資料2−1 福岡市が策定する次期保健福祉総合計画に対する意見書 令和2年3月 福岡市障がい者等地域生活支援協議会 目次 はじめに 1 各専門部会からの意見提言 2 福岡市障がい者等地域生活支援協議会委員からの意見 3 委員名簿   はじめに (1) 福岡市障がい者等地域生活支援協議会について 福岡市では,平成19年6月に「自立支援協議会」を市内4地域ごとに設置した。その後,組織を再編し,平成24年8月,全市域を対象とする「福岡市障がい者等地域生活支援協議会」(以下「協議会」という。)を設置した。これは,障害者総合支援法第89条の3第1項に規定に基づく法定機関であり,また,福岡市附属機関等の設置及び運営に関する要綱第2条第1項に規定される附属機関でもある。 協議会は,各区において障がい者等の地域生活に係る支援がより適切に行われるよう「区部会」を設置するとともに,必要に応じて,特定の事項を調査,研究し,施策提案の検討を行う「専門部会」を設置している。令和元年度は,専門部会は,地域移行部会,地域生活支援拠点等検討部会,精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会,触法障がい者部会がそれぞれの特定の事項について,調査,研究,検討を行った。 (2) 保健福祉総合計画等に対する意見書について 協議会には,必要に応じて設置される専門部会があり,令和元年度は3つの専門部会が,それぞれが検討の対象とする課題「障がい者の地域生活移行」「地域生活支援拠点等整備促進」「精神障害に対応した地域包括ケアシステム構築」について,集中的に課題整理,検討を行った。 現在,福岡市で策定作業が進められている次期保健福祉総合計画(以下「次期計画」という。)に,各専門部会が協議・検討した結果を反映させるため,意見書をまとめた。 また,協議会委員に対し,次期計画案が示される前であるため,現・保健福祉総合計画(以下「現計画」という。)について,ご意見(課題・問題点等)及びご提案の提出を依頼した(期間:令和元年12月26日〜令和2年1月31日)。 これは,各委員の意見を現計画の記載順に並べたものであり,協議会委員の総意に基づくものではないことをお断りしておく。 (1)(2)をあわせて,協議会からの意見書として提出するものである。 1 各専門部会からの意見提言 (1) 障がい者等の地域生活移行に関する提言  参考資料1 (地域生活移行部会) (2) 福岡市地域生活支援拠点等整備促進に関する提言  参考資料2 (地域生活支援拠点等整備検討部会) (3) 精神障がいに対応した地域包括ケアシステム構築に関する提言  参考資料3 (精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会) 2 福岡市障がい者等地域生活支援協議会委員からの意見 以下のとおり,協議会の委員から寄せられた「意見」「提案」等を現計画の記載順に整理した。 表記について ゴシック体は現計画の該当箇所を示す。 「 」で挟まれた文章は,現計画の文章,変更案又は追加案の文章を示す。 左欄に意見,右欄に提案又は文章の修正案,追加案を記載した。その分類が明らかでないものは,意見・提案と表記している。 計画策定について <意見・提案> 〇一貫支援,切れ目のない支援のためには,教育との計画共有,協働が欠かせない。特別支援教育での取り組みと協働しての具体的な計画立てはできないものでしょうか。 第1章 障がい者分野の基本理念等 181ページ 3段落目 「障がいのある本人もその家族も,安心していきいきと生活していくためには,将来自立して生活できる環境を整備することが重要であり」 <意見> 〇基本理念の実現に向けた考え方の一番に(1)障がいのある人の自己決定の尊重及び意思決定の支援が掲げられていることを,文面にも活かしてください。 <修正案> 「障がいのある本人もその家族も,安心していきいきと生活していくためには,障がいのある本人が,どんなに障がいが重くても意思を尊重されて,あるいは,意思決定支援を丁寧に受けながら将来自立して生活できる環境を整備することが重要であり(下線部の追加)」 第2章 施策各論 基本目標1 地域で安心して生活するための支援の充実 現状と課題 (1)相談支援 <意見> 〇複合的な課題を抱える家庭が多く有り,相談体制が飽和状態にあること。 <提案> 〇親が高齢者で子が障がい者である家庭や併せて生活困窮であるケース,または障がいを要因とするひきこもり者がいる家庭など相談支援を必要とするケースが増えている。 (1)相談支援 「相談支援については,対象とする障がい種別,年齢や役割が機能的に整理されていない状況にあります。」 <意見> 〇区基幹相談支援センターが設置されたので,今回の計画には,設置後の現状と課題にする。 <修正案> 「区基幹相談支援センターは,身近な場所にあり,相談窓口を一元化して設置したため,相談しやすくなりました。しかしながら,相談内容が多岐にわたり,件数も増え,センターの負担が大きくなっています。」 (2)在宅・施設サービス <意見> 医療ケアの必要がなく,重症心身障がいでもない知的の重度障がい者が利用できる短期入所事業やグループホームも少ないです。 例えば, @ショートステイは,通常の利用者の支援がある上に,マンツーマンで支援が必要という方は利用を断られる。グループホームの入所も断られる。 Aグループホームでの特例居宅の受給は難しい。 B訪問看護の利用が難しい。 C夜間や日中を支援するための支援員を置くには,運営が厳しい。 D重度の人たちの支援には,人が必要だが,運営が難しい。人も集まらない。 <提案> 〇知的の重度障がい者が利用できる短期入所事業やグループホームも必要であることを示す文面や,資料をつけてください。 (施策1−1)相談支援 <意見> 〇基幹センターの拡充あるいは特定相談支援事業所の強化が必要。 <提案> 〇基幹センターの実績を踏まえて拡充を検討する。 〇特定相談支援事業所が計画相談では難しいケースに対応するための委託相談支援を検討する。 2つ目の〇 「きめ細かく継続的な支援を行うため,指定特定相談事業所や相談支援専門員の増加など,相談支援体制の充実に向けた取り組みを検討します。」 <意見> 〇サービス等利用計画が一人ひとり立てられるようになったことは,必ず,相談できる場所,家族以外に障がいのある本人を知る人がいることは,安心につながっています。しかしながら,アセスメントは行われていますが,長い期間同じ目標や願いがそのままになってしまっている,立てたサービス等利用計画を暮らしに反映できるまでになっていないケースも多くあります。 <修正案> 「きめ細かく継続的で,計画が暮らしに反映できるように支援を行うために(下線部の追加)」 <意見・提案> 〇障がい者等地域生活支援協議会において触法障がい者への支援が議論されているが,今後の計画の中に盛り込むことが必要。 (施策1−3)移動・外出支援 <意見> 〇グループホーム入居者が原則,移動支援を利用できない。 〇通所サービスの利用後,帰宅しないと移動支援で買い物も行けないのは,合理的配慮に欠ける。 <提案> 〇グループホームで暮らす人が増えていることに対応し,移動支援による社会参加の機会を増やす。 〇通所サービス事業所を起点にして,移動支援による買い物等の外出ができるように検討する。 (施策1−6)年金・手当等 <意見・提案> 〇障がい者の文化的生活保障が必要。 (施策1−7)住宅支援 <意見> 〇親亡き後を含め,障がい者の生活の場として入所施設からの地域化が叫ばれ,主にグループホーム(GH)の拡充が言われているが,市が実施した本人アンケートによればGHの入居者のうち4割しか現状に満足していない。 〇障がい者の居住の選択肢を増やすことが大切で,施設入所,GH,賃貸の一人暮らし・仲間暮らし,自宅など,多彩な選択肢が必要である。それは,高齢者の暮らし場として,自宅からホームまでいろいろありうることと対応する。 <意見> 〇重症心身障がい者や強度行動障がい者が入居できるグループホームが絶対的に不足している。 <提案> 〇常時介護を必要とする障がい者がグループホームで生活できるようにするために福岡市としての施策を検討する。 2つ目の〇 「障がい者グループホームに関しては,開設時に必要な敷金や備品などの経費を補助するとともに,市営住宅を計画的に活用するなどの設置を進めます。」 <課題・問題点等> 〇開設時だけの補助だけではなく,運営費の補助も必要です。また,市営住宅は,家賃が低く,とても有効ですが,ばらばらの場所でグループホームとして使えない場合があります。 〇他都市では取り組んでいるところもあります。 <修正案> 「障がい者グループホームに関しては,開設時に必要な敷金や備品,また継続的な運営費などの経費を補助するとともに,市営住宅をグループ使用として使いやすいように計画的に活用するなどの設置を進めます。(下線部の追加)」 (施策1−9)発達障がい児・者への支援 <意見> 〇発達障がい児・者への支援をすすめていくには,各事業所や就労先,相談先などの身近な地域で特性に応じた支援を受けられる体制を作ることが必要。 <提案> 〇発達障がい者支援・障がい者就労支援センター(仮称)の構想においては,「地域での支援体制づくり」を方針のひとつに据える。 <意見> 〇成人期の発達障がいについては,親・子共の高年齢化に伴い,親との同居からグループホームや単身アパート暮し等の地域生活移行への課題がある。 〇そこで,発達障がい児・者への支援の個所に成人期の発達障がい者の支援について具体的な記述をお願いします。 <提案> 成人期の発達障がい者には,在宅からグループホームや単身生活を希望している人がいることを踏まえて,在宅者が地域で理解され,安心した生活をするための,地域生活での問題点や解決に向けた相談から支援等まで,一貫した支援の充実を図るため関係機関等と連携して進めます。 現在の主な事業 <意見> 〇発達障がい者支援・障がい者就労支援センター(仮称)基本計画の基に2023年頃に開設予定との事である。ゆうゆうセンターの機能の中に自立訓練がある。また,あいあいセンターの機能の中に発達障がい者の自立訓練があるので,現在の主な事業に自立訓練の掲載についてご検討ください。 <追加案> 事業名:「自立訓練」 事業概要: 「成人期の発達障がい者について社会生活や就労を続けていくうえで,重要な生活面の能力や重要なコミュニケーション能力の向上を図るため,自立訓練を実施」 (施策1−11)災害対策の推進 <意見> 〇当事者の意見や体験談が必要です。 <追加案> 「障がい当事者,当事者団体の意見を聴き取りながら進めます。」 (施策1―13)人材の育成・研修 <意見> 〇福祉サービスは,人と時間と技術である。どれが不足しても有効な支援にならないので,福祉人材が種々の研修やスーパーバイズを受けやすい環境整備が必要である。しかし,福祉分野の給与が低く,人材が枯渇している。 <提案> 〇保育を含む福祉分野で給与水準を上げる必要がある。福祉の現場の仕事に市役所の職員並みの給与を。 〇保育・教育の無料化では現場の大変さは何ら解決しない。保育・教育予算を倍増し,現場に余裕を創出する。 <意見> 〇発達障がい者支援において,各種研修会を受講した支援者が研修で学んだことを現場で必ずしも生かせていない状況あり。個の支援者の学びにはなっていても,組織単位での支援実施につながりにくく,一貫した支援となりにくい。 <提案> 〇個々の支援者が研修会で学んだことを事業所等の組織で生かしていくためのリードをする支援リーダー・スーパーバイザーを育成するための研修体系づくり。 〇機関コンサルテーションによる,個々の支援現場に即した組織的な支援展開の提案。 基本目標2 就労支援・社会参加支援の充実 (施策2−1)就労支援 <意見> 〇就労移行支援事業所のスキルアップに関して就労支援センターがバックアップをしているが,就労継続支援A型,B型の通所する障がい者の中にも一般就労を希望する人もおり,支援者が支援に悩むケースがある。 〇また,大学・短大などの高等教育機関においては,在籍する障がい者が年々増えており,卒後の進路支援に苦慮している。企業や公的機関での障がい者雇用は法律の改正,後押しもあり着実に進んでおり,障がい者にとっては就労へのチャンスが広がっている時期でもあることから,障がいの重軽度を問わず,一人でも多くの障がい者が就労を実現し,納税者として社会に貢献,活躍できる福岡市を目指してほしい。 <提案> 〇就労支援センターにおいて,就労移行支援事業所だけではなく,就労継続支援事業所や大学・短大等の高等教育機関等に対しても,研修会の実施,当事者に対する支援の方法などの情報提供を通じて関係機関支援を行う。 〇また,障がいの状況等により,就労の意欲はあるものの就労が困難と考えられている人については,関係機関からの依頼等に応じ連携支援を提供する。 <意見> 〇就職への困難度の高いのは精神・発達障がい者だけではなく,重度身体障がい者,知的障がい者,また難病の人なども含まれる。このような方々の相談については,求人に応募し他者との一斉選考という競争の中ではなかなか就職につながらないケースが多い。この場合には,本人支援と合わせ,その人に合う職場の開拓や企業に対しての理解促進,業務の創出,職場環境の整備,障がい者への関わり方に関する支援など様々な企業支援を提供することが必要であり,より個別の対応が必須となる。 〇障がい福祉サービス事業所が充実し,障がい者の就労に向けた多様な支援が提供されているが,企業支援に関しては依然不慣れなところが多い状況である。 <提案> 〇今後,発達障がい者支援・就労支援が一体となって支援を提供する拠点施設が創設されていくこととなる。就労支援センターでは個別支援は原則しないとの方向性が出されているが,就労支援センターが培った企業支援のノウハウや情報を生かし,また個の障がい特性に応じた支援を提供することができれば,就労の困難度の高い障がい者の就労実現につながるのではないかと考える。よって,困難度の高いケースに関しては,関係機関からの依頼やそのケースの状況,社会の情勢や雇用の情勢等に応じた柔軟な対応として,連携支援また直接支援を提供する。 現在の主な事業 福岡市障がい者就労支援センター <追加案>「事業概要」欄の記載 「障がい者の就労促進のため,関係機関などのネットワークの中心となり個々の障がい者に対する総合的支援を実施するとともに,企業の障がい者雇用にかかる支援や職場開拓及び就労移行支援事業所等へのスキルアップに向けた支援を実施。(付記)」 現在の主な事業 精神障がい者社会適応訓練事業 平成30年度に事業が終了していると思われる。 (施策2−6)スポーツ・文化・レクリエーション・社会参加の推進 <意見・提案> 〇スポーツや芸術分野で,競技団体等の理解を得ながら,障がい者と一般市民の垣根を越える仕掛けを行政的に試みる。 基本目標3 障がいに対する理解の促進 (施策3−1)啓発・交流の推進 <意見> 〇啓発に取り組んでいる当事者団体の活動も,子どもたちとの交流に取り組んでいる団体の活動の支援と同様に行ってください。 〇啓発は,共生社会の根本に大きくかかわるところで国の施策でも,また福岡市でも力を入れています。明記してください。 〇他都市では,団体を応援したり,一緒に行っているところもあります。 <追加案> 2番めの〇 「障がい理解の啓発に取り組んでいる団体の活動を支援したり,一緒に啓発活動に取り組みます。」 基本目標4 権利擁護の推進 (施策4−1)権利擁護・虐待防止 3つ目の〇 「障がい者虐待の防止及び早期発見のための啓発活動に取り組むとともに虐待の通報・届出受理後は虐待再発防止のために擁護者及び被虐待者に対し支援を行います。」 <意見> ○先ずは,速やかな解決が必要です。 事例を分析して,差別が起こらないようにしてください。 虐待者は擁護者だけで良いのでしょうか。 <修正案> 「障がい者虐待の防止及び早期発見のための啓発活動に取り組むとともに虐待の通報・届出受理後は,速やかに解決するよう取り組みます。また,事例については,分析し,虐待再発防止のために擁護者・施設従事者・使用者及び被虐待者に対し支援を行います。(下線部の追加)」 <意見・提案> 〇障がい者虐待防止活動のために,広く関係機関を集めて定期的な情報交換と支援の振り返りが必要。 基本目標5 差別解消のための施策の推進 (施策5−1)障害者差別解消法施行に伴う対応 意見 〇福岡市に差別禁止条例ができ,事例も集まっていると思います。事例を解決し,分析して差別が起こらないようにしてください。 <追加案> 「事例について解決し,分析,予防,再発防止に取り組みます。」 その他 <意見> 〇役所内でも局,部,課,担当が違うと情報共有がなされていないことが多い。地域や関係機関間での連携や総合的な対策も大事だが,役所内の連携をもっと密に。 〇障がい児対策は,障害者総合支援法と児童福祉法にまたがり,担当部局も保健福祉局と子ども未来局にまたがる。隙間のないような施策をお願いしたい。特に教育(教育委員会)との連動は最も重要である。 〇基本的な生活を支える部分を厚くする必要があり,OECD各国の中でワースト5に入る子どもの貧困(=若年成層やひとり親家庭の貧困)対策が急務であるが,同様に,障がい者の文化的生活保障が必要。 〇現物支給的サービスと現金支給(手当)の関係の整理がなされていないまま,両方の対象が拡大している。発達障がいや難病を含め制度が追い付いていないので,国の仕事ではあるが,整理・整備していることが必要。 〇心身障がい福祉センターの老朽化が激しいので当面の補修と近々の建て替えが必要。 〇ユニバーサル・デザインからヒューマン・センタード・デザインへ。 〇高次脳機能障がい,医療的ケアの啓発と対策強化を。 3 福岡市障がい者等地域生活支援協議会委員名簿(令和2年3月23日現在) 区分 委員名 役職 学識経験者 野口 幸弘 西南学院大学大学院 非常勤講師 障がい当事者(家族を含む)団体 石田 照年 福岡市身体障害者福祉協会 常務理事・事務局長 下山 いわ子 福岡市手をつなぐ育成会 保護者会 会長 鷹尾 和顕 福岡市精神保健福祉協議会 奥野 幸子 福岡市成人期高機能自閉症・アスペルガー症候群等親の会「あすなろ」 副会長 山口 信一郎 福岡市立特別支援学校PTA連合会 会長 服部 美江子 認定NPO法人 障がい者より良い暮らしネット 理事長 福岡市の相談支援事業の委託事業者 宮ア 千明 福岡市社会福祉事業団 福岡市立心身障がい福祉センター センター長 藤 みよ子 福岡市南区第3障がい者基幹相談支援センター センター長 橋本 文 福岡市社会福祉事業団 福岡市発達障がい者支援センター 所長 福岡市の児童発達支援センター事業の委託事業者 小川 弓子 福岡市社会福祉事業団 福岡市立東部療育センター センター長 障がい福祉サービス事業者 中村 隆 福岡市障がい者生活支援事業所連絡会 会長 末丸 忠弘 福岡市民間障がい施設協議会 理事 保健・医療関係者 長谷川 浩二 福岡県精神科病院協会 副会長 教育・雇用関係者 日 徹 福岡市立特別支援学校 校長会 会長補佐 K田 小夜子 福岡市社会福祉事業団 福岡市障がい者就労支援センター 所長 福留 摩里子 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構福岡障害者職業センター 主幹障害者職業カウンセラー 権利擁護関係者 國府 朋江 福岡県弁護士会 原田 博治 福岡人権擁護委員協議会 副会長 地域福祉関係者 常岡 和臣 福岡市社会福祉協議会 事務局長 永柄 弘子 福岡市民生委員児童委員協議会 常任理事 参考資料1 障がい者等の地域生活移行に関する提言 令和2年3月  福岡市障がい者等地域生活支援協議会  地域生活移行部会 目次 1.はじめに 2.福岡市障がい者の地域生活への移行に関する調査について (1)調査の目的 (2)調査対象数と回答数 (3)調査内容,項目 (4)調査結果の概要 3.地域生活移行における課題と課題解決に向けた提案 (1)住宅の確保について (2)日常の生活支援の強化について (3)入所施設の「送り出す力」,本人の「踏み出す力」について (4)体験・訓練の場の確保について (5)働く場の確保・所得保障について (6)権利擁護について (7)災害対策(災害時の支援体制)について 4.グループホームの設置促進,利用者への支援についての提案 (1)グループホームの開設について (2)グループホームの運営について (3)グループホームの「迎え入れる力」,グループホームでの生活の支援について 5.重度障がい者対応グループホームの設置促進,利用者への支援についての提案 6.地域生活移行についての基本認識 7.まとめ 8.提言内容の全体像 1.はじめに 福岡市では,平成28年6月に策定した『福岡市保健福祉総合計画』において「障がいのある人が必要な支援を受けながら,自らの能力を最大限発揮し,地域や家庭でいきいきと生活することのできるまちづくり」を基本理念に掲げ,障がい者の高齢化・重度化や「親なき後」を見据えた施策に取り組んでいる。 同時に,障がい者が安心して地域での生活を継続できるよう,相談,体験の機会・場の確保,緊急時の受け入れ・対応,地域の支援体制づくりなどを担う地域生活支援拠点等の整備に取り組むほか,グループホームの設置促進などに取り組んでいるところである。 しかしながら,福岡市では,障がい者の地域生活への移行は進んでおらず,『第4期福岡市障がい福祉計画』の期間(平成27年度〜平成29年度)には,国が基本指針に示す,施設入所者が地域生活に移行する目標値を達成できなかったこと,また,障がい当事者やその家族,関係団体からグループホームの設置について強い要望があることなどから,障がい者の地域移行を推進するための新たな施策や手法について検討を行う必要があるとの認識が広がっていった。 さらに,平成29年7月に福岡市保健福祉審議会障がい者保健福祉専門分科会において,福岡市障がい者等地域生活支援協議会(以下「協議会」という。 )に地域生活移行部会を設置し,グループホームの設置促進を含めた新たな施策や手法についての検討を行う旨の意見が出された。 このような状況を踏まえ,平成30年7月の協議会において専門部会として地域生活移行部会を設置し,施設入所者の生活の場を居宅(自宅,アパートなど)やグループホームへ移行することを今後の施策の方向性とし,「障がい者の生活の場のあり方」「 グループホームの設置促進方策」「地域生活を支援する施策との連携」について検討を行うこととなった。 当部会では,平成30年9月から,地域生活への移行を推進する新たな施策や手法について検討を開始した。 当部会では,まず,『障がい者の地域生活への移行』を,「住まいを施設や病院から単に元の家庭に戻すことではなく,障がい者個人が市民として,自ら選んだ住まいで安心して,自分らしい暮らしを実現すること」と定めた。 平成31年1月から3月にかけて,部会での検討に係る基礎データの収集を目的として,入所 施設(事業者)とその入所者および家族,グループホーム(事業者)とその利用者および家族 に対し,アンケート調査を実施した。その結果を基に計10回の協議を重ね,提言(案)をまとめ,提出するものである。 また,当部会では,事務局が部会に提案する内容に対して会議当日に各委員が意見を述べるという消極的な姿勢ではなく,調査票の設計段階から委員が主体的に関わって対案を示し,部会の開催前にあらかじめ各委員が議題についての意見を寄せ,集約した内容について協議を重ねた結果が,今回の提言(案)であることを付記するものである。 2.福岡市障がい者の地域生活への移行に関する調査について (1)調査の目的 本部会では,障がい者の地域生活への移行(障がい者個人が市民として,自ら選んだ住まいで安心して自分らしい暮らしを実現すること。)を推進するための新たな施策や手法について検討を行うための,入所施設の入所者および共同生活援助(以下「グループホーム」という。)の利用者の基礎的なデータと,サービス提供事業者や入所者・利用者およびその家族等のニーズ等を把握するため,平成31年1月から3月にかけて,アンケート調査を実施した。 (2)調査対象数と回答数(調査票による悉皆調査) 市内の全ての入所施設事業所 13カ所中8カ所 市内のグループホーム事業所 140カ所中48カ所 市内の入所施設入所者で市内で支給決定を受けている者(定員約700名中)310名 市内の入所施設入所者で市内で支給決定を受けている者の家族等(定員約700名中)188名 市内のグループホーム利用者で市内で支給決定を受けている者(定員約900名中)374名 市内のグループホーム利用者で市内で支給決定を受けている者の家族等(定員約900名中)157名 (3)調査内容,項目 調査対象と調査項目 事業者のうち入所施設については@入所者・利用者の状況A施設から地域での生活への移行状況B地域生活への移行に関すること(課題・考え方・必要な施策) 事業者のうちグループホームについては@入所者・利用者の状況A施設から地域,地域から施設への移行状況B地域生活移行に関すること(課題・考え方・必要な施策)C設置に関すること(課題・障害の重い方の受け入れ) 入所施設入所者,グループホーム利用者,入所施設入所者の家族等,グループホーム利用者の家族等については@ご自身の状況,ご関係A将来の希望B地域生活移行に関すること(課題)C行政への要望 ※「B 地域生活移行に関すること」は,入所施設事業者を除く調査対象への共通の調査項目。地域での生活(地域移行)を進めるために必要な取組(28項目)について優先度,優先順位を質問。 (4)調査結果の概要 調査結果は,「福岡市障がい者の地域生活への移行に関する調査報告書」としてまとめた。 <参照>ホームページ https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/70692/1/fukuokashishogaisyanochiikisei katsuhenoikonikansuruchosa.pdf・20191118091638 今回の調査では,個々の調査票の回答結果の不整合等について,本人や家族の真意を拾いにくい面があったことをお断りしておく。 ア.現在の暮らしとこれからの意向について (ア)「現在の暮らし」 入所施設入所者,グループホーム利用者ともに,「とても楽しい・楽しい」との回答が80%を超えた。 (イ)「これからの意向」 「このまま施設・グループホームで暮らしてほしい」と回答した家族は,入所施設家族で92.0%,グループホーム家族で73.9%と高い一方,「このままここで暮らしたい」と回答したのは,入所施設入所者の50.3%,グループホーム利用者の40.4%であった。 (ウ)「現在の暮らし」が楽しい人の「これからの意向」 (ア)において,現在の暮らしを「とても楽しい・楽しい」と回答した入所施設入所者のうち,「一人暮らしをしたい・家族と一緒に暮らしたい・仲間と一緒に暮らしたい・その他」と回答したのは25.5%であった。 現在の暮らしを「とても楽しい・楽しい」と回答したグループホーム利用者で同様の回答をしたのは41.2%であった。 現在の暮らしを楽しむ者の中にも,一人暮らしやその他の場所での生活を望む者が存在している。 イ.入所施設入所者について (ア)入所施設入所者の「年代」 40歳以上の入所者は,全体の82%で,60歳以上の入所者は30%となっている。平均年齢は52歳で,最も高齢の方は男性で88歳,女性で93歳であった。 (イ)入所施設入所者の「入所期間・年数」 入所期間が20年を超えている入所者は全体の47%で,40年以上の入所者は6%となっている。最も長い入所者は59年であった。 ※2〜5年未満のうち36人は,施設の分園による入所者で通算の入所年数とは異なる。 ウ.地域移行を進めるために必要な取組みの優先度について 回答を集約し,取組みの優先度を示したグラフ及び表は,巻末資料@及びAのとおりである。 (ア)優先度が最も高いとされた取組み 入所施設家族,グループホーム事業者,グループホーム利用者,グループホーム家族に共通して,「グループホームを増やすこと」の優先度が高い。 (イ)その他,優先度の高い取組み その他,概ね共通して優先度が高い取組みは,「精神障がい者の受け入れが可能な住宅の確 保」「 働く場の確保」「 年金や手当などの所得保障」「 本人が困ったとき・不安なときなどに駆けつけられる体制」等である。 一方,本人とその家族との間で優先度に開きがある項目もある。例えば,「家主・不動産会 社などからの呼び出しに駆けつけられる体制」については,入所施設家族では高いが,入所者では低く,「安心して支援を任せられる支援員の確保・育成」については,グループホーム家族では高いが,利用者ではさほど高くない。 3.地域生活移行における課題と課題解決に向けた提案 生活の場のあり方,既存の地域生活を支援する施策との連携等について,調査結果をもとに協議していく中で見えた課題を挙げ,施設や家族が送り出し,本人が踏み出し,地域が迎え入れ,事業者や行政が実現していくにあたって提案する。 「3」〜「5」の提案について,取り組みの主体を以下のとおり表記している。 福岡市:「市」,福岡市社協:「社」,事業者:「事」,地域:「地」,本人:「本」 (1)住宅の確保について ・不動産のオーナー,宅建業団体の障がい者に対する理解が薄い。 ・特に精神障がい者や発達障がい者に対する偏見は根強い。 ・身内がいないなど孤立しているケースも多いため,民間賃貸住宅への入居が難しい。 ■提案 ・宅建業界団体,権利擁護関係者,障がい者相談支援事業所等が連携して支援体制を構築し,障がい者理解促進に取り組む。(市,社,事) ・福岡市と福岡市社協が実施する住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への入居促進事業である「住まいサポートふくおか」の活用を図る。(高齢者向けに実施しているが,対象者を障がい者に拡大し,東区でモデル事業を開始している。)(市,社,事) ・福岡市社協と古家空家調査連絡会共同事業体が運営するウェブサイトを活用し,空き家等の福祉転用を促進する「社会貢献型空家バンク」を,住まい探しに活用する。(社,事) ・民間賃貸住宅への入居に配慮が必要な人の保証人になる,相談に応じる等の機能を有する居住支援法人を活用する。(社,事) ・アパートを一棟借りし,事業所を間に入れてサブリースする形態を検討する。(事) (2)日常の生活支援の強化について @見守り等 ・単身生活を継続する一つの判断基準は,本人がSOSを出せるかどうかである。本人がSOSを出せると支援者側が思っていても,いざという時に出せないことがある。 ・障害者支援施設やグループホーム等を利用していた障がい者で一人暮らしを希望する人を支える「自立生活援助事業」,居宅で単身生活していて緊急時等の支援が見込めない人を支える「地域定着支援事業」があるが,実施事業所が少なく,利用も低調である。また,期間も1年間と制限があるため,十分活用されていない。 ■提案 ・単身生活移行後の日常生活相談,緊急時の夜間も含む相談など,基本相談支援を充実させるための体制整備にむけた検討が必要である。(市,事) ・企業の地域貢献の一環として取り組まれる買い物支援などの登録制度といった仕組みを活用する。(市,社,事) ・移行定着を図るために,24時間の圏域単位の地域生活支援拠点において,SOSの受付を行う安心コール機能,定期的な相談,巡回体制を検討する。(市,事) ・重い精神障がいをもった人でも,地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう,看護師,作業療法士,精神保健福祉士,就労支援の専門家による多職種チームが24 時間365日,緊急時を含めて生活の場に訪問して支援を提供する包括的地域生活支援の実現が望まれる。(事) ・サービスの利用期間1年間の柔軟な運用により,単身生活移行後の自立生活援助事業者による定期的な訪問等の伴走型支援の充実を図る。(市,事) ・自立生活援助サービスの利用期間終了後,別の枠組みで伴走する仕組みづくりを検討する。(市,事,地) ・既存の制度,事業をどのように組み合わせ,どのように展開することが地域移行,地域定着の促進に有効なのか,利用者目線での事業所からの政策提言(実効性のある事業再設計)が求められている。(市,事) A保証人・緊急連絡先 ・保証人や緊急連絡先が確保できない事例が多い。 ■提案 ・保証人を確保し,地域定着支援事業を含め,緊急連絡先代行サービスができる社会資源を増やす取り組みが必要である。(事) ・保証人がいないために住居が確保できない住宅確保要配慮者にとって,「公的保証人制度」は必要である。身元保証,滞納家賃保証,原状回復保証,家財・火災保証,死後事務 保証,等の機能を有する,平時・災害時フルセットモデルを開発する。(市,社,事) B医療 ・地域における主治医,緊急時の医療機関が確保できない。 ・医療サービスを受ける際の意思決定支援や家族に代わる支援体制がない。 ・てんかんや発達障がいを診療できる医療機関が少なく,福祉と医療機関の連携体制が整っていない。 ■提案 ・医師,医療機関に対し,コミュニケーションをとることに困難がある知的障がいや発達 障がい等への理解を促す啓発プログラム(当事者による訴え,ガイドブックの活用,擬似体験,ペアレントメンター活動)の導入を図る必要がある。(市,社,事) ・医療同意は極めて難解な課題であることから,「医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱(日本弁護士連合会)」「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思 決定が困難な人への支援に関するガイドライン(「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」班)」等,各般の提言などに関心を持ち,理解を深めることが必要である。(市,社,事) ・てんかんや発達障がい,各種依存症を診療できる医療機関の増加に向けて研修会を行う。また,福祉と医療の連携体制の構築に向け,そうした医療機関のリストを整備することが必要である。(市) (3)入所施設の「送り出す力」,本人の「踏み出す力」について ・施設入所者が,グループホームの生活をイメージできないケースが多い。 ・地域移行やグループホームの情報が,本人の将来のこととして繋がっていない。 ・地域移行の支援について,施設側で積極的な取り組み姿勢があまり見られない。 ・施設には,地域移行のノウハウを持ったスタッフが少ない。 ・本人主体の意思決定がなされているかどうか疑問が残る。 ・施設入所が長期化している。 ■提案 ・自己決定支援への取組みが地域移行支援の基盤であり,特に本人に寄り添った,国の意思決定支援ガイドライン等を活用した体験も交えた個別プログラムが必要である。また,地域移行を進める過程では,同じような立場にある仲間によるサポートが重要となる。(市,事) ・地域移行に向けて,認定調査等で,本人や親の意見を適切に聞き取ることが必要である。(市,事) ・地域移行に関する,職員の支援技術の向上を図るため研修の充実,マニュアル等の作成 が必要である。(市,社,事) ・施設入所の早い時期から,地域移行の希望者への情報提供や,希望する住まい・住まい 方を体験できる場を増やすなど,支援プログラムを作成する。(事) ・先進施設・事業所の職員を招いての学習会や先進地域の視察等による意識変革,ノウハウの蓄積と人材育成が必要である。(事) (4)体験・訓練の場の確保について ・地域移行の過程を体験的に学習していく場が少ない。 ・地域活動支援センターT型は,利用者が多いので適応できない人もいる。 ・引きこもり者や発達障がい者などの居場所がない。 ■提案 ・地域移行過程における心配や不安への対応,緊急時への対応等,SOSへの相談機能・体制が必要である。(市,事,地) ・既存の福祉サービスを活用しながらも,カスタマイズ力の高いオリジナルな地域移行事業の研究・創設が必要である。(事) ・多様な障がいに対応した地域活動支援センターの役割を再評価し,身近な地域で安心して過ごせる,魅力ある活動ができる居場所を増やす。(市,事) ・地域活動支援センターのU型・V型など,柔軟性があって居心地がいい場所を増やす。(事) ・イエス,ノー,ヘルプを意思表示できるコミュニケーション力,自己肯定感,経験,体験 の場の確保が重要である。(事,本) ・身辺自立,金銭管理,SOSを出せる等,ある程度の生活スキルを身につける,地域移行の訓練の場が必要である。(事,本) ・入所施設,在宅からの地域移行時の資源として,自立・生活訓練,グループホームのサテライト型等の活用を図る。(事) (5)働く場の確保・所得保障について ・精神障がい者や発達障がい者の一般就労が進んでいない。 ・福岡市内は家賃が高く,また医療費の負担増等もあるため,ふつうの暮らしを送るための お金が不足する。 ■提案 ・「就労」と「地域居住支援」の一体的提供など自立への支援が必要である。(市,社,事) ・精神障がい者や発達障がい者の雇用について企業等への啓発が必要である。(市,社,事) ・家賃補助や所得保障が必要である。(市) (6)権利擁護について ・任意後見制度の活用などもあるが,高齢化の進展による親なき後の身元保証人及び身上保護の問題が切迫化している。 ・入所施設,グループホームにおいて,本人の自己決定と自己選択を支える仕組み(権利擁護システム)が整っていない。 ■提案 ・成年後見制度,日常生活自立支援事業等,金銭管理を含めた支援の質とマンパワーを確保することが必要である。(市,社,事) ・福岡市障がい者等地域生活支援協議会の専門部会に位置づけるなどして,権利擁護の体制について,社会福祉士,弁護士,司法書士,福祉・保健・医療関係者,市など行政,当事者・家族による議論する場を設け,権利擁護のネットワークを形成,意思決定支援の プログラムの作成を検討する。(市,社,事) ・身上保護の問題を解決する仕組みを検討する。(市,社) (7)災害対策(災害時の支援体制)について ・障がい者は,一般の避難所での生活は難しい。 ・避難誘導に際し,地域の人に本人の障がい特性を伝えているが,なかなか理解が進まない。 ・在宅や,福祉サービス事業所などのいずれにおいても,災害時には地域との連携が不可欠 となり,地域でのつながりや助け合いが死活問題となるが,日常の地域交流,災害時を想定した平常時からの連携体制が取れていない。 ■提案 ・災害時ケアマネジメントが機能し得るよう,災害時を想定した基幹相談支援センター,指定特定相談支援事業所による情報共有,安否確認や避難の呼びかけ誘導等,災害時に備える平常時の訓練,及び圏域単位の地域生活支援拠点において,これらをバックアップ,コーディネートする機能が必要である。(事,地,本) ・地域と連携した避難計画の策定や地域の防災訓練に参加するなど,地域防災に備える。(事,地,本) ・サービス等利用計画の中に,災害時の配慮事項を記載しておく。(事) ・災害時に備えて,自閉症などの障がいの特性を,地域の人に理解してもらう福祉教育プ ログラムが必要である。(市,社,事,地) ・避難行動要支援制度の周知,避難行動要支援者同意者名簿への登載促進と合わせて,合理的配慮を組み込んだ配慮事項の策定を促進するために,地域への積極的な働きかけを 行う。(市,社,事,地) ・日常的な地域連携のモデル的な取り組みを試行してみる。(社,事,地,本) ・障がい者の受け入れについて地域防災計画を含めた市全体の仕組みづくりが必要である。(市,社,事,地,本) 4.グループホームの設置促進,利用者への支援についての提案 障がい者の住まいの場としてグループホームも選択肢の一つであるが,特に精神障がい者や発達障がい者の利用希望に対し,数が不足している状況である。アンケート調査からもグループホームを増やすことの優先度が高いという結果が出ており, 障がいの種別や程度に関わらず選択することができるよう,グループホームの設置促進,利用者への支援について提案する。 (1)グループホームの開設について @土地,建物の確保 ・土地の賃借について,所有者の理解が進んでおらず,50年間の定期借地権の設定等が難しいことが多い。 ■提案 ・市有地を含めた土地,建物の貸与や情報提供を行う。(市) ・福岡市社協の「社会貢献型空家バンク事業」を活用する。その際には,「福岡市居住支援法人連絡協議会」との連携を図る。(市,社,事) A開設手続き ・「役所の窓口が複数」「用途変更等の申請が複雑」である点が特に困難である。 ■提案 ・申請に関する情報を一元化し,ワンストップで対応できる機能を検討するとともに,窓口や取扱事務等をまとめたガイドブックを作成する。(市) ・民間で蓄積されたノウハウや実績を生かし,空家に関する多様な相談にワンストップで対応できる人材の育成や,土地探しも含めて情報を提供できる中間支援組織,「福岡市 社協・古家空家調査連絡共同事業体」等の活用を図る。(市,社,事) B近隣住民の理解 ・障がい者と触れ合う機会が少なく,接し方が分からないため,グループホーム建設に不安 を抱く近隣住民がいる。 ■提案 ・相互理解を進めるためには,障がいの特性を知り,本人の生きづらさを軽減できるような対応のできる理解者を増やしていく福祉教育プログラムの実施と,「福岡市障がい者差別解消条例」の啓発が必要である。(市,社,事) ・グループホームの必要性を,行政が市民,地域,社会に説明することが必要である。(市) (2)グループホームの運営について @人材確保 ・夜勤や不規則勤務のため職員の確保が困難である。また,不安感やストレスによる離職も多い。 ・報酬単価が低く人員配置ができないため,職員の処遇の改善を図る必要がある。 ・専門性を持った職員が確保できない。 ■提案 ・報酬単価の引き上げ,人員配置基準の改善を国に要望する。(市) ・夜勤者配置分など人件費補助金制度を創設する。(市) ・高齢者分野で取り組んでいる福祉人材の確保,受け入れの支援の取り組みを参考に検討する。(市) ・地域交流や職員との交流など明るい側面を映したモデル的グループホームの実例や写真,動画などを使った求人活動を行う。(事) A人材育成 ・職員を支援する研修・育成等のマニュアルが整備されていないグループホームが多い。 ■提案 ・行政,民間団体,関係機関,相談支援事業所のネットワークを活用して障がい特性や合 理的配慮等の研修機会を確保する。(市,社,事) ・障がい特性の理解や合理的配慮の促進,生活アセスメント,リスク管理,権利擁護等のマニュアルの共有,活用を進める。(市,社,事) B運営費 ・報酬の対象は利用日のみであり,帰省(外泊),入院,退所等は事業者の収入減となる。 ■提案 ・人件費及び運営費に対する補助金を創設する。(市) ・入院,外泊などによる収入減に対する,減算の見直しを国に要望するとともに,これらを補填する補助金等の制度を創設する。(市) ・運営上の工夫などの好事例を紹介する。(市,事) C近隣住民の理解 ・グループホーム単位での日常的な地域交流が進んでいない。 ■提案 ・事業者,利用者も自治会等への加入や,日常的に地域行事等に参加し啓発を行い,障がい者理解が深まるよう努める。(社,事,地,本) ・地域行事や防災訓練に参加する際,職員が付き添う。(事,本) ・障がい者であっても地域でその人らしく生きる存在(地域で暮らす権利がある生活の主体)であることを住民が理解するための取組みとして,「福岡市障がい者差別解消条例」の啓発イベントなどを行う。(市,社,事,地,本) ・「精神障害者地域生活サポーター(仮称)」を活用した伴走型支援につながる仕組みづくりを進める。(市,社,事) (3)グループホームの「迎え入れる力」,グループホームでの生活の支援について @体験利用 ・体験利用できる空き室のあるグループホームが少ない。 ・空き室があっても,スタッフが足りず体験の受け入れができない。 ■提案 ・体験利用のみに使用するグループホーム等の空き室を,事業者団体などが体験専用の部屋を共有する形で確保する。