福岡市障害児しゃ等実態調査 報告書 概要版 平成29年3月 福岡市 1 調査の概要 1.調査の目的 この調査は、福岡市に居住する障害児・障害者等の生活実態や意識、福祉施策に対する要望等を把握することを目的として実施しました。調査結果は、次期の福岡市障害福祉計画 及び 福岡市障害者計画 の策定に活用します。 2.調査の設計と実施状況 各調査の設計と実施状況を、調査種別、調査対象、調査方法、標本数、有効回収数、回収率の順に読み上げます。 調査は、平成28年9月から10月にかけて実施。 身体・知的障害者、障害児、難病患者調査の対象者は、層化無作為抽出。 身体障害者調査 市内在住の18歳以上の身体障害者 郵送、一部訪問 1,300人 865人 66.5% 知的障害者調査 市内在住の18歳以上の知的障害者 郵送 850人 521人 61.3% 障害児調査 市内在住の17歳以下の身体・知的障害児 郵送 850人 539人 63.4% 発達障害児・しゃ実態調査 発達障害者関係団体等に所属、もしくは特別支援学級や通級指導教室に通っている発達障害児・しゃとその家族 団体や学校を通じた配布回収 配布数 697人 263人 37.7% 難病患者実態調査 福岡市内に居住する特定医療費(指定難病)受給者証所持者 郵送、一部訪問 1,000人 556人 55.6% 事業者等状況調査 市内の相談支援事業所、居宅介護等事業所、施設事業所、グループホーム、及び市の相談機関 郵送 657事業所 519事業所 79.0% 精神障害者実態調査(病院) 福岡都市圏に開設し、精神科を標榜している病院を利用する患者 病院を通じて依頼・回収 入院患者1,000人、通院患者629人 入院患者875人、通院患者457人 入院患者87.5%、通院患者72.7% 精神障害者実態調査(診療所等) 福岡市内に開設し、精神科を標榜している診療所等を利用する患者 診療所等を通じて依頼・回収 1,371人 477人 34.8% なお、発達障害児・しゃ実態調査の標本数は、調査を依頼した各団体に所属するかたに配布。同一人物が複数団体に所属している場合もあり、配布数=配布した実人数ではない。? 2 障害児・障害者等の概況(統計データ) 1.身体・知的障害児・障害者数 福岡市の身体・知的障害児・障害者数(身体障害者手帳または療育手帳の所持者、重複含む)は、平成28年6月30日現在で62,595人となっています。人口1,000人あたりの出現率は41.5パーミルであり、市民の約24人に1人が身体または知的の障害があるという状況です。 身体障害児・障害者は、9割以上 97.8% が18歳以上です。 一方、知的障害児・障害者では、身体障害に比べて、18歳未満の障害児の占める割合が高く、全体の3割弱 28.8% を占めています。 平成12〜28年度までの16年間の年次推移をみると、身体障害児は1,000〜1,100人前後で大きな変動はないものの、その他はいずれも大きく増加しており、身体障害者は平成12年度の1.6倍、知的障害者は2.1倍、知的障害児は2.3倍となっています。 人口1,000人あたりの出現率をみると、特に身体障害者では高齢化の進行等の影響もあり、平成12年度 29.3パーミルから 平成28年度 40.2パーミルへ10.9ポイント上昇しています。? 2.身体障害児・障害者の状況 身体障害児・障害者の障害の程度(手帳等級)をみると、平成28年6月30日現在、1級・2級を合計した重度者が25,976人と、全体の約半数 50.1% を占めています。身体障害の種別(主な障害の部位)をみると、肢体不自由が27,619人 53.3% と全体の過半数を占めて最も多く、 これに内部障害が15,958人 30.8% で続いています。 手帳等級別の年次推移をみると、平成12年度から平成28年度までの16年間で、全体では1.6倍の増加で、重度者が1.6倍、中度者が1.7倍、軽度者が1.5倍となっています。 3.知的障害児・障害者の状況 知的障害児・障害者の障害の程度(手帳判定)をみると、平成28年6月30日現在、A判定(AワンからAスリー)の重度者が4,583人と全体の4割強 42.6% を占めています。 平成12〜28年度までの16年間の年次推移をみると、重度者が1.7倍、中度・軽度者が2.7倍と、重度者に比べて、中度・軽度者の増加が顕著です。? 4.精神障害者の状況 今回の調査で把握した、現住所が福岡市にある精神障害者(医学的にみて、精神疾患を有する人)のかずは37,648人で、内訳は入院中の人が3,382人、通院中の人が34,266人となっています。 