資料4 福岡市地域生活支援拠点等整備促進に関する提言(案) 令和元年12月 福岡市障がい者等地域生活支援協議会 地域生活支援拠点等整備検討部会 目次 1.はじめに 2.福岡市における地域生活支援拠点等の整備 3.地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件 4.居住支援機能を拡充するための提案 5.重度障がい者の住まいの確保について 6.まとめ <検討体制> 部会検討状況 地域生活支援拠点等整備検討部会委員名簿 1.はじめに 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」第87条に基づく国の基本指針(H26年5月改正)において,地域生活支援の機能をさらに強化するため,各地域内で「地域生活支援拠点等」の整備を図るよう規定された。国においては,地域生活支援拠点等の整備については,居住支援のための機能,具体的には,「相談」「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」「専門性」「地域の体制づくり」の5つの機能を確保することが必要で,その手法として「多機能拠点整備型」や「面的整備型」等のイメージが示されている。福岡市においても,平成27年3月に策定した「第4期福岡市障がい福祉計画」において,地域生活支援拠点等を整備することを明記しており,平成28年6月に策定した「福岡市保健福祉総合計画」においては,障がいの重度化,高齢化や「親なき後」の生活の安心も見据え,障がい者及び障がい児(以下「障がい者」という。)が地域で安心して生活を続けるための総合的な支援を検討することとしている。地域生活支援拠点等の整備にあたっては,国の基本指針において,地域の状況に応じ,自立支援協議会の意見等も聞きながら5つの機能について検討するよう求められており,福岡市においては,平成28年度に福岡市障がい者等地域生活支援協議会の専門部会として,「地域生活支援拠点等整備検討部会」を設置し,地域生活支援拠点等の整備推進について検討を行い,平成29年6月に整備方針に関する提言を策定している。福岡市の地域生活支援拠点等整備においては,平成30年度までに5つの機能すべてを確保し,区障がい者基幹相談支援センター(以下「区基幹センター」という。)が中心となり各機能の充実・強化に取り組んでいるところであるが,各機能の現状の把握・評価を行い,さらなる充実・強化を図るため,部会委員を再編し協議を行った。今回は,その検討結果を取りまとめ,提言(案)として提出するものである。 2.福岡市における地域生活支援拠点等の整備 (1)整備手法国が示す「相談」「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」「専門性」「地域の体制づくり」の5つの居住支援機能を確保する体制を各区に整備する。また,その機能を極力集約しつつ,集約できない機能をネットワークで補う多機能拠点整備型と面的整備型を併用する手法で整備を行っている。 (2)整備の状況@「相談」「地域の体制づくり」については,平成29年度から,全障がい一元化した24時間対応可能な相談窓口として,14カ所の区基幹センターを設置した。地域の困難事例への対応や特定相談支援事業所への助言,地域の関係機関との連携体制構築に取り組んでいる。A「体験の機会・場」については,グループホームの空き情報等を随時把握することで必要な時に障がい者への情報提供を行っている。B「緊急時の受け入れ・対応」については,介護者の事故や疾病,各種トラブル,虐待等によって,自宅での生活が困難になった際,短期入所先が見つからない場合の受け皿として,「緊急時受け入れ・対応業務委託」(以下「緊急時受け入れ・対応事業」という。)を開始しており,「医療的ケアを含む重度身体障がい者」「強度行動障がい者」「虐待・その他」の3類型について,それぞれ1カ所ずつ開設し,空床の確保及び,専門コーディネーターの配置を行っている。