福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例逐条解説 令和3年4月 福岡市保健福祉局障害者部障害者支援課 目 次 第1編 総論 第1 逐条解説の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第2 条例制定の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第3 条例の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 第2編 逐条解説 条例名・目次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 前文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第1章 総則 第1条(目的)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 第2条(定義)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 第3条(市の責務)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 第4条(事業者の役割)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 第5条(市民の役割)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 第2章 基本理念 第6条・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第3章 障害を理由とする差別の禁止 第7条(不当な差別的取扱いの禁止)・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 第8条(合理的配慮の提供)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 第4章 障害を理由とする差別を解消するための施策等 第1節 基本的な施策 第9条(啓発活動等)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 第10条(交流の推進)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 第11条(相談体制の充実)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 第12条(表彰)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 第13条(財政上の措置)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 第2節 障害を理由とする差別に関する相談等 第14条(相談)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 第15条(市長への申出)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 第16条(指導又は助言等)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 第17条(審査会への諮問)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 第18条(勧告)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 第19条(公表)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 第5章 福岡市障害者差別解消推進会議 第20条(設置)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 第21条(所掌事務)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 第22条(組織及び委員)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 第23条(部会)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 第24条(参考人の出席)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 第25条(推進会議への委任)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 第6章 福岡市障害者差別解消審査会 第26条(設置)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 第27条(所掌事務)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 第28条(組織及び委員)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 第29条(専門委員)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 第30条(参考人の出席等)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 第31条(審査会への委任)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 第7章 雑則 第32条(罰則)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 第33条(規則への委任)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 附 則 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 第3編 資料 第1 日本国憲法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 第2 条約 ○ 障害者の権利に関する条約(抄)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 第3 法律等 ○ 障害者基本法(抄)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 ○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律・・・・・・・・・・ 49 ○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針・・・・・・・・ 58 ○ 障害者の雇用の促進等に関する法律(抄)・・・・・・・・・・・・・ 70 第4 福岡市例規関係 ○ 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も 共に生きるまちづくり条例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 ○ 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も 共に生きるまちづくり条例施行規則・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 ○ 福岡市障害者差別解消推進会議運営要領・・・・・・・・・・・・・ 87 ○ 福岡市障害者差別解消審査会運営要領・・・・・・・・・・・・・・ 90 ○ 福岡市障害を理由とする差別に関する相談等に係る事務実施要綱・・ 95 ○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する福岡市職員対応要領・・ 98 第1編 総論 第1 逐条解説の目的 「福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」(通称:福岡市障害者差別解消条例)は、約2年という時間をかけて、障害当事者をはじめ、事業者や市民など様々な立場の方々から意見を聴き、議論を重ねながら内容を検討してきました。それは、この条例が、福岡市で生活するすべての人にかかわりのあるものだからです。 条文の一つ一つには、様々な立場の方々の考えや想いが込められていますが、条文だけを見ても、普段、法律や条例などに触れる機会の少ない方にとっては、ややわかりにくい面があるかもしれません。このことは、条例というものの特性上、やむを得ない面もありますが、長い時間をかけて制定した条例が絵に描いた餅になっては意味がありません。 この逐条解説では、なるべくわかりやすい言葉で解説を行うことで、普段、あまり法律や条例などに触れる機会のない市民の皆様に、条例の趣旨や考え方について理解を深めていただくことを目的としています。それによって、障害のある人もない人も相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きるまちづくりの実現に少しでも近づくことを願っています。 第2 条例制定の経緯 障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として平成18年に国連において障害者権利条約が採択されました。また、国において障害者基本法の改正や、障害者差別解消推進法の制定などの取組みがなされていく中で、福岡市内40を超す障害関係団体が集まり、「福岡市に障害者差別禁止条例をつくる会」が発足し、アンケート調査による実態調査などが行われました。福岡市においては、平成28年度から、障害を理由とする差別を解消するための条例の制定に向けた具体的な検討が始まりましたが、その後の検討経過は、以下のとおりです。 H28.7 福岡市保健福祉審議会へ諮問 H28.8〜H29.3 福岡市障害を理由とする差別を解消するための条例検討会議 (全8回) ※有識者4名、当事者6名、事業者3名、市民等5名 H29.9〜11 福岡市保健福祉審議会障害者保健福祉専門分科会(全2回) H29.12 福岡市議会(第2委員会)報告 H30.1〜2 パブリック・コメント、タウンミーティング H30.4 福岡市保健福祉審議会障害者保健福祉専門分科会 H30.5 福岡市保健福祉審議会総会 H30.6 福岡市議会 条例案可決 H31.1〜 条例施行 第3 条例の構成 この条例は、大きく分けて3つの分野から成り立っています。 1つ目は、第1章(第1条〜第5条)と第2章(第6条)で、ここでは条例全体に共通する総則的な内容を規定しています。 2つ目は、第3章(第7条・第8条)と第4章(第9条〜第19条)で、ここでは障害を理由とする差別を解消するための具体的な規制や施策等を規定しています。 3つ目は、第5章(第20条〜第25条)と第6章(第26条〜第31条)で、ここではこの条例に基づき設置する2つの附属機関について規定しています。 第2編 逐条解説 条例名・目次 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例 目次 前文 第1章 総則(第1条―第5条) 第2章 基本理念(第6条) 第3章 障害を理由とする差別の禁止(第7条・第8条) 第4章 障害を理由とする差別を解消するための施策等 第1節 基本的な施策(第9条―第13条) 第2節 障害を理由とする差別に関する相談等(第14条―第19条) 第5章 福岡市障害者差別解消推進会議(第20条―第25条) 第6章 福岡市障害者差別解消審査会(第26条―第31条) 第7章 雑則(第32条・第33条) 附則 【趣旨・解説】 福岡市の市政の柱の一つである「ユニバーサル都市・福岡」の趣旨を踏まえるとともに、「福岡市障害を理由とする差別を解消するための条例検討会議」や「福岡市保健福祉審議会(障害者保健福祉専門分科会)」における委員の意見に基づき、条例の題名を「福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」としました。 なお、条例名が長いことを踏まえ、通称としては「福岡市障害者差別解消条例」という名称を使用しています。 前文 すべて人は、障害の有無にかかわらず、平等に、かけがえのない個人として尊重され、地域社会で自らの個性と能力を発揮しながら心豊かに生活する権利を有している。 しかしながら、現実には、日常生活の様々な場面において、障害のある人が障害を理由として不利益な取扱いを受けているという実態がある。また、障害のある人が、自己実現を求め、自ら望むような社会参加をしたいと願っても、それを困難にしている物理的な問題に加え、障害や障害のある人に対する誤解、無理解、偏見などに基づく社会的障壁が存在し、障害のある人の社会参加の妨げとなっている。障害のある人の多くがこのような不利益な取扱いや社会的障壁のために、自ら望む生き方を諦めざるを得ず、日常生活の様々な場面において家族等に依存することを余儀なくされ、その家族等を失えばたちまち生活自体が困難になってしまう状況にあり、家族等の不安もまた非常に深刻かつ切実である。 そのような中で、平成18年に国際連合において障害者の権利に関する条約が採択され、障害のある人の社会参加の妨げとなっている社会的障壁を社会の責任で取り除き、障害を理由とする差別をなくし、障害のある人もない人も等しく基本的人権を享有する社会を目指すことが国際的に求められるようになった。 日本国憲法においては、個人の尊重と法の下の平等がうたわれており、我が国では、障害者の権利に関する条約の批准や障害者基本法の改正、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定など、障害を理由とする差別の解消に向けた様々な取組みがなされてきた。 福岡市においても、国際社会や国の動向を踏まえた取組みを進めてきたが、障害を理由とするいかなる種類の差別もない社会を実現するためには、市、事業者及び市民が一体となって努力していくことが必要である。 このような認識のもと、障害を理由とする差別の解消の推進に向けた基本理念を明らかにし、障害の有無にかかわらず、すべての人が個人として尊重される社会の実現を目指して、この条例を制定する。 【趣旨・解説】 ○ 前文とは、条例の制定の背景、理念、決意等を述べる文章のことをいいます。 ○ ここでは、条例を制定することとなった経緯や条例の必要性を述べるとともに、障害者の置かれている実態や条約、日本国憲法、障害者基本法、障害者差別解消法等を踏まえ、今後、福岡市が市民や事業者と一体となって差別解消に取り組んでいく決意を述べています。 ○ 「すべての人が個人として尊重される社会」は、「障害者の権利に関する条約」や「日本国憲法」などでも謳われている重要な原理です。 第1章 総則 第1条(目的) (目的) 第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消の推進に関し、基本理念を定め、市の責務並びに事業者及び市民の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、障害者が、社会を構成する主体の一員として、自らの意思で社会のあらゆる分野における活動に参画し政策決定に関わることができる環境を構築し、もってすべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きる社会の実現に資することを目的とする。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、この条例の目的を定めています。目的規定は、条例の立法目的を簡潔に表現したもので、条例全体の解釈・運用の指針となるものです。 ○ 「障害を理由とする差別」については、第2条第3号に規定するとおりです。 ○ 「基本理念」については、第6条各号に規定するとおりです。 ○ 「市の責務」については第3条、「事業者の役割」については第4条、「市民の役割」については第5条にそれぞれ規定するとおりです。 ○ 「障害者」については、第2条第1号に規定するとおりです。 ○ 「障害者が…政策決定に関わることができる環境を構築」することの一環として、第22条第2項では、この条例に基づき設置する附属機関である「福岡市障害者差別解消推進会議」(以下「推進会議」という。)の委員に、障害者が任命されることを規定しています。 ○ 「社会を構成する主体の一員」については、障害者が保護の対象ではなく、権利の主体であることを確認するため規定しています。 ○ 「自らの意思で」については、あらゆる意思伝達手段を用いて本人が意思を表明する(本人の意思の表明が困難な場合には、その家族や支援者が本人を補佐する場合を含みます)ことが重要です。また、そのための環境を整えることが大切です。 ○ 「社会のあらゆる分野における活動に参画」及び「共に生きる社会」(=共生する社会)については、障害者基本法第3条などにおいても規定されています。 第2条(定義) (定義) 第2条 この条例において使用する用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的、断続的又は周期的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (3) 障害を理由とする差別 客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別の事情がないにもかかわらず、不当な差別的取扱いを行い、又は合理的配慮をしないことをいう。 (4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なく、障害を理由として、障害者でない者と異なる不利益な取扱いをすることをいう。 (5) 合理的配慮 障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じた社会的障壁の除去のための必要かつ合理的な現状の変更又は調整をいう。 (6) 事業者 市内で事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第3章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。)及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (7) 独立行政法人等 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第2条第5号に規定する独立行政法人等をいう。 (8) 地方独立行政法人 法第2条第6号に規定する地方独立行政法人をいう。 【趣旨・解説】 本条は、この条例における用語の定義を定めています。 第1号 ○ 「障害者」は、障害者手帳や療育手帳等の所持者に限られず、また、障害のある児童も含まれます。 ○ 障害者基本法や障害者差別解消法では、「発達障害」については「精神障害(発達障害を含む。)」と規定しており、「難病」については個別に規定せず「その他の心身の機能の障害」に含まれるとされています。 この条例では、「発達障害」と「難病」がともに「心身の機能の障害」の例示であることを示すため、「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病その他の心身の機能の障害」と規定しています。であることを示すため、「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病その他の心身の機能の障害」と規定しています。 ○ 「心身の機能の障害」には、「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病」に限らず、慢性疾患による心身の機能の障害などを広く含みます。 ○ 障害者基本法や障害者差別解消法では、「継続的」とのみ規定されていますが、「断続的」や「周期的」といった意味も含まれると考えられるため、この条例では「継続的、断続的又は周期的」と規定しています。ただし、足の捻挫・骨折や風邪など、一時的な怪我や疾患などは除かれます。 ○ 「日常生活」とは、主に日常の衣食住に関する生活をいいます。 ○ 「社会生活」とは、主に社会の一員として地域社会と関わる生活をいいます。具体例としては、職業生活やボランティア活動、地域コミュニティでの活動等が挙げられます。また、趣味や余暇活動も含まれます。 第2号 ○ 「社会的障壁」とは、障害のある方にとって、日常生活や社会生活を送る上で障壁となるような、社会における事物(通行、利用しにくい施設、設備など)、制度(利用しにくい制度など)、慣行(障害のある方の存在を意識していない慣習、文化など)、観念(障害のある方への偏見など)その他一切のものをいいます。 ○ 「その他一切のもの」とあるように、障害者が日常生活や社会生活を送る上で支障となるあらゆるものが対象となります。これは、障害者が日常生活や社会生活で制限を受ける原因が、個人の心身機能の障害のみにあるのではなく、例えば、車いすの方が通りにくくなる道路の段差など、社会の構造側にあるとする、いわゆる「社会モデル」の考え方に基づくものです。社会モデルの考え方は、障害者権利条約で初めて採用されたもので、障害者基本法や障害者差別解消法でも採用されています。 第3号 ○ 「障害を理由とする差別」として、「不当な差別的取扱いを行うこと」と「合理的配慮をしないこと」の2種類を規定しています。 ○ 個別の事案で特定の行為が差別に該当するか否かは、それぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 第4号 ○ 「不当な差別的取扱い」とは、例えば、正当な理由なく、障害を理由として、サービスや各種機会を提供しない、場所・時間帯などを制限する、障害者だけに条件を付けることなどをいいます。 ○ 「正当な理由」の有無は、それぞれの事案に応じて個別具体的・客観的に判断されます。判断基準については、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)の「第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項」の「2 不当な差別的取扱い (2)正当な理由の判断の視点」に記載してあるとおりです(資料編58ページ参照)。 第5号 ○ 「合理的配慮」という概念は、障害者権利条約で採用されており、障害者基本法や障害者差別解消法でもこの条約の趣旨を取り込んだ規定が置かれています。「社会的障壁の除去のための」とあるように、この合理的配慮というのは、第2号で説明した「社会モデル」の考え方を基礎にしています。つまり、社会の側が障害者にとっての障壁(バリア)を生み出しているのであれば、それを除去するための取組みを行うこともまた社会の務めであるという考え方です。 具体的には、乗り物への乗車に当たっての職員等による手助けや、筆談、読み上げ等の障害の特性に応じたコミュニケーション手段による対応、段差の解消のための渡し板の提供などがこれに当たります。 ○ 「必要かつ合理的」であるか否かは、それぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 第6号 ○ 「事業」とは、営利目的か非営利目的かを問わず、反復継続して行われる同種の行為であり、対価を得ない無報酬の事業、社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も含まれます。 ○ 町内会や自治会など、市内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体も、原則として「事業者」に当たります(事業形態や規模等から「事業者」とはいえないような例外的な場合は除きます)。 ○ 地方公共団体から「地方公共団体の経営する企業」が除外されているのは、根拠法である地方公営企業法で「常に企業の経済性を発揮する」ことが求められていることや、原則として業務に要する費用を事業収入で賄うことが前提とされていることから、「事業者」として扱うことが適当であるためです。 第7号 ○ 「独立行政法人等」には、学校法人や社会福祉法人は含まれず、「事業者」に含まれます。 第3条(市の責務) (市の責務) 第3条 市は、第6条の基本理念にのっとり、障害、障害者及び障害を理由とする差別の解消に対する理解の促進を図るとともに、障害を理由とする差別の解消に関する施策を策定し、及びこれを実施するものとする。 【趣旨・解説】 ○ 市の責務として、差別解消に対する理解の促進を図ることと、差別解消に関する施策を策定し実施することを規定しています。 ○ 「市」には、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会などは含まれますが、市から委託を受けた指定管理者や事業者などは含まれません。 ○ 市の基本的な施策については、第9条〜第13条に規定しています。 第4条(事業者の役割) (事業者の役割) 第4条 事業者は、第6条の基本理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消のための取組みを積極的に行うとともに、市が実施する障害を理由とする差別の解消に関する施策に協力するよう努めるものとする。 【趣旨・解説】 ○ 「市、事業者及び市民が一体となって努力していくことが必要である」と規定した前文の趣旨を踏まえ、事業者の役割を規定しています。 第5条(市民の役割) (市民の役割) 第5条 市民は、次条の基本理念にのっとり、障害を理由とする差別をなくすよう努めるとともに、すべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きる社会の構築に寄与するよう努めるものとする。 【趣旨・解説】 ○ 「市、事業者及び市民が一体となって努力していくことが必要である」と規定した前文の趣旨を踏まえ、市民の役割を規定しています。 ○ 「市民」には、「障害者」と「障害者でない者」の両方が含まれています。 ○ 障害者が居住している地域で差別が起こった場合、その障害者にとっては生活の継続が困難になるなど重大な影響を及ぼすものです。したがって、差別をなくすために市民が果たす役割も重要です。 第2章 基本理念 第6条 第6条 障害を理由とする差別の解消の推進は、次に掲げる基本理念に基づき行うものとする。 (1) すべての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 (2) 何人も、障害を理由とする差別により障害者の権利利益を侵害してはならないこと。 (3) 社会的障壁の除去のためには、合理的配慮を行うことが促進される必要があること。 (4) 何人も、障害者との交流を通じて障害又は障害者に対する理解を深めていくこと。 (5) 障害を理由とする差別に関する紛争が発生した場合には、相手方の立場を踏まえた建設的な対話を行うことにより解決することを基本とすること。 (6) すべての障害者は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が保障され、地域社会において他の人々とともに暮らす権利を有すること。 (7) すべての障害者は、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段及び情報の取得又は利用のための手段を選択する機会が保障される権利を有するとともに、障害者に対しては、コミュニケーション及び意思決定の支援並びにこれらの選択の機会を保障する必要があること。 (8) 女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより複合的に困難な状況に置かれている場合があること、及び児童である障害者に対しては、年齢に応じた適切な支援が必要であることを踏まえること。 (9) 非常災害時において障害者の安全を確保するため、非常災害に備えた地域における支援体制の整備及び非常災害発生時における適切な支援が求められること。 【趣旨・解説】 本条は、この条例全体に共通する基本原理(強調したい理念や方針)を規定しています。条例全体に共通する内容であるため、本来は「第1章 総則」に規定すべきとも思われますが、本条の重要性を考慮して、独立して1章を設けることとしました。 第1号 ○ 障害者基本法第3条に規定されているように、障害の有無にかかわらず、すべての人は、個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有しますが、本条は、すべての障害者がこの権利を有することを確認するために規定したものです。 第2号 ○ 障害の有無にかかわらず、すべての人は、他者の権利利益を侵害してはならないのが原則ですが、本条は、誰もが障害を理由とする差別によって障害者の権利利益を侵害してはならないという理念を特に規定しています。差別をなくすためには行政・事業者・市民の積極的な関わりが必要であり、差別のない社会づくりを目指していく必要があります。 ○ 「障害を理由とする差別」には、第2条第3号の定義のとおり、「不当な差別的取扱いを行うこと」と「合理的配慮をしないこと」の両方が含まれます。 ○ 本号を具体化する規定として、第7条と第8条があります。本号では「何人も」と規定しており、市民を含めたすべての人が対象となっていますが、第7条と第8条では、「市」と「事業者」のみが対象となっています。それは、この条例が、「差別をする側」と「差別をされる側」という対立構造を生み出すことが目的なのではなく、建設的対話や相互理解が重要であり、市民に対して規制をしていると受け取られるような条例にすべきではないと考えたためです。 ただし、障害を理由とする差別の解消に向けた強いメッセージを示すことも重要であることから、基本理念を規定する本条においては「何人も」と規定し、すべての人が差別によって障害者の権利利益を侵害してはならないとしています。 第3号 ○ 障害者が日常生活や社会生活で制限を受ける原因が、個人の心身機能の障害のみにあるのではなく、社会の構造側にあるとする、いわゆる「社会モデル」の考え方に基づき、社会全体で合理的配慮を行うことを促進していくという理念を規定しています。 第4号 ○ 障害者に対する誤解、無理解、偏見などは、障害者との交流の機会が少ないという社会背景があると考えられることから、交流を通じて理解を深めていくという理念を規定しています。これは、福岡市が市政の柱の一つとして推進している「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」の考え方にも通じるものです。 第5号 ○ 障害者と障害者でない者の間で争いとなる前に、お互いを理解し合うよう努めることが大事ですが、もし争いとなってしまった場合でも、お互いが自己の立場からのみ主張しあうのではなく、相手の立場に配慮しながら建設的な対話を行うことを通じて解決すべきであるという理念を規定しています。 ○ 「建設的な対話」とは、例えば、障害者の希望や代替措置、事業者がとり得る方法を話し合うなど、相互理解を深めながらより良い解決策を模索していくための対話のことをいいます。 第6号 ○ 障害の有無にかかわらず、すべての人は、どこで誰と生活するかを選ぶことができ、地域社会で他の人々とともに暮らす権利がありますが、本条は、すべての障害者がこの権利を有することを確認するために規定したものです。同様の趣旨の規定が、障害者権利条約第19条、障害者基本法第3条第2号に謳われています。 第7号 ○ 障害者は、情報の送受信の場面で不利な立場になることがあることから、意思を伝達したりコミュニケーションをとったりする場面で不利な立場に置かれることがあってはならないという理念を規定したものです。同様の趣旨の規定としては、障害者権利条約第21条があります。 第8号 ○ 障害者である女性や児童については、障害者権利条約や基本方針でも言及されており、差別解消の推進の観点から重要と考えて規定しています。 第9号 ○ 非常災害時における障害者の安全を確保する観点から、事前の体制整備や災害時の支援について規定しています。 第3章 障害を理由とする差別の禁止 第7条(不当な差別的取扱いの禁止) (不当な差別的取扱いの禁止) 第7条 市(市が設立した地方独立行政法人を含む。次条第1項及び第21条第3号において同じ。)及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、次に掲げる取扱いその他の不当な差別的取扱いにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 (1) 福祉サービスの分野における次に掲げる取扱い ア 第三者の生命、身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、福祉サービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付すること。 イ 福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく、障害者の意思に反して、障害者支援施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第11項に規定する障害者支援施設をいう。)その他の福祉サービスを行う施設における生活を強制すること。 (2) 医療の分野における次に掲げる取扱い ア 第三者の生命、身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、医療の提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付すること。 イ 他の法令に特別の定めがある場合を除き、障害者の意思に反して、入院その他の医療を受けることを強制し、又は自由な行動を制限すること。 (3) 教育、療育及び保育の分野における次に掲げる取扱い ア 客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、教育、療育若しくは保育を行うことを拒否し、若しくは制限し、又はこれらに条件を付すること。 イ 障害者若しくはその保護者(学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条に規定する保護者をいい、同条に規定する保護者のない場合における里親(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第27条第1項第3号の規定により委託を受けた里親をいい、里親のない場合における当該子女の監護及び教育をしている者を含む。)を含む。)の意見を聴かず、若しくは意思を尊重せず、又はこれらの者に必要な説明を行わずに、障害者が就学する学校(学校教育法第1条に規定する小学校、中学校、中等教育学校(前期課程に限る。)又は特別支援学校(小学部及び中学部に限る。)をいう。)を決定すること。 (4) 雇用の分野における次に掲げる取扱い ア 業務の性質上やむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、障害者の応募若しくは採用を拒否し、若しくは制限し、又はこれらに条件を付すること。 イ 合理的配慮をしてもなお業務の遂行が困難な場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、賃金、労働時間、配置、昇進、教育訓練、福利厚生その他の労働条件について障害者でない者と異なる不利益な取扱いをし、又は解雇若しくは退職を強制すること。 (5) 建物及び公共交通機関の分野における次に掲げる取扱い ア 建物の構造上やむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、不特定多数の者の利用に供される建物の利用を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付すること。 イ 旅客施設(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第2条第5号に規定する旅客施設をいう。)又は車両等(同条第7号に規定する車両等をいう。)の構造上やむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、公共交通機関(交通機関の用に供する電車、バス、船舶、タクシー及び飛行機をいう。)の利用を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付すること。 (6) 情報の提供及び意思表示の受領の分野における次に掲げる取扱い ア 障害者から情報の提供を求められた場合において、当該情報の提供により他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められるときその他の客観的に合理的な理由があるときを除き、障害を理由として、当該情報の提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付すること。 イ 障害者が意思を表示する場合において、その選択した意思表示の方法によっては当該意思を確認することに著しい支障があるときその他の客観的に合理的な理由があるときを除き、障害を理由として、当該意思表示の受領を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付すること。 (7) 商品の販売等及び不動産の売買等の分野における次に掲げる取扱い ア 客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、商品の販売若しくはサービス(福祉サービスを除く。)の提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれらに条件を付すること。 イ 建物の構造上やむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、不動産の売買、賃貸、転貸若しくは賃借権の譲渡を拒否し、若しくは制限し、又はこれらに条件を付すること。 【趣旨・解説】 第6条第2号の基本理念を具体化するため、市と事業者に対して、不当な差別的取扱いをすることによって、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。いをすることによって、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。 本条各号は、不当な差別的取扱いの例示として規定しているため、これらに該当しない場合であっても不当な差別的取扱いに該当することはあり得ます。 なお、障害者に対して、やむを得ない場合、客観的な理由がある場合においては、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取り扱いが認められる場合があります。これについては、基本方針の「第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項」の「2 不当な差別的取扱い (2)正当な理由の判断の視点」に記載してあります(資料編61ページ参照)。 第1号 ○ 「福祉サービス」には、障害福祉サービスをはじめ、児童福祉や高齢者福祉など様々なものがあり、この条例でも幅広く対象となります。また、「福祉サービス」に該当しないサービスについては、本条第7号アの対象となります。 ○ 「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「第三者の生命、身体又は財産を保護するためやむを得ない場合」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ 「障害者支援施設」とは、「障害者につき、施設入所支援を行うとともに、施設入所支援以外の施設障害福祉サービスを行う施設」のことをいいます。 ○ 「拒否、制限、条件を附する」の考え方については、基本方針の「第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項」の「2 不当な差別的取扱い (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方」に記載してあります。 ○ 福祉サービスの分野における不当な差別的取扱いの例としては、次のようなケースが考えられます。 ・正当な理由なく、仮の利用期間を設けたり、他の利用者の同意を求めるなど、他の利用者と異なる条件を課す。 第2号 ○ 「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「第三者の生命、身体又は財産を保護するためやむを得ない場合」を規定しています。 ○ 「他の法令に特別の定めがある場合」とは、例えば、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」第29条に規定されている入院措置などが挙げられます。 ○ 医療の分野における不当な差別的取扱いの例としては、次のようなケースが考えられます。 ・正当な理由なく、保護者や支援者・介助者の同伴を診察・治療・調剤等の条件とする。る。 第3号 ○ 「療育」とは、障害児が医療的配慮のもとで育成されることを意味します。 ○ 「客観的に合理的な理由がある場合」の例としては、学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者である利用者に障害の状況等を確認することなどが考えられます。 ○ 「保護者」とは、「子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)」のことをいいます。「保護者」には、「里親」や「里親がいない場合に子どもを監護・教育する者」を含みます。 ○ 教育、療育及び保育の分野における不当な差別的取扱いの例としては、次のようなケースが考えられます。 ・正当な理由なく、入学(入所)出願、受験、入学(入所 )、授業等の受講や、研究指導、実習等校外教育活動、式典への参加などを拒否する。 第4号 ○ アの「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「業務の性質上やむを得ない場合」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ イの「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「合理的配慮をしてもなお業務の遂行が困難な場合」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ なお、雇用関係については、別に「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号)があり、障害者に対する差別の禁止等についての規定も置かれています。雇用の分野における不当な差別的取扱いの相談については、ハローワーク等の窓口で受け付けるほか、福岡市の相談窓口でも受け付けています。 ○ 雇用の分野における不当な差別的取扱いの例としては、次のようなケースが考えられます。 ・職務遂行上運転免許証が必須ではないにもかかわらず、障害者のみを対象として、運転免許証を所持していることを採用条件とすること。 第5号 ○ アの「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「建物の構造上やむを得ないと認められる場合」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ イの「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「旅客施設又は車両等の構造上やむを得ないと認められる場合」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ 「旅客施設」とは、鉄道施設、バスターミナル、航空旅客ターミナル施設などの施設で、公共交通機関を利用する旅客の乗降、待合いその他の用に供するもののことをいいます。 ○ 「車両等」とは、公共交通事業者等が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両、自動車、船舶及び航空機のことをいいます。 ○ 建物および公共交通機関の分野における不当な差別的取扱いの例としては、次のようなケースが考えられます。 ・身体障害者補助犬の帯同を理由に乗車を拒否する。 ・障害があることを理由に、乗車を拒否する。 第6号 ○ アの「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「当該情報の提供により他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められるとき」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ イの「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「障害者の選択した意思表示の方法によっては当該意思を確認することに著しい支障があるとき」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ 情報の提供及び意思表示の受領の分野における不当な差別的取扱いの例としては、次のようなケースが考えられます。 ・障害者から窓口で情報の提供を求められたが、窓口が混雑していることを理由 に情報を提供しない。 ・本人を無視して、介助者や支援者、付き添いの人だけに話しかける。 第7号 ○ アの「客観的に合理的な理由がある場合」とは、例えば、映画館、劇場、コンサートホールなどで、障害特性のために大声をあげてしまう場合などが考えられます。 ○ イの「客観的に合理的な理由がある場合」の例として、「建物の構造上やむを得ないと認められる場合」を規定しています。該当するかどうかはそれぞれの事案に応じて個別具体的に判断されます。 ○ 商品の販売等及び不動産の売買等の分野における不当な差別的取扱いの例としては、次のようなケースが考えられます。 ・障害者向けの物件は扱っていないと門前払いする。 第8条(合理的配慮) (合理的配慮の提供) 第8条 市は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、合理的配慮をしなければならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、合理的配慮をするように努めなければならない。 【趣旨・解説】 第6条第2号の基本理念を具体化するため、合理的配慮の提供について、市に対しては法的義務を、事業者に対しては努力義務を課しています。 なお、事業者の合理的配慮の提供については、何をしなければならないのかが具体的場面等によって異なるため、努力義務としていますが、事業者にも積極的な役割が求められることは、前文や第4条に規定しているとおりです。 ○ 「合理的配慮」とは、比較的新しい概念であり、その考え方については基本方針の「第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項」の「3 合理的配慮 (1)合理的配慮の基本的な考え方」に記載されています。合理的配慮は、それを受ける側に特別の優越的な地位を与えるようなものではなく、無理のない範囲で等しく平等な関係になるようにするためのものをいいます。 ○ 「合理的配慮」は、障害者等が利用することを想定して事前に実施される建築物のバリアフリー化などの事前的改善措置の状況など、その時々の状況により内容が変わります。 ○ 市民においても、第5条や第6条第3項を踏まえて、可能な限り合理的配慮を行っていくことが望まれます。 ○ 「その他の関係者」には、障害者の家族や支援者だけでなく、障害者の意思を代わりに伝えられる者を広く含みます。これは、下記のとおり、障害者等からの「意思の表明」を要件としていることとの関係で、合理的配慮を行うべき場面が不当に限定されてしまわないよう、「その他の関係者」を広く解釈することによりバランスをとるためのものです。 ○ 「意思の表明」には、言語(手話を含む。)だけでなく、筆談や身振り手振りなどが広く含まれます。が広く含まれます。 ○ 「意思の表明」を要件としているのは、具体的に誰がどのような社会的障壁の除去を必要としているかはっきりしない場合にまで、条例で合理的配慮を義務づけることは困難と考えられるためです。ただし、障害者等からの意思の表明がない場合でも、障害者の様子などから社会的障壁の除去が必要と考えられる場合には、自主的に適切な配慮を行うことが望ましいと考えられます。 ○ どのような場合に「実施に伴う負担が過重でないとき」といえるかについては、個別の事案ごとに、事業等の規模やその規模から見た負担の程度、財政状況、業務遂行に及ぼす影響といった要素を考慮し、具体的場面や状況を踏まえて判断することになります。 なお、国においては、所管事業ごとに主務大臣が「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」を作成しており、過重な負担の考え方などが記載されています。 ○ 合理的配慮を行うことが難しい場合は、その理由や事情を障害者等に対して説明する必要があります。 ○ 合理的配慮の具体例は、次のとおりです。 ・行政機関などにおいて、書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。 ・学校などにおいて、意思疎通のために絵や写真カード、ICT機器(タブレット端末等)等を活用する。 ・病院などにおいて、施設内放送を文字化したり、電光表示板で表示したりする。 ・交通機関において、券売機の利用が難しい場合、操作を手伝ったり、窓口で対応したりする。 ・不動産業において、物件案内時に携帯スロープを用意したり、車いすを押して案内したりする。 ・銀行などにおいて、取引、相談等の手段を、非対面の手段を含めて複数用意する。 ・小売店などにおいて、注文や問い合わせ等に際し、インターネット画面への入力によるものだけでなく電話等でも対応できるようにする。 ・飲食店などにおいて、メニューをわかりやすく説明したり、写真を活用したりする。 第4章 障害を理由とする差別を解消するための施策等 第1節 基本的な施策 第9条(啓発活動等) (啓発活動等) 第9条 市は、事業者及び市民の、障害、障害者及び障害を理由とする差別の解消に対する理解を深めるために必要な啓発活動を行うとともに、事業者が障害を理由とする差別の解消のための取組みを積極的に行うことができるよう、事業者に対し、情報の提供を行うものとする。 2 市長は、職員に対し、障害、障害者及び障害を理由とする差別の解消に対する理解を深めるための研修の機会を確保するものとする。 【趣旨・解説】 ○ 障害を理由とする差別をなくすための市の施策として、啓発活動や情報提供の実施について定めています。 ○ 「啓発活動」とは、例えば、出前講座を実施したり、パンフレットの配布やホームページの掲載などを行ったりすることで、この条例や障害者差別解消法の考え方を説明することなどが考えられます。 ○ 「情報の提供」とは、例えば、市の広報媒体を通じて合理的配慮の好事例を発信していくことなどが考えられますが、提供する情報の内容や手段は、推進会議で検討することになります。 ○ 「職員」とは、地方公務員法第3条第2項に規定する一般職に属するすべての職員をいい、具体的には、いわゆる一般行政職のほか、教員、消防職員、地方公営企業職員などが含まれます。 ○ 市の職員への研修については、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する福岡市職員対応要領」第8条でも規定しています(資料編100ページ参照)。この要領は、障害者差別解消法第10条第1項で、「地方公共団体の機関…は、基本方針に即して、第7条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関…の職員が適切に対応するために必要な要領を定めるよう努めるものとする」とされているもので、福岡市でも、障害者差別解消法にあわせて平成28年4月から施行しています。 ○ 障害を理由とする差別が発生する背景には、障害や障害者に対する誤解・偏見・無理解等があります。これらを解消し、差別をなくすためには、研修とともに啓発活動が必要です。特に合理的配慮については新しい考え方であるため、市民や事業者の理解を深めるために、障害当事者も参加する啓発活動などを行っていくことなどが考えられます。者の理解を深めるために、障害当事者も参加する啓発活動などを行っていくことなどが考えられます。 第10条(交流の推進) (交流の推進) 第10条 市は、障害者と障害者でない者の交流の推進に必要な施策を実施するものとする。 【趣旨・解説】 ○ 第6条第4号の基本理念を具体化するため、市が交流の推進に必要な施策を実施することとしています。 ○ 「交流の推進に必要な施策」とは、障害や障害者への理解を深めるため、例えば、毎年12月に実施している「障害者週間記念の集い」のようなイベントで、障害のある方とない方のステージ共演を実施したり、タウンミーティングのようなイベントで障害のある方とない方のグループディスカッションを実施したりするなど、様々な方法が考えられます。どのような方法が望ましいかについては、推進会議で様々な立場の委員から意見を聴きながら検討することになります。 ○ 子どもの時から障害への理解を根付かせるためのインクルーシブ教育の推進なども重要です。 第11条(相談体制の充実) (相談体制の充実) 第11条 市は、第6条の基本理念にのっとり、障害を理由とする差別に関する相談に的確に応じるための体制の充実を図るものとする。 2 市は、前項の体制を整備するに当たっては、当該体制が次の各号のいずれにも該当するよう考慮するものとする。 (1) 相談をする人にとって身近に相談窓口があること。 (2) 障害及び障害者に関し専門的知識を有する者が相談を受けること。 【趣旨・解説】 ○ 第6条第5号では、「相手方の立場を踏まえた建設的な対話を行うことにより解決することを基本とする」という基本理念を規定しています。当事者同士の話し合いで解決できればよいのですが、必ずしも話し合いがうまくいくとは限りません。そのような場合に、当事者が安心して相談でき、建設的な対話を促してくれる機関が必要となります。第1項は、このような趣旨で規定しています。 ○ 差別を受けたという体験は、障害者やその家族等の心を深く傷つけ、他者に相談することには大きなハードルがあると考えられることから、身近に気軽に相談できる環境が必要です。また、相談を受ける人が障害や障害者に関して知識が乏しかったり、事業者等との間に立って調整する能力に乏しかったりすると、的確な対応をとることができません。このようなことから、第2項は、市が相談体制を整備するに当たっては、「身近さ」と「専門性」が両立するよう考慮するとしています。 ○ 相談窓口等の詳細については、「福岡市障害を理由とする差別に関する相談等に係る事務実施要綱」で定めています。 ○ 相談体制の充実のためには、相談に丁寧に対応し、たらいまわしにしない人的体制と研修を通じての相談員の人材づくりが必要です。相談員には、障害特性に配慮して相談を受ける技術や、差別をしたと主張する側と主張される側との間に立って調整する能力などが求められます。 第12条(表彰) (表彰) 第12条 市長は、合理的配慮をすることに関して功績のあった者に対し、表彰を行うことができる。 【趣旨・解説】 ○ 合理的配慮という考え方は、比較的新しい考え方であり、社会全体にこの考え方が浸透するには少し時間がかかると考えられます。第9条では、市が様々な啓発活動や情報提供をしていくことを規定していますが、これに加えて、合理的配慮に関して優れた取組みを行った事業者などを表彰することにより、その取組みの継続を後押ししていくとともに、合理的配慮の好事例を周知することで、合理的配慮の考え方を広く地域社会に浸透させていきたいという趣旨で規定しています。 ○ どのような場合に表彰の対象となるのかについては、「福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例施行規則」(以下「施行規則」という。)第3条で定めています。また、選考に当たっては、幅広い見地から公正な選考となるよう、推進会議の意見を聴くことを予定しています。「施行規則」という。)第3条で定めています。また、選考に当たっては、幅広い見地から公正な選考となるよう、推進会議の意見を聴くことを予定しています。 第13条(財政上の措置) (財政上の措置) 第13条 市長は、障害を理由とする差別の解消に関する施策を実施するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講じるものとする。 【趣旨・解説】 ○ 第3条(市の責務)の規定を具体化するため、差別の解消に関する施策を実施するための必要な財政上の措置について規定しています。 ○ 「必要な財政上の措置」については、推進会議で様々な立場の委員から意見を聴きながら検討を行うことを予定しています。 第2節 障害を理由とする差別に関する相談等 第14条(相談) (相談) 第14条 障害者及びその家族その他の関係者又は事業者は、市に対し、障害を理由とする差別に関する相談をすることができる。 2 市は、前項の規定による相談(以下「個別相談」という。)を受けた場合は、必要に応じて次に掲げる対応を行うものとする。 (1) 必要な説明、情報の提供その他の障害を理由とする差別を解消するために必要な支援 (2) 個別相談に係る事案の関係者間の調整又はあっせん (3) 関係行政機関に対する通告、通報その他の通知 (4) 次条第1項の規定による申出をするために必要な支援 【趣旨・解説】 ○ 本条〜第19条では、相談に関する一連の流れを規定しています。 ○ 「相談」とは、福岡市内で発生した差別に関する相談をいいます。 ○ 第8条と同じく、「その他の関係者」には、障害者の家族や支援者、障害者のコミュニケーションを補佐できる者を広く含みます。 ○ 障害者やその家族、関係者だけでなく、事業者からも相談をすることができるとしています。これは、第6条第5号で「建設的な対話を行うことにより解決することを基本とする」と規定していることを踏まえ、紛争等の円滑な解決を望む事業者の側からも相談をすることができるようにすべきと考えたためです。 ○ 「市」には、市が委託した相談機関も含まれます。 ○ 「障害を理由とする差別に関する相談」には、障害を理由とする差別に関するあらゆる相談が含まれます。 ただし、一般私人間(隣人関係、家族関係など)の事案については、第2項第2号に規定する「調整・あっせん」、第15条に規定する「市長への申出」、第16条に規定する「指導・助言」の対象とはなりません。一般私人間の事案は、原則として私人間の話し合いで解決するのが望ましいと考えられるからです。 ○ 「障害を理由とする差別を解消するために必要な支援」には、条例の趣旨の説明、相談内容の解決に必要な事実確認、問題解決に向けた方向性の提示、他に適当な解決機関があればその機関の紹介などが含まれます。 ○ 「調整・あっせん」とは、第16条の「指導・助言」に至らない程度のものです。「指導・助言」は、いわゆる一般的なイメージの行政指導で、相手方に対しある行為をすること(しないこと)について任意の協力を求めるものです。 ○ 相談者が匿名を希望する場合、事実確認等が困難であるため、原則として「調整・あっせん」は行いません。 ○ 「関係行政機関」としては、例えば、法務局の人権擁護部署、労働局・労働基準監督署、障害者虐待防止センター、こども総合相談センター、発達教育センターなどが挙げられます。 第15条(市長への申出) (市長への申出) 第15条 個別相談をした障害者及びその家族その他の関係者は、前条第2項の対応により解決が図られない事案について、市長に対し、必要な措置を講じ、又は指導若しくは助言をするよう申出をすることができる。ただし、当該申出をすることが当該障害者の意思に反することが明らかであるときは、当該障害者の家族その他の関係者は、当該申出をすることができない。 2 市長は、前項の規定による申出があったときは、当該申出に係る事実について必要な調査を行うことができる。 3 第1項の規定による申出に係る事業者は、前項の調査が行われるときは、これに誠実に協力しなければならない。 4 市長は、第1項の規定による申出があったときは、処理の経過及び結果を当該申出をした者に通知するものとする。ただし、第17条の規定により当該申出に係る事案を福岡市障害者差別解消審査会に諮問したときその他特別の理由があるときは、この限りでない。 【趣旨・解説】 ○ 本条例は、第6条第5号に規定しているように、紛争が発生した場合でも当事者間の建設的な対話による解決を基本としていますので、第14条第2項の対応の段階で解決されることが望ましいといえます。しかし、当事者間の調整等を行ったにもかかわらず、解決が図られなかった場合、相談を行った障害者等は、次の段階として、市長に対し指導・助言等の申出をすることができます。 なお、第14条の解説で述べたとおり、一般私人間(隣人関係、家族関係など)の事案については、本条の対象とはなりません。 ○ 「必要な措置」とは、市が障害を理由とする差別を行った場合に、市が自ら行うべき是正措置のことをいいます。これに対し、「指導若しくは助言」とは、事業者が障害を理由とする差別を行った場合に、市が当該事業者に対して行う行政指導をいいます。 ○ 第14条の解説で述べたとおり、「障害者及びその家族その他の関係者」は広く解釈されますが、他方で、障害者本人の意思を無視して本条の申出がなされることがあってはならないため、第1項ただし書を規定しています。 ○ 「必要な調査」とは、例えば、当事者からのヒアリング、現地調査、当事者間の話合いの場への同席などが挙げられます。 ○ 第3項で、事業者には調査への協力義務を課していますので、例えば、正当な理由がないのにヒアリング調査を拒むといったことは許されません。 ○ 申出に対しては、処理の経過や結果を申出者に通知しますが、「福岡市障害者差別審査会」に諮問がなされた場合は、この審査会の会議が原則として非公開であることから、通知は行わないこととしています。それ以外の特別の理由がある場合も同様です。 ○ 申出の方式等については、施行規則第4条で詳細に定めています。申出は、原則として書面で行うこととしています。 第16条(指導又は助言等) (指導又は助言等) 第16条 市長は、前条第2項の調査の結果、前条第1項の規定による申出に相当の理由があると認めるときは、福岡市障害者差別解消推進会議の意見を聴いたうえで、必要な措置を講じ、又は指導若しくは助言をするものとする。 【趣旨・解説】 ○ 指導・助言等の申出があり、調査の結果、申出に相当の理由があると認めるときは、推進会議の意見を聴いた上で、必要な措置を講じたり、指導・助言を行っていくことになります。 ○ 推進会議は、いわゆる諮問機関ですので、その意見を市長は尊重することになります。 ○ 第14条の解説で述べたとおり、一般私人間(隣人関係、家族関係など)の事案については、本条の対象とはなりません。 第17条(審査会への諮問) (審査会への諮問) 第17条 市長は、前条の規定による指導又は助言(第7条の規定に違反することを理由としてなされたものに限る。)をした場合において、当該指導又は助言を受けた事業者(以下「特定事業者」という。)が正当な理由なく当該指導又は助言に従わないときは、福岡市障害者差別解消審査会に諮問することができる。 【趣旨・解説】 ○ 事業者が正当な理由なく指導・助言に従わない場合には、指導・助言の次の段階として、勧告を行うかどうかを検討する段階へと移ります。 ○ 勧告も行政指導の一種ですが、第19条に規定しているように、勧告がなされると最終的には公表という手段がとられる可能性があります。事業者にとって、勧告に従わないという理由で事業者名等が公表されることは、重大な影響が出てくる可能性がありますので、行政の恣意的な運用によって事業者側の利益が侵害されないように、慎重な手続きを踏む必要があります。そこで、第三者の目で適正なチェックを実施するため、「福岡市障害者差別解消審査会」という機関に諮問する(意見を聴く)ということにしています。 ○ 第16条の指導・助言については、不当な差別的取扱い(第7条)か合理的配慮の不提供(第8条)かを問わず対象となりますが、本条では、「(第7条の規定に違反することを理由としてなされたものに限る。)」として、不当な差別的取扱いに関する事案のみが諮問の対象となる旨を規定しています。合理的配慮の不提供の事案が対象となっていない理由は、事業者の合理的配慮の提供が法的義務ではなく努力義務となっているためです(第8条第2項)。すなわち、上記のとおり、勧告や公表という手段は、それを受けた事業者にとっては重大な影響が生じ得るものですが、努力義務であるものについてそのような効果を与えることは妥当でないことから、勧告の前提となる諮問の対象となる事案を不当な差別的取扱いの事案に限定しているものです。 なお、市が行った不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供の事案が対象となっていない理由は、市については第16条の「必要な措置を講じ」た段階で解決することが当然と考えられるためです。 第18条(勧告) (勧告) 第18条 市長は、次の各号のいずれかに該当する場合は、特定事業者に対し、障害者の権利利益を侵害しないための具体的な措置を示して勧告することができる。 (1) 福岡市障害者差別解消審査会が勧告の必要があると認めたとき。 (2) 特定事業者が正当な理由なく第30条の規定による出席の求めに応じず、又は虚偽の説明をし、若しくは資料を提出したとき。 (3) 特定事業者が指導又は助言に従わないことにより、障害を理由とする差別の解消の推進に支障が発生し、又は拡大するおそれがあり、これらを防止するため緊急の必要があると認めるとき。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、一定の要件を充たした場合には、市長が事業者に対し勧告をすることができる旨を規定しています。 ○ 「勧告」も行政指導の一種ですが、第17条に規定しているように、「指導・助言」に正当な理由なく従わないことが前提となっています。その上で、本条第1号から第3号に定める3つの要件のいずれかを充たす必要があります。 すなわち、@福岡市障害者差別解消審査会が勧告の必要があると認めたときはもちろんですが、A事業者が正当な理由なく審査会の求めに応じなかったり、虚偽の説明・資料提出を行ったりした場合も、悪質性が認められますので勧告の対象となります。また、@やAのような事情がない場合でも、緊急の必要性がある場合には審査会の判断等を待たずに直ちに勧告という手段がとれるよう、Bの要件を規定しています。 ○ 「勧告」の方式については、施行規則第5条で定めており、書面で行うこととしています。これは、第17条の解説で述べたように、勧告や公表という手段がとられると、事業者にとって重大な影響が出てくる可能性がありますので、書面という形式を求めることで慎重な手続きを踏むようにするためです。 第19条(公表) (公表) 第19条 市長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。 2 市長は、前項の規定による公表をしようとする場合には、あらかじめ、当該公表をされるべき者に対しその理由を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。 【趣旨・解説】 ○ 第1項は、勧告を受けた事業者が正当な理由なく勧告に従わないときに、その事実や事業者名などを市長が公表することができることを規定しています。この「公表」は、指導・助言や勧告などの行政指導について、正当な理由がないにもかかわらず事業者が従わない場合になされるものであることから、そのような事業者に対する社会的制裁という意味があるとともに、そのような事業者の存在を広く市民に情報提供するという意味があります。 なお、公表の方法等については、施行規則第6条で規定しており、ホームページへの掲載等によって行うこととしています。 ○ 第2項は、「公表」という手段をとる前に、意見陳述の機会を与えなければならないことを規定しています。本条の「公表」を含め、「指導・助言」や「勧告」などの行政指導は、いわゆる行政処分には該当しないため、福岡市行政手続条例に定める「聴聞」や「弁明の機会の付与」の対象とはなりません。しかし、第17条の解説で述べたように、公表という手段がとられると、事業者にとって重大な影響が出てくる可能性があります。そこで、第2項では、慎重な手続きを踏むことを目的として、事前に理由を通知することと意見を述べる機会を与えることを規定しています。 なお、意見陳述の方法については、施行規則第7条で規定しており、原則として書面で行うこととしています。 第5章 福岡市障害者差別解消推進会議 第20条(設置) (設置) 第20条 市長の附属機関として、福岡市障害者差別解消推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。 2 推進会議は、法第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会を兼ねるものとする。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、福岡市に附属機関として推進会議を設置する旨を規定しています。 ○ 「附属機関」とは、行政機関に附置される機関のことで、調停、審査、諮問又は調査を行うためのものです。この条例では、2つの附属機関を設置することとしており、その1つが推進会議です。 ○ 「障害者差別解消支援地域協議会」とは、障害者差別解消法第17条第1項で、「当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される」機関と規定されているものです。 福岡市でも、障害者差別解消法の施行にあわせて、平成28年4月からこの協議会を設置していましたが、第2項で推進会議が障害者差別解消支援地域協議会を兼ねると規定したため、現在は障害者差別解消支援地域協議会という名称の機関はなくなっています。 第21条(所掌事務) (所掌事務) 第21条 推進会議は、次に掲げる事務を行う。 (1) 障害を理由とする差別の解消に関し必要と認められる事項について調査審議すること。 (2) 法第18条第1項に規定する事務 (3) 第16条の規定に基づき、市長から意見を求められた事案について、意見を述べること(市が第7条又は第8条第1項の規定に違反した場合にその事実を公表することを求めることを含む。)。 (4) 前3号に掲げるもののほか、障害を理由とする差別を解消するために必要な事務 2 推進会議は、障害を理由とする差別の解消に関する重要な施策に関し、市長に対し、意見を述べることができる。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、推進会議の所掌事務を規定しています。 ○ 第2号の「法第18条第1項に規定する事務」とは、関係機関との情報共有など、障害者差別解消法に規定する障害者差別解消支援地域協議会の事務のことをいいます。具体的には、以下のとおりです。 @複数の機関等によって紛争の防止や解決を図る事案の共有 A関係機関等が対応した相談事例の共有 B障害者差別に関する相談体制の整備 C障害者差別の解消に資する取組みの共有・分析 D構成機関等におけるあっせん・調整等の様々な取組みによる紛争解決の後押し E障害者差別の解消に資する取組みの周知・発信や障害特性の理解のための研修・啓発 ○ 第3号では、第16条で「福岡市障害者差別解消推進会議の意見を聴いたうえで」と規定していることから、市長から指導・助言を行うべきかどうかの意見を求められた場合に意見を述べる旨を規定しています。 ○ 第3号かっこ書きは、上記の「意見」に、市が障害を理由とする差別を行った事実を公表することを求めることが含まれる旨を規定しています。すなわち、第17条の解説で述べたように、仮に市が障害を理由とする差別を行った場合、第16条の「必要な措置を講じ」た段階で解決することが当然であり、そこで解決しないことはそもそも想定されないため、この条例上、(事業者とは異なり)勧告や公表という手続には進まないこととなっています。しかし、それでは、市が極めて悪質な差別を行ったような場合に、最終的に事業者名などが公表される事業者とのバランスを欠くため、推進会議から市に対し、「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」を行った事実の公表を求めることができる旨を規定しています。ような場合に、最終的に事業者名などが公表される事業者とのバランスを欠くため、推進会議から市に対し、「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」を行った事実の公表を求めることができる旨を規定しています。 ○ 「福岡市障害者差別解消推進会議運営要領」第3条において、「推進会議は、部会の決議をもって、推進会議の決議とすることができる」としており、第3号に関する事項は、実際上は「福岡市障害者差別解消推進会議相談部会」(以下「相談部会」という。)の所掌事務となっています。 ○ 第4号では、第1号から第3号までに該当しないものであっても、「障害を理由とする差別を解消するために必要な事務」であれば、推進会議の所掌事務となることを規定しています。具体的には、施行規則第1条で定めており、@障害を理由とする差別を解消するための取組みを担う人材の育成について検討すること、A合理的配慮をすることに関して功績のあった者に対する表彰について検討すること、Bこの条例の規定について検討することがこれに当たります。 ○ 第2項では、第1項第3号のように、市長から意見を求められた事案以外でも、障害を理由とする差別の解消に関する重要な施策については、市長に対し意見を述べることができる旨を規定しています。 第22条(組織及び委員) (組織及び委員) 第22条 推進会議は、委員30人以内をもって組織する。 2 委員は、障害者並びに福祉、医療、教育、雇用その他障害者の権利の擁護について優れた識見及び実務経験を有する者のうちから、市長が任命する。 3 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また同様とする。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、推進会議の組織と委員について規定しています。 ○ 第1項で、推進会議の委員数は30人以内と規定していますが、令和2年3月現在、委員数は22人となっています。 ○ 第2項では、委員の任命について規定しています。推進会議は、障害を理由とする差別を解消するための施策等について、障害当事者をはじめとして様々な立場の方から幅広く意見を聴くことを目的としているため、「障害者」や「障害者の権利の擁護について優れた識見及び実務経験を有する者」のうちから委員を任命することとしています。ととしています。 また、上記の目的を実効化するため、施行規則第8条第1項では、「推進会議の委員の任命に当たっては、推進会議の委員の構成が、障害を理由とする差別の解消に関する多様な意見が適切に反映されるものとなるよう配慮する」こととしています。 ○ 第3項では、委員の秘密保持義務について規定しています。推進会議では、障害を理由とする差別に関連して、個人のプライバシーや事業者の営業秘密等の情報を知ることがあり得るため、委員に対し秘密保持義務を課しています。また、秘密保持義務違反については、この条例の第32条で罰則を科しています。 第23条(部会) (部会) 第23条 推進会議は、必要に応じて、部会を置くことができる。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、推進会議に部会を置くことができる旨を規定するものです。 ○ 令和2年3月現在、推進会議の部会としては、個別相談について問題解決に向けた分析や助言を行うことなどを目的とする相談部会を設置しています。相談部会の所掌事務などの詳細については、「福岡市障害者差別解消推進会議運営要領」で規定しています。 第24条(参考人の出席) (参考人の出席) 第24条 推進会議は、必要があると認めるときは、会議に参考人の出席を求め、意見を聴くことができる。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、推進会議が必要と判断した場合に、その会議に参考人の出席を求め、意見を聴くことができる旨を規定するものです。具体的な手続については、「福岡市障害者差別解消推進会議運営要領」第6条で規定しています。 ○ 「参考人」には、個別相談の関係者が含まれるのはもちろんですが、個別相談の関係者以外でも、推進会議の所掌事務を遂行するに当たって必要な範囲であれば、広く「参考人」に含まれます。 第25条(推進会議への委任) (推進会議への委任) 第25条 この章及び第33条の規定に基づく規則に定めるもののほか、推進会議の運営に関し必要な事項は、推進会議が定める。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、この条例や施行規則で定める事項以外の、推進会議の運営に関し必要な事項については、推進会議自身が定める旨を規定しています。これを受けて、推進会議は、「福岡市障害者差別解消推進会議運営要領」を定めています。 第6章 福岡市障害者差別解消審査会 第26条(設置) (設置) 第26条 市長の附属機関として、福岡市障害者差別解消審査会(以下「審査会」という。)を置く。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、福岡市に附属機関として「福岡市障害者差別解消審査会」(以下「審査会」という。)を設置する旨を規定しています。 ○ 「附属機関」とは、行政機関に附置される機関のことで、調停、審査、諮問又は調査を行うためのものです。