(事) ・体験利用を行うホームへの助成,体験利用時のホーム以外の職員の共同支援の活用などを実施する。(市,事) ・市が体験利用実施事業の評価を示す。(市,事) A災害時の支援体制 ・災害時の連携体制が構築できていないため,グループホーム単独で災害時の対応をすることには,事業所や利用者にとって不安が大きく困難である。 ■提案 ・災害に備え,事業所,利用者も主体的に地域との交流,防災訓練への参加,連携体制づくりに取り組む。(市,社,事,本) ・グループホーム共通の防災や避難マニュアルを作成し共有する。(市,事) ・事業者と地域の取り組みの好事例を市政だより等に掲載して啓発する。(市,事) 5.重度障がい者対応グループホームの設置促進,利用者への支援についての提案 重度障がい者対応のグループホームの整備は進んでおらず,特に重度対応のために創設された日中サービス支援型グループホームは極端に少ない。 支援区分5,6で常時介護が必要な方,その中でも特にニーズが高い強度行動障がい者,重症心身障がい者に対応したグループホームの設置促進,利用者への支援策について提案する。 @土地の確保,初期費用の調達 ・バリアフリー,障がい特性に応じた構造等を考慮すると,新築することになるが,土地の確保,自前での新築整備は負担が大きい。 ・成功事例やモデル事例が見えず,後発の事業所が参入しにくい。 ■提案 ・市独自の施設設置補助金を創設し,市外の設置予定地にも適用する。(市) ・施設整備や土地賃借料に対する補助制度を創設する。(市) ・スプリンクラー設置費用,全面バリアフリー化,強度行動障がい者対応の特殊壁など,重度障がい者の特性に応じた建築,設備等の補助金を創設する。(市) ・建て貸し方式(サブリース方式)による設置促進策を検討する。(市,事) ・財産区用地を活用する。(市,事) A生活の場と日中活動の場 ・重度障がい者は,自分で生活リズムを整えることが難しかったり孤立してしまったりすることが多いため,特性に応じた生活の場,日中活動の場の確保が必要である。 ■提案 ・障がい特性に配慮し,利用者の地域との交流や社会参加を妨げないようにした上で,特例で同じ場所・敷地に設置を許可するなど柔軟な対応が必要である。(市) B運営費 ・夜間,安全管理,定期巡回,緊急時に備えた夜勤のほか,てんかんを含む服薬や通院など,朝,夕,休日にマンツーマン以上の介助のためには,通常のグループホームよりも多くの運営費が必要である。 ・国の配置基準では,障がいが重く,介助が必要な人への対応ができない。 ■提案 ・日常のADLの維持に必要な人員に応じた人件費補助や,夜勤職員を配置した場合の人件費補助を検討する。また,介助実態に応じた最低限介助に必要な人件費の補助を検討する。(市) C通院・社会参加のための外出支援,サービス支給量 ・個別居宅介護サービスを利用できない。 ・リハビリや転倒事故等による通院が頻回であるが,職員による通院介助等の体制が整っていない。 ・家族や友人がいなければ外出できない。 ■提案 ・特例居宅介護を認めるとともに,支給量の増を図る。(市,事) ・重症心身障がい者,強度行動障がい者などの具体的な介助,疾病実態に応じた必要サービスの把握を行った上で,サービスを提供する。(市,事) ・生活支援ボランティアグループ,保健・医療・福祉分野のNPOの活用など,多様な資源の活用を図る。(社,事,地) ・通院介助の保障,車両利用の特例認可,グループホーム職員による引率など,実態に沿った対応を行う。(市,事) ・外出には福祉有償運送事業を活用するなど,移動支援,外出支援の体制を整備する。(市, 社,事) D受入環境整備 ・心配や不安への対応,緊急時への対応など体制が不十分である。 ・強度行動障がい者は,障がい者地域生活・行動支援センター「か〜む」からの地域移行が困難を極めている実態がある。 ■提案 ・相談機能の配置,医療との連携やバックアップ体制の強化などの支援を図る。(市,事) ・障がい者地域生活・行動支援センター「か〜む」の移行事例を参考にしながら,移行時 の人的関与,相談機関のサポート,移行先のスーパーバイザーなどの体制を協議すべき である。(事) 6.地域生活移行についての基本認識 【地域社会での生活】 ・地域でも社会でも取り組みのベースとして必要なことは「障がい者や障がいに対する社会や地域住民の理解,またそれを得るための取り組み」である。 ・障がいの種別,軽重に関係なく,ノーマライゼーション,ソーシャルインクルージョン,地域共生社会の実現などの理念による地域生活の権利等の再確認が必要である。 ・地域移行のもつ意味は,単に住まいを施設や病院から地域に移すことではなく,障がい者個々人が自ら選択し,自分らしい安心できる暮らしを実現することである。 ・すべての障がい者が地域で暮らす権利をもつ存在(生活の主体者)であり,地域移行の対象となる。医療的ケアが必要,強度行動障がいがある,地域でのトラブルを起こしがちである等の理由で,これまで「最も地域移行が困難」とされてきた人たちを,地域移行の対象から除外してはならない。 ・キーワードは「安心感」。先が見えないと不安なので灯台機能が必要である。灯台が見えるからこそ,一歩踏み出そうと思える。 ・地域移行の具体的なイメージを描けない利用者,家族への意向の聞き取りでなく,丁寧な可視的な情報の提供や体験も交えた選択,自己決定の手続の保障,地域で安心した生活をするために地域生活での問題点や解決に向けた支援が必要である。自己決定支援と自己 選択を支える仕組み(権利擁護システム)を整えることが,地域移行を推進する要件である。 ・地域移行には,障がい者が家族との同居から独立し,自分の住まいを設けること(家族への依存・負担からの解放)も含まれる。 ・地域移行の中心課題は,障がい者であるために地域で生活することを困難にしてしまう社会資源・環境の不足の問題である。 【制度の充実】 ・地域移行は,総合的かつ長期間の視点での取り組みになる。 ・地域移行を進めるためには,障がい者が地域社会で暮らせるための福祉サービスの基盤 整備,とりわけ住まいの確保が最重要課題となる。社会資源を飛躍的に増加すること,すなわち選択する機会があることが,地域移行支援の強力なインセンティブとなる。 ・障がい者の中には在宅(親同居)からグループホームや単身生活を希望している人がいることを踏まえて,在宅者が地域で安心した生活をするための,地域生活での問題点や解決に向けた相談から支援等まで一貫した支援を考慮する必要がある。 【施策推進上の留意点】※行政の「関与する力」に該当する記載。 ・施設待機者実態調査の実施などにより,地域での支援の現状や課題,地域移行に向けた取り組みの根拠を明確にし,真のニーズの把握に努めること。 ・制度間調整と施策の包括化を図ること。 ・福祉施策と住宅施策の統合化を図ること。 ・障がい者の地域移行,地域生活を支える体制整備の着実な推進を目的とした検討部会間(地域生活移行部会,精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会,地域生活支援拠点等整備検討部会)の調整を図ること。 ・アクセスビリティが高く実効性のある施策の充実を図ること。 ・社会資源の整備を加速化させること。 7.まとめ 当部会では,障がい者の地域生活への移行を推進するための新たな施策や手法を検討するため,アンケート調査の設計や分析,協議を進めていく中で,施策推進上の課題は概ね次の3点に集約 された。 1点目は,「住まい」と「日常生活支援」の一体的提供の課題である。障がいの程度に関係なく,本人の意思に寄り添って地域生活への移行を促し,必要な支援を受けながら自らの能力を最大限 発揮し,地域で安心して生活を継続できる仕組みづくりが重要である。しかし,社会資源の不足や福祉サービス基盤が十分整備されていないことが地域移行を阻害していること,福祉サービスの実施主体である行政とサービス提供者である事業者,そして,地域住民が連携,共働して課題 解決に取り組んでいく必要性が強調された。 2点目は,重度障がい者の住まいの場の不足である。グループホームの設置は進みつつあるが, 重症心身障がい者や強度行動障がい者などの重度障がい者対応のグループホームの設置が進んでいない。その原因は,事業報酬体系や人材確保等の問題であり,事業者に対する運営費補助などの必要性が強調された。 3点目は,地域生活移行の前提となる意思決定支援の取組みの不十分さである。居宅生活から施設入所やグループホーム入居,あるいは,家族との同居から独立して居を構えることへの意思 決定支援,入所施設からグループホームや居宅生活に移行する意思決定支援,グループホームから居宅生活に移行する意思決定支援等,それぞれのステージでの意思決定支援が機能してこそ,自らの選択に基づく地域生活への移行が進展することが強調された。 この提言が,障がい者の地域生活への移行,地域生活の継続や重度障がい者対応のグループホームの設置促進などの課題解決に向けた施策を推進する一助となり,実効性のある展開につながることを念じてやまない。 親の高齢化,サポートする家族や親族の減少等,障がい者を取り巻く環境は大きく変化しており,変化に対応できる柔軟で強固な支援体制づくりが急がれる。 今回の調査で施設で20年以上暮らしている人が133人,50歳以上の入所者が171人であることが分かった。家族と離れて暮らすことになった障がい者たちは「自分を愛してくれる誰かが近くにいて,温かな眼差しと愛と信頼に満ちた言葉に満たされたい」と,どれほど思ってきただろうか。人として当たり前の自由「好きなことを考え,行きたいところに行け,食べたいものを食べられ る自由,自分が望む場所で暮らせる自由」をあきらめざるを得なかった人たちがたくさんいることを,私たちは忘れてはならない。 8.提言内容の全体像 福岡市障がい者等地域生活支援協議会地域生活移行部会「提言書」の全体像 送り出す力,迎え入れる力,踏み出す力をエンパワーメントする。 〇基本的考え方 ・障がいの種別や程度にかかわらず,障がい者本人が場所も暮らし方も選べること。(=本人主体の意思決定ができ,選択肢があること。) ・障がい者が自らの能力を最大限発揮し,地域で安心して生活を継続すること。 ・施設,GH,在宅間で移行する場合に,サービスの切れ目がないこと。(=制度の谷間に落ちる人がいないこと。) ・すべての関係者(行政,事業者,家族,本人,地域団体・住民)が連携して障がい者の地域生活を支えること。 〇重度障がい者対応グループホーム(GH)の設置,利用促進策の提案 @GHの開設支援策 ・土地,建物の情報提供 ・諸手続きの支援 ・近隣住民の理解促進 AGHの運営支援策 ・人材確保・人材育成の支援 ・近隣住民との交流促進 特に重度障がい者対応GHの設置,利用促進が喫緊の課題 足りないのは,重度心身障がいと強度行動障害対応のGH ・障がい特性に対応するためには新築。更地が必要。 ・生活の場と日中活動の場の確保 ・人材確保の支援,専門性の確保 ・運営費補助制度の検討 ・医療的ケアが必要な人:医療体制の整備 ・ホームヘルプの在宅扱い,特例措置 ・強度行動障がい受け入れ環境の整備 〇地域生活移行における課題と解決に向けた提案 ・エビデンスに基づき課題を整理した。 ・地域生活移行にはさまざまな形態がある。 ・施設等→グループホーム ・施設等→在宅(単身) ・グループホーム→在宅(単身) ・在宅(家族と同居)→グループホーム ・在宅(家族と同居)→在宅(単身) ・それぞれの形態によって異なる課題,共通課題について整理した。 ・それぞれのプレイヤーに求められることも整理した。 地域生活の共通課題 ・訓練の場,働く場の確保 ・所得補償・家賃補助の検討 ・災害時の支援体制の整備 ・相談支援・医療体制の充実 行政に求められること ・ニーズの把握 ・福祉施策の充実 ・制度間の調整と施策の包括化 ・国への要望 GH生活に必要なこと ・体験利用の推進 ・外出の支援 ・災害時の支援体制の整備 施設等の事業者に求められること ・GH,在宅生活の情報の把握,提供 ・本人に寄り添った個別プログラム作成 ・地域移行の支援技術向上 ・入所が早い時期からの移行支援策 ・先進地域の視察等による意識変革 地域団体,住民に期待すること ・障がい者の理解 ・ボランタリーな見守り ・災害時の支援体制 ・地域行事での交流 在宅生活に必要なこと ・住宅の確保,賃貸住宅入居の支援 ・地域定着の支援 ・日常の相談支援の充実 見守り/緊急連絡先/医療 〇提言書の策定経緯 平成30年7月 平成30年度第1回地域生活支援協議会で部会設置を決定。 平成30年9月 第1回地域移行部会を開催。 平成31年1月〜3月 調査実施(調査票送付,回収,集計,報告書作成) 平成31年4月〜11月 月1回ペースで部会開催。提案内容検討,まとめ作業。 令和元年12月 提言書を地域生活支援協議会に提出。 ○検討体制等 この「地域生活移行部会」は福岡市障がい者等地域生活支援協議会設置運営要綱に基づき,協議会の専門部会として設置され,次のとおり協議を行った。 日程 協議内容 第1回 平成30年9月25日 ・部会長・副部会長の選任 ・地域生活移行における論点について ・「障がい者の地域生活移行に関する調査」実施について 第2回 平成30年11月19日 ・「障がい者の地域生活移行に関する調査」について 第3回 令和元年5月21日 ・部会の目的とスケジュールについて ・調査結果の報告及び共有 ・今後の検討テーマについて 第4回 令和元年6月28日 ・調査結果報告(入所施設関係)の分析 ・今後の進め方について 第5回 令和元年7月30日 ・調査結果報告(グループホーム関係)の分析 ・今後の進め方について 第6回 令和元年8月22日 ・調査結果報告(入所施設関係)の分析 ・グループホームを増やす方策について ・今後の進め方について 第7回 令和元年9月27日 ・提言書の骨格(案)について ・グループホームを増やす方策,地域移行について ・今後の進め方について 第8回 令和元年10月23日 ・提言書(案)について ・今後の進め方について 第9回 令和元年11月1日 ・提言書(案)について 第10回 令和元年11月20日 ・提言書(案)について ○委員名簿(敬称略)(五十音順) 委員名 所属・役職 等 池田 顕吾 福岡市障がい者相談支援機能強化専門員 石井 美紀 福岡市民間障がい施設協議会 施設入所部会長 奥野 幸子 福岡市成人期高機能自閉症・アスペルガー症候群等親の会 あすなろ 副会長 上片野 亮 福岡市障がい者生活支援事業所連絡会 役員 橋 新子 社会福祉法人 福岡市身体障害者福祉協会 事業係長 副部会長 坪井 健 福岡市民間障がい施設協議会 グループホーム部会長 服部 美江子 認定NPO法人 障がい者 より良い暮らしネット 理事長 藤田 博久 福岡市社会福祉協議会 地域福祉部長 部会長 向井 公太 社会福祉法人 福岡市手をつなぐ育成会 理事 米倉 貴之 一般社団法人 福岡市精神保健福祉協議会 事務局長 〇オブザーバー(敬称略) 友廣 道雄 社会福祉法人 葦の家福祉会 法人本部長 末松 忠弘 東区第2障がい者基幹相談支援センター 管理者 〇事務局 保健福祉局障がい者部障がい者支援課 保健福祉局障がい者部障がい企画課 保健福祉局障がい者部障がい福祉課 参考資料2 福岡市地域生活支援拠点等 整備促進に関する提言 令和2年3月 福岡市障がい者等地域生活支援協議会 地域生活支援拠点等整備検討部会 目次 1.