資料4−1 福岡市保健福祉総合計画 (案) 平成27年3月 福岡市 目次 第1編序論 第1部計画の策定にあたって 第1章計画策定の趣旨・・・2 第2章計画の策定根拠と計画期間・・・3 第3章計画の位置づけ・・・5 第2部計画策定の背景 第1章国と福岡市の動向・・・7 第2章市民の意識・・・23 第3章前計画の振り返り・・・34 第2編総論 第1部計画がめざすもの 第1章計画の基本理念・・・44 第2章10年後のあるべき姿(2025年を見据えた目標像)・・・45 第3章政策転換(新たな発想による政策の推進)・・・48 第2部政策転換による基本的方針 第1章施策の方向性・・・55 第2章担い手の役割・・・59 第3章主要な成果指標・・・61 第3編各論 第1部地域分野(地域福祉計画を含む) 第2部高齢者分野(老人福祉計画を含む) 第3部障がい者分野(障害者計画を含む) 第4部健康・医療分野 第4編計画の推進方策 第1部計画の進行管理と方法 第2部重点施策と成果指標一覧 第1編 序 論 第1編 序 論 序論では,計画を策定するにあたっての基本的な事項である根拠法や計画の位置づけ などのほか,策定の背景として,国の動向や福岡市の各種データ,市民意識調査の結果 等をまとめました。 第1部 計画の策定にあたって 第1部では,本計画を策定する際の前提となる課題認識や計画策定の根拠法のほ か,本計画の位置づけや他の計画との関係性などを記載しています。 第1章 計画策定の趣旨 全国的に少子高齢化の進展により既に人口減少社会に突入していますが,平 均寿命をみると,平成25年(2013年)で男性が80.21歳,女性が86.61 歳と,日本は世界有数の長寿国と言えます。 長寿の実現に大きく寄与した現在の社会保障制度ですが,世界に類を見ない 速度で進む少子高齢化など激変する社会経済情勢の変化にあわせて,国におい ても持続可能な社会保障制度へと見直しが進められてきました。 福岡市においては,明治22年(1889年)の市制施行から124年を経過し た平成25年(2013年)5月に,人口が150万人を突破しました。 福岡市には大学などの高等教育機関が多数存在することなどから,全国でも 若者(15歳〜29歳)率が高い都市と言えますが,近年では若者が減少して きており,また,一方で平成27年(2015年)には団塊の世代が65歳以上 を迎えました。 将来の人口推計によると,福岡市の人口は平成47年(2035年)に160.6 万人にまで達することが見込まれており,全国でも数少ない人口が増え続ける 都市ですが,同時に,高齢者人口が数万人単位で増加していくことも予測され ています。 年少人口や生産年齢人口の割合が減少し,高齢者人口の割合の増加が顕著な 全国と同様に,福岡市においても高齢化率※は平成27年(2015年)に21% を超えることが見込まれおり,これまでに経験したことのない超高齢社会の到 来が,目前に迫っています。 ※高齢化率:総人口に占める65歳以上の人口の割合のこと。 世界保健機構(WHO)によると,7%を超えると高齢化社会,14%を超えると高齢社会,21%を超えると超高齢社 会という。全国の高齢化率は25.1%(平成26年版高齢社会白書)で,日本は平成19年(2007年)に21.5%となっ てから,超高齢社会に突入している。 福岡市ではこれまで,平成10年(1998年)に福岡市福祉のまちづくり条例 を公布施行し,全国に先駆けて同条例に基づき保健・医療・福祉に関する施策 を網羅した「福岡市保健福祉総合計画(計画期間:平成12年度(2000年度) 〜22年度(2010年度))」を策定して施策を推進してきました。 その後,平成17年(2005年)3月には同計画の中間見直しを行い,平成 23年度(2011年度)からは改定した保健福祉総合計画(計画期間:平成23 年度(2011年度)〜27年度(2015年度))に基づき施策を推進してきたとこ ろです。 本計画では,超高齢社会を迎えるにあたり,「持続可能で生活の質の高いまち」 を構築し,また,「10年後の将来に向けたあるべき姿」を達成するため,今 後の道筋を示すものです。 第2章 計画の策定根拠と計画期間 (1)策定根拠 本計画は,福岡市福祉のまちづくり条例第10条に定める「福祉のまちづく りに関する基本となる計画」であり,前計画と同様に,福岡市における保健(健 康)・医療・福祉など様々な分野の各計画を横断的につなぐ基本理念と,取り 組む施策の方向性を明らかにする保健福祉行政のマスタープランとして策定 します。 