資料1 福岡市地域生活支援拠点等整備方針に関する提言(案) 平成 29年3月 福岡市障がい者等地域生活支援協議会 地域生活支援拠点等整備検討部会 目 次 1 はじめに 2 福岡市における地域生活支援拠点等整備の基本的考え方 3 地域生活支援拠点等の整備手法 (1) 地域生活支援拠点等に必要な居住支援のための5つの機能の確保方法 (2) 「相談」「地域の体制づくり」 (3) 「緊急時の受け入れ・対応」 (4) 「体験の機会・場」 (5) 「専門性」 4 地域生活支援拠点等の整備にかかる課題と対応策 5 地域生活支援拠点等の整備状況の評価等 6 まとめ <検討体制> 地域生活支援拠点等整備検討部会委員名簿 部会検討状況 <資料> 障害者総合支援法第 87条に基づく基本指針(抜粋) 福岡市保健福祉総合計画(平成 28年6月概要版抜粋) 第4期福岡市障がい福祉計画 福岡市における地域生活支援拠点等整備のイメージ 1 はじめに 平成26 年5月に改定された,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)第87 条に基づく国の基本指針において,地域生活支援の機能をさらに強化するため,各地域内で「地域生活支援拠点等」の整備を図るよう規定され,平成29 年度末までに各市町村又は各圏域に少なくとも1つの拠点等を整備することを障害福祉計画の成果目標として設定された。 国においては,地域生活支援拠点等の整備については,居住支援のための機能,具体的には,「相談」「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」「専門性」「地域の体制づくり」の5つの機能を確保することが必要で,その手法として,「多機能拠点整備型」や「面的整備型」などのイメージが示されている。 福岡市でも,平成27 年3月に策定した『第4期福岡市障がい福祉計画』において,平成29 年度末までに1か所,地域生活支援拠点等を整備することを目標値として設定しており,また,平成28 年6月に策定した『福岡市保健福祉総合計画』においても,障がい者が地域で安心して生活が継続できるよう,「相談」「体験の機会・場の確保」「緊急時の受け入れ・対応」「地域の支援体制づくり」など,総合的な支援を検討することとしている。 地域生活支援拠点等の整備にあたっては,国の基本指針において,地域の状況に応じ,自立支援協議会の意見等も聞きながら5つの機能の確保について検討するよう求められているため,福岡市では,福岡市障がい者等地域生活支援協議会(以下「協議会」という。)の専門部会として「地域生活支援拠点等整備検討部会」を設置し,地域生活支援拠点等の整備推進について検討を行うこととした。 ※ 「地域生活支援拠点等」とは,居住支援のための機能,具体的には,「相談」「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」「専門性」「地域の体制づくり」の5つの機能を確保すること。 2 福岡市における地域生活支援拠点等整備の基本的考え方 国の基本指針において,地域生活支援の拠点等の整備に当たっては,地域での暮らしの安心感を担保し,親元からの自立を希望する者に対する支援等を進めるために,地域生活への移行,親元からの自立等に係る相談,一人暮らし,グループホームへの入居等の体験の機会及び場の提供,ショートステイの利便性・対応力の向上等による緊急時の受入対応体制の確保,人材の確保・養成・連携等による専門性の確保並びにサービス拠点の整備及びコーディネーターの配置等による地域の体制づくりを行う機能が求められており,今後,障がい者の高齢化・重度化や「親亡き後」を見据えて,これらの機能をさらに強化する必要があるとされている。 福岡市においては,超高齢社会を迎えるにあたり,「持続可能で生活の質の高いまち」を構築し,また,「10 年後の将来に向けたあるべき姿」を達成するため,今後の道筋を示す,「福岡市保健福祉総合計画」(計画期間:平成28 年度〜平成32 年度の5年間)を平成28 年6月に策定し,この計画において,障がいのある人が必要な支援を受けながら,自らの能力を最大限発揮し,地域や家庭でいきいきと生活することのできるまちづくりをめざして地域で安心して生活を続けるための総合的な支援を実施することとされている。 このため,福岡市の地域生活支援拠点等の整備にあたっては,障がい者の重度化,高齢化や「親なき後」の生活の安心も見据え,障がい者若しくは障がい児(以下「障がい者等」という。)