参考資料2 第5期障害福祉計画に係る基本指針について 1.これまでの議論の経緯等について  市町村・都道府県の障害福祉計画は、現行の第4 期計画の計画期間が平成29年度末までであること、また、児童福祉法の改正により、都道府県・市町村において障害児福祉計画を定めるものとされたことから、平成30 年度を初年度とする第5期計画の作成に係る基本指針の見直しについて、昨年10月から社会保障審議会障害者部会で議論を重ね、去る1月6日に開催された障害者部会において、見直しの方向性について、了承されたところである。  なお、基本指針の告示については、パブリックコメント等の手続を経た上で、今年度末を目処に行う予定であるのでご了知願いたい。 ☆第5期計画に係る基本指針の主な内容 【主なポイント】 地域における生活の維持及び継続の推進 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築 就労定着に向けた支援 障害児のサービス提供体制の計画的な構築 地域共生社会の実現に向けた取組 発達障害者支援の一層の充実 【成果目標に関する事項】 施設入所者の地域生活への移行( 継続) 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築( 項目の見直し) 地域生活支援拠点等の整備( 継続) 福祉施設から一般就労への移行( 拡充) 障害児支援の提供体制の整備等( 新規) 【その他】 障害者虐待の防止、養護者に対する支援 障害を理由とする差別の解消の推進 難病患者への一層の周知 意思決定支援、成年後見制度の利用促進の在り方 等 2.基本指針見直しの主なポイント 【地域における生活の維持及び継続の推進】 地域における生活の維持及び継続の推進を図るため、地域生活支援拠点等の整備を一層進めること及び、「相談支援の質の向上に向けた検討会」における議論のとりまとめを踏まえ、基幹相談支援センターの設置促進に向け、都道府県において基幹相談支援センターが設置されていない市町村に対し、積極的な働きかけを行うこと等について、基本指針に追記を行う。 【精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築】 精神障害者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指すこと等について、基本指針に追記を行う。 【就労定着に向けた支援】 就業に伴う生活面の課題に対応できるよう、事業所・家族との連絡調整等の支援を行う就労定着支援のサービスが創設されることを踏まえ、職場定着率を成果目標に追加する。 【障害児のサービス提供体制の計画的な構築】 平成28 年5 月に成立した障害者総合支援法及び児童福祉法の一部を改正する法律において、市町村及び都道府県に対し障害児福祉計画の作成を義務付けられることとなったため、児童発達支援センターを中心とした地域支援体制を構築することや、医療的ニーズへの対応を目指し、医療的ケア児支援のための保健・医療・障害福祉・保育・教育等の関係機関の協議の場の設置等について、基本指針に追記を行う。 【地域共生社会の実現に向けた取組】 全ての人々が地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる地域共生社会の実現に向け、住民団体等による、法律や制度に基づかない活動への支援等を通じ、地域住民が主体的に地域づくりに取組むための仕組み作りや、専門的な支援を要する者に対して、各関連分野が共通の理解に基づき協働する、包括的かつ総合的な支援体制の構築に向けた取組を計画的に推進すること等について、基本指針に追記を行う。 【発達障害者支援の一層の充実】 地域の実情に応じた発達障害者支援の体制整備を計画的に図るため、発達障害者支援地域協議会設置が重要であることや、可能な限り身近な場所において、必要な支援を受けられるよう発達障害者支援センターの複数設置等の適切な配慮を行うこと等について、基本指針に追記を行う。 3.成果目標に関する事項 基本指針第二における成果目標については、直近の状況等を踏まえて見直しを行うとともに、従来の「入院中の精神障害者の地域生活への移行」を変え、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」という成果目標を掲げ、成果目標の追加・変更を行う。更に就労定着支援や障害児支援の提供体制の整備に関し、新たに成果目標を設定することとしている。 ☆成果目標の見直しの概要 【施設入所者の地域生活への移行(継続)】 現在の基本指針では、「平成25年度末時点の施設入所者数の12% 以上が平成29 年度末までに地域生活に移行することを基本とする」,「平成25年度末時点の施設入所者数を平成29年度末までに4%以上削減することを基本とする」としている。 新しい基本指針では、基準となる時点を平成25 年度末時点から平成28年度末時点へ変更するとともに、障害者の高齢化・重度化の状況等を踏まえて、平成32 年度末における成果目標の設定を次のとおりとする。 @施設入所者の地域生活への移行 平成28年度末時点の施設入所者数の9%以上が地域生活へ移行することを基本とする。 A施設入所者の削減 平成28年度末時点の施設入所者数の2%以上削減することを基本とする。 【精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築( 項目の見直し)】 現在の基本指針では、「平成29年度における入院後3ヶ月時点の退院率を64% 以上とすることを基本とする」,「平成29年度における入院後1年時点の退院率を91%以上とすることを基本とする」,「平成29年6月末時点の長期在院者数を平成24 年6 月末時点の長期在院者数から18 パーセント以上削減することを基本とする」としている。 新しい基本指針では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構築するため、新たに平成32 年度末における成果目標の設定を次のとおりとする。 @障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場の設置状況 平成32年度末までに全ての障害保健福祉圏域ごとに保健・医療・福祉関係者による協議の場を設置することを基本とする。 A市町村ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場の設置状況 平成32年度末までに全ての市町村ごとに保健・医療・福祉関係者による協議の場を設置することを基本とする。