また,一方で本計画は,高齢者や障がいのある人など,誰もが地域で安心し て生活していくための指針となる計画であり,本市の保健福祉施策の方向性を 総合的に示す計画です。 そのために,社会福祉法に定める市町村地域福祉計画や,老人福祉法に定める 市町村老人福祉計画,障害者基本法に定める市町村障害者計画といった,法定 計画を一体化して策定します。 参考条文 福岡市福祉のまちづくり条例 第10条 市長は,福祉のまちづくりに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,福祉 のまちづくりに関する基本となる計画(以下「基本計画」という。)を定めるものとする。 社会福祉法 第107条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計 画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、 住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意 見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努める ものとする。 老人福祉法 第20条の8 市町村は、老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業(以下「老人福祉事 業」という。)の供給体制の確保に関する計画(以下「市町村老人福祉計画」という。)を定めるもの とする。 障害者基本法 第11条 3 市町村は、障害者基本計画及び都道府県障害者計画を基本とするとともに、当該市町村におけ る障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画 (以下「市町村障害者計画」という。)を策定しなければならない。 (2)計画期間 本計画の計画期間は,平成28年度(2016年度)から平成32年度(2020 年度)までの5年間とします。 なお,本計画に基づき施策を推進していくにあたっては,社会経済情勢の 変化や関係法令の改正,社会保障制度改革などの動向にも対応する必要が あるため,計画期間は前計画(計画期間:平成23年度(2011年度)〜27 年度(2015年度))と同様に5年間としますが,計画期間中であっても,必 要に応じて見直しを行うこととします。 第3章 計画の位置づけ (1)他の計画との相関関係 平成24年(2012年)12月に,福岡市が長期的にめざす都市像を示した 「福岡市基本構想」及び,基本構想に掲げる都市像の実現に向けた方向性を 示した「第9次福岡市基本計画」が策定されました。本計画は,生活の質の 向上と都市の成長の好循環を創り出すという第9次福岡市基本計画の基本戦 略のうち,「生活の質の向上」をめざすものであり,平成25年(2013年) 度から28年(2016年)度までに重点的に取り組む事業を示す「政策推進プ ラン」及び行政運営の仕組みや手法を見直し財政健全化の取組みを示す「行 財政改革プラン」(いずれも平成25年(2013年)6月策定)を踏まえた計 画とします。 「第6期介護保険事業計画(平成27年(2015年)3月策定)」及び「第4 期障がい福祉計画(平成27年(2015年)3月策定)」をはじめ,「健康日本 21福岡市計画」や「福岡市バリアフリー基本計画」(いずれも平成25年度 (2013年度)策定)などの,保健福祉施策に関する分野別計画は,本計画にお ける基本理念や基本方針に基づき進めていくものです。 (2)ライフステージごとの関わり方 本計画は複数の計画を一体化しており,取り扱う分野が,地域分野,高齢 者分野,障がい分野,健康・医療分野と多岐にわたります。 市民の皆さんにとって,それぞれどの様な関わりがあるのか,世代ごとに 分けて模式化しました。 第2部 計画策定の背景 第2部では,計画策定の背景として,全国的な人口減少問題や社会保障制度改革な どの動向,福岡市の人口動態や保健福祉に関連する各種データ,福岡市が実施した市 民意識調査等の結果における特徴的な項目などから,現在の福岡市が置かれている状 況について概括しました。 また,前計画の進捗状況から,どのような成果が上がったのか,また,どのような施策を 市が進めてきたのかを振り返りました。 