また,緊急時の受け入れ・対応機能を担う短期入所事業所等において,障がい者のうち,意思疎通が難しく意思確認が困難な者の受け入れの円滑化を図ることおよび市内の受け入れる障がい者関係施設・事業所職員の支援技術の向上を目的とした「福岡市コミュニケーション支援員派遣事業」を開始している。C「専門性」については,行動障がいや医療的ケアが必要な障がい者への支援スキルを備えた人材育成を目的とした研修(医療的ケア児等コーディネーター養成研修等)を行っている。 3.地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件 福岡市として,平成30年度障がい福祉サービス等報酬改定により新設された,地域生活支援拠点等の機能を担う事業所への加算要件を踏まえ,地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件を整理した。 (1)各機能に共通する基本要件@地域生活支援拠点等の整備の目的について理解していること。A地域生活支援拠点等の整備に必要な機能を理解していること。B福岡市における地域生活支援拠点等整備の手法について把握していること。C地域生活支援拠点等の機能を担う事業所として,障がい者の生活を地域全体で支えるサービス提供体制の構築に積極的に参画すること。(2)相談機能に関する基本要件@担当する利用者のうち緊急時の支援が見込めない世帯を事前に把握していること。A常時の連絡体制を確保していること。B緊急時の受け入れ対応を依頼できる短期入所事業所と連携体制がとれていること。C相談支援事業所のネットワークづくりに積極的に参画すること。(3)緊急時の受け入れ・対応の機能に関する基本要件@緊急時の受け入れ・対応要請に積極的に対応していること。A契約している利用者のうち,緊急時の支援が見込めない世帯を事前に把握していること。B常時の連絡体制を確保していること。C事業所間のネットワークづくりに積極的に関わっていること。(4)体験の機会・場の機能に関する基本要件@障がい福祉サービスの利用や1人暮らしの体験の機会,場の提供を積極的に行っていること。A日頃から相談支援事業所等との連携体制の構築に努めていること。(5)専門性の機能に関する基本要件@医療的ケアや強度行動障がいなど,専門的な支援スキルを必要とする障がい者等の支援が可能な人材を配置していること。A人材育成に取り組んでいること。(6)地域の体制づくりの機能に関して@地域の体制づくりの機能は,区基幹センターが担う。A区基幹センターが行う地域の体制づくりの実施状況や,他の機能を担う拠点等事業所の整備の進捗状況について継続的に協議を行う。 4.居住支援機能を拡充するための提案 (1)「緊急時の受け入れ・対応」機能「緊急時の受け入れ・対応」機能を有する地域生活支援拠点として位置づけられる事業所については,以下のとおり案として整理した。 ◇「緊急時受け入れ・対応事業」を受託している3カ所の指定短期入所事業所(既設)◇虐待緊急一時保護事業を受託している短期入所事業所(既設)◇地域生活支援拠点として位置づけるための基本要件を満たし,市の承認を得た緊急時の受け入れ・対応機能を担う短期入所事業所(新規)◇重度障がい者を緊急に受け入れる短期入所事業所(新規・「B.市への提案@」参照)◇重度障がい者の緊急時に自宅訪問する居宅介護等事業所(新規・「B.市への提案A」参照) A.事業者等が検討していくこと @福祉サービスを運営する法人は,短期入所事業の重要性や運営のメリットを理解し,既設事業所の増床や新規開設に尽力する。 ≪部会での主な意見≫○緊急時の対応は,障がい者及び家族の最大のニーズである。○緊急対応により,危機回避に協力することが支援員のやりがいや,モチベーションの維持・向上につながる。○将来的にグループホームの設置を検討している法人にとっては,夜間支援の人員確保及びノウハウの蓄積になる。○通所サービス事業所においては,安定した利用者確保・維持に鑑みた付加サービスの構築になる。 A社会福祉法人においては,社会福祉事業を行うことを目的として設立されていることを踏まえて,障がい者の高いニーズがある短期入所に積極的に取り組む。 