市町村単独での設置が困難な場合には、複数市町村による共同設置であっても差し支えない。 B精神病床における1年以上長期入院患者数(65 歳以上、65歳未満) 平成32年度末の精神病床における1 年以上長期入院患者数(65歳以上、65歳未満)を、国が提示する推計式を用いて設定する。 (注)なお、平成32年度末の精神病床における1年以上長期入院患者数の全国の目標値は、平成26年と比べて3.9万人から2.8万人減少になる見込みである。 C精神病床における早期退院率( 入院後3か月時点、6か月時点、1年時点) 平成32年度における入院後3 か月時点の退院率を69%以上、6か月時点の退院率を84%以上、1年時点の退院率を90% 以上とすることを基本とする。 【地域生活支援拠点等の整備(継続)】 現在の基本指針では、「平成29年度末までに各市町村又は各圏域に少なくとも一つを整備することを基本とする」としている。 新しい指針では、現在、地域生活支援拠点等の整備が必ずしも進んでいない状況に鑑み、現行の成果目標を維持し、平成32年度末における成果目標の設定を次のとおりとする。 平成32年度末までに各市町村又は各圏域に少なくとも一つを整備することを基本とする。 【福祉施設から一般就労への移行(拡充)】 現在の基本指針では、 「平成29年度中に平成24 年度実績の2倍以上が福祉施設から一般就労へ移行することを基本とする」,「平成29年度末における就労移行支援事業の利用者数を平成25 年度末の利用者数から6割以上増加することを目指す」,「平成29年度末において就労移行支援事業の利用者のうち就労移行率が3割以上の事業所を全体の5割以上とすることを目指す」としている。 新しい基本指針では、直近の状況等を踏まえて、平成32年度末における成果目標の設定を次のとおりとする。 @平成32年度中に平成28 年度実績の1.5 倍以上が福祉施設から一般就労へ移行することを基本とする。 A平成32年度末における就労移行支援事業の利用者数を平成28年度末の利用者数から2割以上増加することを目指す。 B平成32年度末において就労移行支援事業の利用者のうち就労移行率が3割以上の事業所を全体の5割以上とすることを目指す。 C就労定着支援による支援開始1 年後の職場定着率を8割以上とすることを基本とする。 【障害児支援の提供体制の整備等( 新規)】 平成28年5月に成立した障害者総合支援法及び児童福祉法の一部を改正する法律において、市町村及び都道府県に対し障害児福祉計画の作成を義務付けられることとなった。そのため、基本指針に障害児支援の提供体制の確保に関する成果目標の設定を次のとおりとする。 @平成32年度末までに、児童発達支援センターを各市町村に少なくとも1カ所以上設置することを基本とする。なお、市町村単独での設置が困難な場合には、圏域での設置であっても差し支えない。 A平成32年度末までに、すべての市町村において、保育所等訪問支援を利用できる体制を構築することを基本とする。 B平成32年度末までに、主に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所及び放課後等デイサービス事業所を各市町村に少なくとも1カ所以上確保することを基本とする。なお、市町村単独での確保が困難な場合には、圏域での確保であっても差し支えない。 C医療的ケア児が適切な支援を受けられるように、平成30 年度末までに、各都道府県、各圏域及び各市町村において、保健、医療、障害福祉、保育、教育等の関係機関が連携を図るための協議の場を設けることを基本とする。なお、市町村単独での設置が困難な場合には、都道府県が関与した上での、圏域での設置であっても差し支えない。 4.その他の見直し その他の見直しとして、下記の事項等について、基本指針に記載する。 【障害者虐待の防止、養護者に対する支援】 @都道府県及び市町村においては、相談支援専門員やサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者等に対し、常日頃から虐待防止に関する高い意識を持ち、障害者等及び養護者の支援に当たるとともに、虐待の早期発見と通報を行うことを求めること。 A指定障害福祉サービス事業所等及び指定通所支援事業所等の設置者・管理者に対し、虐待防止研修の受講を徹底するとともに虐待防止委員会の設置を促すなどの指導助言を継続的に行うこと。 B都道府県及び市町村は、相談支援事業者に対し、訪問による相談支援の機会等を通じた虐待の早期発見及び市町村との連携の重要性について周知を図ること。 C市町村は、虐待を受けた障害者等の保護及び自立の支援を図るため、一時保護のために必要な居室の確保のために地域生活支援拠点を活用するとともに、都道府県は、必要に応じて、一時保護のために必要な居室の確保について市町村域を超えた広域的な調整を行うこと。 D指定障害児入所支援については、児童福祉法に基づき、被措置児童等虐待対応が図られるが、指定障害福祉サービス事業所等及び指定通所支援事業所等と同様に、入所児童に対する人権の擁護、虐待の防止等のため、職員に対する研修等の実施が必要であること。 【障害を理由とする差別の解消の推進】 @障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の対象となる障害者はいわゆる障害者手帳の所持者に限られないこと。 A都道府県及び市町村は、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るための啓発活動などを行う必要があること。 【難病患者への一層の周知】 @特定医療費の支給認定を行う都道府県や難病患者等の相談に応じる難病相談支援センター等において、それぞれの業務を通じて難病患者本人に対して必要な情報提供を行う等の取組により、障害福祉サービス等の活用が促されるようにすること。 A都道府県等は、相談支援専門員に向けた研修を行うに当たっては、難病患者や重症心身障害児者、医療的ケア児等の障害者の特性に応じた適切な支援についても十分に理解が図られるようなものとすること。 【意思決定支援、成年後見制度の利用促進の在り方】 @都道府県は、意思決定支援の質の向上を図るため、相談支援専門員やサービス管理責任者の研修等の機会を通じて、意思決定支援ガイドラインを活用した研修を実施するとともに、事業者や成年後見の担い手を含めた関係者に対する普及を図るよう努めること。 A市町村等が成年後見制度の利用促進に関する施策を講じるに当たっては、平成29 年度以降に各市町村において作成に努めることとされている市町村成年後見制度利用促進基本計画との整合性が保たれるようにすることが望ましいこと。