第1章 国と福岡市の動向 (1)国の動向 @平均寿命の延びと人口減少問題 日本人の平均寿命は,医療技術の進歩や,食生活,住環境などが向上した ことにより,男性が平成25年(2013年)に初めて80歳を超え80.21 歳となり,世界4位に,また,女性も過去最高の86.61歳となり,2年 連続で世界一となるなど,男女ともに過去最高を更新しました。 「平成26年度版 高齢社会白書」によると,日本の総人口は,平成25年 (2013年)10月1日現在 1億2,730万人と,平成23年(2011年) から3年連続減少しました。現在,総人口は長期の人口減少過程に入って おり,平成38年(2026年)に人口1億2,000万人を下回ったあとも減 少を続け,平成60年(2048年)には1億人を割って9,913万人となり, 平成72年(2060年)には8,674万人になると推測されています。 A財政状況と社会保障制度改革 我が国の社会保障は,1960年代の高度経済成長期以降に,右肩上がりの 経済成長と低失業率,正規雇用・終身雇用の男性労働者と専業主婦と子ど もという核家族モデル,充実した企業の福利厚生,住民同士のつながりが 強い地域社会を背景として,国民皆保険・皆年金を中心として形作られ, これまで国民生活を支えてきました。 しかし,急速な少子高齢化の進展,非正規雇用労働者の増大などの雇用基 盤の変化,家族形態・地域基盤の変化など,社会保障制度を支える環境が 変わってきています。 加えて医療技術の高度化も進む中,社会保障費は増大し,平成23年度 (2011年度)は107兆4,950億円と過去最高の水準となりました。こ うした変化に対応し,主として高齢者世代を給付の対象とする社会保障か ら,全ての世代が安心感と納得感の得られる「全世代型」の社会保障へ転 換することが求められています。 国においては,「社会保障の充実・安定化」と「財政健全化」を喫緊の課題 として,平成20年(2008年)から「社会保障国民会議」を皮切りに, 社会保障と税の一体改革が始まり,平成25年(2013年)12月5日,「社 会保障制度改革プログラム法」が成立しました。 社会保障制度の安定財源確保のために消費税率が平成26年(2014年)4 月から8%に引き上げられ,平成29年(2017年)4月からは10%に引 き上げられる予定となっており,消費税引き上げによる増収分は,社会保 障4経費(年金,医療,介護,子育て)に割り当てられるとされています。 B障がい者の権利擁護,差別解消に向けた取組み 平成18年(2006年)度に国連で採択された障害者の権利に関する条約 (略称:障害者権利条約)の締結に向けて,日本では,障害者基本法等の 改正や障害者総合支援法の成立など,条約の批准に向けた種々の国内法の 整備が行われました。 平成25年(2013年)6月には,障害者基本法第4条の差別禁止の基本原 則を具体化し,全ての国民が障がいの有無によって分け隔てられることな く,相互の人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け,障 害者差別解消法が成立しています(施行は平成28年4月)。この法律では, 行政機関や事業者等は社会的障壁の除去に必要な合理的配慮の提供を求め ています。福岡市では,今後「地方公共団体等職員対応要領」の策定や, 相談及び紛争の防止等のための体制整備など,必要な施策を展開していく こととしています。 平成26年(2014年)1月,日本は障害者権利条約を締結し,翌月,同条 約は我が国において効力を発生しましたので,福岡市も障がい者の権利の 実現と人権尊重に向けた取組み等をより一層強化していく必要があります。 C生活困窮者の自立の促進に向けた取り組み 平成25年(2013年)12月に生活困窮者自立支援法が成立し,平成27 年(2015年)4月に施行となりました。これにより,全国の市及び福祉事 務所を設置する町村において,生活保護に至る前の生活困窮者への支援が開 始されました。 福岡市においても,生活困窮者自立支援センター(仮)を設置し,生活困窮 者の自立に向けた支援を実施しています。 (2)福岡市の動向 @人口の推移 福岡市は平成25年(2013年)5月に人口150万人を突破しました。平 成26年(2014年)8月1日現在では約151.7万人で前計画作成時の平 成22年(2010年)10月1日時点の146.4万人から約5万人増加して います。 