B.福岡市への提案 @重症心身障がい者及び強度行動障がい者,また精神障がいや発達障がい等が起因する家族内外のトラブルを抱える者を短期入所事業所が緊急で受け入れを行った場合に,現在の報酬単価では不十分であるため,福岡市独自の加算を行う。 ≪部会での主な意見≫○福岡市との委託契約とし,区基幹センターの介入による緊急受け入れを行った場合の実績払いが望ましい。提案理由・短期入所事業所の不足は深刻であり,また重度障がい者における緊急時の即日対応は非常に難しく,事業者及び従事者の負担も大きい。・医療的ケアを必要とする重症心身障がい者への対応は,看護師の配置など,専門性の高い短期入所が該当することから,さらに箇所数が限定される。・福岡市が独自に設置し,空床確保とコーディネーターを配置している3カ所(6床)の緊急受け入れ施設は,最終的なセーフティネットに位置づけており,満床の常態化を防ぐ必要がある。 A重症心身障がい者や強度行動障がい者の緊急時にヘルパーが自宅訪問して支援した場合,福岡市の予算で対応する。 ≪部会での主な意見≫○地域生活支援拠点の緊急時対応居宅介護等事業所として位置づけ,事前に福岡市と委託契約し,実績払いとすることが望ましい。○事業者と利用者が契約を締結していない場合や支給量を超えるケースも想定され,個別支援計画に不記載のケースも考えられることから,福岡市の制度として柔軟な仕組みが必要である。提案理由・緊急時に介護者が不在となる場合,短期入所が空いていないケースや,本人を自宅から連れ出すことが困難なケースがある。・即応性を求められる緊急事態の場合,ヘルパー派遣の機動性を活かすことが最優先と考えられる。 (2)「相談」機能 A.事業者等が検討していくこと @区基幹センターの設置から3年が経過することを踏まえ,区基幹センターが地域課題を整理し福岡市障がい者等地域生活支援協議会や関係団体との情報共有に努める。 ≪部会での主な意見≫○不足するサービスと充足しているサービスを明確化し,各種事業者に周知する。○サービスにつながりにくいケースについての情報を集約し,各種事業者に受入れについての検討を勧奨する。 A区基幹センターのエリアごとに相談内容の傾向や取り扱い件数等を検証し,地域ごとに必要な社会資源の整備に努める。 B区基幹センターの受託法人は,人材の確保と育成,キャリアアップに努め,法人が運営する事業所によるバックアップ体制を確立し,面的整備を含む区基幹センターの取組に協力する。 C福祉サービスを運営する事業者は,計画相談支援の重要性を理解し,指定特定相談支援事業所の拡充に努める。各種報酬加算を活用し,相談支援業務の専門性を高め経営の安定を図る。 B.福岡市への提案 @14カ所の区基幹センターの相談対応件数等の状況を踏まえ,人口割の人員(コーディネーター)配置だけでなく,各エリアの相談件数に応じた人員配置を加味して区基幹センターの体制強化を図る。 提案理由・区基幹センター設置以前の同種機関と比較すると市全体での相談対応件数が4倍程度となっており,想定以上の業務量になっていると考えられる。・ひきこもり者の相談件数が増えており,障がい者手帳等の不所持の方も少なくない状況。本来,障がい者を対象とする業務枠を超えた役割に至っている。・現在の人員体制で対応できないほどの相談者数により総合相談に追われ,地域福祉の体制づくりや災害に備えたパーソナルネットワーク構築に手が回らず,また,触法障がい者の対応や精神科病院からの地域移行に向けた体制整備等,未開拓の分野にかける時間を確保できない状況である。 A障がい者のニーズが多様化していることに鑑み,特定相談支援事業所での対応が難しい障がい者に柔軟に対応・介入するための相談支援体制整備について,協議の場を設定する。 提案理由・特定相談支援事業所は,障がい福祉サービスを利用する障がい者のサービス等利用計画の作成及びモニタリングの際にだけ基本報酬が発生する仕組みであることから,障がい福祉サービスの利用までに長期間かかる場合は報酬が発生しないため,対応することが難しい。