(参考資料1) 差別をなくし障がいのある人もない人も共に生きる福岡市づくり条例 【前文】 すべての人は、障がいのあるなしにかかわらず、平等に、かけがえのない個人として尊重され、地域社会において、基本的人権を享有し、その人らしく豊かに生活する権利を有している。 しかしながら、現実には、障がいのある人が、障がいを理由として不利益な取扱を受けているという実態がある。また、障がいのある人が、自己実現を求め、自分の望むような社会参加をしたいと願っても、それを困難にしている物理的な問題に加え、誤解や無理解、偏見に基づく排除など、様々な社会的障壁が存在している。障がいのある人の多くが、このような不利益な取扱や社会的障壁のために、自ら望むあり方で生きることを諦めざるを得ず、日常生活の様々な場面において家族等に依存することを余儀なくされ、その家族等を失えばたちまち生活自体が困難になってしまう状況にある。また、障がいのある家族を遺しては死ねないという家族の悩みは非常に深刻かつ切実であり、いまだに無理心中という最悪の結果になってしまうケースもある。 国は、平成26年1月20日に障害者の権利に関する条約を批准し、その前提条件として、障害者基本法、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律等の国内法整備に取り組んで来た。しかし、障がいを理由とするいかなる種類の差別もない社会を実現するためには、まずは、私たちが暮らすこの福岡市において、市民の障がい及び障がいのある人に対する理解を促進し、障がいを理由とするあらゆる差別を解消するための取り組みを推進し、障がいのあるなしにかかわらず、誰もが、互いに基本的人権の主体として、人格と個性を尊重され、尊厳をもって安心してともに生活できる社会を実現することが必要である。かかる社会、すなわち、すべての人の個人の尊厳が尊重されるユニバーサル都市福岡をめざして、ここにこの条例を制定する。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は、障がいを理由とする差別の解消についての基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにし、障がい及び障がいのある人に対する市民の理解を深めるとともに、障がいを理由としたあらゆる差別を禁止し、社会的障壁の除去についての合理的配慮の提供をはじめとする障がいを理由とする差別の解消に関する施策を推進することにより、障がいのあるなしにかかわらず、すべての人が地域社会を構成する一員として自立した日常生活を営み、権利の主体として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加することができる環境を構築し、もって障がいのある人の権利を擁護し、障がいのある人とない人とがともに支えあい、活かしあうことができる地域社会を実現することを目的とする。 (基本理念) 第2条 本条例の基本理念は、以下のとおりである。 (1) 障がいのある人は、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する。 (2) 障がいのある人は、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参画する機会が保障される。 (3) 障がいのある人は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が保障され、地域社会において他の人々とともに暮らす権利を有する。 (4) 障がいのある人は、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段につての選択の機会が保障されるとともに、情報の取得または利用のための手段についての選択の機会が保障される。また、障がいのある人には、コミュニケーション、意思決定支援及びその選択の機会の保障の必要性がある。 (5) 障がいのある人とない人がともに交流し学び合い理解を深める必要があり、差別する側と差別される側に分け隔てられることのない社会を作る。 (6) 政策決定における当事者の参画を保障する。 (7) 障がいは、社会の態度及び環境による障壁との相互作用によるものであり、発展する概念であるということを認め、差別の解消にあたる。 (定義) 第3条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 障がい 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難治性疾患その他の心身の機能の障がい及び社会的障壁によって、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態。 (2) 社会的障壁 障がいのある人が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、法律、規則、慣行、慣習、観念その他一切のもの。 (3) 障がいを理由とする差別 不当な差別的取扱い又は、合理的配慮を行わないこと。 (4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なしに、障がい又は障がいに関連する事由を理由として、障がいのある人を区別、排除し、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件を付け、その他の障がいのある人に対して不利益となる取扱いをすること。 (5) 合理的配慮 障がいのある人が社会的障壁の除去を必要としている場合において、当該障がいのある人が障がいのない人と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施のための負担が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重なものとならない程度で、当該障がいのある人の意向を尊重しながら、その性別、年齢及び障がいの状態に応じ、必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うこと。 (6) 自立 第三者の支えを必要とするか否かにかかわらず、自らの人生及び生活を自らの意思で選択できること。 (7) 行政機関等 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第2条第3号に規定する行政機関等(市を除く。)。 (8) 事業者 市内において事業活動を行うすべての者(ただし、市及び行政機関等を除く。)。 (9) 市民 市内に居住し又は市内に通勤し若しくは通学する者。 (市の責務) 第4条 市は、基本理念にのっとり、障がいに関する理解を深め、障がいを理由とする差別の解消等を推進するため、既存の施策の見直しを含む総合的かつ計画的な施策を策定し、実施するものとする。施策の策定にあたってはあらかじめ障がいのある人その他の関係者の意見を反映させるための必要な措置を講じなければならない。 2 市は、合理的配慮の提供のあり方について調査及び研究を行い、率先して合理的配慮の提供を行うとともに、市民、事業者及び行政機関等が合理的配慮の提供を行うための支援(第6条にいう財政上の措置を含む。)を行うものとする。 3 市は、障がいを理由とする差別の解消に関する相談を受け、迅速に、適切な調整、助言及びあっせん等を行うものとする。 4 市は、いわゆる親亡き後の問題を解決するために制度の創設など施策を講ずるものとする。 (市民および事業者の役割) 第5条 市民および事業者は、第2条の基本理念に対する理解を深め、障がいを理由とする差別の解消に寄与するよう努めなければならない。 (財政措置) 第6条 市は、障がいを理由とする差別の解消に関する施策を推進するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるものとする。 第2章 障がいを理由とする差別の禁止 (差別の禁止) 第7条 何人も、障がいのある人に対して、障がいを理由とする差別をしてはならない。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第8条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。 (1)(福祉サービスの提供における差別の禁止)     障がいのある人に福祉サービス(社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第1項に規定する社会福祉事業に係る福祉サービス又はこれに類する福祉サービスをいう。)を提供する場合における次に掲げる取扱いをすること。 ア 福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく、障がいのある人の意思に反して、障害者支援施設その他福祉サービスを行う施設への入所又は通所を強制すること。 イ 障がいのある人の生命又は身体の保護のためにやむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障がいを理由として、福祉サービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他の障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 (2)(医療の提供における差別の禁止)   医療を提供する場合において、障がいのある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 法令に特別の定めがある場合を除き、障がいのある人が希望しない入院その他の医療を受けることを強制し、又は自由な行動を制限すること。 イ 障がいのある人の生命又は身体の保護のためにやむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障がいを理由として、医療の提供を拒否し、若しくは制限し、又は当該提供に条件を付すること、その他の障がいのない人と異なる不利益な取扱いをすること。 (3)(教育における差別の禁止) 教育を行う場合において、障がいのある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。  ア 正当な理由なしに、障がいを理由として、障がいのない人に対しては付けない条件を付けることその他不利益な取扱いをすること。  イ 障がいのある人の年齢及び能力かつ特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするために必要と認められる適切な指導又は支援を講じないこと。  