この条例では、2つの附属機関を設置することとしており、その1つが審査会です。 第27条(所掌事務) (所掌事務) 第27条 審査会は、第17条の規定による諮問に応じ、当該諮問に係る事案について調査審議を行う。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、審査会の所掌事務を規定しています。審査会の詳細については、「福岡市障害者差別解消審査会運営要領」で規定しています。 ○ 審査会の所掌事務は1つだけで、「第17条の規定による諮問に応じ、当該諮問に係る事案について調査審議を行う」ことです。「第17条の規定による諮問」とは、指導・助言を受けた事業者が、正当な理由なく指導・助言に従わない場合に、市長が審査会に対し、当該事業者への勧告を行うべきかどうかの意見を求めるものです。 第28条(組織及び委員) (組織及び委員) 第28条 審査会は、委員5人以内をもって組織する。 2 委員は、障害者並びに審査会の権限に属する事項に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律、行政又は障害者の権利の擁護について優れた識見及び実務経験を有する者のうちから、市長が任命する。 3 第22条第3項の規定は、審査会の委員について準用する。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、審査会の組織と委員について規定しています。 ○ 第1項で、審査会の委員数は5人以内と規定していますが、令和2年3月現在、委員数は4人となっています。 ○ 第2項では、委員の任命について規定しています。審査会は、事業者に重大な影響を生じさせかねない勧告という手段をとるべきかどうかについて、専門的な見地から第三者の意見を聴くことを目的としているため、「障害者」や「審査会の権限に属する事項に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律、行政又は障害者の権利の擁護について優れた識見及び実務経験を有する者」のうちから委員を任命することとしています。 また、施行規則第11条では、同規則第8条を準用しており、「審査会の委員の任命に当たっては、審査会の委員の構成が、障害を理由とする差別の解消に関する多様な意見が適切に反映されるものとなるよう配慮する」こととなっています。 ○ 第3項では、第22条第3項を準用しており、委員の秘密保持義務について推進会議の委員と同様の規定となっています。 第29条(専門委員) (専門委員) 第29条 審査会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。 2 専門委員は、障害者の権利の擁護その他の専門の事項に関し優れた識見及び実務経験を有する者のうちから、市長が任命する。 3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。 4 第22条第3項の規定は、専門委員について準用する。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、審査会に専門委員を置くことができること、専門委員の任命、解任及び専門委員の秘密保持義務について規定しています。 ○ 審査会の委員には、法律、行政又は障害者の権利擁護に関する有識者等が任命されていますが、すべての案件についての専門分野を少数の委員でカバーすることは困難と考えられます。そこで、必要に応じ、専門的知識を有する者を調査審議に活用するため、専門委員を置くことができるようにしています。 ○ 第2項は、専門委員の任命について規定しています。「障害者の権利の擁護」というのは例示で、「専門の事項に関し優れた識見及び実務経験を有する者」のうちから委員を任命することとしています。なお、専門委員の数の上限については定めていません。 ○ 第3項は、専門委員の解任について規定しています。専門委員は、審査会が調査審議を行うに当たり、専門的知識を有する者を臨時的に活用するものですので、任期は定めておらず、その者の任命に係る当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されることとしています。 ○ 第4項は、専門委員の秘密保持義務についての規定です。専門委員についても、個人のプライバシーや事業者の営業秘密等の情報を漏らしてはならないことは当然ですので、推進会議の委員の秘密保持義務についての規定(第22条第3項)を準用しています。 第30条(参考人の出席等) (参考人の出席等) 第30条 審査会は、必要があると認めるときは、会議に参考人の出席を求め、説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、審査会が必要と判断した場合に、その会議に参考人の出席を求めて意見を聴いたり、資料の提出を求めたりすることができる旨を規定するものです。 ○ 「参考人」には、個別相談の関係者が含まれるのはもちろんですが、個別相談の関係者以外でも、推進会議の所掌事務を遂行するに当たって必要な範囲であれば、広く「参考人」に含まれます。 第31条(審査会への委任) (審査会への委任) 第31条 この章及び第33条の規定に基づく規則に定めるもののほか、審査会の運営に関し必要な事項は、審査会が定める。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、この条例や施行規則で定める事項以外の、審査会の運営に関し必要な事項については、審査会自身が定める旨を規定しています。これを受けて、審査会は、「福岡市障害者差別解消審査会運営要領」を定めています。 第7章 雑則 第32条(罰則) (罰則) 第32条 第22条第3項(第28条第3項及び第29条第4項において準用する場合を含む。)の規定に違反して秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、推進会議の委員、審査会の委員及び専門委員の秘密保持義務違反に対する罰則を定めています。 ○ 本条の罰則は、障害者差別解消法第25条に規定する障害者差別解消支援地域協議会の構成員の秘密保持義務違反に対する罰則と同じものとしています。 第33条(規則への委任) (規則への委任) 第33条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 【趣旨・解説】 ○ 本条は、この条例の施行のために必要な事項について、規則で定めることを規定しています。これを受けて、施行規則を制定しています。 附則 附 則 (施行期日) 1 この条例は、平成31年1月1日から施行する。 (準備行為) 2 市は、この条例の施行の日(以下「施行日」という。)前においても、第11条の規定の例により、障害を理由とする差別に関する相談体制を整備することができる。 3 市長は、施行日前においても、第5章の規定の例により、推進会議の委員の任命並びに組織及び運営に関し必要な行為をすることができる。 4 市長は、施行日前においても、第6章の規定の例により、審査会の委員の任命並びに組織及び運営に関し必要な行為をすることができる。 (検討) 5 市は、この条例の施行後3年を経過した場合において、この条例の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じるものとする。 【趣旨・解説】 ○ 附則第1項では、この条例の施行期日を規定しています。 ○ 附則第2項から第4項では、準備行為として、この条例の施行日前でも行うことができる行為を規定しています。第2項が相談体制の整備、第3項が推進会議の委員の任命や組織等に関し必要な行為、第4項が審査会の委員の任命や組織等に関し必要な行為です。 ○ 附則第5項では、この条例の施行状況の検討を踏まえた規定の見直しについて規定しています。 条例の施行状況を踏まえた見直しを行うためには、ある程度の期間の運用実績の蓄積を待つ必要があるため、この条例の施行後3年を経過した場合に見直しの検討を行うことにしています。 この条例の検討段階においては、「市や事業者だけでなくすべての人に差別を禁止する旨を規定すべきだ。」、「事業者の合理的配慮を努力義務ではなく法的義務とすべきだ。」、「地域での障害を理由とする差別の実態を調査し、第7条各号に規定する項目の一つとして、地域での取扱いを盛り込むことを検討すべきだ。」といった意見などがありました。見直しの検討においては、これらの意見をはじめとして、3年間の運用実績を勘案して見直しが必要と考えられる事項を抽出し、推進会議等で検討していく必要があると考えられます。 第3編 資料 第1 日本国憲法(抄) 第11条 国民は,すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として,現在及び将来の国民に与へられる。 第13条 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。 第14条 すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。  2〜3 略 第22条 何人も,公共の福祉に反しない限り,居住,移転及び職業選択の自由を有する。  2 略 第25条 すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。  2 国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 第26条 すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する。  2 すべて国民は,法律の定めるところにより,その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は,これを無償とする。 第27条 すべて国民は,勤労の権利を有し,義務を負ふ。  2 賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。  3 児童は,これを酷使してはならない。 第94条 地方公共団体は,その財産を管理し,事務を処理し,及び行政を執行する権能を有し,法律の範囲内で条例を制定することができる。 第2 条約 ○ 障害者の権利に関する条約(抄) 第1条 目的 この条約は,全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し,保護し,及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。 障害者には,長期的な身体的,精神的,知的又は感覚的な機能障害であって,様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。 第2条 定義 この条約の適用上,「意思疎通」とは,言語,文字の表示,点字,触覚を使った意思疎通,拡大文字,利用しやすいマルチメディア並びに筆記,音声,平易な言葉,朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態,手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう。 「言語」とは,音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。 「障害に基づく差別」とは,障害に基づくあらゆる区別,排除又は制限であって,政治的,経済的,社会的,文化的,市民的その他のあらゆる分野において,他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し,享有し,又は行使することを害し,又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には,あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 「合理的配慮」とは,障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。 「ユニバーサルデザイン」とは,調整又は特別な設計を必要とすることなく,最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品,環境,計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは,特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には,これを排除するものではない。 第3条 一般原則 この条約の原則は,次のとおりとする。 (a) 固有の尊厳,個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立の尊重 (b) 無差別 (c) 社会への完全かつ効果的な参加及び包容 (d) 差異の尊重並びに人間の多様性の一部及び人類の一員としての障害者の受入れ (e) 機会の均等 (f) 施設及びサービス等の利用の容易さ (g) 男女の平等 (h) 障害のある児童の発達しつつある能力の尊重及び障害のある児童がその同一性を保持する権利の尊重 第4条 一般的義務 1 締約国は,障害に基づくいかなる差別もなしに,全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し,及び促進することを約束する。このため,締約国は,次のことを約束する。  (a) この条約において認められる権利の実現のため,全ての適当な立法措置,行政措置その他の措置をとること。  (b) 障害者に対する差別となる既存の法律,規則,慣習及び慣行を修正し,又は廃止するための全ての適当な措置(立法を含む。)をとること。  (c) 全ての政策及び計画において障害者の人権の保護及び促進を考慮に入れること。  (d) この条約と両立しないいかなる行為又は慣行も差し控えること。また,公の当局及び機関がこの条約に従って行動することを確保すること。  (e) いかなる個人,団体又は民間企業による障害に基づく差別も撤廃するための全ての適当な措置をとること。  (f) 第2条に規定するユニバーサルデザインの製品,サービス,設備及び施設であって,障害者に特有のニーズを満たすために必要な調整が可能な限り最小限であり,かつ,当該ニーズを満たすために必要な費用が最小限であるべきものについての研究及び開発を実施し,又は促進すること。また,当該ユニバーサルデザインの製品,サービス,設備及び施設の利用可能性及び使用を促進すること。さらに,基準及び指針を作成するに当たっては,ユニバーサルデザインが当該基準及び指針に含まれることを促進すること。  (g) 障害者に適した新たな機器(情報通信機器,移動補助具,補装具及び支援機器を含む。)についての研究及び開発を実施し,又は促進し,並びに当該新たな機器の利用可能性及び使用を促進すること。この場合において,締約国は,負担しやすい費用の機器を優先させる。  (h) 移動補助具,補装具及び支援機器(新たな機器を含む。)並びに他の形態の援助,支援サービス及び施設に関する情報であって,障害者にとって利用しやすいものを提供すること。  (i) この条約において認められる権利によって保障される支援及びサービスをより良く提供するため,障害者と共に行動する専門家及び職員に対する当該権利に関する研修を促進すること。 2 各締約国は,経済的,社会的及び文化的権利に関しては,これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するため,自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより,また,必要な場合には国際協力の枠内で,措置をとることを約束する。ただし,この条約に定める義務であって,国際法に従って直ちに適用されるものに影響を及ぼすものではない。 3 締約国は,この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において,並びに障害者に関する問題についての他の意思決定過程において,障害者(障害のある児童を含む。以下この3において同じ。)を代表する団体を通じ,障害者と緊密に協議し,及び障害者を積極的に関与させる。 4 この条約のいかなる規定も,締約国の法律又は締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって障害者の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。この条約のいずれかの締約国において法律,条約,規則又は慣習によって認められ,又は存する人権及び基本的自由については,この条約がそれらの権利若しくは自由を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として,それらの権利及び自由を制限し,又は侵してはならない。 5 この条約は,いかなる制限又は例外もなしに,連邦国家の全ての地域について適用する。 第5条 平等及び無差別 1 締約国は,全ての者が,法律の前に又は法律に基づいて平等であり,並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める。 2 締約国は,障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし,いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保障する。 3 締約国は,平等を促進し,及び差別を撤廃することを目的として,合理的配慮が提供されることを確保するための全ての適当な措置をとる。 4 障害者の事実上の平等を促進し,又は達成するために必要な特別の措置は,この条約に規定する差別と解してはならない。 (中略) 第19条 自立した生活及び地域社会への包容 この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。 (a) 障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。 (b) 地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること。 (c) 一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。 (中略) 第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会 締約国は、障害者が、第二条に定めるあらゆる形態の意思疎通であって自ら選択するものにより、表現及び意見の自由(他の者との平等を基礎として情報及び考えを求め、受け、及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するための全ての適当な措置をとる。この措置には、次のことによるものを含む。 (a) 障害者に対し、様々な種類の障害に相応した利用しやすい様式及び機器により、適時に、かつ、追加の費用を伴わず、一般公衆向けの情報を提供すること。 (b) 公的な活動において、手話、点字、補助的及び代替的な意思疎通並びに障害者が自ら選択する他の全ての利用しやすい意思疎通の手段、形態及び様式を用いることを受け入れ、及び容易にすること。 (c) 一般公衆に対してサービス(インターネットによるものを含む。)を提供する民間の団体が情報及びサービスを障害者にとって利用しやすい又は使用可能な様式で提供するよう要請すること。 (d) マスメディア(インターネットを通じて情報を提供する者を含む。)がそのサービスを障害者にとって利用しやすいものとするよう奨励すること。 (e) 手話の使用を認め、及び促進すること。 第3 法律等 ○ 障害者基本法(抄) (目的) 第1条 この法律は,全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり,全ての国民が,障害の有無によつて分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し,基本原則を定め,及び国,地方公共団体等の責務を明らかにするとともに,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。 (定義) 第2条 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。  一 障害者 身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。  二 社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。 (地域社会における共生等) 第3条 第1条に規定する社会の実現は,全ての障害者が,障害者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ,次に掲げる事項を旨として図られなければならない。  一 全て障害者は,社会を構成する一員として社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。  二 全て障害者は,可能な限り,どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され,地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。  三 全て障害者は,可能な限り,言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに,情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 (差別の禁止) 第4条 何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。 2 社会的障壁の除去は,それを必要としている障害者が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときは,それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。 3 国は,第1項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため,当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集,整理及び提供を行うものとする。 ○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 目次 第1章 総則(第1条―第5条) 第2章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(第6条) 第3章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置(第7条―第13条) 第4章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置(第14条―第20条) 第5章 雑則(第21条―第24条) 第6章 罰則(第25条・第26条) 附則 第1章 総則 (目的) 第1条 この法律は,障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり,全ての障害者が,障害者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項,行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより,障害を理由とする差別の解消を推進し,もって全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第2条 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。  一 障害者 身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。  二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。  三 行政機関等 国の行政機関,独立行政法人等,地方公共団体(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第3章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第7号,第10条及び附則第4条第1項において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。人をいう。  四 国の行政機関 次に掲げる機関をいう。   イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関   ロ 内閣府,宮内庁並びに内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第1項及び第2項に規定する機関(これらの機関のうちニの政令で定める機関が置かれる機関にあっては,当該政令で定める機関を除く。)   ハ 国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項に規定する機関(ホの政令で定める機関が置かれる機関にあっては,当該政令で定める機関を除く。)   ニ 内閣府設置法第39条及び第55条並びに宮内庁法(昭和22年法律第70号)第16条第2項の機関並びに内閣府設置法第40条及び第56条(宮内庁法第18条第1項において準用する場合を含む。)の特別の機関で,政令で定めるもの   ホ 国家行政組織法第8条の2の施設等機関及び同法第8条の3の特別の機関で,政令で定めるもの   ヘ 会計検査院  五 独立行政法人等 次に掲げる法人をいう。   イ 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。