・精神科病院からの地域移行について,退院後に訪問看護を利用しても,障がい福祉サービスを利用しない場合,特定相談支援事業所には報酬が発生しないため介入しにくい。一般相談支援の地域定着・地域移行支援事業の制度もあるが,広がっていない。・医療的ケアの必要な重症心身障がい児が誕生し自宅に帰る際,退院前から保護者に寄り添う相談支援専門員がつくことが求められるが,障がい福祉サービスの利用につながらないため,特定相談支援事業所の介入が難しい状況がある。・障がいに起因する家庭内外のトラブルや生活困窮,家族の高齢化,医療・福祉機関の介入を拒むケースなど,複雑かつ複合的な問題を抱える家庭が増えていることから,包括的な相談援助を拡充する必要がある。・利用契約制度に移行してから10数年が経過し,カスタマーハラスメントへの対応で相談支援専門員が疲弊している。居宅介護事業者等と利用者のトラブルに相談支援専門員が介入せざるを得ないことも少なくない。・区基幹センターは,総合相談の困難ケースに追われて,地域の体制づくりや障がい福祉サービス等の面的整備にかける時間をとれない状況がある。 (3)「体験の機会・場」機能 A.事業者等が検討していくこと @精神科病院や入所施設からの地域移行について,適切な意思決定が行えるように選択肢を提示するため,グループホームや日中活動の体験機会の場を提供する。 A比較的軽度な障がい者向けのグループホームの新規開設は増加傾向にあることから,空き部屋を活用した体験の場を増やすために「体験利用」のサービスを積極的に活用する。また,当該サービスの事業者への周知も必要である。 ≪部会での主な意見≫○グループホームへの入居よりも,体験利用のサービスの方が報酬が高い。 ○体験利用であれば,短期入所と居宅介護の支給決定は残る。※グループホームに入居すると短期入所や居宅介護の支給決定が無くなり,入居してすぐに馴染めずに一時帰宅した際,困るケースがある。 B通所サービスについては,定員と定員超過枠でみると空きも多く見られることから,各事業所は対象者の拡大を図る。 ≪部会での主な意見≫○ひきこもりや触法障がい,各種依存症,発達障がい,高次脳機能障がいなど,新たな利用者像に対応していくことが重要である。 B.福岡市への提案 @福岡市と福岡市社会福祉協議会が実施している「住まいサポートふくおか」の対象者を高齢者から障がい者に拡大する。 提案理由・自立を目指す障がい者が自信をもつために一人暮らしを体験できる場がない。 ・精神科病院や入所施設からの地域移行において,一人暮らしの経験があると退院・退所する意向を持つことにつながりやすい。 ・空き部屋の増加について,崩壊・半壊の家屋が地域の問題になる場合もあり,また防犯の上でも,改修等を行い入居を促進することが望ましい。 ・ひきこもり者について,固定化した家族関係や執着している居室から離れて,暮らしの場を転換することが望ましいケースも多いと考えられる。 ・施設イメージの強いグループホームを受け入れられない障がい者も少なくないことから,シェアハウスによる互助協力の形態を望むニーズにも着目する必要がある。 Aひきこもり者や依存症など,新たな対象者に対応するために地域活動支援センターT型の役割を再評価し,増設に向け検討する。 提案理由・日割報酬制の通所サービスにおいて,利用の見通しがつかない,あるいは継続的な利用が困難な障がい者の対応は難しいと考えられる。ひきこもり者や依存症などの新たな対象者は,年間補助金で運営する地域活動支援センターT型のサービスで対応することが望ましいと考えられる。・ひきこもり者や依存症などの新たな対象者が抱える障がい種別は幅広く,また受診しない場合や,受容が難しいことも課題となっており,障がい福祉サービスの対象とならないケースも考えられることから,対象が幅広い地域活動支援センターT型の役割は大きい。※依存症関連問題で苦しむ人たちは,障がい福祉サービスの対象とならない場合がある。 (4)「地域の体制づくり」機能 A.