ウ 障がいのある人及びその保護者(学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条に規定する保護者又は就学に要する経費を負担する者をいう。)に対して、必要な情報提供及び説明を行わず、これらの者の意見を聴取せず若しくは意思を尊重せず、又は就学後における必要かつ合理的な配慮についてこれらの者と協議したうえで具体的検討を十分行わずに、就学する学校(同法第1条に規定する小学校、中学校、中等教育学校(前期課程に限る。)又は特別支援学校(小学部及び中学部に限る。)をいう。)を決定すること。 (4)(保育等における差別の禁止) 保育及び療育を行う場合において、障がいのある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 正当な理由なしに、障がいを理由として、障がいのない人に対しては付けない条件を付けること、その他不利益な取扱いをすること。 イ 障がいのある人の年齢及び能力かつ特性を踏まえた十分な保育及び療育が受けられるようにするために必要と認められる適切な指導又は支援を講じないこと。 (5)(労働及び雇用における差別の禁止)   事業主が、雇用等において、障がいのある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 労働者の募集又は採用を行うに当たり、従事させようとする業務を障がいのある人が適切に遂行することができないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障がいを理由として、募集若しくは採用を行わず、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 イ 障がいのある人を雇用する場合において、当該障がいのある人が合理的配慮を行ってもなおその業務を遂行することができない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障がいを理由として、賃金、労働時間、配置、昇進、教育訓練、福利厚生その他の労働条件について障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること又は解雇し若しくは退職を強制すること。 (6)(建築物の利用における差別の禁止)  不特定多数の者の利用に供される建築物の所有者、管理者又は占有者が、障がいのある人に対して、当該建築物の構造上やむを得ない場合その他の客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別な事情がある場合を除き、当該利用を拒否し、若しくは制限し、又は当該利用に条件を付すること、その他の障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 (7)(交通機関の利用における差別の禁止)  公共交通事業者等(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第2条第4号に規定する公共交通事業者等をいう。)が、障がいのある人に対して、その管理する旅客施設及び車両等の構造上やむを得ない場合その他の客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別な事情がある場合を除き、当該旅客施設及び車両等の利用に関し、障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 (8)(情報の提供及び意思表示の受領における差別の禁止)  障がいのある人に情報を提供し、又は障がいのある人から情報の提供を受ける場合において、障がいのある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 障がいのある人から情報の提供を求められた場合において、障がいのある人に対して、当該情報を提供することにより他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障がいを理由として、情報の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 イ 障がいのある人が意思を表示する場合において、障がいのある人が選択した意思表示の方法によってはその意思を確認することに著しい支障がある場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障がいを理由として、意思の表示を受けることを拒み、又はこれに条件を付し、その他の障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 (9)(商品及びサービスの提供における差別の禁止)  商品及びサービス(第1項の福祉サービスを除く。以下同じ。)の提供を行う者が、障がいのある人に対して、サービスの本質を著しく損なうこととなる場合その他の客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別な事情がある場合を除き、当該販売若しくは提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれらに条件を付すること、その他の障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 (10)(不動産取引における差別の禁止)  不動産の取引を行う場合において、建物等の構造上やむを得ないと認められる場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き、障がいを理由として、不動産の売買、賃貸、転貸若しくは賃借権の譲渡を拒否し、若しくは制限し、又はこれらに条件を付すること、その他の障がいがない人と異なる不利益な取扱いをすること。 (11)(その他) 前各号に掲げるもののほか、障がいのある人に対して、障がいを理由として不当な差別的取扱いをすること。 (社会的障壁の除去のための合理的な配慮) 第9条 何人も、次に掲げる場合において、障がいのある人の人格、人権及び意向を尊重し、 性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について、その実施に伴う負担が過重でないときは、必要かつ合理的な変更、調整をしなければならない。 (1)障がいのある人から社会的障壁の除去を必要としている旨意思の表明がある場合。 (2)障がいのある人が意思の表明を行うことが困難であって、その保護者、後見人その他の関係者及び支援する者が、その障がいのある人のために社会的障壁の除去を求めている場合。 (3)障がいのある人が社会的障壁の除去を必要としている場合であって、そのことを認識できる場合。 第3章 障がいのある人に対する差別をなくすための施策 第一節 相談体制   (相談) 第10条 何人も、市又は市が委託する相談機関に対し、次に掲げる事項について相談することができる。 (1) 差別に関すること。 (2) 障がいのある人に対する、正当な理由なしに、障がい等を理由として、区別し、排除し、又は制限すること、障がいのない人に対しては付けない条件を付けることその他不利益な取扱いに関すること。 (3) 障がいのある人に対する合理的配慮に関すること。 (4) 障がいのある人に対する障がいを理由とする言動であって、当該障がいのある人に不快の念を起こさせるものに関すること。 2 市又は市が委託する相談機関は、前項の規定による相談を受けた場合は、必要に応じて次に掲げる対応をとるものとする。なお、意思疎通を図ることが困難な障がいのある人からの相談にあたっては、その障がいの特性を理解し、障がいの特性に応じた必要な配慮を行うものとする。 (1) 相談をした者又は関係者(障がいのある人、その保護者、保護者以外の家族その他の当該障がいのある人を支援する者又は事業者をいう。)に対し、必要な説明をすること。 (2) 相談をした者又は関係者に対し、当該相談に関係する行政機関又は利用できる制度を紹介すること。 (3) 当該相談に関係する行政機関へ相談に係る事実を通知すること。 (4) 前項に規定する相談に係る関係者間の調整を行うこと。 (5) 前項に規定する相談に係る関係者に対して第16条に規定する助言又はあっせんの申立ての支援をすること。  (相談業務の委託) 第11条 市長は、障がいのある人に関する相談を受け、又は人権擁護を行う者その他第8条に掲げる分野に関し優れた識見を有する者のうち適当と認める者に委託して、前条第1項に規定する相談に係る業務を行わせることができる。 2 市長は、前項の委託を行うに当たっては、第23条に規定する福岡市障がい者差別相談調整委員会(以下、「調整委員会」という。)の意見を聴かなければならない。ただし、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第12条の3第3項に規定する身体障害者相談員又は知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第15条の2第3項に規定する知的障害者相談員である者に委託を行う場合は、この限りでない。 (地域相談員) 第12条 前条第1項に規定する業務を行う相談員(以下「地域相談員」という。)は、相談事案の関係者それぞれの立場を理解し、誠実にその業務を行わなければならない。 2 地域相談員は、この条例に基づき業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 (広域専門相談員) 第13条 市長は、次の各号に掲げる職務を適正かつ確実に行うことができると認められる者を各区ごとに、広域専門相談員として委嘱することができる。 (1) 地域相談員に対し、専門的な見地から業務遂行に必要な技術について指導及び助言を行うこと。 (2) 相談事例の調査及び研究に関する事。 (3) 第10条第2項各号に掲げる業務。 (4) 第17条第2項の規定による調査。 2 市長は、前項の委嘱を行うに当たっては、あらかじめ調整委員会の意見を聴かなければならない。 3 広域専門相談員は、相談事案の関係者それぞれの立場を理解し、誠実にその職務を行わなければならない。 4 広域専門相談員は、この条例に基づき職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 (指導及び助言) 第14条 地域相談員は、第10条第1項に関する相談について、必要に応じ、広域専門相談員の指導及び助言を求めることができる。 2 広域専門相談員は、前項の求めがあったときは、適切な指導及び助言を行うものとする。 (協力) 第15条 地域相談員以外の、障がいのある人に関する相談を受け、又は人権擁護を行う者は、市長、地域相談員及び広域専門相談員と連携し、この条例に基づく施策の実施に協力するよう努めるものとする。 