の地域生活への移行や地域生活の継続を推進し,障がい者等が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるような支援を提供する仕組みを構築することが必要である。 また,障がい福祉事業を行う法人や事業所のみで障がい者の地域生活を支え続けることは困難なため,地域生活支援拠点等の整備にあたっては,緊急時の受け入れ・対応などの拠点等の機能を担う事業所と地域の障がい福祉サービス事業所や地域住民などが連携し,障がい者等の生活を地域全体で支える体制の整備を積極的に推進することにより,障がい者の居住支援の機能を強化することが必要である。 3 地域生活支援拠点等の整備手法 (1) 地域生活支援拠点等に必要な居住支援のための5つの機能の確保方法国においては,地域生活支援拠点等整備のイメージとして,5つの機能を1つの事業所で確保する「多機能拠点整備型」と地域における既存の事業所等が有機的に連携し,分担して機能を担う「面的整備型」が示されており,このイメージを参考に検した結果,福岡市における地域生活支援拠点等に必要な居住支援のための5つの機能の確保方法を次のとおり提言する。 「相談」「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」「専門性」「地域の体制づくり」の5つの居住支援のための機能を確保する体制を各区に整備。 <提言理由> ・これまで,福岡市においては協議会の区部会(以下「区部会」という。)を中心に関係機関との連携体制の構築などを行っている。 ・地域生活支援拠点等の整備にあたっては,障がい福祉関係者のみではなく,地域包括支援センターや医療機関,訪問看護事業者,さらには地域の住民などとの連携体制を構築し,より地域と密着し,地域全体で障がい者等の生活を支える地域福祉の基盤づくりが必要。 ・障がい者等の支援体制や社会資源の状況等,地域の実情を踏まえながら居住支援の機能を確保するため,区部会や平成29 年度設置予定の「区障がい者基幹相談支援センター」(以下「区基幹」という。)を中心として取り組む必要がある。 地域生活支援拠点等の整備は,極力機能を集約しつつ,充足できない機能をネットワークで補う,多機能拠点整備型と面的整備型を併用。 <提言理由> ・地域生活支援拠点等に必要な機能の連携や支援のための人員確保等効率的かつ柔軟な対応を可能とするため「多機能拠点整備型」での整備が望ましい。 ・単独の法人や事業所で5つの居住支援機能すべてを担う場合,法人や事業所従事者への負担が多大なものになることが想定される。 ・ 地域生活支援拠点等については,継続的・安定的に居住支援機能を確保することが必要。 ・特定の法人や事業所に過重な負担がかからないようにするとともに,地域全体で障がい者を支える仕組みづくりが必要。 (2) 「相談」「地域の体制づくり」 障がい者等や障がい児の保護者又は障がい者等の介護を行う者(以下「家族等」という。)からの生活全般に関する相談に対応し,必要な情報の提供や助言,障がい福祉サービスの利用支援,障がい者等の権利擁護のために必要な援助を行う「相談」の機能と,地域生活支援拠点等の機能を担う事業所の連携体制構築や地域の障がい祉サービス事業所,訪問看護等関係事業所とのネットワーク構築などを行う「地域の体制づくり」の機能の確保方法を次のとおり提言する。 「相談」「地域の体制づくり」の機能は区基幹が担う。 <提言理由> ・福岡市の相談支援体制見直しにより,平成29 年度から全障がい一元化,24 時間対応可能な相談窓口として福岡市の委託により区基幹が設置される予定。 ・指定特定・一般相談支援事業所では障がい者等からの様々な相談に幅広く対応しながら事業を安定的運営することは困難であるが,市の委託相談支援事業所である区基幹は安定的な運営が可能。 ・これまで区部会を中心に地域のサービス提供体制づくりなどに取り組んでおり,地域生活支援拠点等の機能を担う事業所の連携体制構築や地域の障がい福祉サービス事業所,訪問看護等関係事業所とのネットワークを構築する面的整備は,今後も,区部会を中心として行い「地域の体制づくり」を推進する必要がある。 ・区基幹が区部会の事務局業務を行うこととなるため,区部会の事務局となる区基幹が「地域の体制づくり」の機能を担うことが効率的。 「地域の体制づくり」は各区の面的整備の取り組みを一定程度標準化。 <提言理由> ・「地域の体制づくり」は各区の実情を踏まえながら推進する必要があるとともに,福岡市全体の居住支援機能の強化を図る必要がある。 ・区基幹が「地域の体制づくり」の一環として行うネットワークの構築など,地域生活支援拠点等整備における面的整備の取り組みは,一定程度標準化し,区によって居住支援機能の差異が生じないよう留意する必要がある。 ・「地域の体制づくり」におけるネットワークの構築は,緊急時の受け入れ・対応を行う事業所が満床となった場合などに,緊急時の受け入れ・対応の機能を補完することも視野にいれたネットワークが必要。 (3) 「緊急時の受け入れ・対応」 障がい者等が安心して地域生活を継続するためには,介護者の事故や疾病等の緊急時に障がい者等を一時的に受け入れて介護等を行う体制の整備が必要不可欠である。 既存の短期入所事業にも介護者の事故等緊急時に一時的に預かる機能はあるが,短期入所はほとんどが介護者のレスパイトなどを目的とした計画的な利用となっており既存の短期入所事業では緊急時の受け入れ対応は困難であるため,「緊急時の受け入れ・対応」の機能の確保方法を次のとおり提言する。 「緊急時の受け入れ・対応」は短期入所事業所で行い,常時受け入れ可能とする空床と支援者の確保及び受け入れ前後の支援調整を行うコーディネーターを確保。 <提言理由> ・既存の短期入所事業所では,空床があっても受け入れ事業所の支援者の配置が困難等の理由により,緊急時,当日に障がい者を受け入れるといった対応は困難な現状である。 ・計画的な短期入所利用と異なり,受け入れ事業所の体制整備や受け入れた後の生活の支援のコーディネート等が必要となるが,通常の短期入所事業所でコーディネートまで行うことは困難。 「重度身体障がい者(医療的ケア含む)」「強度行動障がい」「虐待・その他緊急対応」の受け入れ対象の類型別に市内に少なくとも1 つ以上整備 <提言理由> ・医療的ケアや強度行動障がいなど,障がい特性に応じた支援を必要とする障がい者等の地域生活の安心感を担保するためには,特性に応じた支援が可能な緊急時の受け入れ先の確保が必要。 ・受け入れ対象の類型別に市内に少なくとも1 つ以上整備し,利用状況等を踏まえて増設等を検討。 ・障がい特性に応じた支援の必要性や満床時の円滑な受け入れのため,「緊急時の受け入れ・対応」の機能を担う事業所間の連携体制も構築する必要がある。 「緊急時の受け入れ・対応」を行う事業所が満床となった場合に備え,面的整備で補完体制を構築 <提言理由> ・緊急時の受け入れ・対応は,障がい者等が地域生活を送る上でのセーフティネットであることから「緊急時の受け入れ・対応」を担う事業所の補完体制が必要。 ・通常の短期入所においても緊急時の受け入れは可能であり,地域の障がい福祉サービス事業所全体で,障がい者等の地域生活支援体制整備に取り組む姿勢を醸成。 なお,地域生活支援拠点等の整備における緊急時の受け入れの定義や緊急時の受け入れ・対応を担う事業所の共通の必須機能と,受け入れ対象別の必須機能は下図のとおりとする。 また,「強度行動障がい」「虐待・その他の緊急対応」を行う事業所は,支援が長期化した場合の対応も踏まえ,入所施設またはグループホームに短期入所を併設することを原則とする。 「緊急時の受け入れ・対応」機能を担う事業所に必要な機能 <緊急時の受け入れ>とは 介護者の急病等やむを得ない理由により、受け入れを行う日の前々日以降に受け入れ要請があった場合とし、受け入れ期間は最長で1週間とする。 共通機能(対象者に関わらず必要な機能) ・短期入所の空床確保 ・緊急対応用として2床/事業所確保 ・緊急対応コーディネーター配置 ・24時間対応 ・事業所内・外との受け入れ調整 ・退所後の支援 ・対象者事前登録の調整 ・地域生活支援拠点等事業所との連携 受け入れ対象別に必要な機能 @重度身体障がい者(医療的ケア含む) ・緊急対応コーディネーターは医療職 ・常勤の看護師を1名以上配置 ・医療的ケアは,たんの吸引,経管栄養等福祉型短期入所で対応可能なものに限る。 A強度行動障がい ・緊急対応コーディネーターは相談支援専門員 ・行動援護支給決定者(原則)を受け入れ ・常勤の強度行動障害支援者養成研修受講者を1名以上配置 ・入所施設またはグループホームに併設 B虐待・その他の緊急対応 ・緊急対応コーディネーターは相談支援専門員 ・@及びAの対象者以外を受け入れ ・入所施設またはグループホームに併設 ※ 上記の必須機能のほか,人員確保や事業所の安定的運営のため事業者の判断により,相談支援センターや日中活動系の事業所を併設し,事業所の安定的運営に努めることとする。 (4) 「体験の機会・場」 障がい者等が親元からの自立や病院・入所施設からの地域移行を希望する場合,グループホームや日中活動事業所等の体験利用等により自立後や地域移行後の支援体制を構築する必要がある。 しかし,福岡市内のグループホームはほぼ満床の状態が続いており,自立や地域移行を検討するために体験利用が可能な施設はほとんどないのが現状であるため,「体験の機会・場」の機能を確保する方法を次のとおり提言する。 面的整備における障がい福祉サービス事業所等とのネットワークにより「体験の機会・場」が提供できる体制を構築 <提言理由> ・体験利用のみに利用するグループホームの空室を常時確保することも考えられるが,グループホームの体験利用のニーズは見込がたたず,現状,空室があるグループホームも存在するため,既存事業所を活用。 ・面的整備における障がい福祉サービス事業所等とのネットワークにより,区基幹がグループホームや日中活動事業所の空き情報等を随時把握することで必要な時に利用者等へ情報提供することが可能。 ・グループホームの体験利用であれば,「緊急時の受け入れ・対応」において確保する短期入所の空床の一部を「体験の機会・場」として活用することも考えられる。 ・面的整備による空き情報の把握などで対応困難な場合,常時グループホームの空室を確保するなど「体験の機会・場」の提供体制の充実を検討。 (5) 「専門性」 障がい者等が地域生活を送る上でのセーフティネットとして地域生活支援拠点等が機能するためには,「相談」や「緊急時の受け入れ・対応」などを行う事業所の対応力の向上や人材の確保・養成・連携等による専門性の確保が必要となるため,その機能の確保方法について次のとおり提言する。 医療的ケアや強度行動障がいなど,専門的な支援スキルを有する人材の育成を行う事業所等を市内で1か所以上確保 <提言理由> ・行動障がいや医療的ケアが必要な障がい者への支援スキルを備えた人材の育成やコーディネーターの役割を担う人材の育成が必要。 ・重度身体障がい者等を在宅で支援するヘルパー等を短期入所先へ派遣す面的整備における障がい福祉サービス事業所等とのネットワークにより「体験の機会・場」が提供できる体制を構築医療的ケアや強度行動障がいなど,専門的な支援スキルを有する人材の育成を行う事業所等を市内で1か所以上確保る共同支援を実地研修の一環として位置付けることで地域生活支援拠点等の事業所の専門性の向上が図られる。 ・既存の研修や共同支援の実施状況,人材育成の質の担保なども踏まえ,市全体で1か所確保。 ・「緊急時の受け入れ・対応」を行う事業所の補完体制を整備する、緊急時に受け入れた後の生活の支援のコーディネート等を円滑に進める為、居宅介護や短期入所を行う地域の障がい福祉サービス事業所等関係機関の専門性の向上も必要。 4 地域生活支援拠点等の整備にかかる課題と対応策 前記「3 地域生活支援拠点等の整備手法」によって,福岡市の地域生活支援拠点等整備を具現化するにあたっては,新たな施設整備や人材の確保等が必要となるが,事業者が地域生活支援拠点等を安定的に運営するための課題が想定される。 地域生活支援拠点等の整備を具現化するための課題とその対応策を次のとおり提言する。 課題 「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」を担うグループホームや短期入所の施設整備に係る経費負担 対応策 地域生活支援拠点等の機能のための空室・空床確保を条件として社会福祉施設整備費補助金の優先的対象とする。 課題 緊急対応専門のコーディネーター配置に係る経費負担 対応策 緊急対応専門のコーディネーター配置経費の財政的支援を市が行う。 課題 「体験の機会・場」「緊急時の受け入れ・対応」の空室及び空床確保に伴う経費負担 対応策 空室を確保するための家賃補助や空室・空床分の人件費等運営経費の財政的支援を市が行う。 課題 グループホーム等で地域生活支援拠点等の機能を担う場合の,事業所の安定的運営のために必要な施設規模の確保 対応策 地域生活支援拠点等の機能を担うことを前提として整備するグループホームの定員等設備基準の緩和 5 地域生活支援拠点等の整備状況の評価等 (1) 整備状況の評価 地域生活支援拠点等の整備にあたっては,区基幹を中心として障がい福祉サービス事業所等のネットワーク構築などの面的整備を行うことが想定されるが,その取り組み内容及び進捗状況を区部会や協議会において定期的に評価を行い,福岡市全体の地域生活支援拠点等整備の推進及び居住支援機能の強化を図る必要がある。 