平成17年度からの推移をみると、平成28年度までの11年間で入院者数は微減、通院者数は1.7倍に増加しています。 5.発達障害児・障害者の状況 発達障害については、全国的に見ても、正確な人数が把握できない状況ですが、心身障害福祉センター(あいあいセンター)、西部療育センター及び東部療育センターの新規受診児数の推移をみると、全体のかずは ほぼ横ばいで、また、新規受診児の約6割が発達障害と診断された 児童となっています。? 6.難病患者の状況 難病については、平成27年1月1日に 難病の患者に対する医療等に関する法律 が施行され、新たな難病医療費助成制度が運用されています。 指定難病受給者数の年次推移をみると、新制度移行後の平成26年度から平成27年度にかけてはほぼ横ばいの状況です。また、平成27年度までのいずれの年においても、男性が約4割、女性が約6割を占めています。? 3 主な調査結果 3の1 基本属性 1.性別 発達障害では 男性 が8割を占める 障害の種別により、男女構成比に違いがあり、身体障害者、精神障害者(通院)、精神障害者(入院)等では男女構成比の差は小さくなっています。発達障害児・障害者は、男女構成比の差が大きく、男性が8割を占めています。 2.年齢  身体障害者は高齢者(65歳以上)が約7割 障害者の年齢構成をみると、身体障害者では65歳以上の高齢層、知的障害者では20歳代以下の若年層の占める割合が高くなっています。発達障害児・障害者は、保護者の会等の関係団体等を通じて調査を実施したこともあり、18歳未満の年齢層が6割を占めています。 精神障害者は、通院者に比べて入院者で65歳以上の高齢層が多く、入院者における高齢層は過半数を占めています。 難病患者は65歳以上の高齢層が4割強を占めていますが、40歳代〜60歳代前半でも4割近くを占めています。? 3の2 生活の状況 1.世帯構成  知的・発達障害者の6割〜8割強は親と同居 世帯構成は、高齢層が多い身体障害者では 夫婦のみ 31.1% や 二世代同居(子と本人)26.8%、一人暮らし 24.9% 等が多くなっています。また、難病患者でも近い傾向がみられます。 一方、若年層が多い知的障害者や発達障害者では 二世代同居(親と本人) が6割〜8割強を占めており、親との同居率が高くなっています。 精神障害者では、他の障害に比べて 一人暮らし の割合が高く、入院者では過半数となっています。 2.主な介助者  身体・知的障害児や発達障害児・障害者では 母親 が7〜8割 障害者の主な介助者は、身体・知的障害児や発達障害児・障害者では 母親 が7〜8割を占めて最も多くなっています。また、若年層が多い知的障害者でも 母親 が半数近くを占めています。 精神障害者や難病患者では 世話をしてもらう必要がない の割合が他の障害に比べて高くなっています。? 3の3 外出の状況について 1.外出時に不便や困難を感じること 歩道の整備や段差、交通マナーが問題 外出時に不便や困難を感じることは 歩道がない道路に危険を感じる や 歩行者や走行自転車のマナーの悪さ、歩道に段差が多い 等、歩道の整備や交通マナーに関する項目が上位を占めています。 身体・知的障害児や精神障害者(通院)、発達障害児・障害者では まわりの人の目が気になる という意見が上位に挙がっています。また、発達障害児・障害者では 困った時、まわりの人が助けてくれない という意見も見られました。? 3の4 コミュニケーションについて 1.コミュニケーションで困っていることの有無  難しい内容や、あいまいな表現を理解しづらい コミュニケーションで困っていることの有無については、知的障害者、身体・知的障害児、発達障害児・障害者で ある の割合が6割〜7割を占めています。 コミュニケーションで困っていることの内容をみると、難しい内容やあいまいな表現を理解することが難しい、声や言葉がでにくいため自分の思いが伝わりにくい、相手の話が聞き取りづらいなどが上位を占めています。また、発達障害児・障害者では どのように 人と コミュニケーションをとればいいのかわからない という意見も多くなっています。? 3の5 就労について 1.就労状況・就労形態  身体障害者等は 正社員、知的障害者は 施設 で就労 仕事をしている人は、64歳以下の身体障害者の50.4%、知的障害者の42.0%、精神障害者(通院)の29.7%、発達障害児・障害者の36.3%、難病患者の43.7%となっています。 