第二節 相談事案の解決のための手続 (助言及びあっせんの申立て) 第16条 障がいのある人は、第10条第1項の相談を経ても事案が解決しない場合には、市長に対して、事案の解決のための助言又はあっせんの手続の申立てをすることができる。 2 障がいのある人の家族その他の関係者は、当該障がいのある人の権利利益を保護するため必要な場合に限り、市長に対して、事案の解決のための助言又はあっせんの手続の申立てをすることができる。 3 前2項の申立ては、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)その他の法令に基づく不服申立て又は苦情申立てをすることができる行政庁の処分又は職務執行については、することができない。 (事実の調査) 第17条 市長は、前条第1項又は第2項の申立てがあったときは、当該申立てに係る事実について調査を行うことができる。この場合において、調査の対象者は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。 2 市長は、前条第1項又は第2項の申立てについて必要があると認める場合には、広域専門相談員に必要な調査を行わせることができる。 3 関係行政機関の長は、第1項の規定により調査の協力を求められた場合において、当該調査に協力することが、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他公共の安全と秩序の維持(以下「公共の安全と秩序の維持」という。)に支障を及ぼすおそれがあることにつき相当の理由があると認めるときは、当該調査を拒否することができる。 4 関係行政機関の長は、第1項の規定による調査に対して、当該調査の対象となる事案に係る事実が存在しているか否かを答えるだけで、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるときは、当該事実の存否を明らかにしないで、当該調査を拒否することができる。 (助言及びあっせん) 第18条 市長は、第16条第1項又は第2項に規定する申立てがあったときは、調整委員会に対し、助言又はあっせんを行うことの適否について審理を求めるものとする。 2 調整委員会は、前項の助言又はあっせんのために必要があると認めるときは、当該助言又はあっせんに係る障がいのある人、事業者その他の関係者に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。 3 関係行政機関の長は、前項に規定する出席による説明若しくは意見の陳述又は資料の提出(以下「説明等」という。)を求められた場合において、当該説明等に応じることが、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることにつき相当の理由があると認めるときは、当該説明等を拒否することができる。 4 関係行政機関の長は、説明等の求めに対して、当該事案について事実が存在しているか否かを答えるだけで、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるときは、当該事実の存否を明らかにしないで、当該説明等の求めを拒否することができる。 (勧告) 第19条 調整委員会は、関係者が助言案又はあっせん案を受諾しない場合、市長に対して、当該関係者に対する当該助言案又は当該あっせん案の受諾の勧告を行うよう求めることができる。 2 市長は、前項の求めがあった場合において、必要があると認めるときは、勧告を行うものとする。 (公表) 第20条 市長は、前条の勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。 (意見の聴取) 第21条 市長は、第19条の勧告又は前条の公表をしようとする場合には、あらかじめ、期日、場所及び相談事案の内容を示して、関係者又はその代理人の出席を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、当該関係者又はその代理人が正当な理由なく意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わないで勧告又は公表することができる。 (助言又はあっせんの手続の終了) 第22条 助言又はあっせんの手続は、次に掲げる事由のいずれかが生じたときに、終了する。 (1) すべての関係者が助言案又はあっせん案を受諾したとき。 (2) その他助言又はあっせんを行う必要がなくなったとき。 2 調整委員会は、助言又はあっせんの手続が終了したときは、市長に対して、その結果を報告するものとする。 (福岡市障がい者差別相談調整委員会の設置等) 第23条 障がいのある人に対する差別を解決するため、福岡市障がい者差別相談調整委員会を置き、次に掲げる事務をつかさどる。 (1) 第18条第1項に基づき市長から審理を求められた事案について、助言又はあっせんを行うこと。 (2) 相談体制に関する重要事項を調査審議すること。 (3) 第11条第2項及び第13条第2項の規定により、市長に意見を述べること。 2 調整委員会は、委員20名以内をもって組織する。 3 調整委員会の委員は、市長が任命し、次に掲げる者で構成する。 (1) 医療、保健、福祉、教育及び雇用に関する業務を行う関係機関及び民間団体を代表する者 (2) 障がいのある人又はその家族その他の関係者が組織する団体を代表する者 (3) 学識経験者 (4) その他市長が必要と認める者 4 前3項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。 5 調整委員会の委員は、この条例に基づき職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 第4章 障がいを理由とする差別を解消するための施策の推進 (啓発活動及び交流の推進) 第24条 市は、障がいに関する市民、事業者及び行政機関等に対し、障がい理解に関する啓発その他の必要な取組みを行うものとする。 2 市は、障がいのある人に対する支援を適切に行うため、全ての職員に対し、障がい理解に対する研修等必要な取り組みを行うものとする。 3 市は、障がいのある人と障がいのない人との相互理解を深めるため、互いに交流することができる機会の提供を行うものとする。 4 市は、義務教育において、児童及び生徒が障がいに対する理解を深めるよう、障がいに関する教育を教育課程に位置付けるとともに、児童及び生徒に対して、当該教育を行うものとする。 (教育、保育、療育) 第25条 市は、障がいのある人への教育、保育及び療育の実施に当っては、障がいのある人の年齢及び能力かつ特性を踏まえた十分な教育、保育及び療育を受けられるように、関係機関との連携の下、必要な措置を講ずるものとする。 (就労支援) 第26条 市は、障がいのある人の就労及び雇用を促進するため、障がいのある人の就労に関する相談及び支援の充実を図るものとする。 2 市は、事業者に対し、障がいのある人の雇用及び障がいのある人が働きやすい環境の整備の必要性に関する啓発及びこれらに関する情報の提供を行うものとする。 (情報及び意思疎通の支援) 第27条 市は、障がいのある人が自ら選択する意思疎通の手段を利用できるよう、意思疎通の手段の普及啓発及び利用の拡大を支援するとともに、意思疎通に係る相談及び支援を行うものとする。 2 市及び事業者は、意思疎通を図ることが困難な障がいのある人に対し日常生活又は社会生活を営む上で必要なサービス及び情報を提供する場合並びに意思疎通を図ることが困難な障がいのある人から情報を受け取る場合は、その障がいの特性を理解し、障がいの特性に応じた必要な配慮を行うものとする。 (地域生活の支援) 第28条 市は、障がいのあるなしにかかわらず、市民が平等に地域社会の一員としてライフサイクルに応じた日常生活を営み、社会、経済、文化その他の活動が行えるよう、障がいのある人に対する支援を行うものとする。 2 市は、可能な限り障がいのある人が選択した地域で生活を営むことができるようにするため、障がいのある人が居住する場所を確保し、及び居住を継続するために必要な取組を行うものとする。 (防災対策) 第29条 市は、障がいのある人の防災対策に万全を期すものとする。災害時において障がいのある人の安全を確保するため、地域における災害時の支援体制の整備及び災害発生時における適切な支援活動が求められるよう必要な支援を行うものとする。 2 市は、災害発生時その他の緊急時に、障がいのある人に対し、その障がいの特性に応じた支援を行うとともに、意思疎通を図ることが困難な障がいのある人に対し、その障がいの特性に応じた情報提供を行うものとする。 (政策形成過程への参画の推進) 第30条 市は、市政に関する政策形成過程における障がいのある人の参画を推進するため、政策の企画、立案等に当たっては、障がいのある人に対する適切な情報提供や障がいのある人からの意見の聴取を行うよう努めるものとする。 第5章 障がい及び障がいのある人に対する理解を深めるための施策 (福岡市障がい者差別解消推進会議の設置) 第31条 障がい及び障がいのある人に対する理解を深め、障がいのある人に対する差別に関する紛争を未然に防止するとともに、差別のない福岡市づくりを進めるための取り組みを行い、市長に対し施策を提言するため、福岡市障がい者差別解消推進会議(以下、「推進会議」という)を設置する。 2 推進会議は、委員20名以内をもって組織する。推進会議委員の任命等については、別にこれを定める。 3 推進会議は、次に掲げる事務を行う。 (1) 障がいのある人に対する理解を広げ、差別をなくすための取り組みを決定し実施するとともに、福岡市における施策に反映させるよう市長に対して提言すること。 (2) 差別相談事案の分析を通じて、個別的な対応では解決できない事案、個別的対応の中に共通する事項の検討、整理を行い、取り組みに反映させるとともに、福岡市における施策に反映させるよう市長に対して提言すること。 (3) 差別をなくしていくために必要な人材づくりとしての研修の企画・実施や合理的配慮の考え方の普及と改善内容等を深め取組みに反映させるとともに、福岡市における施策に反映させるよう市長に対して提言すること。 4 推進会議の委員は、この条例に基づき職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 第6章 罰則 第32条 第12条第2項、第13条第4項、第23条第5項、第31条第4項の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 附則 (条例の見直し)  本条例は、施行3年後に見直すこととする。見直しに当たっては、障害者権利条約、障害者基本法等関係法令の視点に立ち、当事者参画のもとに見直すものとする。 以上