区基幹センターが取り組むこと @短期入所事業所の不足が深刻であることを踏まえ,福岡市を3エリア(東区・博多区/中央区・南区・城南区/早良区・西区)に区分し,区基幹センターが軸になって,エリアごとに短期入所事業所の受け入れ促進に努める。また,短期入所事業の種別や設備・人員基準,運営手法,報酬規定等を周知し,増設及び新規開設による増床を図る。さらに,「体験機会・場」機能の強化のために各事業所に対して地域ニーズの発信を行い,受け入れ対象の拡大を図る。 ≪部会での主な意見≫○通常の短期入所の他,看護師を配置する福祉型強化短期入所や,病院・診療所等の医療機関に併設する医療型短期入所が必要である。○通所サービス事業所に短期入所を併設する場合,居室と浴室(脱衣所含む)のみが設置要件であり,訓練室や多目的室と併用することが可能であることを周知する。○基本報酬だけでなく,重症心身障がい者と強度行動障がい者を受け入れた場合の加算報酬,生活介護事業所や医療機関との連携により,看護師が派遣された場合の医療連携加算,さらに緊急短期入所受入加算があることを周知する。 A区基幹センターで対応している事例で,各種サービスにつながりにくいケースや困難ケースを総括し,事業者に発信,情報提供に努める。 ≪部会での主な意見≫○サービス事業者との意見交換会の実施や事業者向けに地域課題を発表する場を設け,新たな利用者像の検討と受け入れ方法や体制面などを協議する。 B精神科病院と積極的に連携し,地域移行の促進に努めるとともに,入院の長期化を防ぐための地域生活支援体制をつくる。 ≪部会での主な意見≫○「精神障がいに対応した地域包括ケアシステム検討部会」と連携をとり,入院後すぐに介入できる相談支援(計画相談及び地域移行・定着支援),地域生活を送るための居住支援(借家の斡旋など),ヘルパー,訪問看護,自立生活援助,グループホームなどの体制整備を行っていくことが必要である。 C福祉や介護,医療の各機関,自治会や企業のネットワークをつくり,地域共生社会の構築を目指す。 ≪部会での主な意見≫○障がいや高齢,医療,生活困窮など様々な点で複合的な課題を有する家庭もあり,ひきこもりや虐待,ゴミ屋敷の問題等が発生していたり,地域とのトラブルになっていたりする。痛ましい事件に発展する可能性は潜在している。 B.福岡市への提案 @防災に関する障がい者への対応など,地域で取り組む手法を福岡市として提示するとともに区基幹センターや各種福祉サービス事業所の役割を明確化する。 提案理由・地震等の災害時における在宅障がい者の安否確認,救助,医療連携,見守り体制の構築は殆ど進んでいない状況。・日中に大地震等が発生した場合,食糧や防寒用品等を備蓄していない通所サービスで大きな混乱が予測される。また,事業所の地域に所在する避難所に誘導できるのかどうか不明瞭な状況。・自宅で人工呼吸器などの電源が必要な医療機器を使用して生活している場合,自然災害等で停電になることを不安に感じている重度障がい者及び家族は少なくない. A区基幹センターの役割と実績を改めて検証し,地域の体制づくりを進めるための体制を強化する。 提案理由・区基幹センターは,総合相談に追われ,地域福祉の体制づくり,災害に備えたパーソナルネットワーク構築まで手が回らない状況がある。 ・区基幹センターの運営法人は,各種指定事業を運営しているなかで,人員確保に苦慮しており,公益事業の位置づけとなる区基幹センターへの職員配置は,ままならない状況にあることから,コーディネーターの負担軽減による安定的な業務遂行に配慮する必要がある. (5)「専門性」機能 個別性の高い障がい福祉分野において,専門性は非常に重要かつ普遍的な機能である。以下の対象者に対応できるスキルを専門性と位置づける。@医療的ケアを含む重度身体障がい者A強度行動障がい者B虐待・その他により支援が必要な状況にある者※「その他」は,精神障がいや発達障がい,高次脳機能障がい等が起因して家庭や地域等で生活の維持が困難な状況にある者。また,ひきこもり状態や極度の生活困窮にある者,触法障がい者,または障がい特性により他者とのトラブルが絶えない者など,支援に相当の経験とスキルを要する者を想定している。 