ロにおいて同じ。)   ロ 法律により直接に設立された法人,特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(独立行政法人を除く。)又は特別の法律により設立され,かつ,その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち,政令で定めるもの  六 地方独立行政法人 地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人(同法第21条第3号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。  七 事業者 商業その他の事業を行う者(国,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (国及び地方公共団体の責務) 第3条 国及び地方公共団体は,この法律の趣旨にのっとり,障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し,及びこれを実施しなければならない。 (国民の責務) 第4条 国民は,第1条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み,障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。 (社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備) 第5条 行政機関等及び事業者は,社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため,自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備,関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 第2章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 第6条 政府は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針は,次に掲げる事項について定めるものとする。  一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向  二 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項  三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項  四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 3 内閣総理大臣は,基本方針の案を作成し,閣議の決定を求めなければならない。 4 内閣総理大臣は,基本方針の案を作成しようとするときは,あらかじめ,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに,障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。 5 内閣総理大臣は,第3項の規定による閣議の決定があったときは,遅滞なく,基本方針を公表しなければならない。 6 前3項の規定は,基本方針の変更について準用する。 第3章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置 (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) 第7条 行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり,障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第8条 事業者は,その事業を行うに当たり,障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は,その事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 (国等職員対応要領) 第9条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は,基本方針に即して,第7条に規定する事項に関し,当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第3条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。 2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は,国等職員対応要領を定めようとするときは,あらかじめ,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。 3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は,国等職員対応要領を定めたときは,遅滞なく,これを公表しなければならない。 4 前2項の規定は,国等職員対応要領の変更について準用する。 (地方公共団体等職員対応要領) 第10条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は,基本方針に即して,第7条に規定する事項に関し,当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第4条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。 2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は,地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは,あらかじめ,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は,地方公共団体等職員対応要領を定めたときは,遅滞なく,これを公表するよう努めなければならない。 4 国は,地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。 5 前3項の規定は,地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。 (事業者のための対応指針) 第11条 主務大臣は,基本方針に即して,第8条に規定する事項に関し,事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。 2 第9条第2項から第4項までの規定は,対応指針について準用する。 (報告の徴収並びに助言,指導及び勧告) 第12条 主務大臣は,第8条の規定の施行に関し,特に必要があると認めるときは,対応指針に定める事項について,当該事業者に対し,報告を求め,又は助言,指導若しくは勧告をすることができる。 (事業主による措置に関する特例) 第13条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については,障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによる。 第4章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置 (相談及び紛争の防止等のための体制の整備) 第14条 国及び地方公共団体は,障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに,障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。 (啓発活動) 第15条 国及び地方公共団体は,障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに,特に,障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため,必要な啓発活動を行うものとする。 (情報の収集,整理及び提供) 第16条 国は,障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう,国内外における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集,整理及び提供を行うものとする。 (障害者差別解消支援地域協議会) 第17条 国及び地方公共団体の機関であって,医療,介護,教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第2項において「関係機関」という。)は,当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため,関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。 2 前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は,必要があると認めるときは,協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。  一 特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他の団体  二 学識経験者  三 その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者 (協議会の事務等) 第18条 協議会は,前条第1項の目的を達するため,必要な情報を交換するとともに,障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。 2 関係機関及び前条第2項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は,前項の協議の結果に基づき,当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。 3 協議会は,第1項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき,又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは,構成機関等に対し,相談を行った障害者及び差別に係る事案に関する情報の提供,意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。 4 協議会の庶務は,協議会を構成する地方公共団体において処理する。 5 協議会が組織されたときは,当該地方公共団体は,内閣府令で定めるところにより,その旨を公表しなければならない。 (秘密保持義務) 第19条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は,正当な理由なく,協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。 (協議会の定める事項) 第20条 前3条に定めるもののほか,協議会の組織及び運営に関し必要な事項は,協議会が定める。 第5章 雑則 (主務大臣) 第21条 この法律における主務大臣は,対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会とする。 (地方公共団体が処理する事務) 第22条 第12条に規定する主務大臣の権限に属する事務は,政令で定めるところにより,地方公共団体の長その他の執行機関が行うこととすることができる。 (権限の委任) 第23条 この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は,政令で定めるところにより,その所属の職員に委任することができる。 (政令への委任) 第24条 この法律に定めるもののほか,この法律の実施のため必要な事項は,政令で定める。 第6章 罰則 第25条 第19条の規定に違反した者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 第26条 第12条の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者は,20万円以下の過料に処する。 附 則 (施行期日) 第1条 この法律は,平成28年4月1日から施行する。ただし,次条から附則第6条までの規定は,公布の日から施行する。 (基本方針に関する経過措置) 第2条 政府は,この法律の施行前においても,第6条の規定の例により,基本方針を定めることができる。この場合において,内閣総理大臣は,この法律の施行前においても,同条の規定の例により,これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた基本方針は,この法律の施行の日において第6条の規定により定められたものとみなす。 (国等職員対応要領に関する経過措置) 第3条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は,この法律の施行前においても,第9条の規定の例により,国等職員対応要領を定め,これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた国等職員対応要領は,この法律の施行の日において第9条の規定により定められたものとみなす。9条の規定により定められたものとみなす。 (地方公共団体等職員対応要領に関する経過措置) 第4条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は,この法律の施行前においても,第10条の規定の例により,地方公共団体等職員対応要領を定め,これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた地方公共団体等職員対応要領は,この法律の施行の日において第10条の規定により定められたものとみなす。 (対応指針に関する経過措置) 第5条 主務大臣は,この法律の施行前においても,第11条の規定の例により,対応指針を定め,これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた対応指針は,この法律の施行の日において第11条の規定により定められたものとみなす。 (政令への委任) 第6条 この附則に規定するもののほか,この法律の施行に関し必要な経過措置は,政令で定める。 (検討) 第7条 政府は,この法律の施行後3年を経過した場合において,第8条第2項に規定する社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。 (障害者基本法の一部改正) 第8条 障害者基本法の一部を次のように改正する。 第32条第2項に次の1号を加える。  四 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。 (内閣府設置法の一部改正) 第9条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。 第4条第3項第44号の次に次の1号を加える。  44の2 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第6条第1項に規定するものをいう。)の作成及び推進に関すること。るものをいう。)の作成及び推進に関すること。 ○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 政府は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第6条第1項の規定に基づき,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定する。基本方針は,障害を理由とする差別(以下「障害者差別」という。)の解消に向けた,政府の施策の総合的かつ一体的な実施に関する基本的な考え方を示すものである。 第1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 1 法制定の背景  近年,障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し,平成18年に国連において,障害者の人権及び基本的自由の享有を確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択された。我が国は,平成19年に権利条約に署名し,以来,国内法の整備を始めとする取組を進めてきた。  権利条約は第2条において,「「障害に基づく差別」とは,障害に基づくあらゆる区別,排除又は制限であって,政治的,経済的,社会的,文化的,市民的その他のあらゆる分野において,他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し,享有し,又は行使することを害し,又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には,あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し,その禁止について,締約国に全ての適当な措置を求めている。我が国においては,平成16年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正において,障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され,さらに,平成23年の同法改正の際には,権利条約の趣旨を踏まえ,同法第2条第2号において,社会的障壁について,「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに,基本原則として,同法第4条第1項に,「何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと,また,同条第2項に,「社会的障壁の除去は,それを必要としている障害者が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときは,それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定された。  法は,障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり,全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け,障害者差別の解消を推進することを目的として,平成25年6月に制定された。我が国は,本法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ,平成踏まえ,平成踏まえ,平成踏まえ,平成 2 基本的な考え方 (1)法の考え方  全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには,日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し,社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要である。このため,法は,後述する,障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し,行政機関等及び事業者に対し,差別の解消に向けた具体的取組を求めるとともに,普及啓発活動等を通じて,障害者も含めた国民一人ひとりが,それぞれの立場において自発的に取り組むことを促している。  特に,法に規定された合理的配慮の提供に当たる行為は,既に社会の様々な場面において日常的に実践されているものもあり,こうした取組を広く社会に示すことにより,国民一人ひとりの,障害に関する正しい知識の取得や理解が深まり,障害者との建設的対話による相互理解が促進され,取組の裾野が一層広がることを期待するものである。 (2)基本方針と対応要領・対応指針との関係  基本方針に即して,国の行政機関の長及び独立行政法人等においては,当該機関の職員の取組に資するための対応要領を,主務大臣においては,事業者における取組に資するための対応指針を作成することとされている。地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人(以下「地方公共団体等」という。)については,地方分権の観点から,対応要領の作成は努力義務とされているが,積極的に取り組むことが望まれる。  対応要領及び対応指針は,法に規定された不当な差別的取扱い及び合理的配慮について,具体例も盛り込みながら分かりやすく示しつつ,行政機関等の職員に徹底し,事業者の取組を促進するとともに,広く国民に周知するものとする。 (3)条例との関係  地方公共団体においては,近年,法の制定に先駆けて,障害者差別の解消に向けた条例の制定が進められるなど,各地で障害者差別の解消に係る気運の高まりが見られるところである。法の施行後においても,地域の実情に即した既存の条例(いわゆる上乗せ・横出し条例を含む。)については引き続き効力を有し,また,新たに制定することも制限されることはなく,障害者にとって身近な地域において,条例の制定も含めた障害者差別を解消する取組の推進が望まれる。 第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項 1 法の対象範囲 (1)障害者    対象となる障害者は,障害者基本法第2条第1号に規定する障害者,即ち,「身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」である。これは,障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は,身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく,社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって,法が対象とする障害者は,いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。なお,高次脳機能障害は精神障害に含まれる。    また,特に女性である障害者は,障害に加えて女性であることにより,更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること,障害児には,成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する。 (2)事業者    対象となる事業者は,商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み,国,独立行政法人等,地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり,目的の営利・非営利,個人・法人の別を問わず,同種の行為を反復継続する意思をもって行う者である。したがって,例えば,個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者,非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となる。 (3)対象分野    法は,日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となる。ただし,行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については,法第13条により,障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされている。 2 不当な差別的取扱い (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方  ア 法は,障害者に対して,正当な理由なく,障害を理由として,財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する,障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより,障害者の権利利益を侵害することを禁止している。    なお,障害者の事実上の平等を促進し,又は達成するために必要な特別の措置は,不当な差別的取扱いではない。不当な差別的取扱いではない。  イ したがって,障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置),法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや,合理的配慮を提供等するために必要な範囲で,プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは,不当な差別的取扱いには当たらない。不当な差別的取扱いとは,正当な理由なく,障害者を,問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 (2)正当な理由の判断の視点    正当な理由に相当するのは,障害者に対して,障害を理由として,財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり,その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。