また,整備状況の評価においては,障がい福祉サービス事業所や訪問介護事業所等の関係者とのネットワーク会議の開催のみではなく,ネットワークが緊急時の支援等において実効性のあるものとなっているかの評価を行う必要がある。 (2) 「緊急時の受け入れ・対応」の評価 「緊急時の受け入れ・対応」機能が地域生活支援拠点等整備の重要な核となるため,その機能を担う事業所について定期的に評価を行い,充実強化を図る必要がある。 「緊急時の受け入れ・対応」事業所の評価は,受け入れを行った実績だけでなく,受け入れには至らなかったが受け入れ要請を受けて対応した実績, 受け入れ態勢を準備するための利用者の事前登録の実績等を定期的に確認するなど,評価の方法を検討する必要がある。 また,受け入れた事例を共有し,実際の対応状況が適切であったかについての評価も行う必要がある。 (3) 専門性の担保の評価 地域生活支援拠点等については,高度な支援スキルが必要な障がい者等の支援を行うことも想定し,地域生活支援拠点等の機能を担う事業所の従事者については,支援スキルの向上や高度な支援スキルを有する人材の育成に努め,専門性を担保することが必要となる。 地域生活支援拠点等の「専門性」の機能を担う事業所の人材育成等の研修を始め,様々な機関が実施する支援スキルの向上等に資する研修の受講状況等を定期的に確認するなど,専門性の担保に関する事業所の取り組み状況の評価方法を検討する必要がある。 (4) 地域生活支援拠点等の充実の必要性の評価 地域生活支援拠点等は,福岡市の全ての障がい者の地域生活の安心を担保するものであるため,地域生活支援拠点等整備後の利用者ニーズの充足状況等を随時把握し,地域生活支援拠点等の充実の必要性について継続的に検討を行う必要がある。 6 まとめ 地域生活支援拠点等の整備は「親なき後」も見据え,障がい者が地域で安心して生活が継続できる支援体制を整備するために必要不可欠なものである。 福岡市においては,第4期障がい福祉計画において平成29 年度末までに1か所整備することを目標としているが,障がい者等の安心を担保するためには,地域と密着し,地域全体で障がい者を支える基盤づくりが必要となるため,最低限,各区に地域生活支援拠点等の体制を整備することが必要と考える。 また,地域生活支援拠点等は,その機能を安定的・継続的に運営する必要があるため,地域生活支援拠点等の機能を担う事業所の負担軽減や関係機関との連携体制の構築など,行政と障がい福祉サービス事業所等の関係者が協力して推進する必要がある。 特に,「親なき後」も見据えた支援体制の構築においては,障がい者等が安心して地域生活を継続できる居住の場がなければ,地域生活支援拠点等が機能したとしても,その後の支援に行き詰まることが想定され,地域生活支援拠点等の整備と併せて,障がい者の居住の場の充実を図る必要があり,行政にはグループホーム等の設置促進につながる施策の展開が期待される。 <検討体制> 地域生活支援拠点等整備検討部会委員 福岡市障がい者基幹相談支援センター所長<部会長>西村 大一 福岡市東区知的障がい者相談支援センター相談支援機能強化専門員 <副部会長>池田 顕吾  福岡市障がい者基幹相談支援センター相談支援専門員相談支援スーパーバイザー 松野 浩二  福岡市城南区知的障がい者相談支援センター相談支援専門員 田中 一弥  福岡市城南区精神障がい者相談支援センター相談支援専門員 佐藤 陽介 相談支援専門員 福岡市民間障がい施設協議会末原 浩之行動障がい部会長社会福祉法人のぞみの里 生活介護事業所そよぎ今宿 管理者 福岡市障がい者生活支援事業所連絡会溝口 伸之 株式会社きらきら 代表取締役社長 障がい者施設支援課 横山 昇福岡市保健福祉局障がい者部障がい者施設支援課 施設支援係長 障がい者在宅支援課 山田 隆行福岡市保健福祉局障がい者部障がい者在宅支援課 相談支援係長 臨時の部会委員 末松 忠弘社会福祉法人 明日へ向かって 主宰(福岡市障がい者等地域生活支援協議会福祉型短期入所部会部会長) 臨時の部会委員 石田 照年社会福祉法人 福岡市身体障害者福祉協会 事務局長 臨時の部会委員 森口 哲也社会福祉法人 福岡市社会福祉事業団障がい者行動支援センター かーむ所長 