また,専門性機能を地域生活支援拠点として位置づけるための方法は次の2種が考えられる。@専門性を高めるための研修等を実施する事業所A専門性の高い相当の経験とスキルを保持する事業所※その他の4機能「緊急時の受け入れ・対応/相談/体験の機会・場/地域の体制づくり」は,専門性機能を併せ持つことが望ましい。 A.事業所等が検討していくこと @福岡市障がい者基幹相談支援センター(以下「市基幹センター」という。)は,区基幹センター及び相談支援事業所,その他のサービス事業所に必要な専門研修を拡充する。 A区基幹センターは,相談機能だけでなく,地域の体制づくり機能を併せ持つ地域生活支援拠点として,各エリアに所在するサービス事業所に研修機会を提供する。 B各種サービス事業所は,福祉従事者の研修機会を保証し,重度障がい者への支援に対応できるよう努める。強度行動障がい者や重症心身障がい者に対応できる専門性の確保を図る。 Cサービス事業所が,精神障がい者や発達障がい者,ひきこもり状態にある障がい者を支援できるスキルを身に着けることを目指す。 Dカスタマーハラスメントへの対処方法の確立や協議を行う場を検討する。 B.福岡市への提案 @医療的ケアを含む重症心身障がい者や強度行動障がい者に対応できる居宅介護等事業所を地域生活支援拠点として位置づける。 ≪部会での主な意見≫○喀痰吸引等研修や強度行動障がい支援者養成研修を受講したヘルパーを確保し,一定期間のサービス実施経験を有する事業所を福岡市の財源で評価する仕組みが望ましい。提案理由・喀痰吸引等を実施できる事業所は,福岡市の指定居宅介護等事業所の中で15%しかなく,人手不足が深刻な状況となっている。・喀痰吸引等研修の受講に相応の受講料が発生し,原則,10日以上の期間を要することから,研修修了者の確保には事業所としても財政的負担が大きい。・喀痰吸引等支援体制加算はあるが,特定事業所加算の取得事業所は,算定できないこととなっており,喀痰吸引等を実施できるヘルパーの確保にかかる経費は事実上,法人が全て負担しなければならない。・福岡市として強度行動障がいの支援に注力してきたが,行動援護を実施する事業者は非常に少ない。参考)障がい福祉サービス等事業所数(令和元年12月1日現在)移動支援・262事業所/同行援護・106事業所/行動援護・26事業所 A医療的ケアを含む重症心身障がい者や強度行動障がい者,頻回のてんかん発作がある障がい者など,マンツーマン程度の支援や,特性に配慮した施設整備を必要とする障がい者の受け入れが可能な地域生活支援拠点の機能を有するグループホームの設置を推進する。また,市独自の運営費補助を検討する。 ≪部会での主な意見≫○療養介護の補完的な立場,障がい者地域生活・行動支援センター「か〜む」利用後の受け入れ先としても想定している。○グループホームの機能強化として専門的な支援員や看護師等を配置する。 ○療養介護事業所は20名定員から設置できるため,医師と相当数の看護師配置の特徴を活かし小規模の療養介護の整備を行うことにより,地域生活支援拠点とすることも考えられる。○専門性の高い事業所となるため,緊急時の受け入れ・対応事業も併設することが望ましい。提案理由・重症心身障がい者を対象とする療養介護は,市内に2カ所しかなく,待機者も相当数いる状況である。・100名以上の福岡市民が市外の療養介護事業所に入所しており,家族から遠い場所で生活している現状がある。・常時,喀痰吸引等の医療的ケアが必要な場合,24時間の付き添いが必要となり,家族が極度に疲弊しているケースもある。・頻回のてんかん発作があるが,区分5以上ではないため,療養介護の対象にはならない障がい者の場合,マンツーマンでの対応が必要なため,受け入れ先が無いケースが少なくない。・強度行動障がい者が,「か〜む」の利用により状態が改善しても,その後の受け入れ先がないことが課題となっている。 5.重度障がい者の住まいの確保について (1)事業者等が検討していくこと @市基幹センター及び区基幹センターは,グループホームや入所施設に対し,重度障がい者の受け入れの必要性を啓発する。