(参考資料5) 福岡市障がいを理由とする差別を解消するための条例検討会議 ご意見提出シート(第6回会議 平成29年1月31日(火)) 向井 公太 この意見提出シートについては、全文を公表し、事前配布をお願いします。 福岡市条例原案について   下記のとおり、意見を提出します。 1 前文・目的・理念・定義について  ・法の趣旨を条例の中で強調するなら、前文に障害施策の基本法である「障害者基本法」 を明記する必要がある。  ・条例原案においては、障害者差別の「実態」とのみ規定してあるが、実態を踏まえた 条例をつくるために、福岡市に障がい者差別禁止条例をつくる会(以下、つくる会と いう)の条例案に規定する様に規定する必要がある。(現実には、障がいのある人が、 障がいを理由として不利益な取扱いを受けているという実態がある。また、障がいのある人が、自己実現を求め、自分の望むような社会参加をしたいと願っても、それを困難にしている物理的な問題に加え、誤解や無理解、偏見に基づく排除など、様々な社会的障壁が存在している。 障がいのある人の多くがこのような不利益な取扱いや社会的障壁のために、自ら望む あり方で生きることを諦めざるを得ず、日常生活の様々な場面において家族等に依存 することを余儀なくされ、その家族等を失えばたちまち生活自体が困難になってしま う状況にある。)  ・第1条目的に、「自らの意思で社会のあらゆる分野における活動に参画」の後に、「政 策決定に関わる」旨の文言を規定する。市の資料では、「前文や第1条でその趣旨を規定しているとなっている」が、現在の条文では明確に読み取ることができない。  ・第2条3号を「何人も社会的障壁の除去のためには、合理的配慮を行う必要があるこ と。」とする。  ・第3条定義第1号「障がい」において、障がいの定義をつくる会の障がいの定義(障 害 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難治性疾患その他の心身の機能障がい及び社会的障壁によって、継続的又は断続的に日常生活又は社会的に相当な制限を受ける状態)に改める。 これにより、障害の中に社会的障壁を包含するとする障害者権利条約の考え方(障害者権利条約前文e:障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって)に立つとともに、障がい者の定義も整理できる(規定しなくてよい)。障がいは機能的障がいのみではなく、社会的障壁も合わさったものにより構成されている。 ・同第4号障がいを理由とする差別において、「又は合理的配慮をせず、若しくはするように努めないことをいう。」を「又は合理的配慮をしないことをいう。」とする。合理的配慮は一定の条件下では行うことを要しないが、基本的には行うべきことであることから、敢えて、「若しくはするように努めないことをいう。」と規定する必要はない。 2 「何人も」について   市条例原案第7条の前に、つくる会条例案第7条「何人も、障がいのある人に対して 障がいを理由とする差別をしてはならない。」を規定する。理念の中では、市条例案に おいても同様な趣旨が規定されているが、九州各県及び富山県の条例が「何人も差別 をしてはならない。」と規定していることも考えると、差別禁止の主体を広く規定する 内容の規定は必要であると思われる。 参考 富山県差別解消ガイドライン   「何人も」について 「県条例の方が差別禁止の主体を広く規定していることに留意が必要です。」 3 推進体制について   市条例原案においては、推進体制について政策提言機能がない等具体的な規定がなく、 結果的には現在の差別解消地域協議会と同じ内容の体制になることが想定されるので、 つくる会条例案第31条のように、設置根拠、組織定員、所掌事務等について具体的 に明確に規定する必要がある。 なお、市条例案でいう「福岡市障がい者差別解消推進会議」と密接に関係する相談 窓口体制及びこれ以降の差別事案の取扱いについては、身近に相談できる窓口がある こと(身近さ)」と「専門性のある相談員がいること(専門性)」の要件を満たすのも のとして市条例原案が提案されているが、専門性において福岡市基幹相談支援センタ ーがその体制や役割の点で、センター設置時には差別に関する取り扱いが考えられて いなかった点等でもわかるように差別という新しい事案に対して十分な専門性を有す るか非常に疑問である。 つくる会条例案第31条(福岡市障がい者差別解消推進会議の設置)  障がい及び障がいのある人に対する理解を深め、障がいのある人に対する差別に関 する紛争を未然に防止するとともに、差別のない福岡市づくりを進めるための取り 組みを行い、市長に対し施策を提言するため、福岡市障がい者差別解消推進会議(以 下、推進会議)という)を設置する。   2 推進会議は、委員20名以内をもって組織する。推進会議委員の任命等について は、別にこれを定める。   3 推進会議は、次に掲げる事務を行う。 (1) 障がいのある人に対する理解を広げ、差別をなくすための取り組みを決定し 実施するとともに、福岡市における施策に反映させるよう市長に対して提言すること。 (2) 差別相談事案の分析を通じて、個別的な対応では解決できない事案、個別的対応の中に共通する事項の検討、整理を行い、取り組みに反映させるとともに、福岡市における施策に反映させるよう市長に対して提言すること。 (3) 差別をなくしていくために必要な人材づくりとしての研修の企画・実施や合理的配慮の考え方の普及と改善内容等を深め取り組みに反映させるとともに、福岡市における施策に反映させるよう市長に対して提言すること。    4 推進会議の委員は、この条例に基づき職務上知り得た秘密を漏らしてはならな い。その職を退いた後も、同様とする。