臨時の部会委員 江上 しのぶ福岡市立心身障がい福祉センター療育課 相談係長 事務局 福岡市障がい者在宅支援課 部会検討状況 開催日 協議内容 第1回 H28.5.23 ・部会長・副部会長選出 ・基本指針等における地域生活支援拠点等整備の位置づけ ・地域生活支援拠点等整備検討部会の検討事項等について ・地域生活支援拠点等整備方針提言骨子について 第2回 H28.6.2 ・部会委員の追加について ・地域生活支援拠点等整備方針提言骨子について 第3回 H28.6.9 ・地域生活支援拠点等整備方針提言骨子について 第4回 H28.6.16 ・地域生活支援拠点等整備方針提言骨子(案)のまとめ H28.6.24 平成28 年度第1 回地域生活支援協議会 ・整備方針提言骨子(案)検討状況報告 第5回 H28.7.14 ? ・福岡市障がい者等地域生活支援協議会での意見等について ・平成 29 年度の地域生活支援拠点等整備案について 第6回 H28.8.23 ・平成 29 年度の地域生活支援拠点等整備案について 第7回 H28.9.26 ・「緊急時の受け入れ・対応」機能を担う事業所に必要な機能について 第8回 H28.10.25 ・拠点等の整備に伴う面的整備について 第9回 H28.11.14 ・地域生活支援拠点等の整備方法について H28.11.29 平成28 年度第2回地域生活支援協議会 ・地域生活支援拠点等整備方針検討状況報告 第10 回 H28.12.20 ・地域生活支援拠点等の整備方法に対する協議会委員の意見について ・ 福岡市地域生活支援拠点等整備方針に関する提言について 第11 回 H29.2.13 ・地域生活支援拠点等整備方針に関する提言(案)検討 ・地域生活支援拠点等事運営方法検討 H29.3.29 平成28 年度第3回地域生活支援協議会 ・地域生活支援拠点等整備方針に関する提言(案)報告 <資料> 障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制の整備並びに自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本的な指針(抜粋) 【最終改正平成二十六年厚生労働省告示第二百三十一号】 第一 障害福祉サービス及び相談支援の提供体制の確保に関する基本的事項 一 基本的理念 3 入所等から地域生活への移行、地域生活の継続の支援、就労支援等の課題に対応したサービス提供体制の整備障害者等の自立支援の観点から、入所等(福祉施設への入所又は病院への入院をいう。以下同じ。)から地域生活への移行、地域生活の継続の支援、就労支援といった課題に対したサービス提供体制を整え、障害者等の生活を地域全体で支えるシステムを実現するため、地域生活支援の拠点づくり、NPO 等によるインフォーマルサービス(法律や制度に基づかない形で提供されるサービスをいう。)の提供等、地域の社会資源を最大限に活用し、提供体制の整備を進める。 特に、地域生活支援の拠点等の整備に当たっては、地域での暮らしの安心感を担保し、親元からの自立を希望する者に対する支援等を進めるために、地域生活への移行、親元からの自立等に係る相談、一人暮らし、グループホームへの入居等の体験の機会及び場の提供、ショートステイの利便性・対応力の向上等による緊急時の受入対応体制の確保、人材の確保・養成・連携等による専門性の確保並びにサービス拠点の整備及びコーディネーターの配置等による地域の体制づくりを行う機能が求められており、今後、障害者の高齢化・重度化や「親亡き後」を見据えて、これらの機能をさらに強化する必要がある。また、こうした拠点等の整備にあわせて相談支援を中心として、学校からの卒業、就職、親元からの自立等の生活環境が変化する節目を見据えて、中長期的視点に立った継続した支援を行う必要がある。 こうしたサービス提供体制の整備については、個別の状況に応じて、関係者や障害者本人が参画して行う議論を踏まえた上で、市町村及び都道府県が定める障害保健福祉圏域(以下「圏域」という。)ごとの整備の在り方を障害福祉計画に位置づけ、計画的に推進する。 二 障害福祉サービスの提供体制の確保に関する基本的考え方 障害福祉サービスの提供体制の確保に当たっては、一の障害福祉計画の基本的理念を踏まえ、次に掲げる点に配慮して、目標を設定し、計画的な整備を行う。 3 グループホーム等の充実及び地域生活支援拠点等の整備 地域における居住の場としてのグループホーム(法第五条第十五項に規定する共同生活援助を行う住居をいう。