今後も人口増加が続き,平成47年(2035年)には160.6万人でピーク を迎えると予測されます。 A人口構造 福岡市の人口構造(平成26年7月時点)は,生産年齢人口(15〜64歳) の割合が66.8%で国の61.4%を上回っている一方,高齢者人口(65歳 以上)の割合は19.4%で国の25.7%を下回っており,全国平均と比較し て若い年齢構成となっています。 B高齢化率及び高齢者数の推移 1)高齢化率の上昇 全国的にも高齢化が進む中,福岡市も一貫して高齢化率は上昇し,平成 22年(2010年)の高齢化率は17.3%ですが,平成37年(2025年) には24.9%,平成52年(2040年)は31%,その後も高齢化は進み, 平成62年(2050年)には34.3%になると予測されています。 また,福岡市の特徴として仕事等で転入し定住する方も多く,地域と関 わりが少ないまま高齢期になってしまった方も増加していると考えられ ます。 2)高齢者人口の増加 65歳以上の高齢者人口は,平成22年(2010年)の25万4千人が, 平成37年(2025年)は39万6千人(1.6倍),平成52年(2040 年)では49万7千人(2.0倍)になります。福岡市は人口が増え続け ている全国でも数少ない都市ですが,高齢者人口の増加はそれを大きく 上回ります。 そのなかでも伸びが大きいのは75歳以上の後期高齢者人口で,平成22 年(2010年)は11万8千人ですが,団塊の世代がすべて75歳以上と なる平成37年(2025年)には22万8千人(1.9倍)となり,この数 は,平成26年(2014年)現在の,博多区や早良区の人口(それぞれ約 21万2〜3千人)を超えています。 Cひとり暮らし高齢者及び高齢者のみの世帯数の推移 後期高齢者の単身世帯は,平成22年(2010年)に3万1千世帯,平成 37年(2025年)には7万4千世帯(2.4倍),平成52年(2040年)に は11万1千世帯(3.6倍)と急激に増加します。 D要介護者数と認知症高齢者数の増加 高齢者人口の増加に伴い,介護が必要となる方も増えていきます。 現状のまま推移すると,平成25年(2013年)現在の要介護認定者数約5万 7千人が,平成37年(2025年)には約10万人(1.8倍)になると予測さ れます。 また,認知症高齢者の数も,平成25年(2013年)現在の約2万9千人が, 平成37年(2025年)には約5万5千人(1.9倍)になると予測されます。 女性の平均寿命は男性より長く,高齢者の人口は女性の方が多いことから,要介 護認定を受けている人のうち,要介護3〜5の認定者の男女比は,年齢が高くな るほど女性が多くなります。 E障がいのある人の推移 福岡市の障がい児・者数(身体障害者手帳,療育手帳または精神障害者保健 福祉手帳の所持者数,重複含む)は,平成25年(2013年)6月30日現 在(精神障害者保健福祉手帳所持者数は3月31日現在)で71,196人,人 口に対する出現率は4.9%であり,市民の約21人に1人が身体,知的又は 精神障がいがあるという状況です。 また,人口に占める身体・知的・精神障がい者の割合はいずれも増加傾向に あり,特に精神障がい者の割合は,平成22年度(2010年度)から平成25 年度(2013年度)の伸び率が33.4%と,高い伸び率を示しています。精神 障害者保健福祉手帳の所持者数は10,333人であり,平成12年度(2000 年度)と25年度(2013年度)を比較すると,5.4倍となっています。 発達障がいについては,身体・知的障がいのような手帳制度がないため,全 国的に見ても正確な人数が把握できていない状況ですが,福岡市発達障がい 者支援センターの相談状況をみると成人の相談が特に増加しています。 1)身体障がい児・者 平成25年(2013年)6月現在の身体障がい児・者数(身体障害者手帳所持者 数)は51,557人で,20歳代以下2,438人(身体障がい児・者数全体の4.7%) に対して,30歳以上は49,119人(同95.3%)となっています。 特に60歳代以上は,他の年代に比べて,増加人数も相対的な割合も伸びてき ています。 2)知的障がい児・者 知的障がい児・者数(療育手帳所持者数)は9,306人で,このうち,20歳代 以下が5,258人(知的障がい児・者数全体の56.5%),30歳以上が4,048 人(同43.5%)であり,身体障がいに比べて20歳代以下の占める割合が高 く,全体の6割弱を占めています。 