就労形態をみると、64歳以下の身体障害者、精神障害者(通院)、発達障害児・障害者、難病患者では 正規の社員・従業員 が全体の3割〜4割を占めていますが、知的障害者では1割に留まっています。また、知的障害者では、施設で働いている人が4割強 41.3% を占めて 最も多くなっています。 2.障害者の就労に対する社会の理解度  理解があると思わない の割合が高い 障害者の就労に対する社会の理解度をみると、身体障害者以外では 理解があると思わない の割合が 理解があると思う を上回っています。 前回調査結果と比較すると、身体障害者、精神障害者(通院)、難病患者では、今回 理解があると思う の割合が高くなっています。? 3.就労支援として必要なこと  知的・発達障害者では『ジョブコーチ』のニーズが高い 障害者の就労支援として必要なことをみると、調子の悪いときに休みを取りやすくする や 短時間勤務などの労働、作業時間の配慮 は、各障害に共通して上位にあがっています。 知的障害者・発達障害者では 仕事、作業上の援助や本人・周囲への助言を行う者による支援、いわゆる『ジョブコーチ』に関するニーズが高くなっています。 なお、発達障害者では、発達障害の特性を踏まえた作業手順の視覚化などの配慮 66.2% が第1位となっています。? 3の6 福祉サービスの利用と提供について 1の1.福祉サービスの利用状況と利用意向(身体障害者、知的障害者、身体・知的障害児) 地下鉄料金の助成 の利用が上位 身体障害者では、地下鉄料金の助成 47.3% や 福祉乗車券の交付 37.2% の利用が高くなっています。サービスの今後の利用意向では、福祉タクシー料金の助成 34.5% や 緊急通報システム 15.9% が、利用経験を上回っています。 知的障害者と身体・知的障害児では、福岡市重度心身障害者福祉手当 や 児童発達支援 の利用が3割〜4割と高くなっています。 知的障害者では、そのほかにも 日中一時支援 23.8%、グループホーム 19.9% の利用意向が、利用経験を上回っています。 身体・知的障害児では 放課後等デイサービス 56.0% や 特別支援学校放課後等支援事業31.5% の利用意向が高くなっています。また、就労移行支援 23.0% や 就労継続支援A型 17.6%、就労継続支援B型 16.1% など、就労関係のサービスの利用意向も 高くなっています。? 1の2.福祉サービスの利用状況と利用意向(精神障害者[通院]) 利用状況、意向ともに 地下鉄料金の助成 が最上位 精神障害者(通院)では 地下鉄料金の助成 26.4% が最も多く、次いで 計画相談支援 14.0% が続いています。 利用意向としては、地下鉄料金の助成 30.3% や 福祉乗車券の助成 17.9% が続いています。 1の3.福祉サービスの利用状況と利用意向(難病患者) 日常生活用具 や 補装具 の利用意向が高い 難病患者では 居宅介護 10.6% や 日常生活用具 9.7%、補装具 9.5%、自立訓練 9.2%を利用している人が1割前後を占めています。 今後の利用意向としては 日常生活用具 補装具 いずれも11.3% や 自立訓練 10.1% が上位に挙がっています。 他の障害に比べて、福祉サービスの利用状況・利用意向はともに低い傾向が見られます。? 2.事業者が提供しているサービス  居宅介護 が最多 サービス事業者に対して、提供しているサービスをたずねたところ、居宅介護 39.1% が最も多く、次いで 重度訪問介護 27.2%、移動支援 27.0% 等となっています。 3.事業者側からみた不足している社会資源  グループホーム が不足 相談支援事業者及び施設事業者に対して、それぞれの観点から不足している社会資源は何かたずねたところ、グループホーム 40.1% が最も多く回答され、次いで 障害者が入居できる住まい 33.6% が続いています。? 3の7 地域生活について 1.近所のかたとの関係  あいさつをする程度 以上の付き合いが、多くを占める 近所のかたとの関係をみると、知的障害者、精神障害者(通院)では ほとんど付き合いはない が最も多く、そのほかでは あいさつをする程度の人ならいる が多くなっています。 発達障害児・障害者でも ほとんど付き合いはない の割合は3割台と、他に比べ高くなっています。 2.自宅や地域で生活するために必要なこと  仕事、医療機関 が上位 自宅や地域で生活するために必要なことをみると、全体では 仕事があること や 主治医や 医療機関が近くにあること などが上位にあげられていますが、このほか知的障害者では 短期入所など緊急時に宿泊できるところがあること、精神障害者(入院)では 訪問看護、 家族や親戚などの身内の割合が高くなっています。? 