行政機関等及び事業者においては,正当な理由に相当するか否かについて,個別の事案ごとに,障害者,事業者,第三者の権利利益(例:安全の確保,財産の保全,事業の目的・内容・機能の維持,損害発生の防止等)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み,具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は,正当な理由があると判断した場合には,障害者にその理由を説明するものとし,理解を得るよう努めることが望ましい。 3 合理的配慮 (1)合理的配慮の基本的な考え方  ア 権利条約第2条において,「合理的配慮」は,「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。    法は,権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ,行政機関等及び事業者に対し,その事務・事業を行うに当たり,個々の場面において,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,社会的障壁の除去の実施について,必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めている。合理的配慮は,障害者が受ける制限は,障害のみに起因するものではなく,社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり,その実施に伴う負担が過重でないものである。でないものである。    合理的配慮は,行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし,必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること,障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること,事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。  イ 合理的配慮は,障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり,多様かつ個別性の高いものであり,当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ,社会的障壁の除去のための手段及び方法について,「(2)過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素を考慮し,代替措置の選択も含め,双方の建設的対話による相互理解を通じて,必要かつ合理的な範囲で,柔軟に対応がなされるものである。さらに,合理的配慮の内容は,技術の進展,社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。    現時点における一例としては,    ・車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す,高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境への配慮    ・筆談,読み上げ,手話などによるコミュニケーション,分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮    ・障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更    などが挙げられる。合理的配慮の提供に当たっては,障害者の性別,年齢,状態等に配慮するものとする。内閣府及び関係行政機関は,今後,合理的配慮の具体例を蓄積し,広く国民に提供するものとする。    なお,合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合,障害者との関係性が長期にわたる場合等には,その都度の合理的配慮の提供ではなく,後述する環境の整備を考慮に入れることにより,中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。  ウ 意思の表明に当たっては,具体的場面において,社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか,点字,拡大文字,筆談,実物の提示や身振りサイン等による合図,触覚による意思伝達など,障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。    また,障害者からの意思表明のみでなく,知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には,障害者の家族,介助者等,コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。    なお,意思の表明が困難な障害者が,家族,介助者等を伴っていない場合など,意思の表明がない場合であっても,当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には,法の趣旨に鑑みれば,当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど,自主的な取組に努めることが望ましい。われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど,自主的な取組に努めることが望ましい。  エ 合理的配慮は,障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化,介助者等の人的支援,情報アクセシビリティの向上等の環境の整備(「第5」において後述)を基礎として,個々の障害者に対して,その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって,各場面における環境の整備の状況により,合理的配慮の内容は異なることとなる。また,障害の状態等が変化することもあるため,特に,障害者との関係性が長期にわたる場合等には,提供する合理的配慮について,適宜,見直しを行うことが重要である。 (2)過重な負担の基本的な考え方    過重な負担については,行政機関等及び事業者において,個別の事案ごとに,以下の要素等を考慮し,具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は,過重な負担に当たると判断した場合は,障害者にその理由を説明するものとし,理解を得るよう努めることが望ましい。 ○ 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約,人的・体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 ○ 事務・事業規模 ○ 財政・財務状況 第3 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方  行政機関等においては,その事務・事業の公共性に鑑み,障害者差別の解消に率先して取り組む主体として,不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供が法的義務とされており,国の行政機関の長及び独立行政法人等は,当該機関の職員による取組を確実なものとするため,対応要領を定めることとされている。行政機関等における差別禁止を確実なものとするためには,差別禁止に係る具体的取組と併せて,相談窓口の明確化,職員の研修・啓発の機会の確保等を徹底することが重要であり,対応要領においてこの旨を明記するものとする。 2 対応要領 (1)対応要領の位置付け及び作成手続  対応要領は,行政機関等が事務・事業を行うに当たり,職員が遵守すべき服務規律の一環として定められる必要があり,国の行政機関であれば,各機関の長が定める訓令等が,また,独立行政法人等については,内部規則の様式に従って定められることが考えられる。一環として定められる必要があり,国の行政機関であれば,各機関の長が定める訓令等が,また,独立行政法人等については,内部規則の様式に従って定められることが考えられる。  国の行政機関の長及び独立行政法人等は,対応要領の作成に当たり,障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催,障害者団体等からのヒアリングなど,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに,作成後は,対応要領を公表しなければならない。 (2)対応要領の記載事項  対応要領の記載事項としては,以下のものが考えられる。   ○ 趣旨   ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方   ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例   ○ 相談体制の整備   ○ 職員への研修・啓発 3 地方公共団体等における対応要領に関する事項  地方公共団体等における対応要領の作成については,地方分権の趣旨に鑑み,法においては努力義務とされている。地方公共団体等において対応要領を作成する場合には,2(1)及び(2)に準じて行われることが望ましい。国は,地方公共団体等における対応要領の作成に関し,適時に資料・情報の提供,技術的助言など,所要の支援措置を講ずること等により協力しなければならない。 第4 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方  事業者については,不当な差別的取扱いの禁止が法的義務とされる一方で,事業における障害者との関係が分野・業種・場面・状況によって様々であり,求められる配慮の内容・程度も多種多様であることから,合理的配慮の提供については,努力義務とされている。このため,各主務大臣は,所掌する分野における対応指針を作成し,事業者は,対応指針を参考として,取組を主体的に進めることが期待される。主務大臣においては,所掌する分野の特性を踏まえたきめ細かな対応を行うものとする。各事業者における取組については,障害者差別の禁止に係る具体的取組はもとより,相談窓口の整備,事業者の研修・啓発の機会の確保等も重要であり,対応指針の作成に当たっては,この旨を明記するものとする。  同種の事業が行政機関等と事業者の双方で行われる場合は,事業の類似性を踏まえつつ,事業主体の違いも考慮した上での対応に努めることが望ましい。また,公設民営の施設など,行政機関等がその事務・事業の一環として設置・実施し,事業者に運営を委託等している場合は,提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう,委託等の条件に,対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。つ,事業主体の違いも考慮した上での対応に努めることが望ましい。また,公設民営の施設など,行政機関等がその事務・事業の一環として設置・実施し,事業者に運営を委託等している場合は,提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう,委託等の条件に,対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。 2 対応指針 (1)対応指針の位置付け及び作成手続  主務大臣は,個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を作成するものとされている。作成に当たっては,障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催,障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに,作成後は,対応指針を公表しなければならない。  なお,対応指針は,事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり,盛り込まれる合理的配慮の具体例は,事業者に強制する性格のものではなく,また,それだけに限られるものではない。事業者においては,対応指針を踏まえ,具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。 (2)対応指針の記載事項  対応指針の記載事項としては,以下のものが考えられる。   ○ 趣旨   ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方   ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例   ○ 事業者における相談体制の整備   ○ 事業者における研修・啓発   ○ 国の行政機関(主務大臣)における相談窓口 3 主務大臣による行政措置  事業者における障害者差別解消に向けた取組は,主務大臣の定める対応指針を参考にして,各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。しかしながら,事業者による自主的な取組のみによっては,その適切な履行が確保されず,例えば,事業者が法に反した取扱いを繰り返し,自主的な改善を期待することが困難である場合など,主務大臣は,特に必要があると認められるときは,事業者に対し,報告を求め,又は助言,指導若しくは勧告をすることができることとされている。  こうした行政措置に至る事案を未然に防止するため,主務大臣は,事業者に対して,対応指針に係る十分な情報提供を行うとともに,事業者からの照会・相談に丁寧に対応するなどの取組を積極的に行うものとする。また,主務大臣による行政措置に当たっては,事業者における自主的な取組を尊重する法の趣旨に沿って,まず,報告徴収,助言,指導により改善を促すことを基本とする必要がある。主務大臣が事業者に対して行った助言,指導及び勧告については,取りまとめて,毎年国会に報告するものとする。するなどの取組を積極的に行うものとする。また,主務大臣による行政措置に当たっては,事業者における自主的な取組を尊重する法の趣旨に沿って,まず,報告徴収,助言,指導により改善を促すことを基本とする必要がある。主務大臣が事業者に対して行った助言,指導及び勧告については,取りまとめて,毎年国会に報告するものとする。 第5 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 1 環境の整備  法は,不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化,意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援,障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については,個別の場面において,個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから,技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また,環境の整備には,ハード面のみならず,職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要である。  障害者差別の解消のための取組は,このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり,ハード面でのバリアフリー化施策,情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策,職員に対する研修等,環境の整備の施策を着実に進めることが必要である。 2 相談及び紛争の防止等のための体制の整備  障害者差別の解消を効果的に推進するには,障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要であり,相談等に対応する際には,障害者の性別,年齢,状態等に配慮することが重要である。法は,新たな機関は設置せず,既存の機関等の活用・充実を図ることとしており,国及び地方公共団体においては,相談窓口を明確にするとともに,相談や紛争解決などに対応する職員の業務の明確化・専門性の向上などを図ることにより,障害者差別の解消の推進に資する体制を整備するものとする。内閣府においては,相談及び紛争の防止等に関する機関の情報について収集・整理し,ホームページへの掲載等により情報提供を行うものとする。 3 啓発活動  障害者差別については,国民一人ひとりの障害に関する知識・理解の不足,意識の偏りに起因する面が大きいと考えられることから,内閣府を中心に,関係行政機関と連携して,各種啓発活動に積極的に取り組み,国民各層の障害に関する理解を促進するものとする。 (1)行政機関等における職員に対する研修  行政機関等においては,所属する職員一人ひとりが障害者に対して適切に対応し,また,障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため,法の趣旨の周知徹底,障害者から話を聞く機会を設けるなどの各種研修等を実施することにより,職員の障害に関する理解の促進を図るものとする。 (2)事業者における研修  事業者においては,障害者に対して適切に対応し,また,障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため,研修等を通じて,法の趣旨の普及を図るとともに,障害に関する理解の促進に努めるものとする。 (3)地域住民等に対する啓発活動  ア 障害者差別が,本人のみならず,その家族等にも深い影響を及ぼすことを,国民一人ひとりが認識するとともに,法の趣旨について理解を深めることが不可欠であり,また,障害者からの働きかけによる建設的対話を通じた相互理解が促進されるよう,障害者も含め,広く周知・啓発を行うことが重要である。    内閣府を中心に,関係省庁,地方公共団体,事業者,障害者団体,マスメディア等の多様な主体との連携により,インターネットを活用した情報提供,ポスターの掲示,パンフレットの作成・配布,法の説明会やシンポジウム等の開催など,多様な媒体を用いた周知・啓発活動に積極的に取り組む。  イ 障害のある児童生徒が,その年齢及び能力に応じ,可能な限り障害のない児童生徒と共に,その特性を踏まえた十分な教育を受けることのできるインクルーシブ教育システムを推進しつつ,家庭や学校を始めとする社会のあらゆる機会を活用し,子供の頃から年齢を問わず障害に関する知識・理解を深め,全ての障害者が,障害者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人であることを認識し,障害の有無にかかわらず共に助け合い・学び合う精神を涵養する。障害のない児童生徒の保護者に対する働きかけも重要である。  ウ 国は,グループホーム等を含む,障害者関連施設の認可等に際して,周辺住民の同意を求める必要がないことを十分に周知するとともに,地方公共団体においては,当該認可等に際して,周辺住民の同意を求める必要がないことに留意しつつ,住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うことが望ましい。 4 障害者差別解消支援地域協議会 (1)趣旨  障害者差別の解消を効果的に推進するには,障害者にとって身近な地域において,主体的な取組がなされることが重要である。地域において日常生活,社会生活を営む障害者の活動は広範多岐にわたり,相談等を行うに当たっては,どの機関がどのような権限を有しているかは必ずしも明らかではない場合があり,また,相談等を受ける機関においても,相談内容によっては当該機関だけでは対応できない場合がある。このため,地域における様々な関係機関が,相談事例等に係る情報の共有・協議を通じて,各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止の取組など,地域の実情に応じた差別の解消のための取組を主体的に行うネットワークとして,障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができることとされている。協議会については,障害者及びその家族の参画について配慮するとともに,性別・年齢,障害種別を考慮して組織することが望ましい。内閣府においては,法施行後における協議会の設置状況等について公表するものとする。体的な取組がなされることが重要である。地域において日常生活,社会生活を営む障害者の活動は広範多岐にわたり,相談等を行うに当たっては,どの機関がどのような権限を有しているかは必ずしも明らかではない場合があり,また,相談等を受ける機関においても,相談内容によっては当該機関だけでは対応できない場合がある。このため,地域における様々な関係機関が,相談事例等に係る情報の共有・協議を通じて,各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止の取組など,地域の実情に応じた差別の解消のための取組を主体的に行うネットワークとして,障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができることとされている。協議会については,障害者及びその家族の参画について配慮するとともに,性別・年齢,障害種別を考慮して組織することが望ましい。内閣府においては,法施行後における協議会の設置状況等について公表するものとする。 (2)期待される役割  協議会に期待される役割としては,関係機関から提供された相談事例等について,適切な相談窓口を有する機関の紹介,具体的事案の対応例の共有・協議,協議会の構成機関等における調停,斡旋等の様々な取組による紛争解決,複数の機関で紛争解決等に対応することへの後押し等が考えられる。  なお,都道府県において組織される協議会においては,紛争解決等に向けた取組について,市町村において組織される協議会を補完・支援する役割が期待される。また,関係機関において紛争解決に至った事例,合理的配慮の具体例,相談事案から合理的配慮に係る環境の整備を行うに至った事例などの共有・分析を通じて,構成機関等における業務改善,事案の発生防止のための取組,周知・啓発活動に係る協議等を行うことが期待される。 5 差別の解消に係る施策の推進に関する重要事項 (1)情報の収集,整理及び提供  本法を効果的に運用していくため,内閣府においては,行政機関等による協力や協議会との連携などにより,個人情報の保護等に配慮しつつ,国内における具体例や裁判例等を収集・整理するものとする。あわせて,海外の法制度や差別解消のための取組に係る調査研究等を通じ,権利条約に基づき設置された,障害者の権利に関する委員会を始めとする国際的な動向や情報の集積を図るものとする。これらの成果については,障害者白書や内閣府ホームページ等を通じて,広く国民に提供するものとする。 (2)基本方針,対応要領,対応指針の見直し等  技術の進展,社会情勢の変化等は,特に,合理的配慮について,その内容,程度等に大きな進展をもたらし,また,実施に伴う負担を軽減し得るものであり,法の施行後においては,こうした動向や,不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例の集積等を踏まえるとともに,国際的な動向も勘案しつつ,必要に応じて,基本方針,対応要領及び対応指針を見直し,適時,充実を図るものとする。おいては,こうした動向や,不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例の集積等を踏まえるとともに,国際的な動向も勘案しつつ,必要に応じて,基本方針,対応要領及び対応指針を見直し,適時,充実を図るものとする。  法の施行後3年を経過した時点における法の施行状況に係る検討の際には,障害者政策委員会における障害者差別の解消も含めた障害者基本計画の実施状況に係る監視の結果も踏まえて,基本方針についても併せて所要の検討を行うものとする。基本方針の見直しに当たっては,あらかじめ,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに,障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。対応要領,対応指針の見直しに当たっても,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。  なお,各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう,いわゆる欠格条項について,各制度の趣旨や,技術の進展,社会情勢の変化等を踏まえ,適宜,必要な見直しを検討するものとする。 ○ 障害者の雇用の促進等に関する法律(抄) (目的) 第1条 この法律は,障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置,雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置,職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ,もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。 (用語の意義) 第2条 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。第6号において同じ。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため,長期にわたり,職業生活に相当の制限を受け,又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。 (中略) (障害者に対する差別の禁止) 第34条 事業主は,労働者の募集及び採用について,障害者に対して,障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。 