3)精神障がい児・者 また,精神障がい児・者数(精神障害者保健福祉手帳所持者数)は10,333 人で,30歳代以上はほぼ同じ割合ですが,20歳代以下は他の年代の半分程 度になっています。 F生活保護世帯の推移 生活保護世帯数は,平成25年度(2013年度)32,014世帯で,保護率 28.93‰となっています。雇用情勢の悪化に伴い生活保護世帯は急増してお り,ここ数年,伸びは鈍化してきたものの,高齢化に伴い,依然増加傾向が 続いています。 G充実した医療環境 福岡市は,人口10万人当たりの医療施設数が政令市の中でも上位であり,暮 らしの身近なところに医療機関が存在している環境にあります。 H平均寿命と健康寿命の差 平成22年度(2010年度)の福岡市の平均寿命は,男性が79.84歳,女性が 86.71歳であり,日常生活に制限のない期間である健康寿命(男性が70.38 歳,女性が71.93歳)との差は,それぞれ9.46年,14.78年となっています。 また,大都市(20都市)と比較すると,福岡市の健康寿命は,男性は全国平 均(70.42歳)と同程度ですが,女性は全国平均(73.62歳)より1歳以上 短くなっています。 これらのことから,できるだけ健康寿命を延ばし,平均寿命との差を縮めてい くことが必要です。 I医療費の推移 福岡市国民健康保険の医療費は,平成24年度(2012年度)には,医療費 総額が約1,120億円,一人当たり医療費が306,738円となっており,年々増加しています。 福岡市の後期高齢者の医療費は,平成24年度(2012年度)には,医療 費総額が約1,528億円,一人あたり医療費が1,240,285円となっており, 年々増加しています。 J医療費に占める生活習慣病の割合 福岡市の医療費の内訳をみると,国民健康保険及び後期高齢者医療費の約4割 を生活習慣病関連が占めています。 悪性新生物(がん),心疾患,高血圧,糖尿病等の生活習慣病は,喫煙,食べ 過ぎや塩分の多い食事,運動不足など,長い間の生活習慣によってもたらされ るため,その多くは,生活習慣の改善により,その発症や重症化を回避することができます。 市民一人ひとりの行動によって予防が可能であり,できるだけ早い時期から改善に取り組むことが必要です。 K福岡市の予算の推移(保健福祉関係一般会計の推移) 福岡市の一般会計予算額が増減して推移する中,保健福祉費の予算額は年々増 加を続けており,一般会計の約4分の一を占めるに至っています。このことは, 保健福祉関係事業の規模拡大や内容の充実を図り,着実に市民サービスの向上 をめざしてきた結果であると言えます。 しかしながら,今後,扶助費や医療・介護保険繰出金等,経常的経費が増加傾 向にあるため,重要施策の推進や新たな課題に対応するために使える財源(政 策的経費に使える一般財源)は減少していく傾向にあります。 第2章 市民の意識 本計画を策定するに当たり,平成25年度(2013年度)から26年度(2014年 度)にかけて,市民等を対象とした各種調査を実施いたしました。その中から特徴的 な結果をまとめます。 (1) 市民意識調査(実施時期:平成26年(2014年)8月) 調査の目的 福岡市に在住する20歳以上の住民の保健福祉施策に関する意識やご意見など のデータを収集・分析し,本計画の策定に活かすことを目的に,調査を実施しました。 @ 福祉の満足度 前計画を策定するために実施した平成21年度(2009年度)の調査結果と, 今回の計画策定のために実施した平成26年度(2014年度)の調査結果を比較 すると,「満足」の割合が33.0%から43.5%に増加し,逆に「不満」の割合が 40.1%から28.5%に減少しています。 福祉の充実について満足している項目の上位には,各種健診や健康教育などの 「健康づくり(48.9%)」,「保健・福祉・医療に関する情報提供や案内(37.6%)」, 国民健康保険や生活保護などの「生活の安定確保(25.6%)」,救急医療や感染 症対策の充実といった「医療体制・健康危機管理体制(21.9%)」が挙がって います。 一方で,不満がある項目では,犬猫の飼い方マナー,殺処分減少などの「動物 愛護・適正飼育(24.7%)」が最も多く,続いて満足している項目にも挙がっ た国民健康保険や生活保護などの「生活の安定確保(23.8%)」,建物や道路等 の都市施設のバリアフリー化など「ユニバーサルなまちづくりの推進(20.8%)」 が上位となっています。 