以下同じ。)の充実を図るとともに、地域移行支援(同条第十八項に規定する地域移行支援をいう。以下同じ。)及び地域定着支援(同条第十九項に規定する地域定着支援をいう。以下同じ。)、自立訓練事業等の推進により、入所等から地域生活への移行を進める。 また、必要な訪問系サービスや日中活動系サービスを保障することによって、障害者等の地域における生活の維持及び継続が図られるようにする。 さらに、一の3 に掲げる体制の整備による地域生活支援の機能をさらに強化するため、各地域内で、それらの機能を集約し、グループホーム又は障害者支援施設(同条第十一項に規定する障害者支援施設をいう。以下同じ。)に付加した拠点(以下「地域生活支援拠点」という。)の整備を図る。 なお、障害者支援施設を地域生活支援拠点とする際には、当該障害者支援施設については、小規模化等を進めるとともに、地域における関係機関との連携により、施設入所者の地域移行、地域との交流機会の確保、地域の障害者等に対する支援を行うことなど、地域に開かれたものとすることが必要である。 また、地域生活支援拠点の整備としてではなく、地域における複数の機関が分担して機能を担う体制(以下「面的な体制」という。)の整備を行う場合には、個々の機関が有機的な連携の下に障害者等に対する支援を確保していることが必要である。 第二 障害福祉サービス、相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援 事業の提供体制の確保に係る目標 障害者等の自立支援の観点から、地域生活移行や就労支援といった課題に対応するため、平成二十九年度を目標年度とする障害福祉計画において必要な障害福祉サービス、相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業(法第七十七条に規定する市町村の地域生活支援事業及び法第七十八条に規定する都道府県の地域生活支援事業をいう。以下同じ。)の提供体制の確保に係る目標として、次に掲げる事項に係る目標(以下「成果目標」という。)を設定することが適当である。 また、これらの成果目標を達成するため、活動指標(別表第一の上欄に掲げる事項ごとの成果目標を達成するために必要な量をいう。以下同じ。)を計画に見込むことが適当である。なお、市町村及び都道府県においては、成果目標及び活動指標に加えて、独自に目標及び指標を設定することができるものとする。 三 地域生活支援拠点等の整備 地域生活支援拠点等(地域生活支援拠点又は面的な体制をいう。以下同じ。)に ついて、平成二十九年度末までに各市町村又は各圏域に少なくとも一つを整備することを基本とする。 福岡市保健福祉総合計画(H2806 月概要版 抜粋) 各論の概要 障がい者分野 基本理念 障がいのある人が必要な支援を受けながら、自らの能力を最大限発揮し、地域家庭でいきいきと生活することができるまちづくりをめざして 基本目標1 地域で安心して生活するための支援の充実 障がいがある人もその家族も、地域で安心して生活し続けることができる支援の充実を図ります。 主な取り組み 地域での生活を継続するための支援 障がいの重度化、高齢化や「親なき後」の生活の安心も見据え、24時間の相談対応や緊急時の受け入れ・対応、地域の支援体制づくりなど、地域で安心して生活を続けるための総合的な支援を検討します。 基本目標2 就労支援・社会参加支援の充実 生きがいのある、充実した生活の実現をめざし、支援の充実を図ります。 主な取り組み 就労支援 民間の就労支援事業者、就労支援センターなどと連携して、障がいのある人の雇用に対する理解促進や、企業とのマッチング、一般就労後の定着の促進などの支援を行います。 交通支援 地下鉄料金助成や福祉乗車券などについて,外出支援の在り方を検討し,わかりやすく,使いやすい制度へ組み替えるなど,施策の再構築を図ります。 基本目標3 障がいに対する理解の促進 障がいのある人もない人も,互いに尊重し合う共生社会の実現をめざします。 主な取り組み 啓発・交流の推進 障がいのある人もない人も,共に交流する機会を提供するなど,様々な場面で障がいに関する市民の理解を促進するための取組みを進めます。 基本目標4 権利擁護の推進 障がいのある人の権利や尊厳を守るための施策を推進します。 主な取り組み 権利擁護・虐待防止 相談窓口の充実や,成年後見制度の利用促進,障がい者虐待の防止及び早期発見のための啓発活動,虐待再発防止のための支援を行います。 