Aサービス事業所は業界団体等を通じて,重度障がい者の住まいのあり方について協議し,受け入れの方策を探求する。B重度障がい者への対応として創設された日中サービス支援型グループホームについて,その活用方法や課題などを明確化し,拡充を図る。C入所施設は,入所者に対して1人暮らしやグループホームの体験機会を提供し,比較的軽度な障がい者の地域移行を進めるとともに,重度障がい者の受け入れを促進する。Dグループホームに対するニーズに対応できるように,事業者(法人)は人材確保等の経営努力を図り,居住支援及び夜間支援の体制構築,ノウハウの取得に尽力する。 (2)福岡市への提案 @常時介護が必要な障がい者がグループホームに入居する場合,必要な時間数の居宅介護等を支給する。また,バリアフリー化,特殊壁等の特別な環境整備を要するため,新設あるいは改修時に独自の補助金を検討する。 提案理由・グループホームの設置数は増加傾向にあるが,最重度の障がい者を受け入れられるグループホームは極めて少ない。現在の職員配置と報酬体系では,人員が不足しており,また経営的に厳しいため,対応できないことが明白となっている。・空き部屋のあるグループホームに重度障がい者が1人で入居できる仕組みとして,個別給付の居宅介護(ヘルパー)の支給を行うことが望ましい。・グループホームの生活支援員は,他のサービスとの兼務が可能であることから,居宅介護の指定を受けている法人で,生活支援員が居宅介護の有資格者であれば,同一従業者が一貫してサービスを提供できる。 Aグループホーム入居者に対し、在宅者と同様の移動支援(ガイドヘルプ)を支給し、社会参加を促進する。 提案理由・福岡市においては原則,グループホーム入居者には移動支援が支給されていない。特例的な申請により,4時間以上の外出のみ,利用できる状況である。・グループホームの世話人や生活支援員では,重度障がい者の個別の外出ニーズに対応できず,社会参加が進んでいない。・重度障がい者をグループホームで受け入れる体制として,居宅介護に加え移動支援による人員確保が必要である。 6.まとめ 福岡市では,障がい者の重度化,高齢化や「親なき後」の生活の安心も見据え,障がい者の地域生活への移行や地域生活の継続を推進し,障がい者が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるような支援を提供する仕組みづくりを構築するために,全国でも先駆的に地域生活支援拠点等の整備を進めてきた。平成30年11月までに地域生活支援拠点整備に必要な5機能を確保し,区基幹センターが中心となって,各機能の強化や,面的整備を進めてきたが,重度障がい者の住まいの場が不足していることや,区基幹センターに精神障がい者や発達障がい者に加え,ひきこもりや依存症など多様なニーズをもつ障がい者からの相談が数多く寄せられており,様々な課題が浮き彫りとなっている。 地域生活支援拠点等整備をさらに推進していくため,重度障がい者の緊急時の受け入れ施設・住まいの場の確保や,多様なニーズに応えるため相談機能の強化に向けた相談支援体制の見直しを重点事項として取り組んでいくことが重要である。 ○検討体制等 この「地域生活支援拠点等整備検討部会」は福岡市障がい者等地域生活支援協議会設置運営要綱に基づき,協議会の専門部会として設置され,次のとおり協議を行った。 平成30年7月24日平成30年度第1回地域生活支援協議会・地域生活支援拠点等整備検討部会の開催について 第1回平成30年9月6日 ・部会長・副部会長選出・今後の進め方について 第2回平成30年10月11日 ・緊急時受け入れ・対応アンケート結果・緊急対応事例について・緊急受け入れ体制整備の進め方について 第3回平成30年11月19日 ・部会の進め方について・事前登録要領について 平成30年12月10日平成30年度第2回地域生活支援協議会・検討状況についての報告 第4回平成31年1月15日 ・コミュニケーション支援員派遣事業(仮)について・小部会について 