はじめに 2.福岡市における地域生活支援拠点等の整備 (1)整備手法 (2)整備の状況 3.地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件 (1)各機能に共通する基本要件 (2)相談機能に関する基本要件 (3)緊急時の受け入れ・対応の機能に関する基本要件 (4)体験の機会・場の機能に関する基本要件 (5)専門性の機能に関する基本要件 (6)地域の体制づくりの機能に関して 4.居住支援機能を拡充するための提案 (1)「緊急時の受け入れ・対応」機能 A.事業所等が検討していくこと B.福岡市への提案 (2)「相談」機能 A.事業所等が検討していくこと B.福岡市への提案 (3)「体験の機会・場」機能 A.事業所等が検討していくこと B.福岡市への提案 (4)「地域の体制づくり」機能 A.区基幹センターが取り組むこと B.福岡市への提案 (5)「専門性」機能 A.事業所等が検討していくこと B.福岡市への提案 5.重度障がい者の住まいの確保について (1)事業所等が検討していくこと (2)福岡市への提案 6.まとめ <検討体制> 部会検討状況 地域生活支援拠点等整備検討部会委員名簿 1.はじめに 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」第87条に基づく国の基本指針(H26年5月改正)において,地域生活支援の機能をさらに強化するため,各地域内で「地域生活支援拠点等」の整備を図るよう規定された。 国においては,地域生活支援拠点等の整備については,居住支援のための機能,具体的には,「相談」「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」「専門性」「地域の体制づくり」の5つの機能を確保することが必要で,その手法として「多機能拠点整備型」や「面的整備型」等のイメージが示されている。 福岡市においても,平成27年3月に策定した「第4期福岡市障がい福祉計画」において,地域生活支援拠点等を整備することを明記しており,平成28年6月に策定した「福岡市保健福祉総合計画」においては,障がいの重度化,高齢化や「親なき後」の生活の安心も見据え,障がい者及び障がい児(以下「障がい者」という。)が地域で安心して生活を続けるための総合的な支援を検討することとしている。 地域生活支援拠点等の整備にあたっては,国の基本指針において,地域の状況に応じ,自立支援協議会の意見等も聞きながら5つの機能について検討するよう求められており,福岡市においては,平成28年度に福岡市障がい者等地域生活支援協議会の専門部会として,「地域生活支援拠点等整備検討部会」を設置し,地域生活支援拠点等の整備推進について検討を行い,平成29年6月に整備方針に関する提言を策定している。 福岡市の地域生活支援拠点等整備においては,平成30年度までに5つの機能すべてを確保し,区障がい者基幹相談支援センター(以下「区基幹センター」という。)が中心となり各機能の充実・強化に取り組んでいるところであるが,各機能の現状の把握・評価を行い,さらなる充実・強化を図るため,部会委員を再編し協議を行った。 今回は,その検討結果を取りまとめ,提言(案)として提出するものである。 2.福岡市における地域生活支援拠点等の整備 (1)整備手法 国が示す「相談」「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」「専門性」「地域の体制づくり」の5つの居住支援機能を確保する体制を各区に整備する。また,その機能を極力集約しつつ,集約できない機能をネットワークで補う多機能拠点整備型と面的整備型を併用する手法で整備を行っている。 (2)整備の状況 @「相談」「地域の体制づくり」については,平成29年度から,全障がい一元化した24時間対応可能な相談窓口として,14カ所の区基幹センターを設置した。地域の困難事例への対応や特定相談支援事業所への助言,地域の関係機関との連携体制構築に取り組んでいる。 A「体験の機会・場」については,グループホームの空き情報等を随時把握することで必要な時に障がい者への情報提供を行っている。 B「緊急時の受け入れ・対応」については,介護者の事故や疾病,各種トラブル,虐待等によって,自宅での生活が困難になった際,短期入所先が見つからない場合の受け皿として,「緊急時受け入れ・対応業務委託」(以下「緊急時受け入れ・対応事業」という。)を開始しており,「医療的ケアを含む重度身体障がい者」「強度行動障がい者」「虐待・その他」の3類型について,それぞれ1カ所ずつ開設し,空床の確保及び,専門コーディネーターの配置を行っている。 また,緊急時の受け入れ・対応機能を担う短期入所事業所等において,障がい者のうち,意思疎通が難しく意思確認が困難な者の受け入れの円滑化を図ることおよび市内の受け入れる障がい者関係施設・事業所職員の支援技術の向上を目的とした「福岡市コミュニケーション支援員派遣事業」を開始している。 C「専門性」については,行動障がいや医療的ケアが必要な障がい者への支援スキルを備えた人材育成を目的とした研修(医療的ケア児等コーディネーター養成研修等)を行っている。 3.地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件 福岡市として,平成30年度障がい福祉サービス等報酬改定により新設された,地域生活支援拠点等の機能を担う事業所への加算要件を踏まえ,地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件を整理した。 (1)各機能に共通する基本要件 @地域生活支援拠点等の整備の目的について理解していること。 A地域生活支援拠点等の整備に必要な機能を理解していること。 B福岡市における地域生活支援拠点等整備の手法について把握していること。 C地域生活支援拠点等の機能を担う事業所として,障がい者の生活を地域全体で支えるサービス提供体制の構築に積極的に参画すること。 (2)相談機能に関する基本要件 @担当する利用者のうち緊急時の支援が見込めない世帯を事前に把握していること。 A常時の連絡体制を確保していること。 B緊急時の受け入れ対応を依頼できる短期入所事業所と連携体制がとれていること。 C相談支援事業所のネットワークづくりに積極的に参画すること。 (3)緊急時の受け入れ・対応の機能に関する基本要件 @緊急時の受け入れ・対応要請に積極的に対応していること。 A契約している利用者のうち,緊急時の支援が見込めない世帯を事前に把握していること。 B常時の連絡体制を確保していること。 C事業所間のネットワークづくりに積極的に関わっていること。 (4)体験の機会・場の機能に関する基本要件 @障がい福祉サービスの利用や1人暮らしの体験の機会,場の提供を積極的に行っていること。 A日頃から相談支援事業所等との連携体制の構築に努めていること。 (5)専門性の機能に関する基本要件 @医療的ケアや強度行動障がいなど,専門的な支援スキルを必要とする障がい者等の支援が可能な人材を配置していること。 A人材育成に取り組んでいること。 (6)地域の体制づくりの機能に関して @地域の体制づくりの機能は,区基幹センターが担う。 A区基幹センターが行う地域の体制づくりの実施状況や,他の機能を担う拠点等事業所の整備の進捗状況について継続的に協議を行う。 4.居住支援機能を拡充するための提案 (1)「緊急時の受け入れ・対応」機能 「緊急時の受け入れ・対応」機能を有する地域生活支援拠点として位置づけられる事業所については,以下のとおり案として整理した。 ◇「緊急時受け入れ・対応事業」を受託している3カ所の指定短期入所事業所(既設) ◇虐待緊急一時保護事業を受託している短期入所事業所(既設) ◇地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件を満たし,市の承認を得た緊急時の受け入れ・対応機能を担う短期入所事業所(新規) ◇重度障がい者を緊急に受け入れる短期入所事業所(新規・「B.市への提案@」参照) ◇重度障がい者の緊急時に自宅訪問する居宅介護等事業所(新規・「B.市への提案A」参照) A.事業者等が検討していくこと @福祉サービスを運営する法人は,短期入所事業の重要性や運営のメリットを理解し,既設事業所の増床や新規開設に尽力する。 ≪部会での主な意見≫ ○緊急時の対応は,障がい者及び家族の最大のニーズである。 ○緊急対応により,危機回避に協力することが支援員のやりがいや,モチベーションの維持・向上につながる。 ○将来的にグループホームの設置を検討している法人にとっては,夜間支援の人員確保及びノウハウの蓄積になる。 ○通所サービス事業所においては,安定した利用者確保・維持に鑑みた付加サービスの構築になる。 A社会福祉法人においては,社会福祉事業を行うことを目的として設立されていることを踏まえて,障がい者の高いニーズがある短期入所に積極的に取り組む。 B.福岡市への提案 @重症心身障がい者及び強度行動障がい者,また精神障がいや発達障がい等が起因する家族内外のトラブルを抱える者を短期入所事業所が緊急で受け入れを行った場合に,現在の報酬単価では不十分であるため,福岡市独自の加算を行う。 ≪部会での主な意見≫ ○福岡市との委託契約とし,区基幹センターの介入による緊急受け入れを行った場合の実績払いが望ましい。 提案理由 ・短期入所事業所の不足は深刻であり,また重度障がい者における緊急時の即日対応は非常に難しく,事業者及び従事者の負担も大きい。 ・医療的ケアを必要とする重症心身障がい者への対応は,看護師の配置など,専門性の高い短期入所が該当することから,さらに箇所数が限定される。 ・福岡市が独自に設置し,空床確保とコーディネーターを配置している3カ所(6床)の緊急受け入れ施設は,最終的なセーフティネットに位置づけており,満床の常態化を防ぐ必要がある。 A重症心身障がい者や強度行動障がい者の緊急時にヘルパーが自宅訪問して支援した場合,福岡市の予算で対応する。 ≪部会での主な意見≫ ○地域生活支援拠点の緊急時対応居宅介護等事業所として位置づけ,事前に福岡市と委託契約し,実績払いとすることが望ましい。 ○事業者と利用者が契約を締結していない場合や支給量を超えるケースも想定され,個別支援計画に不記載のケースも考えられることから,福岡市の制度として柔軟な仕組みが必要である。 提案理由 ・緊急時に介護者が不在となる場合,短期入所が空いていないケースや,本人を自宅から連れ出すことが困難なケースがある。 ・即応性を求められる緊急事態の場合,ヘルパー派遣の機動性を活かすことが最優先と考えられる。 2)「相談」機能 A.事業者等が検討していくこと @区基幹センターの設置から3年が経過することを踏まえ,区基幹センターが地域課題を整理し福岡市障がい者等地域生活支援協議会や関係団体との情報共有に努める。 ≪部会での主な意見≫ ○不足するサービスと充足しているサービスを明確化し,各種事業者に周知する。 ○サービスにつながりにくいケースについての情報を集約し,各種事業者に受入れについての検討を勧奨する。 A区基幹センターのエリアごとに相談内容の傾向や取り扱い件数等を検証し,地域ごとに必要な社会資源の整備に努める。 B区基幹センターの受託法人は,人材の確保と育成,キャリアアップに努め,法人が運営する事業所によるバックアップ体制を確立し,面的整備を含む区基幹センターの取組に協力する。 C福祉サービスを運営する事業者は,計画相談支援の重要性を理解し,指定特定相談支援事業所の拡充に努める。各種報酬加算を活用し,相談支援業務の専門性を高め経営の安定を図る。 B.福岡市への提案 @14カ所の区基幹センターの相談対応件数等の状況を踏まえ,人口割の人員(コーディネーター)配置だけでなく,各エリアの相談件数に応じた人員配置を加味して区基幹センターの体制強化を図る。 提案理由 ・区基幹センター設置以前の同種機関と比較すると市全体での相談対応件数が4倍程度となっており,想定以上の業務量になっていると考えられる。 ・ひきこもり者の相談件数が増えており,障がい者手帳等の不所持の方も少なくない状況。本来,障がい者を対象とする業務枠を超えた役割に至っている。 ・現在の人員体制で対応できないほどの相談者数により総合相談に追われ,地域福祉の体制づくりや災害に備えたパーソナルネットワーク構築に手が回らず,また,触法障がい者の対応や精神科病院からの地域移行に向けた体制整備等,未開拓の分野にかける時間を確保できない状況である。 A障がい者のニーズが多様化していることに鑑み,特定相談支援事業所での対応が難しい障がい者に柔軟に対応・介入するための相談支援体制整備について,協議の場を設定する。 提案理由 ・特定相談支援事業所は,障がい福祉サービスを利用する障がい者のサービス等利用計画の作成及びモニタリングの際にだけ基本報酬が発生する仕組みであることから,障がい福祉サービスの利用までに長期間かかる場合は報酬が発生しないため,対応することが難しい。 ・精神科病院からの地域移行について,退院後に訪問看護を利用しても,障がい福祉サービスを利用しない場合,特定相談支援事業所には報酬が発生しないため介入しにくい。一般相談支援の地域定着・地域移行支援事業の制度もあるが,広がっていない。 ・医療的ケアの必要な重症心身障がい児が誕生し自宅に帰る際,退院前から保護者に寄り添う相談支援専門員がつくことが求められるが,障がい福祉サービスの利用につながらないため,特定相談支援事業所の介入が難しい状況がある。 ・障がいに起因する家庭内外のトラブルや生活困窮,家族の高齢化,医療・福祉機関の介入を拒むケースなど,複雑かつ複合的な問題を抱える家庭が増えていることから,包括的な相談援助を拡充する必要がある。 ・利用契約制度に移行してから10数年が経過し,カスタマーハラスメントへの対応で相談支援専門員が疲弊している。