基本目標5 差別解消のための施策の推進 障害者差別解消法の趣旨を踏まえながら,差別解消の推進に取り組みます。 障がい者差別解消法では,障がいを理由とした不当な差別的取り扱いはもちろん,合理的配慮を提供しないことについても,差別に当たるとされています。 合理的配慮の例 筆談や読み上げ 主な取り組み 障害者差別解消法施行に伴う対応 福岡市の実情を踏まえ,障がいを理由とする差別の解消に向けて,障がいのある方をはじめ関係者の意見を聞きながら,差別の解消を目的とする条例の制定に取り組みます。 基本目標6 障がいのある子どもへの支援の充実 早期からの支援や,成長段階に応じた支援の充実を図ります。 主な取り組み 発達障がい児への支援 発達障がい者支援センターを中心に,自閉症などの発達障がいのある子どもとその家族に対し,乳幼児期から成人期までのライフステージに応じ,障がいの特性を踏まえた相談や一貫した支援を行います。 障がい福祉サービス等の数値目標及び見込量 1 本項目の内容と目的 本項目では,国が定める基本指針に即して,平成29年度の数値目標を設定します。また,数値目標及びこれまでの実績等を踏まえ,平成27年度から平成29年度までの3か年における障がい福祉サービスなどの見込量を定めて福岡市におけるサービス提供体制の計画的な整備を図ろうとするものです。 2 障がい福祉サービス等に関する数値目標 障がい者総合支援法の基本理念である @「全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重され」 A「相互に人格と個性を尊重しあいながら共生する社会を実現」するため,「地域生活への移行」及び「就労の支援」について,国が定める「基本指針」に基づき,「施設入所者の地域生活への移行」,「福祉施設から一般就労への移行等」等に関する平成29年度末における数値目標を定めます。 (1)施設入所者の地域生活への移行 @平成25年度末時点の施設入所者のうち,地域生活に移行する者の数 平成29年度末の目標値 155人 目標値設定に当たっての考え方 国指針を踏まえ,平成25年度末時点の福岡市の施設入所者(1288人)の12パーセントである155人を地域生活に移行する者の数として設定。 国指針(目標値設定に当たっての指針)平成29年度末における地域生活に移行する者の目標値を設定する。当該目標値の設定に当たっては,平成25年度末時点の施設入所者数の12パーセント以上が地域生活へ移行することとする。 第1期から第3期計画の実績 第1期(平成20年度末)目標値127人 実績115人 達成率90.6%  第2期(平成23年度末)目標値127人実績227人達成率178.7%  第3期(平成25年度末)目標値410人実績292人達成率71.2% (3)地域生活支援拠点などの整備 平成29年度末の目標値276人 目標値設定に当たっての考え方 国指針を踏まえ設定。 国指針(目標値設定に当たっての指針)地域生活を支援する機能の集約を行う拠点等を,各市町村又は各圏域に少なくとも1つを整備。 (4)福祉施設から一般就労への移行等 @就労移行支援事業所を通じて,平成29年度中に一般就労する者の数 平成29年度末の目標値276人 目標値設定に当たっての考え方 国指針及び過去の実績等を踏まえ,平成24年度の一般就労への移行実績(138人)の2倍である276人を就労移行支援事業所等を通じて一般就労するする者の数として設定。 国指針(目標値設定に当たっての指針)福祉施設の利用者のうち,就労移行支援事業等を通じて,平成29年度中に一般就労に移行する者の目標値を設定する。当該目標値の設定に当たっては,平成24年度の一般就労への移行実績の2倍以上とすることを基本とする。 第1期から第3期計画の実績 第1期(平成20年度末)目標値40人 実績42人 達成率105%  第2期(平成23年度末)目標値40人実績62人達成率155%  第3期(平成25年度末)目標値55人実績204人達成率370.9% 福岡市における地域生活支援拠点等整備のイメージ 相談・地域の体制づくりとして 各区に基幹相談センターを設置し障がい者の地域生活全般の24時間相談対応、サービス事業所などのネットワーク構築を行う 市は緊急時受入れのできる施設,体験の場となる施設,専門性の確保のため研修機関の確保をすすめ、それぞれが区基幹相談支援センターと連携する。