すべての人にやさしい社会を目指して 福岡市障害者差別解消条例(平成31年1月1日施行) 福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例 街を走るバスが低床になって車いすもベビーカーもお年寄りも乗りやすくなりました。駅のホームドア,音響信号機,幅の広い歩道やスロープ,低い位置の券売機,絵文字の案内板など,誰にでもやさしいユニバーサルデザインが広がっています。障害がある人たちにやさしいまちは,どんな人にもやさしいまちです。障害を理由とする差別がなくなるよう,みんなで取り組んでいきましょう。 この冊子には,音声コードが表紙と偶数ページは右下,奇数ページと裏表紙は左下に印刷されています。 福岡市 なぜ条例が必要なの? 障害のある人たちは誤解や偏見などから,日常生活の様々な場面で,障害を理由として不利益な取扱いを受けています。 「福岡市障害者差別解消条例」(※)は,障害のある人たちへの差別,生きづらさなどの解消を図るために,福岡市,事業者,市民がどのように行動すればよいかを,いろいろな人の意見を聞いてまとめたものです。 福岡市に住む誰もが障害の有無にかかわらず,互いにかけがえのない個人として尊重しあい,思いやり,支え合いながら暮らせる,やさしいまち福岡になることを目指して制定されました。 (※)正式名称:福岡市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例 条例で何が良くなるの? 福岡市は,障害者差別をなくすための施策を実行します。 会社やお店などは,障害のある人たちも利用しやすいお店づくりやサービスを提供するよう努めます。 障害のある人もない人も,この福岡のまちで安心して暮らしていけるようなまちづくりが進みます。 障害のある人にとっての社会的障壁とは? 困っているのは身体や心に障害があるから? 今の社会は,基本的に障害のない人を基準に制度がつくられています。そのため,障害のない人にとっては何でもないものが,障害のある人には生活しづらさや不安などを感じる原因(社会生活上のバリア)となることも少なくありません。 そのような,社会の側が作り出す社会生活上のバリアのことを「社会的障壁」といいます。たとえば,車いす利用者にとっての街なかの段差,視覚障害のある人にとっての印字・画像だけの案内なども,「社会的障壁」に当たります。 社会的障壁とは… @社会における事物(通行,利用しにくい施設・設備など) A制度(利用しにくい制度など) B慣行(障害のある人の存在を意識していない慣習・文化など) C観念(障害のある人への偏見など) 障害を理由とする差別って何だろう? この条例では,社会的障壁をなくすために,次の2つのことを「障害を理由とする差別」であるとしており,誰もが差別をしてはならないことを基本的な考え方としています。 1つ目は,「不当な差別的取扱い」です。障害があるという理由だけで,障害のない人と異なる不利益な取扱いをしてはいけません。たとえば,正当な理由なく,障害を理由として,サービスや各種機会を提供しない,場所・時間帯などを制限する,障害のある人だけに条件を付けることなどです。「正当な理由」があるかないかについては,具体的な場面や状況に応じて個別に判断されます。 2つ目は,「合理的配慮をしないこと」です。障害のある人などから,社会的障壁を取り除いてほしいという求めがあったときは,その時々の状況に応じて,社会的障壁を取り除いたり,そのための努力をしなければいけません。 いずれも,やむを得ず対応できないときは,理由や事情を説明する必要があります。 不当な差別的取扱いの例 公共交通機関で  障害を理由に,バス,タクシーなどで車いす利用者,白杖使用者などの乗車を拒否する 教育の場で  障害を理由に,本人や家族の意見を聞くことなく就学先を決める サービス提供の場で  障害を理由にアパートなどの見学や賃貸契約を断る 医療機関で  障害を理由に治療や入院を断る 雇用の場面で  障害を理由に採用を拒否する 合理的配慮の提供や心がけたいことの例 肢体不自由の人には 段差や階段には,簡易なスロープを準備したり,車いすをかかえる,歩く時に支える,ドアを開閉するなどの手伝いをしましょう。書類の記入の時,自筆ができない人には代筆を認めるなどしましょう。 視覚障害のある人には 会議などの資料や教材を点字や拡大文字,音声形式で用意したり,商品の内容や値段を読んで伝えるなどの配慮をしましょう。点字ブロックを人や自転車などでふさがないようにしましょう。 聴覚障害のある人には 役所や病院・銀行などの窓口で呼び出すときは,目で見てわかる方法をとりましょう。公共交通機関等での案内は,音声と同時に表示が必要です。問合せや申込みはファックスやメールなどでも受け付けましょう。 言語障害のある人には 筆談が行えるようにメモ用紙や筆記具を用意したり,文字で書いて内容を確認しましょう。声を発しなくても窓口に来たことを伝えられるように,呼び鈴やブザーを設置しましょう。 知的障害のある人には 優しい態度でゆっくりと声掛けし,わかりやすい言葉や具体的な表現を選んで接しましょう。言葉以外でも絵や写真,身振りなども効果的です。漢字にはフリガナをふりましょう。 発達障害のある人には 他者とのコミュニケーション,相手や場所に合わせて振る舞うこと,じっとしておくことなどが苦手です。感覚が非常に敏感で,音や光,人混みが苦手な人もいます。困っている様子があれば,静かな口調で尋ねてください。絵や写真,身振りなどを交えた方がわかりやすいこともあります。 