平成31年2月7日研修会 ・「地域生活支援拠点の整備及び基幹相談支援センターの役割について」上小圏域障害者総合支援センター所長橋詰正氏 第5回平成31年3月6日 ・コミュニケーション支援員派遣事業(仮)について・今後の部会の進め方について 平成31年3月18日平成30年度第3回地域生活支援協議会・検討状況についての報告 第6回令和元年7月2日・地域生活支援協議会での報告内容について 令和元年7月25日令和元年度第1回地域生活支援協議会・検討状況についての報告 第7回令和元年11月21日・提言書について ○小部会 小部会は,部会の委員で構成される。部会で明確にしたテーマに沿って,小部会ではデータ集めや調査,細部の議論など,部会と役割を分担することで効率的に検討を進めていくために,小部会を開催した。 小部会の開催状況 第1回平成31年3月22日・地域生活支援拠点等事業所の要件について検討 第2回平成31年4月18日 ・「緊急受け入れ・対応」機能を担う拠点事業所の要件,短期入所事業所を増やす取り組みについて第3回令和元年5月16日・「専門性」機能を担う拠点事業所の整備・要件について 第4回令和元年6月13日 ・「体験の場」機能を担う拠点事業所の整備・要件について・他の専門部会の検討状況について情報共有第5回令和元年7月2日・「相談」機能を担う拠点事業所の整備・要件について 第6回令和元年8月22日 ・地域生活支援拠点等の整備,要件等について検討・今後の流れについて 第7回令和元年9月19日 ・現在までの整理内容について・提言書の作成の方向性について・提言書作成に関する役割分担について第8回令和元年11月21日・提言書について 委員名簿(敬称略) 相談支援機能強化 専門員 <部会長> 池田 顕吾 福岡市東区第1障がい者基幹相談支援センター 管理者 相談支援スーパー バイザー 中島 大輔 福岡市障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 田中 一弥 福岡市城南区障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 佐藤 陽介 福岡市南区第2障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 市障がい者基幹 相談支援センター <副部会長> 加納 洋子 福岡市障がい者基幹相談支援センター 所長 区障がい者基幹 相談支援センター 末松 忠弘 東区部会 東区第2障がい者基幹相談支援センター 管理者 石橋 昌和 博多区部会 博多区第2障がい者基幹相談支援センター 管理者 淵上 忠喜 中央区部会 中央区障がい者基幹相談支援センター センター長 青木 福美 南区部会 南区第3障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 田村 祐季 城南区部会 城南区障がい者基幹相談支援センター 相談支援専門員 常安 栄 早良区部会 早良区第2障がい者基幹相談支援センター 管理者兼相談支援専門員 西村 隆之 西区部会 西区第1障がい者基幹相談支援センター 管理者兼相談支援専門員 福岡市民間障がい 施設協議会 坪井 健 短期入所事業所 心伸〜しん〜 管理者 福岡市民間障がい施設協議会グループホーム部会長 福岡市障がい者 生活支援事業所 連絡会 金子 健 有限会社カラーズ 代表取締役社長 居宅介護サービス わかたけ 管理者 福岡市障がい者生活支援事業所連絡会 副会長 緊急時受け入れ・ 対応拠点事業所 (類型T) 溝口 伸之 株式会社きらきら 代表取締役社長 緊急時受け入れ・ 対応拠点事業所 (類型U) 森口 哲也 障がい者地域生活・行動支援センター か〜む 所長 緊急時受け入れ・ 対応拠点事業所 (類型V) 牧本 貴宏 株式会社 まきもと 代表取締役社長 ひまわりらんど 和白センター 相談支援専門員 障がい者支援課 橋本 智之 福岡市保健福祉局障がい者部 障がい者支援課 地域生活支援係長 事務局 保健福祉局障がい者部障がい者支援課