第35条 事業主は,賃金の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について,労働者が障害者であることを理由として,障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。 (障害者に対する差別の禁止に関する指針) 第36条 厚生労働大臣は,前2条の規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するために必要な指針(次項において「差別の禁止に関する指針」という。)を定めるものとする。 2 略 (雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るための措置) 第36条の2 事業主は,労働者の募集及び採用について,障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となつている事情を改善するため,労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし,事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは,この限りでない。 第36条の3 事業主は,障害者である労働者について,障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となつている事情を改善するため,その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備,援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし,事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは,この限りでない。 第36条の4 事業主は,前2条に規定する措置を講ずるに当たつては,障害者の意向を十分に尊重しなければならない。 2 事業主は,前条に規定する措置に関し,その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 (雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等に関する指針) 第36条の5 厚生労働大臣は,前3条の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して,その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「均等な機会の確保等に関する指針」という。)を定めるものとする。 2 略 (助言,指導及び勧告) 第36条の6 厚生労働大臣は,第34条,第35条及び第36条の2から第36条の4までの規定の施行に関し必要があると認めるときは,事業主に対して,助言,指導又は勧告をすることができる。 (中略) (苦情の自主的解決) 第74条の4 事業主は,第35条及び第36条の3に定める事項に関し,障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは,苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。 (紛争の解決の促進に関する特例) 第74条の5 第34条,第35条,第36条の2及び第36条の3に定める事項についての障害者である労働者と事業主との間の紛争については,個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)第4条,第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず,次条から第74条の8までに定めるところによる。 (紛争の解決の援助) 第74条の6 都道府県労働局長は,前条に規定する紛争に関し,当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には,当該紛争の当事者に対し,必要な助言,指導又は勧告をすることができる。 2 事業主は,障害者である労働者が前項の援助を求めたことを理由として,当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 (調停の委任) 第74条の7 都道府県労働局長は,第74条の5に規定する紛争(労働者の募集及び採用についての紛争を除く。)について,当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは,個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。 2 前条第2項の規定は,障害者である労働者が前項の申請をした場合について準用する。 (調停) 第74条の8 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第19条,第20条第1項及び第21条から第26条までの規定は,前条第1項の調停の手続について準用する。この場合において,同法第19条第1項中「前条第1項」とあるのは「障害者の雇用の促進等に関する法律第74条の7第1項」と,同法第20条第1項中「関係当事者」とあるのは「関係当事者又は障害者の医療に関する専門的知識を有する者その他の参考人」と,同法第25条第1項中「第18条第1項」とあるのは「障害者の雇用の促進等に関する法律第74条の7第1項」と読み替えるものとする。 第4 福岡市例規関係 ○ 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例 目次 前文 第1章 総則(第1条―第5条) 第2章 基本理念(第6条) 第3章 障害を理由とする差別の禁止(第7条・第8条) 第4章 障害を理由とする差別を解消するための施策等 第1節 基本的な施策(第9条―第13条) 第2節 障害を理由とする差別に関する相談等(第14条―第19条) 第5章 福岡市障害者差別解消推進会議(第20条―第25条) 第6章 福岡市障害者差別解消審査会(第26条―第31条) 第7章 雑則(第32条・第33条) 附則 すべて人は,障害の有無にかかわらず,平等に,かけがえのない個人として尊重され,地域社会で自らの個性と能力を発揮しながら心豊かに生活する権利を有している。 しかしながら,現実には,日常生活の様々な場面において,障害のある人が障害を理由として不利益な取扱いを受けているという実態がある。また,障害のある人が,自己実現を求め,自ら望むような社会参加をしたいと願っても,それを困難にしている物理的な問題に加え,障害や障害のある人に対する誤解,無理解,偏見などに基づく社会的障壁が存在し,障害のある人の社会参加の妨げとなっている。障害のある人の多くがこのような不利益な取扱いや社会的障壁のために,自ら望む生き方を諦めざるを得ず,日常生活の様々な場面において家族等に依存することを余儀なくされ,その家族等を失えばたちまち生活自体が困難になってしまう状況にあり,家族等の不安もまた非常に深刻かつ切実である。 そのような中で,平成18年に国際連合において障害者の権利に関する条約が採択され,障害のある人の社会参加の妨げとなっている社会的障壁を社会の責任で取り除き,障害を理由とする差別をなくし,障害のある人もない人も等しく基本的人権を享有する社会を目指すことが国際的に求められるようになった。 日本国憲法においては,個人の尊重と法の下の平等がうたわれており,我が国では,障害者の権利に関する条約の批准や障害者基本法の改正,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定など,障害を理由とする差別の解消に向けた様々な取組みがなされてきた。障害者の権利に関する条約の批准や障害者基本法の改正,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定など,障害を理由とする差別の解消に向けた様々な取組みがなされてきた。 福岡市においても,国際社会や国の動向を踏まえた取組みを進めてきたが,障害を理由とするいかなる種類の差別もない社会を実現するためには,市,事業者及び市民が一体となって努力していくことが必要である。 このような認識のもと,障害を理由とする差別の解消の推進に向けた基本理念を明らかにし,障害の有無にかかわらず,すべての人が個人として尊重される社会の実現を目指して,この条例を制定する。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は,障害を理由とする差別の解消の推進に関し,基本理念を定め,市の責務並びに事業者及び市民の役割を明らかにするとともに,施策の基本となる事項を定めることにより,障害者が,社会を構成する主体の一員として,自らの意思で社会のあらゆる分野における活動に参画し政策決定に関わることができる環境を構築し,もってすべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きる社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において使用する用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。  (1) 障害者 身体障害,知的障害,精神障害,発達障害,難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的,断続的又は周期的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。  (2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。  (3) 障害を理由とする差別 客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別の事情がないにもかかわらず,不当な差別的取扱いを行い,又は合理的配慮をしないことをいう。  (4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なく,障害を理由として,障害者でない者と異なる不利益な取扱いをすることをいう。  (5) 合理的配慮 障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じた社会的障壁の除去のための必要かつ合理的な現状の変更又は調整をいう。  (6) 事業者 市内で事業を行う者(国,独立行政法人等,地方公共団体(地方公営企業法(昭和企業法(昭和企業法(昭和企業法(昭和企業法(昭和企業法(昭和  (7) 独立行政法人等 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第2条第5号に規定する独立行政法人等をいう。  (8) 地方独立行政法人 法第2条第6号に規定する地方独立行政法人をいう。 (市の責務) 第3条 市は,第6条の基本理念にのっとり,障害,障害者及び障害を理由とする差別の解消に対する理解の促進を図るとともに,障害を理由とする差別の解消に関する施策を策定し,及びこれを実施するものとする。 (事業者の役割) 第4条 事業者は,第6条の基本理念にのっとり,障害を理由とする差別の解消のための取組みを積極的に行うとともに,市が実施する障害を理由とする差別の解消に関する施策に協力するよう努めるものとする。 (市民の役割) 第5条 市民は,次条の基本理念にのっとり,障害を理由とする差別をなくすよう努めるとともに,すべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きる社会の構築に寄与するよう努めるものとする。 第2章 基本理念 第6条 障害を理由とする差別の解消の推進は,次に掲げる基本理念に基づき行うものとする。  (1) すべての障害者が,障害者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 (2) 何人も,障害を理由とする差別により障害者の権利利益を侵害してはならないこと。  (3) 社会的障壁の除去のためには,合理的配慮を行うことが促進される必要があること。  (4) 何人も,障害者との交流を通じて障害又は障害者に対する理解を深めていくこと。  (5) 障害を理由とする差別に関する紛争が発生した場合には,相手方の立場を踏まえた建設的な対話を行うことにより解決することを基本とすること。  (6) すべての障害者は,どこで誰と生活するかについての選択の機会が保障され,地域社会において他の人々とともに暮らす権利を有すること。  (7) すべての障害者は,言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段及び情報の取得又は利用のための手段を選択する機会が保障される権利を有するとともに,障害者に対しては,コミュニケーション及び意思決定の支援並びにこれらの選択の機会を保障する必要があること。  (8) 女性である障害者は,障害に加えて女性であることにより複合的に困難な状況に置かれている場合があること,及び児童である障害者に対しては,年齢に応じた適切な支援が必要であることを踏まえること。  (9) 非常災害時において障害者の安全を確保するため,非常災害に備えた地域における支援体制の整備及び非常災害発生時における適切な支援が求められること。 第3章 障害を理由とする差別の禁止 (不当な差別的取扱いの禁止) 第7条 市(市が設立した地方独立行政法人を含む。次条第1項及び第21条第3号において同じ。)及び事業者は,その事務又は事業を行うに当たり,次に掲げる取扱いその他の不当な差別的取扱いにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。  (1) 福祉サービスの分野における次に掲げる取扱い   ア 第三者の生命,身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,福祉サービスの提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。   イ 福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく,障害者の意思に反して,障害者支援施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第11項に規定する障害者支援施設をいう。)その他の福祉サービスを行う施設における生活を強制すること。  (2) 医療の分野における次に掲げる取扱い   ア 第三者の生命,身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,医療の提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。   イ 他の法令に特別の定めがある場合を除き,障害者の意思に反して,入院その他の医療を受けることを強制し,又は自由な行動を制限すること。  (3) 教育,療育及び保育の分野における次に掲げる取扱い   ア 客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,教育,療育若しくは保育を行うことを拒否し,若しくは制限し,又はこれらに条件を付すること。   イ 障害者若しくはその保護者(学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条に規定する保護者をいい,同条に規定する保護者のない場合における里親(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第27条第1項第3号の規定により委託を受けた里親をいい,里親のない場合における当該子女の監護及び教育をしている者を含む。)を含む。)の意見を聴かず,若しくは意思を尊重せず,又はこれらの者に必要な説明を行わずに,障害者が就学する学校(学校教育法第1条に規定する小学校,中学校,中等教育学校(前期課程に限る。)又は特別支援学校(小学部及び中学部に限る。)をいう。)を決定すること。  (4) 雇用の分野における次に掲げる取扱い   ア 業務の性質上やむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,障害者の応募若しくは採用を拒否し,若しくは制限し,又はこれらに条件を付すること。   イ 合理的配慮をしてもなお業務の遂行が困難な場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,賃金,労働時間,配置,昇進,教育訓練,福利厚生その他の労働条件について障害者でない者と異なる不利益な取扱いをし,又は解雇若しくは退職を強制すること。  (5) 建物及び公共交通機関の分野における次に掲げる取扱い   ア 建物の構造上やむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,不特定多数の者の利用に供される建物の利用を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。   イ 旅客施設(高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第2条第5号に規定する旅客施設をいう。)又は車両等(同条第7号に規定する車両等をいう。)の構造上やむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,公共交通機関(交通機関の用に供する電車,バス,船舶,タクシー及び飛行機をいう。)の利用を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。  (6) 情報の提供及び意思表示の受領の分野における次に掲げる取扱い   ア 障害者から情報の提供を求められた場合において,当該情報の提供により他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められるときその他の客観的に合理的な理由があるときを除き,障害を理由として,当該情報の提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。   イ 障害者が意思を表示する場合において,その選択した意思表示の方法によっては当該意思を確認することに著しい支障があるときその他の客観的に合理的な理由があるときを除き,障害を理由として,当該意思表示の受領を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。  (7) 商品の販売等及び不動産の売買等の分野における次に掲げる取扱い   ア 客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,商品の販売若しくはサービス(福祉サービスを除く。)の提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれらに条件を付すること。   イ 建物の構造上やむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障害を理由として,不動産の売買,賃貸,転貸若しくは賃借権の譲渡を拒否し,若しくは制限し,又はこれらに条件を付すること。 (合理的配慮の提供) 第8条 市は,その事務又は事業を行うに当たり,障害者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をしなければならない。 2 事業者は,その事業を行うに当たり,障害者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をするように努めなければならない。 第4章 障害を理由とする差別を解消するための施策等 第1節 基本的な施策 (啓発活動等) 第9条 市は,事業者及び市民の,障害,障害者及び障害を理由とする差別の解消に対する理解を深めるために必要な啓発活動を行うとともに,事業者が障害を理由とする差別の解消のための取組みを積極的に行うことができるよう,事業者に対し,情報の提供を行うものとする。 2 市長は,職員に対し,障害,障害者及び障害を理由とする差別の解消に対する理解を深めるための研修の機会を確保するものとする。 (交流の推進) 第10条 市は,障害者と障害者でない者の交流の推進に必要な施策を実施するものとする。 (相談体制の充実) 第11条 市は,第6条の基本理念にのっとり,障害を理由とする差別に関する相談に的確に応じるための体制の充実を図るものとする。 2 市は,前項の体制を整備するに当たっては,当該体制が次の各号のいずれにも該当するよう考慮するものとする。  (1) 相談をする人にとって身近に相談窓口があること。  (2) 障害及び障害者に関し専門的知識を有する者が相談を受けること。 (表彰) 第12条 市長は,合理的配慮をすることに関して功績のあった者に対し,表彰を行うことができる。 (財政上の措置) 第13条 市長は,障害を理由とする差別の解消に関する施策を実施するため,予算の範囲内において,必要な財政上の措置を講じるものとする。 第2節 障害を理由とする差別に関する相談等 (相談) 第14条 障害者及びその家族その他の関係者又は事業者は,市に対し,障害を理由とする差別に関する相談をすることができる。 2 市は,前項の規定による相談(以下「個別相談」という。)を受けた場合は,必要に応じて次に掲げる対応を行うものとする。  (1) 必要な説明,情報の提供その他の障害を理由とする差別を解消するために必要な支援  (2) 個別相談に係る事案の関係者間の調整又はあっせん  (3) 関係行政機関に対する通告,通報その他の通知  (4) 次条第1項の規定による申出をするために必要な支援 (市長への申出) 第15条 個別相談をした障害者及びその家族その他の関係者は,前条第2項の対応により解決が図られない事案について,市長に対し,必要な措置を講じ,又は指導若しくは助言をするよう申出をすることができる。ただし,当該申出をすることが当該障害者の意思に反することが明らかであるときは,当該障害者の家族その他の関係者は,当該申出をすることができない。 2 市長は,前項の規定による申出があったときは,当該申出に係る事実について必要な調査を行うことができる。 3 第1項の規定による申出に係る事業者は,前項の調査が行われるときは,これに誠実に協力しなければならない。 4 市長は,第1項の規定による申出があったときは,処理の経過及び結果を当該申出をした者に通知するものとする。ただし,第17条の規定により当該申出に係る事案を福岡市障害者差別解消審査会に諮問したときその他特別の理由があるときは,この限りでない。限りでない。 (指導又は助言等) 第16条 市長は,前条第2項の調査の結果,前条第1項の規定による申出に相当の理由があると認めるときは,福岡市障害者差別解消推進会議の意見を聴いたうえで,必要な措置を講じ,又は指導若しくは助言をするものとする。 (審査会への諮問) 第17条 市長は,前条の規定による指導又は助言(第7条の規定に違反することを理由としてなされたものに限る。)をした場合において,当該指導又は助言を受けた事業者(以下「特定事業者」という。)が正当な理由なく当該指導又は助言に従わないときは,福岡市障害者差別解消審査会に諮問することができる。 (勧告) 第18条 市長は,次の各号のいずれかに該当する場合は,特定事業者に対し,障害者の権利利益を侵害しないための具体的な措置を示して勧告することができる。  (1) 福岡市障害者差別解消審査会が勧告の必要があると認めたとき。  (2) 特定事業者が正当な理由なく第30条の規定による出席の求めに応じず,又は虚偽の説明をし,若しくは資料を提出したとき。  (3) 特定事業者が指導又は助言に従わないことにより,障害を理由とする差別の解消の推進に支障が発生し,又は拡大するおそれがあり,これらを防止するため緊急の必要があると認めるとき。 (公表) 第19条 市長は,前条の規定による勧告を受けた者が,正当な理由なく当該勧告に従わないときは,その旨を公表することができる。 2 市長は,前項の規定による公表をしようとする場合には,あらかじめ,当該公表をされるべき者に対しその理由を通知し,意見を述べる機会を与えなければならない。 第5章 福岡市障害者差別解消推進会議 (設置) 第20条 市長の附属機関として,福岡市障害者差別解消推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。 2 推進会議は,法第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会を兼ねるものとする。 (所掌事務) 第21条 推進会議は,次に掲げる事務を行う。  (1) 障害を理由とする差別の解消に関し必要と認められる事項について調査審議すること。  (2) 法第18条第1項に規定する事務  (3) 第16条の規定に基づき,市長から意見を求められた事案について,意見を述べること(市が第7条又は第8条第1項の規定に違反した場合にその事実を公表することを求めることを含む。)。  (4) 前3号に掲げるもののほか,障害を理由とする差別を解消するために必要な事務 2 推進会議は,障害を理由とする差別の解消に関する重要な施策に関し,市長に対し,意見を述べることができる。 (組織及び委員) 第22条 推進会議は,委員30人以内をもって組織する。 2 委員は,障害者並びに福祉,医療,教育,雇用その他障害者の権利の擁護について優れた識見及び実務経験を有する者のうちから,市長が任命する。 3 委員は,職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,また同様とする。 (部会) 第23条 推進会議は,必要に応じて,部会を置くことができる。 (参考人の出席) 第24条 推進会議は,必要があると認めるときは,会議に参考人の出席を求め,意見を聴くことができる。 (推進会議への委任) 第25条 この章及び第33条の規定に基づく規則に定めるもののほか,推進会議の運営に関し必要な事項は,推進会議が定める。 第6章 福岡市障害者差別解消審査会 (設置) 第26条 市長の附属機関として,福岡市障害者差別解消審査会(以下「審査会」という。)を置く。 (所掌事務) 第27条 審査会は,第17条の規定による諮問に応じ,当該諮問に係る事案について調査審議を行う。 (組織及び委員) 第28条 審査会は,委員5人以内をもって組織する。 2 委員は,障害者並びに審査会の権限に属する事項に関し公正な判断をすることができ,かつ,法律,行政又は障害者の権利の擁護について優れた識見及び実務経験を有する者のうちから,市長が任命する。 3 第22条第3項の規定は,審査会の委員について準用する。 (専門委員) 第29条 審査会に,専門の事項を調査させるため,専門委員を置くことができる。 2 専門委員は,障害者の権利の擁護その他の専門の事項に関し優れた識見及び実務経験を有する者のうちから,市長が任命する。 3 専門委員は,当該専門の事項に関する調査が終了したときは,解任されるものとする。 4 第22条第3項の規定は,専門委員について準用する。 (参考人の出席等) 第30条 審査会は,必要があると認めるときは,会議に参考人の出席を求め,説明若しくは意見を聴き,又は資料の提出を求めることができる。 (審査会への委任) 第31条 この章及び第33条の規定に基づく規則に定めるもののほか,審査会の運営に関し必要な事項は,審査会が定める。 第7章 雑則 (罰則) 第32条 第22条第3項(第28条第3項及び第29条第4項において準用する場合を含む。)の規定に違反して秘密を漏らした者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 (規則への委任) 第33条 この条例に定めるもののほか,この条例の施行に関し必要な事項は,規則で定める。 附 則 (施行期日) 1 この条例は,平成31年1月1日から施行する。 (準備行為) 2 市は,この条例の施行の日(以下「施行日」という。)前においても,第11条の規定の例により,障害を理由とする差別に関する相談体制を整備することができる。 3 市長は,施行日前においても,第5章の規定の例により,推進会議の委員の任命並びに組織及び運営に関し必要な行為をすることができる。 4 市長は,施行日前においても,第6章の規定の例により,審査会の委員の任命並びに組織及び運営に関し必要な行為をすることができる。 (検討) 5 市は,この条例の施行後3年を経過した場合において,この条例の施行の状況を勘案し,必要があると認めるときは,この条例の規定について検討を加え,その結果に基づき必要な措置を講じるものとする。 ○ 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例施行規則 (趣旨) 第1条 この規則は,福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例(平成30年福岡市条例第48号。以下「条例」という。)の施行に関し必要な事項を定めるものとする。 (定義) 第2条 この規則において使用する用語の意義は,条例の例による。 (表彰) 第3条 条例第12条の表彰は,次に掲げる個人又は団体に対して行うものとする。  (1) 合理的配慮をすることに関し,他の模範となる行動をとったもの  (2) 前号に定めるもののほか,合理的配慮をすることに関し,その功績が顕著であると認められるもの 2 表彰の対象者の決定その他表彰に関し必要な事項は,市長が別に定める。 (申出の方式等) 第4条 条例第15条第1項の申出(以下「申出」という。)をしようとする者は,次に掲げる事項を記載した書面(以下「申出書」という。)を市長に提出しなければならない。ただし,障害その他やむを得ない理由により書面の提出が困難と認められる場合は,この限りでない。  (1) 申出をする者(以下「申出人」という。)の氏名,住所及び連絡先  (2) 申出に係る障害者以外の者が申出人である場合は,当該障害者の氏名及び住所並びに申出人との関係  (3) 障害を理由とする差別をした疑いのある者の氏名及び住所(法人その他の団体にあってはその名称及び主たる事務所の所在地)  (4) 事案の概要  (5) 求める必要な措置又は指導若しくは助言の内容  (6) その他参考となる事項 2 前項の規定にかかわらず,視覚障害のある申出人は,申出書に代えて,前項各号に掲げる事項を点字で記載した書面を提出することにより申出をすることができる。 3 申出が不適法であって補正をすることができないものであるとき,又は条例第15条第1項ただし書に規定する場合に該当するときは,市長は,申出人に対し,書面(当該申出が前項の規定によるものである場合にあっては,点字で記載したもの)により,その旨及び同条第2項の調査を行わない旨を通知するものとする。第1項ただし書に規定する場合に該当するときは,市長は,申出人に対し,書面(当該申出が前項の規定によるものである場合にあっては,点字で記載したもの)により,その旨及び同条第2項の調査を行わない旨を通知するものとする。 (勧告の方式) 第5条 条例第18条の規定による勧告は,書面でするものとする。 (公表の方法等) 第6条 条例第19条第1項の規定による公表は,福岡市ホームページへの掲載その他適当な方法によりするものとする。 2 市長は,前条の勧告又は前項の公表をしたときは,その旨を福岡市障害者差別解消推進会議(以下「推進会議」という。)に報告するものとする。 (意見の陳述の方法) 第7条 条例第19条第2項の規定による意見の陳述は,書面でしなければならない。ただし,市長が特に認めるときは,口頭その他の方法によりすることができる。 (推進会議の委員) 第8条 市長は,条例第22条第2項の規定による推進会議の委員の任命に当たっては,推進会議の委員の構成が,障害を理由とする差別の解消に関する多様な意見が適切に反映されるものとなるよう配慮するものとする。 2 委員の任期は,3年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。 3 委員は,再任されることができる。 (推進会議の会長及び副会長) 第9条 推進会議に会長及び副会長を置き,推進会議に属する委員の互選によってこれを定める。 2 会長は,会務を総理し,推進会議を代表する。 3 副会長は,会長を補佐し,会長に事故があるとき,又は会長が欠けたときは,その職務を代理する。 (部会の臨時委員等) 第10条 特別の事項を調査審議するため必要があるときは,推進会議の部会に臨時委員を置くことができる。 2 臨時委員は,条例第22条第2項に規定する者のうちから,市長が任命する。 (審査会の委員) 第11条 第8条の規定は,福岡市障害者差別解消審査会(以下「審査会」という。)の委員について準用する。 (審査会の会長) 第12条 審査会に会長を置き,審査会に属する委員の互選によってこれを定める。 2 第9条第2項の規定は,審査会の会長について準用する。 3 会長に事故があるとき,又は会長が欠けたときは,審査会に属する委員のうちから会長があらかじめ指名する委員が,その職務を代理する。 (庶務) 第13条 推進会議及び審査会の庶務は,保健福祉局において処理する。 (規定外の事項) 第14条 この規則に定めるもののほか,この規則の施行に関し必要な事項は,市長が別に定める。 附 則 この規則は,平成31年1月1日から施行する。 ○ 福岡市障害者差別解消推進会議運営要領 福岡市障害者差別解消推進会議運営要領  福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例(平成30年福岡市条例第48号。以下「条例」という。)第25条の規定に基づき、福岡市障害者差別解消推進会議運営要領を次のように定める。 (所掌事務) 第1条 条例第21条第1項第4号に規定する事務は、次に掲げるとおりとする。  (1) 障害を理由とする差別を解消するための取組みを担う人材の育成について検討すること。  (2) 条例第12条の表彰について検討すること。  (3) 条例の規定について検討すること。 (会議) 第2条 福岡市障害者差別解消推進会議(以下「推進会議」という。)の会議は、会長が招集する。ただし、推進会議の委員任命後の最初の会議、推進会議の委員の改選後の最初の会議及び会長が欠けた後の最初の会議は、市長が招集する。 2 会長は、推進会議の会議を招集しようとするときは、あらかじめ、期日及び議案をその属する委員に通知しなければならない。 3 推進会議は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。 4 会長は、推進会議の会議の議長となり、議事を整理する。 5 推進会議の議事は、出席委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。 6 推進会議の議事は公開する。ただし、個別の相談に関することなど、会長が必要と認めるときは、推進会議は、その範囲においてこれを非公開にすることができる。 (書面開催) 第3条 会長は、必要と認めるときに書面によって会議を開き、委員の意見を求めることができる。 2 推進会議の議事は、委員の書面による回答をもって推進会議の決議にかえることができる。ただし、委員の過半数からの書面による回答が得られなければ、推進会議の決議とすることができない。 3 前項に規定する決議をおこなった場合、会長はその結果を書面により速やかに委員に報告するものとする。 (推進会議の決議とする事項) 第4条 推進会議は、部会の決議をもって、推進会議の決議とすることができる。 2 前項の規定により推進会議の決議とする事項は、次の各号に掲げる部会の区分に応じ、当該各号に定める事項とする。  (1) 相談部会 条例第21条第1項第3号に関する事項  (2) 第6条第1項の規定により置かれた部会 あらかじめ会長が定めた事項 (相談部会) 第5条 推進会議に、次に掲げる事務を行わせるため、相談部会を置く。  (1) 条例第14条第2項の個別相談及び相談部会に属する委員が所属する機関が対応した障害を理由とする差別に関する相談について、問題解決に向けた分析及び助言(次号に規定する事項を除く。)を行うこと。  (2) 条例第21条第1項第2号及び第3号に関する事項  (3) 条例第11条第1項の体制及び障害を理由とする差別に関する相談に係る対応のあり方を検討すること。  (4) 前3号に掲げるもののほか、障害を理由とする差別に関する相談に係る事項について検討すること。 2 相談部会に属する委員の数は15人以内とし、推進会議の委員及び臨時委員のうちから会長が指名する委員をもって構成する。 3 相談部会に部会長及び副部会長を置き、委員の互選によってこれを定める。 4 部会長は、相談部会の会務を総理し、相談部会における調査審議の状況及び結果を推進会議に報告する。 5 副部会長は、部会長を補佐し、部会長に事故があるとき、又は部会長が欠けたときは、その職務を代理する。 6 相談部会の行う調査審議の手続は、公開しない。ただし、相談部会が非公開とすべき理由がないと認めるときは、部会長は、その範囲においてこれを公開することができる。 7 第2条第1項から第5項及び第3条の規定は、相談部会について準用する。 (その他の部会) 第6条 前条第1項の相談部会のほか、推進会議は、その権限に属する事項について調査審議するため、必要があると認めるときは、その他の部会を置くことができる。 2 第2条及び第3条、前条第2項から第5項までの規定は、前項の規定により置かれる部会について準用する。る部会について準用する。 (口頭での説明の求め) 第7条 推進会議及び部会は、必要があると認めるときは、参考人に対し、口頭での説明を求め、その説明を聴取する。 2 前項の説明を求める場合には、書面により、当該参考人にその旨を通知する。 3 第1項の説明の聴取は、必要があると認めるときは、推進会議及び部会の所在地以外の地で行うことができる。 (庶務) 第8条 推進会議の庶務は、保健福祉局において処理する。 (雑則) 第9条 この要領に定めるもののほか、推進会議の調査審議の手続に関し必要な事項は、会長が定める。 附 則 この要領は、平成31年3月19日から施行する。 附 則 この要領は、令和3年4月1日から施行する。 ○ 福岡市障害者差別解消審査会運営要領 福岡市障害者差別解消審査会運営要領 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例(平成30年福岡市条例第48号。以下「条例」という。)第31条の規定に基づき,福岡市障害者差別解消審査会運営要領を次のように定める。 (会議) 第1条 審査会の会議は,会長が招集する。ただし,審査会の委員任命後の最初の会議,審査会の委員の改選後の最初の会議及び会長が欠けた後の最初の会議は,市長が招集する。 2 会長は,会議を招集しようとするときは,あらかじめ,期日及び議案をその属する委員及び第3条第2項の規定による指名を受けた専門委員に通知しなければならない。 3 審査会は,3人以上の委員の出席がなければ,会議を開き,議決することができない。 4 会長は,会議の議長となり,議事を整理する。 5 審査会の議事は,出席委員の過半数をもって決し,可否同数のときは,会長の決するところによる。 6 委員及び第3条第2項の規定による指名を受けた専門委員は,自己の利害に関係する議事に参与することができない。 (諮問の方法) 第2条 条例第17条の規定による諮問は,様式第1号の書面により行うものとする。 (専門委員の関与) 第3条 審査会は,諮問に係る事案の事実関係若しくは争点を明瞭にし,又は調査審議の円滑な進行を図るため必要と認めるときは,専門委員を調査審議に関与させることができる。 2 前項の規定により調査審議に関与させる専門委員は,条例第29条第2項により任命された者の中から会長が指名する。 3 前項の指名は,いつでも取り消すことができる。 (口頭での説明の求め) 第4条 条例第30条の規定に基づき,審査会が会議に参考人の出席を求める場合には,様式第2号の書面により,当該関係者にその旨を通知する。 2 条例第30条の規定による説明又は意見の聴取は,必要があると認めるときは,審査会の所在地以外の地で行うことができる。 (主張書面等の提出の求め) 第5条 審査会は,条例第30条の規定に基づき参考人に資料の提出を求めるときは,様式第3号の書面により,当該関係者にその旨を通知する。 (調査審議手続の非公開) 第6条 審査会の行う調査審議の手続は,公開しない。ただし,審査会が非公開とすべき理由がないと認めるときは,審査会は,その範囲においてこれを公開することができる。 (庶務) 第7条 審査会の庶務は,保健福祉局において処理する。 (雑則) 第8条 この要領に定めるもののほか,審査会の調査審議の手続に関し必要な事項は,会長が定める。 附 則 この要領は,令和元年7月25日から施行する。 様式第1号 ○○○第○○○号 ○年○月○日 福岡市障害者差別解消審査会 会長 様 福岡市長 印 諮問書 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例(平成30年福岡市条例第48号)第17条の規定に基づき,別紙のとおり諮問します。 担当:○○○○ 連絡先:○○○ 様式第2号 ○○○第○○○号 ○年○月○日 ○ ○ ○ ○ 様 福岡市障害者差別解消審査会 会長 ○ ○ ○ ○ 印 口頭説明の求めについて 下記1の事件について,当審査会の調査審議の参考としたいので,福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例第30条の規定に基づき,下記2の事項について口頭での説明を聴取しますので,下記3の日時・場所に出席してください。 記 1 事件 番号: ○年度諮問第○号 事 件 名:○○○○○○○ 2 口頭説明を求める事項 ○○○○○○○○について 3 口頭説明の聴取の日時及び場所 (1) 日時 ○○年○月○日 ○時から○時まで (2) 場所 ○○○○○○ 第○会議室 4 口頭説明を聴取する審査会委員の氏名:○○ ○○ 担当:○○○○ 連絡先:○○○ 様式第3号 ○○○第○○○号 ○年○月○日 ○ ○ ○ ○ 様 福岡市障害者差別解消審査会 会長 ○ ○ ○ ○ 印 資料の提出の求めについて 下記1の諮問事件について,当審査会の調査審議の参考としたいので,福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例第30条の規定に基づき,下記2のとおり資料の提出を求めます。 記 1 諮問事件 諮問番号: ○年度諮問第○号 事 件 名:○○○○○○○ 2 資料の提出 (1) 提出期限 ○年○月○日(○[曜日]) (2) 提出を求める資料及びその提出方法 任意の様式により作成した○○についての資料を,持参するか,郵送で当審査会に提出してください。 担当:○○○○ 連絡先:○○○ ○ 福岡市障害を理由とする差別に関する相談等に係る事務実施要綱 (趣旨) 第1条 この要綱は,福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例施行規則(平成30年福岡市規則第119号。以下「規則」という。)第14条の規定に基づき,福岡市が行う障害を理由とする差別に関する相談等に係る事務の実施に関し必要な事項を定めるものとする。 (相談窓口等) 第2条 障害を理由とする差別に関する相談を受ける窓口に係る事務は,次の各号に掲げる事項の区分に応じ,当該各号に定める事業者に委託するものとする。  (1) 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例(平成30年福岡市条例第48号。以下「条例」という。)第14条第2項各号の対応に関する事項 障害者差別解消法相談窓口事業の受託者  (2) 条例第14条第2項第1号の対応に関する事項 区障害者基幹相談支援センター事業の受託者 2 前項第1号の受託者には,障害及び障害者に関し専門的知識を有する者を配置するものとする。 3 第1項第2号の受託者が障害を理由とする差別に関する相談を受けたときは,当該相談について同項第1号の受託者に報告を行うものとする。 (様式) 第3条 次の各号に掲げる申出書等の様式は,当該各号の定めるところによる。  (1) 申出書 様式第1号(規則第4条第1項関係)  (2) 勧告書 様式第2号(規則第5条関係) 附 則 (施行期日) この要綱は,平成31年1月1日から施行する。 (施行期日) この要綱は,令和2年9月1日から施行する。 様式第1号(規則第4条第1項関係) 年 月 日 福岡市長 申出人 住 所 氏 名 連絡先 申出書 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例第15条第1項の規定に基づき,下記のとおり,必要な措置を講じ,又は指導若しくは助言をするよう申出をします。 記 1 事案に係る障害者 ※申出人が事案に係る障害者以外の場合に記入 (1) 住所 (2) 氏名 (3) 申出人との関係 2 障害を理由とする差別をした疑いのある者 (1) 住所(法人その他の団体にあっては,主たる事務所の所在地) (2) 氏名(法人その他の団体にあっては,名称) 3 事案の概要 4 求める措置又は指導・助言の内容 5 その他参考となる事項 様式第2号(規則第5条関係) 第 号 年 月 日 様 福岡市長 印 勧告書 (貴法人)において,福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例第7条の規定に違反する行為を行っていると認められますので,同条例第18条の規定により,下記のとおり勧告します。 つきましては, 年 月 日までに,勧告する具体的な措置に係る対応について,報告をお願いいたします。 なお,勧告に従わない場合は,同条例第19条第1項の規定により,事業者の名称,代表者名その他必要な事項を公表することがあります。 記 1 勧告内容,障害者の権利利益を侵害しないための具体的な措置 2 勧告する理由 3 報告先 福岡市 局 部 課 ○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する福岡市職員対応要領 (目的) 第1条 この要領は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25 年法律第65 号)第10条第1項の規定に基づき,福岡市職員(嘱託員,臨時的任用職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。 (定義) 第2条 この要領において使用する用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。  (1) 障害者 身体障害,知的障害,精神障害,発達障害,難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的,断続的又は周期的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。  (2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。  (3) 障害を理由とする差別 客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別の事情がないにもかかわらず,不当な差別的取扱いを行い,又は合理的配慮をしないことをいう。  (4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なく,障害を理由として,障害者でない者と異なる不利益な取扱いをすることをいう。  (5) 合理的配慮 障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じた社会的障壁の除去のための必要かつ合理的な現状の変更又は調整をいう。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第3条 職員は,その事務又は事業を行うに当たり,不当な差別的取扱いにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。この場合において,職員は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定。以下「基本方針」という。)第2の2「不当な差別的取扱い」の記載事項に留意するものとする。 (合理的配慮の提供) 第4条 職員は,その事務又は事業を行うに当たり,障害者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をしなければならない。この場合において,職員は,基本方針第2の3「合理的配慮」の記載事項に留意するものとする。て,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をしなければならない。この場合において,職員は,基本方針第2の3「合理的配慮」の記載事項に留意するものとする。 (所属長の責務) 第5条 所属長は,前2条に掲げる事項に関し,障害を理由とする差別の解消を推進するため,次に掲げる事項を実施しなければならない。  (1) 日常の執務を通じた指導等により,障害を理由とする差別の解消に関し,その監督する職員の注意を喚起し,障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。  (2) 障害者及びその家族その他の関係者から障害を理由とする差別に関する相談があった場合は,迅速に状況を確認すること。  (3) 合理的配慮の必要性が確認された場合,その監督する職員に対して,合理的配慮を適切にするよう指導すること。 2 所属長は,障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には,迅速かつ適切に対処しなければならない。 (懲戒処分等) 第6条 職員が,障害者に対し不当な差別的取扱いをし,又は,その実施に伴う負担が過重でないにもかかわらず合理的配慮をしなかった場合,その態様等によっては,職務上の義務に違反し,又は職務を怠った場合等に該当し,懲戒処分等に付されることがある。 (相談体制の整備) 第7条 第3条又は第4条に関し,障害者及びその家族その他の関係者からの相談に的確に対応するための窓口(以下「相談窓口」という。)を,保健福祉局障害者部障害者支援課に設置する。 2 相談窓口で相談を受ける場合は,障害者の性別,年齢及び障害の状態に配慮するとともに,対面のほか,電話,ファックス,電子メールに加え,障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 3 相談窓口は,相談者から相談の内容となる事実の詳細その他必要な情報を聴取し,事実確認をしたうえで,相談対象事案があると認めるときは,速やかに是正措置及び再発防止策等を採るものとする。 4 相談窓口に寄せられた相談は,相談者のプライバシーに配慮しつつ,福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例(平成成成成成成成成成成 5 相談窓口は,必要に応じ充実を図るよう努めるものとする。 (研修・啓発) 第8条 市は,職員に対し,障害,障害者及び障害を理由とする差別の解消に対する理解を深めるための研修の機会を確保するものとする。 2 研修は,新規採用者から管理・監督者に至るまで体系的に実施するとともに,各職場においても,計画的に取り組むものとする。 3 職員に対し,障害の特性を理解させるとともに,障害者へ適切に対応するために必要なマニュアル等により,意識の啓発を図るものとする。 4 前項のマニュアル等の作成に当たっては,既に様々な場面において日常的に実践されている合理的配慮の好事例を収集し,障害種別ごとの合理的配慮の考え方及び具体例を提示するものとする。 5 前項の具体例の提示に当たっては,障害当事者の意見を聴取し,マニュアル等に反映させるものとする。 附 則 この要領は,平成28年4月1日から施行する。 附 則 この要領は,令和元年6月1日から施行する。