精神障害のある人には 適切な治療や服薬,周囲の支えによって,地域の中で安定した生活を送ることができます。ゆっくりおだやかな口調であいさつや声掛けをしてください。 内部障害・難病などがある人には 外見からはわかりにくい病気や障害もあることを理解し,困っている様子であれば,静かな口調で状態を尋ねてください。 障害を理由とする差別の禁止 この条例では,「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の提供」について,「福岡市」と「事業者」とに分けて,次のように定めています。 福岡市 不当な差別的取扱いは禁止(してはならない),合理的配慮の提供は法的義務(しなければならない) 事業者 不当な差別的取扱いは禁止(してはならない),合理的配慮の提供は努力義務(するように努めなければならない) 「合理的配慮の提供」については,障害のある人やその家族等から,社会的障壁を取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたとき(※1)に,負担が重すぎない範囲で(※2)合理的配慮をすることが求められます。   (※1)意思の表明がない場合も,合理的配慮をする必要があると考えられるときは,自主的に適切な配慮を行うことが望ましいです。 (※2)負担が重すぎないかどうかは,事業等の規模やその規模からみた負担の程度,財政状況,業務遂行に及ぼす影響などを考慮して判断されます。 市民に求められること 障害を理由とする差別のない社会を実現するには,市民一人ひとりが,差別をなくしていくという気持ちをもって,行動していくことが求められます。 誰もが差別することにより誰かを傷つけることはあってはならないことです。 また,障害のある人が日常生活で困っているときに,手伝いをすることも合理的配慮のひとつです。 市民一人ひとりが,障害のある人との交流等を通じて障害や障害のある人への理解を深めることが大切です。 困ったときは相談窓口があります 建設的対話による解決 障害のある人は,「差別された」「説明が不十分だ」と主張し,事業者は「差別などしていない」「説明は尽くした」と主張するなど,見解が一致しない場合は,「どこまでならできるか一緒に考えてみましょう」「違う方法がないか一緒に考えてみましょう」というような建設的対話を心がけましょう。 障害のある人やその家族,関係者,事業者が,差別相談専門の窓口に相談できます。この窓口として,福岡市障害者110番があり,ここでは「説明,情報提供」「調整・あっせん」「関係機関への通知」「必要な支援」を行っています。また,市内14ヶ所の各区障害者基幹相談支援センターでも相談を受け付けています。 ここまでで解決することが基本ですが,それでも解決しないとき,つまり相談機関の調整等により解決が図られないとき,差別相談をした障害のある人やその家族,関係者は福岡市に対して,指導・助言等の申出をすることができます。 これを受けて,福岡市は指導・助言等を行う場合がありますが,事業者が,正当な理由なく指導・助言に従わないときは,さらに福岡市が勧告を行う場合があります。そして,事業者が正当な理由なく勧告に従わないときは,福岡市が事業者名等を公表する場合があります。 専門相談窓口 福岡市障害者110番(平日 9時から17時  第1・第3土曜 9時から12時) 〒810−0062 福岡市中央区荒戸3丁目3−39 福岡市市民福祉プラザ4階 電話 092−738−0010(ファックス兼用) 障害のある人に関係するマークについて 次のような障害者に関係するマークを街で見かけたときは,合理的配慮が必要な人が近くにいるかもしれません。 盲人のための国際シンボルマーク このマークを見かけたら,視覚障害者の利用への配慮をお願いします。 白杖SOSシグナル普及啓発シンボルマーク(視覚障害者が助けを求めるマーク) 白杖を頭上50センチメートル程度に掲げている人を見たら,進んで声かけをお願いします。 聴覚障害者標識(聴覚障害者が運転する車) 危険防止のためやむを得ない場合を除き,このマークの車に幅寄せや割り込みを行ってはいけません。 耳マーク(聞こえが不自由なことを表すマーク) 相手が「聞こえない」ことを理解し,コミュニケーション方法に配慮をお願いします。 手話マーク 手話を必要としていることを表しています。 筆談マーク 筆談を必要としていることを表しています。 ハート・プラスマーク(身体内部に障害がある人) 内部障害のある人は外見からは分かりにくいため,マークを着用されている方には配慮をお願いします。 オストメイトマーク(人工肛門・人口膀胱を造設している人) 人工肛門・膀胱を造設している人と,その人の為の設備があることを表しています。 身体障害者標識(身体障害者が運転する車) 危険防止のためやむを得ない場合を除き,このマークの車に幅寄せや割り込みを行ってはいけません。 障害者のための国際シンボルマーク 駐車場などでこのマークを見かけたら,障害者の利用への配慮をお願いします。 ほじょ犬マーク 公共の施設や交通機関のほか,ホテル,レストラン等でも,身体障害のある人が補助犬を同伴するのを受け入れる義務があります。 ヘルプマーク(援助が必要なことを表すマーク) 電車・バス内で席をゆずる,困っているようであれば声をかける等,思いやりのある行動をお願いします。 お問い合わせ 福岡市保健福祉局障害者部障害者在宅支援課 〒810−8620 福岡市中央区天神1丁目8−1  電話 092−711−4248  ファックス 092−711−4818 このパンフレットは,福岡市に障害者差別禁止条例をつくる会の協力のもと作成しました。