(参考資料1) 福岡市障がいを理由とする差別を解消するための条例検討会議 意見提出シート(第7回会議 平成29年3月1日(水)) 委員名  友廣 道雄 ※ 意見提出シートは、全文公表し事前配布を、お願いします。 1.条例原案全体に関しての見解 私は、障がい者の差別解消条例の意義は、障がいのある人たちが、ごく普通の市民生活を送ることは当たり前の権利であり、それが障がいを理由に故意に妨げられたり、出来る配慮をしないことが、心の問題ではなく、国際的にも国内にも法的な差別になり、新たに社会的ルールになったということを広く知らしめることにあると考えます。 従って、他のモラルマナー、風俗、河川管理等の条例と異なり、差別の問題や事案を制裁ではなく、行政、事業者、市民、当事者が一緒になって新たなルールの適用や解決のあり方を条例を通して作り上げながら、解消していく道筋をめざすべきです。 合理的配慮も含む障がいのある人に対する差別をしないことのルール性、差別等の概念の浸透が図られない限り、作る会が収集した1000件以上の事案の解消や今後発生するかもしれない差別の防止は難しいと考えます。 福岡市の原案は、条例の意義は、差別事案が生じたとき、指導、勧告、公表等行政 の介入により、差別状態の是正を行えることにあることにある。という観点に立っています。以下の構図により、行政による差別の是正、紛争解決の実効性を図るとことに重きを置きすぎて制裁色が強く、障がいのある人に対する差別(不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供)についての事業者、市民への浸透、啓発の意義が薄れていると考えます。 *紛争解決のためには、指導、制裁を行う必要がある。 *条例の実効性は、制裁的強制力を伴うことにある。 *制裁性を持たせるには義務規定が必要である。 *義務規定は制裁性があるので、違反状態になると何らかの介入、制裁をしなければならない。 *介入、制裁的行為を行う以上、何らかの明白で合理的な根拠が必要である。 *以上から、事業者、市民には義務規定的表現はできないか適当ではない。 *逆に、条例に違反した状態がある場合には審査し、何らかの介入を行い是正しなければならない。 制裁性の根拠を問うあまり、適用範囲の対象者が障害者差別解消法と同様の位置づけになり、事業者や市民に対し、合理的配慮も含む新たなルールの浸透、メッセージ性が希薄であり、法と異なる条例独自の意義が半減してしまい、差別解消法の啓発で十分ではないかとさえ考えてしまいます。 2.原案に対する意見 (1)何人も差別をしてはならない。(不当な取り扱い、合理的配慮の不提供も含む)   という表記が条例本文に明記されるべきです。   “障がいのある人に対し差別をしないこと”を全ての市民に共通のルールとして理解浸透を図るために、何人も障がい者に対する差別をしてはならない。規定し、不当な差別的取り扱い、合理的配慮をしないことも含め義務規定とすべきです。    条例の意義は、いかに事業者、市民に浸透しうるかです。マイノリティに対し、目を向ける市民が少なく障害者差別解消法がなかなか浸透しない中、理念的な意味合いにおいても明記する。その明確な、わかりやすい一線によるスタートができるかどうかによって、条例ができた後の効果が大きく左右されると考えます。   罰則はないが、虐待の防止、虐待者の支援も含む虐待防止法の成立により、社会的注意喚起や研修機会、マスコミの報道等により、闇に埋もれがちだった障がい者に対する虐待の防止が一定前進しました。義務規定の効果としての行政以外の対象者に対する適用のあり方は、罰則規定がそもそもないので、各論、解釈指針等で明示できると考えます。 (2)事業者の合理的配慮は義務規定とするべきです。 加重な負担ではない配慮を行わないことが、説明責任を課し手間や負担となり、営業の自由の妨げになる可能性がある。当事者との関係で非常に多くのバリエーションが生じ、指導、介入的根拠をもてない。違反性を問えない市民との非公平性等の理由から義務規定としえない。 上記の説明や発想は、そもそも、マイノリティの権利擁護を行うという視点を欠いており、またその説明の根拠に説得性は薄く、差別解消の趣旨に逆行していると感じます。 (3)差別審査会という表現はやめていただきたい。 障害者に対し差別を行った人を査問するイメージまで想起するのは私だけでしょうか?少数の委員により、差別事案か否かのみを取り扱う審査会はやめていた だきたい。新しい概念である合理的配慮の不提供も含む差別事案には、決まった答えや基準はなく、その認定や紛争解決に当たっては、専門家、当事者も入り、合意形成も含む相談事案に即して判例的に積み重ねていくべきあり、他の多くの条例のように調整委員会の設置が望ましいです。 (4)指導という表現はやめていただきたい。助言、あっせんで良いと考えます。また、調整、あっせん、指導の表現の具体的な内容を説明頂きたい。    差別の解消は、制裁、介入よりも話し合いや合意形成を基本になされるべきです。行政指導も、いきなり指導ではなく、当事者双方に解決案を提示する“あっせん”でよく、その後に明白で合理的理由による勧告、公表という道すじでよいのではないでしょうか。 (5)相談体制について    私は、相談活動とは、ソーシャルワークの原理に基づき、介入はせず、事実の確認、調整、必要な情報提供的な助言を行うことであると理解しています。    解決の道筋を提示する助言、あっせんについて、その申し立ての手伝いを相談員が行うとしても、助言、あっせんは行政行為として、相談活動とは峻別されるべきです。そうでないと当事者双方が安心して相談できません。