居宅介護事業者等と利用者のトラブルに相談支援専門員が介入せざるを得ないことも少なくない。 ・区基幹センターは,総合相談の困難ケースに追われて,地域の体制づくりや障がい福祉サービス等の面的整備にかける時間をとれない状況がある。 (3)「体験の機会・場」機能 A.事業者等が検討していくこと @精神科病院や入所施設からの地域移行について,適切な意思決定が行えるように選択肢を提示するため,グループホームや日中活動の体験機会の場を提供する。 A比較的軽度な障がい者向けのグループホームの新規開設は増加傾向にあることから,空き部屋を活用した体験の場を増やすために「体験利用」のサービスを積極的に活用する。また,当該サービスの事業者への周知も必要である。 ≪部会での主な意見≫ ○グループホームへの入居よりも,体験利用のサービスの方が報酬が高い。 ○体験利用であれば,短期入所と居宅介護の支給決定は残る。 ※グループホームに入居すると短期入所や居宅介護の支給決定が無くなり,入居してすぐに馴染めずに一時帰宅した際,困るケースがある。 B通所サービスについては,定員と定員超過枠でみると空きも多く見られることから,各事業所は対象者の拡大を図る ≪部会での主な意見≫ ○ひきこもりや触法障がい,各種依存症,発達障がい,高次脳機能障がいなど,新たな利用者像に対応していくことが重要である。 B.福岡市への提案 @福岡市と福岡市社会福祉協議会が実施している「住まいサポートふくおか」の対象者を高齢者から障がい者に拡大する。 提案理由 ・自立を目指す障がい者が自信をもつために一人暮らしを体験できる場がない。 ・精神科病院や入所施設からの地域移行において,一人暮らしの経験があると退院・退所する意向を持つことにつながりやすい。 ・空き部屋の増加について,崩壊・半壊の家屋が地域の問題になる場合もあり,また防犯の上でも,改修等を行い入居を促進することが望ましい。 ・ひきこもり者について,固定化した家族関係や執着している居室から離れて,暮らしの場を転換することが望ましいケースも多いと考えられる。 ・施設イメージの強いグループホームを受け入れられない障がい者も少なくないことから,シェアハウスによる互助協力の形態を望むニーズにも着目する必要がある。 Aひきこもり者や依存症など,新たな対象者に対応するために地域活動支援センターT型の役割を再評価し,増設に向け検討する。 提案理由 ・日割報酬制の通所サービスにおいて,利用の見通しがつかない,あるいは継続的な利用が困難な障がい者の対応は難しいと考えられる。ひきこもり者や依存症などの新たな対象者は,年間補助金で運営する地域活動支援センターT型のサービスで対応することが望ましいと考えられる。 ・ひきこもり者や依存症などの新たな対象者が抱える障がい種別は幅広く,また受診しない場合や,受容が難しいことも課題となっており,障がい福祉サービスの対象とならないケースも考えられることから,対象が幅広い地域活動支援センターT型の役割は大きい。 ※ 依存症関連問題で苦しむ人たちは,障がい福祉サービスの対象とならない場合がある。 (4)「地域の体制づくり」機能 A.区基幹センターが取り組むこと @短期入所事業所の不足が深刻であることを踏まえ,福岡市を3エリア(東区・博多区/中央区・南区・城南区/早良区・西区)に区分し,区基幹センターが軸になって,エリアごとに短期入所事業所の受け入れ促進に努める。また,短期入所事業の種別や設備・人員基準,運営手法,報酬規定等を周知し,増設及び新規開設による増床を図る。さらに,「体験機会・場」機能の強化のために各事業所に対して地域ニーズの発信を行い,受け入れ対象の拡大を図る。 ≪部会での主な意見≫ ○通常の短期入所の他,看護師を配置する福祉型強化短期入所や,病院・診療所等の医療機関に併設する医療型短期入所が必要である。 ○通所サービス事業所に短期入所を併設する場合,居室と浴室(脱衣所含む)のみが設置要件であり,訓練室や多目的室と併用することが可能であることを周知する。 ○基本報酬だけでなく,重症心身障がい者と強度行動障がい者を受け入れた場合の加算報酬,生活介護事業所や医療機関との連携により,看護師が派遣された場合の医療連携加算,さらに緊急短期入所受入加算があることを周知する。 A区基幹センターで対応している事例で,各種サービスにつながりにくいケースや困難ケースを総括し,事業者に発信,情報提供に努める。 ≪部会での主な意見≫ ○サービス事業者との意見交換会の実施や事業者向けに地域課題を発表する場を設け,新たな利用者像の検討と受け入れ方法や体制面などを協議する。 B精神科病院と積極的に連携し,地域移行の促進に努めるとともに,入院の長期化を防ぐための地域生活支援体制をつくる。 ≪部会での主な意見≫ ○「精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会」と連携をとり,入院後すぐに介入できる相談支援(計画相談及び地域移行・定着支援),地域生活を送るための居住支援(借家の斡旋など),ヘルパー,訪問看護,自立生活援助,グループホームなどの体制整備を行っていくことが必要である。 C福祉や介護,医療の各機関,自治会や企業のネットワークをつくり,地域共生社会の構築を目指す。 ≪部会での主な意見≫ ○障がいや高齢,医療,生活困窮など様々な点で複合的な課題を有する家庭もあり,ひきこもりや虐待,ゴミ屋敷の問題等が発生していたり,地域とのトラブルになっていたりする。痛ましい事件に発展する可能性は潜在している。 B.福岡市への提案 @防災に関する障がい者への対応など,地域で取り組む手法を福岡市として提示するとともに区基幹センターや各種福祉サービス事業所の役割を明確化する。 提案理由 ・地震等の災害時における在宅障がい者の安否確認,救助,医療連携,見守り体制の構築は殆ど進んでいない状況。 ・日中に大地震等が発生した場合,食糧や防寒用品等を備蓄していない通所サービスで大きな混乱が予測される。また,事業所の地域に所在する避難所に誘導できるのかどうか不明瞭な状況。 ・自宅で人工呼吸器などの電源が必要な医療機器を使用して生活している場合,自然災害等で停電になることを不安に感じている重度障がい者及び家族は少なくない。 A区基幹センターの役割と実績を改めて検証し,地域の体制づくりを進めるための体制を強化する。 提案理由 ・区基幹センターは,総合相談に追われ,地域福祉の体制づくり,災害に備えたパーソナルネットワーク構築まで手が回らない状況がある。 ・区基幹センターの運営法人は,各種指定事業を運営しているなかで,人員確保に苦慮しており,公益事業の位置づけとなる区基幹センターへの職員配置は,ままならない状況にあることから,コーディネーターの負担軽減による安定的な業務遂行に配慮する必要がある。 (5)「専門性」機能 個別性の高い障がい福祉分野において,専門性は非常に重要かつ普遍的な機能である。以下の対象者に対応できるスキルを専門性と位置づける。 @医療的ケアを含む重度身体障がい者 A強度行動障がい者 B虐待・その他により支援が必要な状況にある者 ※「その他」は,精神障がいや発達障がい,高次脳機能障がい等が起因して 家庭や地域等で生活の維持が困難な状況にある者。また,ひきこもり状態 や極度の生活困窮にある者,触法障がい者,または障がい特性により他者 とのトラブルが絶えない者など,支援に相当の経験とスキルを要する者を 想定している。 また,専門性機能を地域生活支援拠点として位置づけるための方法は次の2種が考えられる。 @専門性を高めるための研修等を実施する事業所 A専門性の高い相当の経験とスキルを保持する事業所 ※その他の4機能「緊急時の受け入れ・対応/相談/体験の機会・場/地域の体制づくり」は,専門性機能を併せ持つことが望ましい。 A.事業所等が検討していくこと @福岡市障がい者基幹相談支援センター(以下「市基幹センター」という。)は,区基幹センター及び相談支援事業所,その他のサービス事業所に必要な専門研修を拡充する。 A区基幹センターは,相談機能だけでなく,地域の体制づくり機能を併せ持つ地域生活支援拠点として,各エリアに所在するサービス事業所に研修機会を提供する。 B各種サービス事業所は,福祉従事者の研修機会を保証し,重度障がい者への支援に対応できるよう努める。強度行動障がい者や重症心身障がい者に対応できる専門性の確保を図る。 Cサービス事業所が,精神障がい者や発達障がい者,ひきこもり状態にある障がい者を支援できるスキルを身に着けることを目指す。発達障がい者は,周りの環境等の相互作用で適応状態が上がったり,二次障がいになったりするため,支援者は,予防的な視点等を持って支援する。 Dカスタマーハラスメントへの対処方法の確立や協議を行う場を検討する。 B.福岡市への提案 @医療的ケアを含む重症心身障がい者や強度行動障がい者に対応できる居宅介護等事業所を地域生活支援拠点として位置づける。 ≪部会での主な意見≫ ○喀痰吸引等研修や強度行動障がい支援者養成研修を受講したヘルパーを確保し,一定期間のサービス実施経験を有する事業所を福岡市の財源で評価する仕組みが望ましい。 提案理由 ・喀痰吸引等を実施できる事業所は,福岡市の指定居宅介護等事業所の中で15%しかなく,人手不足が深刻な状況となっている。 ・喀痰吸引等研修の受講に相応の受講料が発生し,原則,10日以上の期間を要することから,研修修了者の確保には事業所としても財政的負担が大きい。 ・喀痰吸引等支援体制加算はあるが,特定事業所加算の取得事業所は,算定できないこととなっており,喀痰吸引等を実施できるヘルパーの確保にかかる経費は事実上,法人が全て負担しなければならない。 ・福岡市として強度行動障がいの支援に注力してきたが,行動援護を実施する事業者は非常に少ない。 参考)障がい福祉サービス等事業所数(令和元年12月1日現在) 移動支援・262事業所/同行援護・106事業所/行動援護・26事業所 A医療的ケアを含む重症心身障がい者や強度行動障がい者,頻回のてんかん発作がある障がい者など,マンツーマン程度の支援や,特性に配慮した施設整備を必要とする障がい者の受け入れが可能な地域生活支援拠点の機能を有するグループホームの設置を推進する。また,市独自の運営費補助を検討する。 ≪部会での主な意見≫ ○療養介護の補完的な立場,障がい者地域生活・行動支援センター「か〜む」利用後の受け入れ先としても想定している。 ○グループホームの機能強化として専門的な支援員や看護師等を配置する。 ○療養介護事業所は20名定員から設置できるため,医師と相当数の看護師配置の特徴を活かし小規模の療養介護の整備を行うことにより,地域生活支援拠点とすることも考えられる。 ○専門性の高い事業所となるため,緊急時の受け入れ・対応事業も併設することが望ましい。 提案理由 ・重症心身障がい者を対象とする療養介護は,市内に2カ所しかなく,待機者も相当数いる状況である。 ・100名以上の福岡市民が市外の療養介護事業所に入所しており,家族から遠い場所で生活している現状がある。 ・常時,喀痰吸引等の医療的ケアが必要な場合,24時間の付き添いが必要となり,家族が極度に疲弊しているケースもある。 ・頻回のてんかん発作があるが,区分5以上ではないため,療養介護の対象にはならない障がい者の場合,マンツーマンでの対応が必要なため,受け入れ先が無いケースが少なくない。 ・強度行動障がい者が,「か〜む」の利用により状態が改善しても,その後の受け入れ先がないことが課題となっている。 5.重度障がい者の住まいの確保について (1)事業者等が検討していくこと @市基幹センター及び区基幹センターは,グループホームや入所施設に対し,重度障がい者の受け入れの必要性を啓発する。 Aサービス事業所は業界団体等を通じて,重度障がい者の住まいのあり方について協議し,受け入れの方策を探求する。 B重度障がい者への対応として創設された日中サービス支援型グループホームについて,その活用方法や課題などを明確化し,拡充を図る。 C入所施設は,入所者に対して1人暮らしやグループホームの体験機会を提供し,比較的軽度な障がい者の地域移行を進めるとともに,重度障がい者の受け入れを促進する。 Dグループホームに対するニーズに対応できるように,事業者(法人)は人材確保等の経営努力を図り,居住支援及び夜間支援の体制構築,ノウハウの取得に尽力する。 (2)福岡市への提案 @常時介護が必要な障がい者がグループホームに入居する場合,必要な時間数の居宅介護等を支給する。また,バリアフリー化,特殊壁等の特別な環境整備を要するため,新設あるいは改修時に独自の補助金を検討する。 提案理由 ・グループホームの設置数は増加傾向にあるが,最重度の障がい者を受け入れられるグループホームは極めて少ない。現在の職員配置と報酬体系では,人員が不足しており,また経営的に厳しいため,対応できないことが明白となっている。 ・空き部屋のあるグループホームに重度障がい者が1人で入居できる仕組みとして,個別給付の居宅介護(ヘルパー)の支給を行うことが望ましい。 ・グループホームの生活支援員は,他のサービスとの兼務が可能であることから,居宅介護の指定を受けている法人で,生活支援員が居宅介護の有資格者であれば,同一従業者が一貫してサービスを提供できる。 Aグループホーム入居者に対し、在宅者と同様の移動支援(ガイドヘルプ)を支給し、社会参加を促進する。 提案理由 ・福岡市においては原則,グループホーム入居者には移動支援が支給されていない。特例的な申請により,4時間以上の外出のみ,利用できる状況である。 ・グループホームの世話人や生活支援員では,重度障がい者の個別の外出ニーズに対応できず,社会参加が進んでいない。 ・重度障がい者をグループホームで受け入れる体制として,居宅介護に加え移動支援による人員確保が必要である。 6.まとめ 福岡市では,障がい者の重度化,高齢化や「親なき後」の生活の安心も見据え,障がい者の地域生活への移行や地域生活の継続を推進し,障がい者が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるような支援を提供する仕組みづくりを構築するために,全国でも先駆的に地域生活支援拠点等の整備を進めてきた。平成30年11月までに地域生活支援拠点整備に必要な5機能を確保し,区基幹センターが中心となって,各機能の強化や,面的整備を進めてきたが,重度障がい者の住まいの場が不足していることや,区基幹センターに精神障がい者や発達障がい者に加え,ひきこもりや依存症など多様なニーズをもつ障がい者からの相談が数多く寄せられており,様々な課題が浮き彫りとなっている。 地域生活支援拠点等整備をさらに推進していくため,重度障がい者の緊急時の受け入れ施設・住まいの場の確保や,多様なニーズに応えるため相談機能の強化に向けた相談支援体制の見直しを重点事項として取り組んでいくことが重要である。 ○検討体制等 この「地域生活支援拠点等整備検討部会」は福岡市障がい者等地域生活支援協議会設置運営要綱に基づき,協議会の専門部会として設置され,次のとおり協議を行った。 部会等の開催状況 日程 協議内容 平成30年7月24日 平成30年度第1回地域生活支援協議会 ・地域生活支援拠点等整備検討部会の開催について 第1回 平成30年9月6日 ・部会長・副部会長選出 ・今後の進め方について 第2回 平成30年10月11日 ・緊急時受け入れ・対応アンケート結果 ・緊急対応事例について ・緊急受け入れ体制整備の進め方について 第3回 平成30年11月19日 ・部会の進め方について ・事前登録要領について 平成30年12月10日 平成30年度第2回地域生活支援協議会 ・検討状況についての報告 第4回 平成31年1月15日 ・コミュニケーション支援員派遣事業(仮)について ・小部会について 平成31年2月7日 研修会 ・「地域生活支援拠点の整備及び基幹相談支援センターの役割について」 上小圏域障害者総合支援センター 所長 橋詰 正 氏 第5回 平成31年3月6日 ・コミュニケーション支援員派遣事業(仮)について ・今後の部会の進め方について 平成31年3月18日 平成30年度第3回地域生活支援協議会 ・検討状況についての報告 第6回 令和元年7月2日 ・地域生活支援協議会での報告内容について 令和元年7月25日 令和元年度第1回地域生活支援協議会 ・検討状況についての報告 第7回 令和元年11月21日 ・提言書について ○小部会 小部会は,部会の委員で構成される。部会で明確にしたテーマに沿って,小部会ではデータ集めや調査,細部の議論など,部会と役割を分担することで効率的に検討を進めていくために,小部会を開催した。 小部会の開催状況 日程 協議内容 第1回 平成31年3月22日 ・地域生活支援拠点等事業所の要件について検討 第2回 平成31年4月18日 ・「緊急受け入れ・対応」機能を担う拠点事業所の要件,短期入所事業所を増やす取り組みについて 第3回 令和元年5月16日 ・「専門性」機能を担う拠点事業所の整備・要件について 第4回 令和元年6月13日 ・「体験の場」機能を担う拠点事業所の整備・要件について ・他の専門部会の検討状況について情報共有 第5回 令和元年7月2日 ・「相談」機能を担う拠点事業所の整備・要件について 第6回 令和元年8月22日 ・地域生活支援拠点等の整備,要件等について検討 ・今後の流れについて 第7回 令和元年9月19日 ・現在までの整理内容について ・提言書の作成の方向性について ・提言書作成に関する役割分担について 第8回 令和元年11月21日 ・提言書について ○委員名簿(敬称略) 区分 委員名 所属・役職 等 相談支援機能強化専門員 <部会長> 池田 顕吾 福岡市東区第1障がい者基幹相談支援センター 管理者 相談支援スーパーバイザー 中島 大輔 福岡市障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 相談支援スーパーバイザー 田中 一弥 福岡市城南区障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 相談支援スーパーバイザー 佐藤 陽介 福岡市南区第2障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 市障がい者基幹 相談支援センター <副部会長> 加納 洋子 福岡市障がい者基幹相談支援センター 所長 区障がい者基幹 相談支援センター 末松 忠弘 東区部会 東区第2障がい者基幹相談支援センター 管理者 区障がい者基幹 相談支援センター 石橋 昌和 博多区部会 博多区第2障がい者基幹相談支援センター 管理者 区障がい者基幹 相談支援センター 淵上 忠喜 中央区部会 中央区障がい者基幹相談支援センター センター長 区障がい者基幹 相談支援センター 青木 福美 南区部会 南区第3障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 区障がい者基幹 相談支援センター 田村 祐季 城南区部会 城南区障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 区障がい者基幹 相談支援センター 常安 栄 早良区部会 早良区第2障がい者基幹相談支援センター 管理者兼相談支援専門員 区障がい者基幹 相談支援センター 西村 隆之 西区部会 西区第1障がい者基幹相談支援センター 管理者兼相談支援専門員 福岡市民間障がい施設協議会 坪井 健 短期入所事業所 心伸〜しん〜 管理者 福岡市民間障がい施設協議会グループホーム部会長 福岡市障がい者 生活支援事業所 連絡会 金子 健 有限会社カラーズ 代表取締役社長 居宅介護サービス わかたけ 管理者 福岡市障がい者生活支援事業所連絡会 副会長 緊急時受け入れ・対応拠点事業所 (類型T) 溝口 伸之 株式会社きらきら 代表取締役社長 緊急時受け入れ・対応拠点事業所 (類型U) 森口 哲也 障がい者地域生活・行動支援センター か〜む 所長 緊急時受け入れ・対応拠点事業所 (類型V) 牧本 貴宏 株式会社 まきもと 代表取締役社長 ひまわりらんど 和白センター 相談支援専門員 障がい者支援課 橋本 智之 福岡市保健福祉局障がい者部 障がい者支援課 地域生活支援係長 事務局 保健福祉局障がい者部障がい者支援課 参考資料3 精神障がいに対応した 地域包括ケアシステム構築に関する提言 令和2年3月 福岡市障がい者等地域生活支援協議会 精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会 <目 次> 1.はじめに 2.精神障がいに対応した地域包括ケアシステム構築推進における福岡市の課題 (背景) (課題) 1)地域住民の理解促進について 2)住まいの確保について 3)地域生活につなぐ相談支援体制について 4)ピアサポートの活用について 5)福祉サービスなどの地域での支援体制について 6)措置入院者退院後支援について 3.当面取り組むべきこと 1)地域の理解促進について 2)住まいの確保について 3)地域生活につなぐ相談支援体制について 4)ピアサポートの活用について 5)福祉サービスなどの地域での支援体制について 6)措置入院者退院後支援について 7)医療との連携について 8)人材育成について 4.中長期的に取り組みや検討をすすめるべきこと 1)地域住民の精神障がいへの理解促進 2)保健・医療・福祉等の連携によるきめ細かな対応 3)社会参加支援の充実 1.はじめに 国においては、平成16年9月に精神保健福祉本部(本部長:厚生労働大臣)で策定された「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において「入院医療中心から地域生活中心へ」という理念が示されて以降、様々な施策が行われてきた。平成26年には精神保健福祉法に基づく「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」において、この理念を支えるための精神医療の実現に向けた、精神障がい者に対する保健医療福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性も示されている。 平成29年2月の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書では、「地域生活中心」という理念を基軸としながら、精神障がい者の一層の地域移行を進めるための地域づくりを推進する観点から、精神障がい者が、地域の一員として、安心して自分らしい暮らしができるよう、医療、障害福祉・介護、社会参加、住まい、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障がいにも対応した地域包括ケアシステム」の構築を目指すことを新たな理念として明確にされた。 また、第5期障害福祉計画において、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築」推進のために、平成32年度末までに各市町村及び障害保健福祉圏域毎に保健・医療・福祉関係者による協議の場を設置することが成果目標として設定された。 福岡市の第5期障がい福祉計画においても、保健・医療・福祉・関係者による協議の場を設置することを目標としており、平成30年4月より「精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会」にて、精神障がい者が地域の一員として自分らしい暮らしをすることができるための、保健・医療・福祉の取り組みについて協議、検討してきた。今回は、その検討結果をとりまとめ、提言(案)として提出するものである。 ※ 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築は、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創る「地域共生社会」の実現にも寄与。 2.精神障がいに対応した地域包括ケアシステム構築推進における福岡市の課題 (背景) ・福岡市における自立支援医療(精神)・精神障害者保健福祉手帳の所持者数は、年々増加している。 ・区障がい者基幹相談支援センター(以下「区基幹センター」とする)が平成29年度に整備され、3障がい一元化(難病・障がい児含む)での総合相談窓口としての役割を担っているが、精神障がい者からの相談は、平成29年度から平成30年度にかけて、約1.4倍に増加している。 精神通院医療(人) 年度 所持者数 24年度 所持者数 17,193 25年度 所持者数 18,993 26年度 所持者数 20,398 27年度 所持者数 21,758 28年度 所持者数 23,055 29年度 所持者数 24,244 30年度 所持者数 25,716 精神障害者保健福祉手帳(人) 年度 級 24年度 3級3,139 2級5,482 1級643 合計9,264 25年度 3級3,662 2級5,996 1級675 合計10,333 26年度 3級3,972 2級6,527 1級774 合計11,273  27年度 3級4,249 2級7,075 1級904 合計12,228  28年度 3級4,698 2級7,665 1級927 合計13,290 29年度 3級5,278 2級8,359 1級949 合計14,586  30年度 3級6,015 2級9,051 1級984 合計16,050 区基幹センターの相談実績 H29年度H30年度における月毎の相談実人数の合計数(人) 重症心身障がい H29 101 H30 121  身体障がい H29 1,173 H30 1,971 知的障がい H29 4,080 H30 4,660 精神障がい H29 4,944 H30 7,119(※) (※) 精神障がい 内訳(人) 精神障がい H29 3,631 H30 5,330 発達障がい H29 1,126 H30 1,555 高次脳機能障がい H29 187 H30 234 合計 H29 4,944 H30 7,119 (課題) 1)地域住民の理解促進について ・住まいの確保時や精神障がい者を対象とした事業所設置時に地域住民の理解が得られないことがある。 ・近隣住民が、当事者が入院中の時から、退院後の生活を危惧することがある。 ・地域で生活する精神障がい者が地域の一員として、暮らしやすくなるように地域住民に対して理解促進への働きかけが必要。 2)住まいの確保について ・退院にあたってグループホームが候補となることが多いが、希望に合った地域や居住形態のグループホームがなかなか見つからないことがあり、退院への意欲の低下に繋がってしまうという人も少なくない。 ・グループホームから次のステップ(アパートでの一人暮らし等)へ移行するための必要な支援体制や働きかけが少なく、グループホームが終の棲家となっている方も少なくない。日中活動が安定しない点や、一人暮らしを体験する機会が少ないことも、次のステップに繋がりにくい要因となりうる。 ・居住先を探す際に通常の賃貸物件においても、精神障がいを理由に入居を断られるケースが多々ある。また、緊急連絡先(親族・知人)のない人も多く、物件を借りたくても借りる条件が整わないことも多い。 3)地域生活につなぐ相談支援体制について ・病院や入所施設などから地域生活へ移行するにあたっての相談支援事業として「地域相談支援」(※@)がある。福岡市から指定を受けた一般相談支援事業所(※A)が、平成24年4月から個別給付化された「地域移行支援・地域定着支援」(※B)を行っていく制度である。精神障がい者の病院からの退院支援にあたっても、「地域移行支援・地域定着支援」の事業を活用し、集中的な支援を行ったり、24時間体制の支援を行うことは可能であるが、実施している事業所は少ない。 ・特定相談支援事業所(※C)で退院支援を実施している所もあるが、一般相談支援事業所としての指定を受けていないため無報酬で動いている部分も少なくない状況である。 ・そのため、福岡市では一般相談支援事業の指定を受けている区基幹センターが、その役割の大半を担っている。精神障がい者の相談対応に当たって、その特性からくる不調時や緊急時などの不測の事態において、的確な対応ができるように相談支援の力量を高めていくことも課題である。 【障がい福祉サービス利用状況】(H30年度) 共同生活援助(※D)435、地域移行支援14、地域定着支援20 【障がい福祉サービス事業者の指定数】(H30年度末時点) 共同生活援助82、地域移行支援22、地域定着支援22(※) (※)うち14か所が区基幹センターであり、相談支援事業所の数は少ないという現状である。 【用語解説】 (※@)地域相談支援:地域移行支援及び地域定着支援 (※A)一般相談支援事業所: 基本相談支援(◇)及び地域相談支援(地域移行支援及び地域定着支援)のいずれも行う事業所のこと。 <基本相談支援(◇)> 地域の障がいのある人等の福祉に関する様々な問題について、障がいのある人等、障がいのある児童の保護者又は障がいのある人等の介護を行う人からの相談に応じ、必要な障がい福祉サービス事業者等との調整等を行うこと。 (※B)地域移行支援・地域定着支援: <地域移行支援> 障がい者支援施設に入所している障がいのある人又は、精神科病院に入院している精神障がいのある人その他の地域における生活に移行するために重点的な支援を必要とする人について、住居の確保その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談その他の必要な支援を行うこと。 <地域定着支援> 居宅において単身等で生活する障がいのある人について、この障がいのある人と常に連絡を取れる体制をつくり、障がいの特性によって生じた緊急の事態等において、相談その他の必要な支援を行うこと。 (※C)特定相談支援事業所: 基本相談支援(◇)及び計画相談支援のいずれも行う事業所のこと。計画相談支援とは、障がいのある人等が障がい福祉サービスを申請する際に、障がいのある人等の心身の状況その他置かれている環境、サービスの利用に関する意向その他の事情を勘案し、利用する障がい福祉サービス又は地域相談支援の種類及び内容等を記載したサービス等利用計画案を作成するなどして支援すること。 (※D)共同生活援助=グループホーム: 障がいのある人について、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において、生活等に関する相談及び助言、日中活動先その他関係機関との連絡その他の必要な日常生活上の世話を行うこと。 4)ピアサポートの活用について ・福岡市では各区の地域活動センター1型それぞれにピアスタッフが雇用されていたり、グループホームや就労系の事業所等にも雇用されていたりと民間事業所においては、全国的にも先進的な当事者の活動が行われている。 ・しかし、ピアスタッフの雇用形態や待遇にバラつきがあったり、対外的に通用する資格がなく、行政も組織的に活用できていないという現状がある。 ・ピアサポートの専門性への理解が保健、医療、福祉、地域などそれぞれの領域で不十分である。 ・福岡市においては、精神保健福祉センターが主催するピアスタッフスキルアップ研修会や交流の場は設けられているが、ピアサポートを活用するにあたっての、養成の場や雇用の保証などの支援体制がない。 5)福祉サービスなどの地域での支援体制について ・退院後の生活に向けて、障がい福祉サービスの利用申請を行う際、サービスの利用が可能になるまでに時間を要し、退院時期を延ばさなければならないケースがしばしばある。 ・障がい福祉サービスの利用の申請や決定までが煩雑であり、制度の利用について分かりやすい説明や周知が必要である。 ・障がいの特性から福祉サービスを安定して利用しにくいという状況もあり、精神障がい者の計画相談を実施する特定相談支援事業所が少ないという実情がある。 ・学校から成人期への移行や障がい福祉から介護保険に移行する65歳になった場合に、サービスの内容や必要な社会資源が変化し、生活状況が変わることがある。変化に戸惑う場合も少なくないため、丁寧な引継ぎが必要である。 6)措置入院者退院後支援について ・厚生労働省より出された「地方公共団体における精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」に基づき、福岡市でも平成30年9月から運用が開始されており、保健・医療・福祉等の関係機関の連携強化が増々重要となってきている。本人の同意を前提とした支援ということで、医療機関側からみて支援が必要と思われても、同意が得られず退院後支援に至らない場合もある。 3.当面取り組むべきこと 1)地域の理解促進について ・精神障がい者が安心して地域で生活できるよう地域住民の理解を進めていくことが必要。 ・福祉サービスや訪問看護などのフォーマルなサービスのみならず、民生委員や近隣住民の支えも不可欠であるため、日頃からの声掛けや橋渡しなどを行い、啓発活動や理解を進めていく取り組みを行っていく。 ・地域での居場所づくり(地域のインフォーマルサービスであるカフェなどに参加できる仕組みづくり)を推進していくことが必要。 2)住まいの確保について ・地域移行がスムーズに展開するためには、選択肢としてグループホーム等の受け皿の整備は不可欠である。どのような地域にどのようなグループホームが必要なのか等を精査していき、運営を行う側へ情報提供していくことが必要。 ・グループホームが終の棲家となってしまっている利用者は少なくないため、一度満室となるとなかなか空室が出ず、入居希望者は目途が立たない待機をせざるを得ない。今あるグループホームを有効活用するためには、滞在型(従来型)グループホームだけでなく、次のステップ(アパートでの一人暮らし等)への移行を支援する中間施設としての役割を担う「通過型グループホーム」を選択できるような仕組みをつくることが必要。 ・移行先での生活をイメージできる「体験の機会」が得られるような場を設けることも必要。 ・住宅セーフティーネットを実施している不動産業者の普及を行っていき、協力体制を整えていくことで、地域での単身生活を希望されている人や、グループホームを卒業した人等が、自分らしい希望する暮らしを実現することに繋がる。 3)地域生活につなぐ相談支援体制について ・指定特定相談支援事業所に対し、福祉サービスを利用する前から報酬が発生する指定一般相談支援事業の制度の全容について周知や啓発を行い、事業所の数を増やしていくことが必要である。 ・相談支援事業所に対する専門的な指導、助言、人材育成を担っている区基幹センターが適切な相談支援を行えるような体制整備と、精神障がいの特性に応じた相談支援の力量を高める。 4)ピアサポートの活用について ・当事者が自分の経験を生かすことができる土台を作るために、全国研修への派遣および福岡市においても養成研修を実施する。その様な取り組みを通じて、ピアサポートへの信頼度が保証されるライセンス制度を市として創設することを検討していく。 ・ピアスタッフが安心して働ける環境づくりや、ピアスタッフを雇用する側にもメリットとなる仕組みづくりについて検討していくことが必要。 ・保健、医療、福祉、地域それぞれがピアサポートを活用しやすいシステムづくりも不可欠である。 5)福祉サービスなどの地域での支援体制について ・退院前から福祉などに関する相談支援の関係者やヘルパー、訪問看護等との連携を行っていくことが必要である。 ・医療、行政、地域を対象に研修やフォーラムを開催し、精神障がいに関する偏見や差別をなくす取り組みを行う。精神障がい者の地域での生活の実情について周知を図ることにより、ともに暮らすことを当たり前とする社会の基盤を作っていく。 ・年齢や状況に応じ、相談機関や必要な社会資源が異なっていくため、ライフステージに応じた一貫した支援が行えるように、切れ目のないつなぎの部分が重なり合った連携体制の構築を行っていく。 ・65歳になると障がい福祉から介護保険の制度へ移行し、サービスの内容や仕組みが変わるため、あらかじめ利用者及び関係者への丁寧な説明が必要である。早めに高齢者の相談機関である地域包括支援センターとの連携を図っていくことが必要である。 6)措置入院者退院後支援について ・退院後支援の同意のとれない人に対しても、病院と連携をしつつ、保健所が本人と関係性を持てるような関わりの中で支援する事が必要。 ・関係機関が連携をし、それぞれの役割の理解を相互に行いながら、本人の意向を丁寧に汲み取り、切れ目のない退院後支援を行えるような体制を市として整え区ごとに実施していく。 7)医療との連携について ・医療機関の中においても、多職種がご本人にアプローチし、地域の支援者と連携を取れる仕組みづくりが必要。また、それを多くの患者に提供出来るような体制づくりも必要。 ・退院後の不安軽減のため、病院ごとに退院前から地域での生活に詳しい相談員や訪問看護師等が、本人や家族に関わっていく仕組みを作っていく。 ・医療中断時に早期対応できる体制(アウトリーチチームの充実など)が必要。 8)人材育成について ・保健、福祉、医療関係者に対する、精神障がいに関する正しい知識と理解、対応方法、支援の制度などについて実践的に学べるような研修の実施。 4.中長期的に取り組みや検討をすすめるべきこと 1)地域住民の精神障がいへの理解促進 日中活動の場から地域住民の中へ入っていく取組み(商品の販売や公民館活動への参加など)で、日頃からの触れ合いを大切にする。行政としても福岡市障がい者差別解消条例などの啓発活動の先頭に立ち、学校教育や地域の人権研修の中で理解促進を図っていく役割を果たしていく。 2)保健、医療、福祉等の連携によるきめ細かな対応 ・地域で暮らす精神障がい者に対しては、症状の変化に的確に対応できるよう、保健、医療、福祉の緊密な連携による支援体制を整備する必要がある。 ・一機関のみで支援していくのには限界があるため、多機関で十分な情報共有や検討を重ねることが重要であり、相互理解が必要。 ・未治療や医療中断等の精神障がい者に対しては、アウトリーチ支援により、地域で安定した生活の確保を図る必要がある。病院、診療所、保健所、区基幹センター、訪問看護、福祉事業所、警察等関係機関の連携のあり方を検討していく。また、緊急時の体制の検討も必要である。 3)社会参加支援の充実 ・精神障がい者が地域で安心して生活できる環境づくりのために、ピアサポートが活かせるシステムづくりをすすめることが必要。 ・既存の福祉サービスや社会資源に繋がらない人(就労系サービスや教育機関等に繋がらない若い世代)も多くいるため、そのような人たちの社会参加の場を充実させることも必要。 福岡市「精神障がいに対応した地域包括ケアシステム」の構築(イメージ) 精神障がい者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された地域包括ケアシステムの構築を目指す必要がある。 検討体制等 この「精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会」は、福岡市障がい者等地域生活支援協議会設置運営要綱に基づき、平成30年4月に、協議会の専門部会として設置され、次のとおり協議を行った。 【検討事項】 (1)精神障がいに対応した地域包括ケアシステムの構築に関する事項 (2)入院中の精神障がい者の地域移行に関する事項 ・支援体制の検討 ・住まいの確保 ・ピアサポートの活用 ・地域移行関係職員への研修等 (3)措置入院者の退院後の医療等の継続支援に関する事項 (4)その他包括ケアシステム構築のために必要な事項 【平成30年度】 日程 協議内容 第1回 平成30年6月20日 ・部会長,副部会長の選出 ・部会での今後の取り組みについて 第2回 平成30年8月8日 ・課題整理と今後の取り組みについて等 第3回 平成30年10月15日 ・「精神障がい者の地域生活を推進するための出前講座」について等 第4回 平成31年3月5日 ・岡山市ピアサポーターに関する視察報告 ・次年度以降の取り組みについて 【令和元年度】 日程 協議内容 第1回 令和1年7月4日 ・部会長,副部会長の選出 ・平成30年度第3回福岡市障がい者等地域生活支援協議会報告 ・ピアサポーターワーキンググループの立上げについて ・部会での今後の取り組みについて ・令和元年度 福岡市障がい児・者実態調査の概要について 第2回 令和1年9月3日 ・令和元年度第1回福岡市障がい者等地域生活支援協議会報告 ・第1回 ピアサポーターワーキンググループ 報告 ・提言書の作成について ・令和元年度 研修会の実施について 第3回 令和1年10月9日 ・第2回ピアサポーターワーキンググループ 報告 ・提言書について等 第4回 令和1年11月13日 ・提言書について等 また、ピアサポートの活用について検討を行うため、精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会内に、「ピアサポートの活用に関するワーキンググループ」を設置し、次のとおり協議を行った。 日程 協議内容 第1回 令和1年8月30日 ・グループ長、副グループ長の選出 ・福岡市におけるピアサポート活動の状況について ・課題や今後の方向性について等 第2回 令和1年10月3日 ・提言書について ・他都市におけるピアサポート活動について等 精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会委員 区分 委員名 所属・役職 等 副部会長 加納 洋子 福岡市障がい者基幹相談支援センター 所長 村中 貴輝 南区第2障がい者基幹相談支援センター 副主任コーディネーター 富永 愛 東区第3障がい者基幹相談支援センター コーディネーター 西村 隆之 西区第1障がい者基幹相談支援センター 管理者 鷹尾 和顕 社会福祉法人 つばめ福祉会 理事長 三野原 義光 医療法人 泯江堂 油山病院 理事長,院長(医師) 部会長 内野 秀雄 医療法人 泯江堂 油山病院 地域医療連携部課長(精神保健福祉士) 大田 和史 医療法人 山水会 香椎療養所 精神保健福祉士 富岡 堅吾 医療法人 光陽会 伊都の丘病院 地域連携課 主任(精神保健福祉士) 内野 隆幸 医療法人 緑心会 福岡保養院 看護部長(看護師) 平川 笑美 東区保健福祉センター健康課 精神保健福祉係長(保健師) 出口 美華 中央区保健福祉センター健康課 精神保健福祉係長(保健師) 石井 弥生 西区保健福祉センター健康課 精神保健福祉係長(保健師) 山下 加奈子 地域活動支援センターT型 ぷらっと ピアスタッフ(相談員) オブザーバー 廣田 悦子 事務局 保健福祉局健康医療部保健予防課 保健福祉局健康医療部精神保健福祉センター 保健福祉局障がい者部障がい者支援課 ピアサポートの活用に関するワーキンググループメンバー 区分 委員名 所属・役職 等 グループ長 鷹尾 和顕 精神保健福祉協議会・つばめ福祉会理事長(支援者・当事者) 富永 愛 東区第3障がい者基幹相談支援センター(支援者) 西村 隆之 西区第1障がい者基幹相談支援センター 管理者(支援者) 犬束 良太郎 東区地域活動支援センターT型 センター長(支援者)  大田 和史 医療法人 山水会 香椎療養所(医療・PSW) 伊藤 雄二 医療法人 泯江堂 油山病院(医療・OT)  朱雀 真矢 医療法人 泯江堂 油山病院(医療・PSW) 中島 純二 医療法人社団 益豊会 今宿病院(医療・OT) 田口 智春 城南区地域活動支援センター「リプル」(ピアスタッフ)  山本 博隆 生活訓練,共同生活援助「ジャパンマック福岡」(ピアスタッフ) 井上 卓治 生活訓練,共同生活援助「ジャパンマック福岡」(ピアスタッフ)  川口 明 グループホーム「ほっこり」(ピアスタッフ) 副グループ長 梅津 和子 うめづメンタルケアセンター(有識者) 宮本 悦子 福岡市保健福祉局健康医療部保健予防課(行政)  下前 瑛 福岡市保健福祉局障がい者部障がい者支援課(行政) 事務局 保健福祉局健康医療部精神保健福祉センター