3の8 障害者に対する差別について 1.差別等を受けた経験  障害児、発達障害児・障害者では、半数程度が経験あり 障害があるために差別を受けたり、嫌な思いをした経験がある人は、身体障害者では2割弱 17.8%、知的障害者では3割 30.7%、精神障害者(通院)では2割強 25.8%、難病患者では1割強 15.6% ですが、身体・知的障害児 49.9%、発達障害児・障害者 45.6% では半数近くを占めています。 前回調査結果との比較では、差別等を受けた経験は、今回いずれの障害でも割合は低くなっています。? 2.差別を受けた内容  近所の人達の対応 役所の窓口 等が上位 差別を受けた内容では、すべての障害に共通して 近所の人達の対応で不愉快な思いをした や 役所の窓口に行ったとき、職員の対応で不愉快な思いをした が上位5位以内にあがっています。 3.障害者の人権に関して問題があること 障害者に対する理解を深める機会が少ないこと 等が上位 障害者の人権に関して問題があると思うことでは、すべての障害に共通して 人々の障害者に対する理解を深める機会が少ないこと や 差別的な言動を受けること 等が上位5位以内にあがっています。 身体障害者と難病患者では 道路の段差や建物の階段など外出先での不便が多いこと が上位にあげられています。 発達障害者では 発達障害の特性から生じる困難さに対し、配慮がなされないこと 60.5% の割合が6割を占め、第1位となっています。 このほか 働ける場所や能力を発揮する機会が少ないこと でも、すべての障害で上位5位以内に入っています。? 3の9 障害福祉全般について 1.災害時に頼れる人  同居の家族が最も多い 災害時に頼れる人をみると、いずれの障害でも 同居の家族 が最も高くなっています。中でも、身体・知的障害児、発達障害児・障害者など低年齢層の割合が高い障害では、8割と高い割合を占めています。? 2.障害者福祉施策として国や県、市に力をいれてほしいこと 医療 所得保障 等が上位 身体障害者、知的障害者、精神障害者(通院)、難病患者では 障害者に配慮した保健、医療体制及び医療費公費負担制度の充実、年金など、所得保障の充実 が共通して上位1位・2位にあがっています。 3.障害者支援として地域社会や企業等に望むこと 障害に対する理解を深める 企業での積極的な雇用 等が上位 障害者支援として地域社会や企業等に望むことをみると、身体障害者では 公共交通機関や建物等を障害者が利用しやすいようにつくる、それ以外では 障害に対する理解を深める がそれぞれ第1位となっています。 全ての障害に共通して 障害に対する理解を深める や 企業で障害者を積極的に雇用する、公共交通機関や建物等を障害者が利用しやすいようにつくる、障害者等を支える地域活動やボランティア活動を活発にする が上位5位以内となっています。 精神障害者(通院)では 一般企業で働ける 働き続けるための支援 が第2位にあがっています。? 4.福岡市の暮らしやすさ  障害のある人が 暮らしやすい と感じる割合が高い 福岡市は、障害のある人が暮らしやすいまちだと感じるか については、発達障害児・障害者のみ 感じていない 35.0% の割合が高くなっていますが、このほかではいずれも 感じている の割合が、感じていない を上回っています。 5.今後の障害者施策について(親なき後への取組み) 賛成意見の一方で、依然不安を感じる人も多い 福岡市保健福祉総合計画においては、障害の重度化、高齢化や 親なき後 の生活の安心を見据え、地域生活拠点の整備や、24時間対応の相談窓口の設置など、総合的な支援を検討していくこととしています。 この取り組みについて、自由に意見を記入して頂いたところ、取り組みに賛成との意見も多く頂き、中でも相談体制の充実に関する意見が多くみられました。 一方で、検討だけでなく具体的な取り組みを進めてほしい、内容がよくわからないといった意見もみられ、今後の取り組みや、その周知の必要性など、今後の課題となる内容も見受けられました。 障害別にみると、若年層の多い知的障害者や、身体・知的障害児などでは、親なき後 の不安に関する内容もみられました。 事業所からの意見では、具体的な取り組みの推進に向けて、地域や福祉事業所との連携や、人材の確保、多機能型の支援拠点の必要性、またグループホームや入所施設の必要性など、サービスを提供する側の視点から、様々な意見を頂きました。