な対応、訪問看護による本人の困り感に応じた柔軟な支援、実施機関の増加。 ・サービスに繋がっていないが、ひきこもりをしている人に関する情報共有 ・未診断の方に対し、一定の条件(自宅にひきこもっている期間の長さや、就労経験など)のもと、暫定的な医療費減免制度や暫定的なサービス利用の緩和。 ・ひきこもり支援センターでの対応要件や基幹センターとの役割分担について整理する。 今後の方向性  キーワード…訪問型の障がい福祉サービス、訪問診療 ●障がいの有無に関わらない、ひきこもりに対する専門機関の連携体制の強化 ●訪問型の障がい福祉サービスの拡充、訪問診療の柔軟な対応 テーマ13 罪を犯した障がい者への支援に対応する関係機関が少ない。 主な内容 *罪を犯した障がい者への地域生活支援について、福祉サービス事業者や、司法、医療、就労、教育など、各分野において必要な支援が十分に理解されていない。 *本人のニーズに合致する支援体制の構築が難しく、実際に提供できる福祉サービス等(相談支援事業所を含む)は限られている。 *支援機関が再犯防止(犯罪抑止)やトラブル防止を優先し過ぎるあまり、本人の生活や行動の自由が制限されてしまう。 区基幹で検討したアイデア ・本人の特性や傾向を理解し、重層的に粘り強く支援をする。職員への理解、啓発(研修、不安に思う職員へのサポート等) ・加算を活用した事業所運営。または、触法障がい者支援における加算の見直し。 ・対人関係や不適応等により通所が困難な方に対するアウトリーチサービスの実施(訪問型生活訓練・自立生活援助など) ・本人が犯罪を起こすプロセスを整理し、傾向や対策を関係機関と共有する場を持つ。(個別ケア会議等) ・出所後の継続した医療提供及び往診等アウトリーチサービスの実施。治療の方針や、適切な関りなどについての指導、助言。 ・障がい理解(障がい故の犯罪行為)や支援体制などの普及啓発。 ・地域での見守り体制の構築。 ・ヘルパー2人体制でのサービス等、本人の状態に応じた支給決定の柔軟化。 ・本人が不穏時の訪問等に警察OBのバックアップを受けられる体制づくり。 今後の方向性  キーワード…本人の特性などの共有、受け入れる事業所の拡充 ●本人の特性や傾向、犯罪に至るプロセスや背景などを関係機関で共有する場の検討 ●対応する事業所を増やす取り組み(研修などの啓発、受け入れる事業所の加算の見直し)の検討 テーマ14 日常的な金銭管理を必要としている障がい者は多いが、支援機関が不足し、支援体制も十分整っていない 主な内容 *日常生活自立支援事業の対象から外れる障がい者、該当するが待機者が多いためにすぐに利用できない障がい者に対して、他に金銭管理を担う事業所が見つからない。 *成年後見申請を行っても、受託者が見つかりにくい場合がある。また、小口の現金管理を行っている後見人は限られている。 *金銭管理の必要性があっても、人から管理されることへの不信感や、申し立て手続きの煩雑さ、理解することの難しさから成年後見制度の利用は進みにくい。 *障がい特性や疾病からくる不安感や依存症による自制の難しさなど浪費の原因も様々であるが、小口の金銭管理や分割支給など現制度では対応できていない。 *お金の使い方や電子決済、キャッシングやローンなど、生活に身近な金融システムについて、本人が学ぶ機会がない。 区基幹で検討したアイデア ・訪問型自立訓練や自立生活援助等のアウトリーチサービスを提供する事業者を増やす。 ・サービス事業所において、保護課、社会福祉協議会と連携し部分的な金銭管理を担う。 ・特別支援学校において金銭管理の方法、成年後見制度について学ぶ機会を作る。 ・日常生活自立支援事業の人員を拡充する。 ・金銭管理、支給方法について保護課、社会福祉協議会との協議の場を作る。 ・成年後見制度の普及啓発を行う。 ・学習による知識の取得を促す取り組みの検討を行う。 今後の方向性  キーワード…アウトリーチ、関係機関との協議、ガイドライン ●アウトリーチサービスを中心とした支援機関の拡充 ●関係機関との課題の共有及び協議の場の設置 ●障がい福祉サービス提供事業所が金銭管理を行うためのガイドラインの作成 テーマ15 異性関係や性への理解が難しいことで、想定外の妊娠・中絶、育児に対応できずに虐待につながるケースがある。売春、DVなど触法領域に及ぶ課題もみられる。 主な内容 *知的障がい等の判断能力の乏しさから、生活の乱れ、度重なる妊娠・中絶、ホスト通いや風俗勤務、売春行為、SNSを利用したトラブルなどにより、困難な生活状況に陥る。 *異性との関わり方、性に関する知識等を学ぶ機会や、伝える手段がない。本人や家族に理解を促すことも難しく、課題を解決しにくい。 *未婚での出産や離婚、機能不全家族など、家族からの協力が得られにくい場合、育児が困難である上、DV・虐待・触法など課題の連鎖に繋がりやすい。 *伴走型支援による長期的な支援体制が必要だが、支援できるサービス・機関がない。 区基幹で検討したアイデア ・異性交流や性交、出産、育児等について、分かりやすくレクチャーするスキームをつくり、説明機会を実施する。保健師の  協力も有効。 ・幼少期から、学校や放課後等デイサービスで異性とのつきあい方を学べるようにする。 ・障がいのあるシングルマザーに焦点をあて、育児支援の活用を含めて利用できるサービスを明確化する。 ・アウトリーチサービスを実施する事業者を増やし、伴走型支援の拡充を図る。 今後の方向性  キーワード…性知識の取得 育児支援 ●幼少期における性に関する学習機会の提供と性交・出産などのリスクに関する説明方法の検討 ●育児支援を含めたアウトリーチ支援の拡充 テーマ16 本人あるいは家族の性格や気性、障がい特性上、対応が難しく、引き受けられる障がい福祉サービス事業所や医療機関が見つからない。また、支援者の精神的負担が大きく、支援の継続が難しい。 主な内容 *カスタマーハラスメント(不条理なクレーム、過度な要望、人格を傷つける発言など)、セクシャルハラスメントの行為があり、支援者が疲弊し、支援の継続が難しい。 *サービス事業所等では、カスタマーハラスメントによる精神的苦痛から、離職者があり人材が不足することがあるが、サービス事業所を守る仕組みがない。 *本人や家族からの暴力行為があった経緯により、支援の検討段階で受け入れ拒否が相次ぎ、受け入れ可能な事業所が制限される。 *支援者に対する過度の依存、あるいは拒否があるため、支援を継続することが難しく、近隣住民や親族とも関係が築けず、地域で孤立している。 *本人の特性を理解することの難しさから、支援者が対応に苦慮し、継続的なサービス利用や、新たなサービス利用につながらない。 区基幹で検討したアイデア ・事業者が苦情解決、権利擁護、接遇マナー研修を受講し、カスタマーハラスメントを受けたときの対応技術を身につける。 ・サービス提供内容が事業所や支援者によって異ならないように、事業所間や支援者間で支援内容の共有を徹底する。 ・医療機関と本人の情報を共有し、必要に応じて医療面からも本人に介入してもらう。 ・事業所が相談できる法律相談窓口を設置する等、事業所を守る仕組みを作る。 ・カスタマーハラスメントに対応できるよう、相談者・利用者に対する対応指針、ガイドライン等を制定する。 ・必要に応じて行政が福祉サービス事業者に対し、苦情解決体制や方法についての指導・助言を行う。 ・支援者用の相談窓口の設置やカウンセラーの派遣等、支援者のストレスケアを行う仕組みを作る。 今後の方向性  キーワード…苦情解決技術の向上、支援者のメンタルケア、事業所・支援者を守る体制づくり ●支援者や事業者が守られる仕組みについての検討 ●事業者による苦情対応の向上、職員のメンタルケア テーマ17 災害時、パンデミック状況下で、避難・安全確保が困難である。また、その収束後においても影響が大きい 主な内容 *知的障がい、精神障がいにおいて、正確な情報を得て理解することが難しい、リスクを回避する行動がとれない、こだわりを解消しづらいため、必要な防災・避難行動ができない。 *家族や周囲との関係が希薄な場合、災害時に迅速な判断・行動が難しい。 *重度障がいでない場合、避難行動要支援者名簿へ登録していないケースも多いと考えられ、孤立する可能性がある。 *人工呼吸器等の医療機器を使用している場合、機器破損や移動のリスクがあり、また停電により電源確保ができず深刻な状況になることが予測される。 *コロナにより通所自粛となった影響で精神的に不安定となり、自粛解除後も自宅から出られず通所再開できなくなる等、支援継続が困難となるケースがあった。 区基幹で検討したアイデア ・避難マニュアルを作り、家庭、事業所それぞれが内容を確認しておく。 ・避難する時に必要な支援や本人の特性に合わせた事前準備、要援護者リストの作成、災害時連絡方法の確認、避難経路や避難場所の確認をする。 ・通所できない間、自宅や事業所以外の場所でも利用できるようなプログラムを事前にいくつか準備する。 ・病院にも相談し、医療器具の定期的なバッテリー寿命の確認や、外部電源の準備、非常用電源の場所や災害時受け入れ可能な医療機関、数日分の常備薬の確保など、災害に備えた準備をする。 ・災害発生後、専門職によるカウンセリングや障がい特性に関する相談支援を提供する。 ・地域での防災訓練に、事業所も参加する。 ・総合防災訓練を区単位ではなく中学校区ごとに実施するなど、より身近なエリアで災害シミュレーションを行う機会を作る。避難所の下見をする。災害用テントや非常用トイレ、段ボールベッドなどを実際に使い避難の体験学習ができる場を提供する。 ・福祉避難所の活用や、利用を希望する方への情報提供の流れについて事前に協議し、災害発生時に備える。 今後の方向性  キーワード…避難マニュアル、医療・地域・事業所を含めた避難計画、訓練、災害時の心のケア ●地域住民を含めた災害時の対応、避難先、連絡体制などを確認 ●障がい特性に合わせた避難先の拡充 ●個別のケースにおける、障がい特性に合わせた避難計画の作成