A 地域活動への参加実績と参加意向 問10 ≪すべての方におたずねします≫ 住民参加による地域での助け合い,支え合い活 動(※)に参加していますか。あてはまるものを1つだけ選び,番号に○をつけてください。 1 参加している 2 たまに参加している 3 ほとんど参加していない 4 参加していない 5 そのような活動があることを知らない ※『支え合い活動』とは,町内会などが実施する防犯,防災,見守り,環境美化など の活動,その他ボランティアのことです。 【全体傾向】 住民参加による地域での助け合い活動等への参加状況をみると,「参加している」(14.4%),「た まに参加している」(18.7%)を合わせた『参加している』人の割合は33.1%となっています。 また,「参加していない」(26.5%)と「ほとんど参加していない」(18.0%)を合わせた『参加していな い』人の割合は44.5%と,『参加していない』(44.5%)人が『参加している』(33.1%)人の割合を やや上回っています 問11 ≪すべての方におたずねします≫ 今後,住民参加による地域での助け合い, 支え合い活動が行われる場合,どのように関わりたいとお考えですか。あてはまる ものを1つだけ選び,番号に○をつけてください。 【全体傾向】 住民参加による地域での助け合い活動等への今後の参加意向をみると,「参加したい」(6.8%) と「機会があれば参加したい」(52.8%)を合わせた『参加意向のある』人の割合は59.6%で,「参 加したくない」(10.2%)と「どちらかといえば参加したくない」(25.4%)を合わせた『参加意向のな い』人の35.6%を大きく上回っています。 また,『参加意向のある』人の割合(59.6%)は,問10で実際に参加していると答えた人の割合 (33.1%)を大きく上回っています。 B 行政に望むこと 問15 ≪すべての方におたずねします≫ 今後,福岡市では,住みやすいまちをつくる ために,保健・医療・福祉の分野において,どのような施策に力を入れて取り組む べきだと思いますか。あてはまるものをすべて選び,番号に○をつけてください。 1 保健・福祉・医療に関する情報提供や案内の充実 2 身近なところでの相談窓口の充実 3 建物や道路など都市施設のバリアフリー化の推進 4 高齢者・障がい者になっても自宅で生活が続けられるサービスの充実 5 健康づくり活動や健康教育の充実 6 NPO・ボランティア活動等の活性化 7 災害時などに地域で助け合う体制づくり 8 その他(具体的に:                         ) 9 現状のままでよい 10 特にない 【全体傾向】 福岡市に力を入れて取り組んでほしい保健・医療・福祉分野の施策については,「4. 高齢者・障 がい者になっても自宅で生活が続けられるサービスの充実」の割合が56.5%で最も高く,次いで 「1. 保健・福祉・医療に関する情報提供や案内の充実」(50.8%),「2. 身近なところでの相談窓 口の充実」(49.1%),「7.災害時などに地域で助け合う体制づくり」(41.4%)などとなっています。 Cサービス水準と負担(税金)のバランス 問16 ≪すべての方におたずねします≫ 福岡市が提供する保健・医療・福祉サービスの 水準と,その財源として市民全体で負担する税金などのバランスについて,あな たのお考えに最も近いのは,次のどの意見ですか。あてはまるものを1つだけ選 び,番号に○をつけてください。 1 負担が増えても,サービスの維持・充実に努めるべきである 2 負担は現状維持のまま,サービスの内容を見直すべきである 3 負担が減るよう,サービスを縮小・廃止すべきである 4 その他(具体的に ) 【全体傾向】 福岡市が提供するサービスの水準と,市民が負担する税金のバランスについての考えは,「負担 は現状維持のまま,サービスの内容を見直すべきである」が63.4%と過半数を占めています。 以下「負担が増えても,サービスの維持・充実に努めるべきである」(21.0%),「負担が減るよう, サービスを縮小・廃止すべきである」(6.1%)の順になっています。 (2) 高齢者実態調査(実施時期:平成25年(2013年)11月) 調査の目的 福岡市に在住する高齢者などの保健福祉に関するニーズ・意識などを把握するこ とにより,「福岡市介護保険事業計画」の策定に必要な基礎的データを収集・分析 するとともに,福岡市の高齢者福祉施策の向上に資することを目的に,調査を実施 しました。 @健康状態 健康状態は,「健康で,普通に生活している」の46.5%、「何らかの病気や障がいはあるが, 日常生活は自立,外出もできる」の45.2%を合わせた9割の人が自立した生活を送っています。 高齢者のみの世帯では,「健康で、普通に生活している」人と,「何らかの病気や障がいはある が,日常生活は自立、外出もできる」人を合わせた『自立した生活をしている』人は90.7%と,前回調査の88.9%をやや上回っています。 A今後の介護意向 介護が必要になったときは,「在宅で,家族の介護と介護サービスを併せて介護を受けた い」,「施設等に入所したいが,サービスが充実すれば,在宅で生活したい」,「在宅で,介 護保険サービスを中心に介護を受けたい」,「在宅で,できるかぎり家族だけの介護を受け たい」を合わせた58.6%が『在宅で生活したい』との意向を持っています。 B行政への要望 高齢者施策の充実に向けて,行政に今後、特に力を入れてほしい高齢者に関する施策は, 「医療や介護の在宅サービスを充実させる施策」が42.6%で最も多く,次いで「在宅 生活困難者に対し,施設・居住系サービスを充実させる施策」が30.7%で続いており, 医療,介護に関するサービスの充実に関する内容が上位になっています。 (3) 障がい児・者等実態調査(実施時期:平成25年(2013年)9月) 調査の目的 この調査は,福岡市に居住する障がい児・者等の生活実態や意識,福祉施策に対 する要望等を把握するとともに,「福岡市障がい福祉計画」及び「福岡市障がい者 計画」の策定に活用することを目的に実施しました。 @ 地域から受けたい支援や交流の内容(複数回答 上位5項目) ほとんどの障がいで「定期的な声かけ(見守り)」、精神障がい者(通院)では「相談相手」が第1位 地域から受けたい支援や交流の内容は。精神以外の障がいでは「普段から定期的に声かけ などをする(見守る)」が第1位。精神障がい者(通院)では「相談相手になる」(26.5%) が第1位であり,「普段から定期的に声かけなどをする(見守る)」は第3位。 知的障がい者と身体・知的障がい児では「外出時に付き添う」が第3位に挙がっています。 A 障がい者福祉施策として国や県,市に力を入れてほしいこと(複数回答 上位5項目) 「医療」「所得保障」「就労支援」等が上位 身体障がい者,知的障がい者,精神障がい者(通院),難病患者では「障がい者に配慮し た保健,医療体制及び医療費公費負担制度の充実」,「年金など,所得保障の充実」が共通 して上位1・2位に挙がっています。 身体・知的障がい児では「特別支援教育の充実」(34.7%),発達障がい児・者では「就 労支援の充実」(44.7%)が第1位に挙がっています。 身体・知的障がい児,発達障がい児・者では「乳幼児から成人期までの支援を一貫して実 施できる仕組みづくり」が上位に入っています。 B 障がい者支援として地域社会や企業等に望むこと(複数回答 上位5項目) 「障がいに対する理解を深める」「企業での積極的な雇用」等が上位 障がい者支援として地域社会や企業等に望むことをみると,身体障がい者では「公共交通 機関や建物等を障がい者が利用しやすいようにつくる」,それ以外では「障がいに対する 理解を深める」がそれぞれ第1位となっています。 全ての障がいに共通して「障がいに対する理解を深める」や「企業で障がい者を積極的に 雇用する」。「公共交通機関や建物等を障がい者が利用しやすいようにつくる」。「障がい者 等を支える地域活動やボランティア活動を活発にする」が上位5位以内となっています。 精神障がい者(通院)では「一般企業で働ける(働き続ける)ための支援」が第2位に挙がっています。 第3章 前計画の振り返り 前計画に基づき,保健福祉施策にどのように取り組んできたのか,また,その取組状況を振り返ります。 (1)前計画に基づく施策推進の考え方 @前計画の基本理念 「福岡市福祉のまちづくり条例」に基づく前々計画の基本理念は,市民の 自立と連携を基にした普遍的なものでもあることから,前計画でもこれを継 承し,基本理念を次のとおりとしました。 市民が自立し,かつ相互に連携して支え合うという精神のもとに, 高齢者や障がいのある人をはじめすべての市民が一人の人間として尊重され, 住み慣れた家庭や地域で安心して暮らし続けることができる ハード・ソフト両面に調和のとれた健康福祉のまちづくり ハード面では,高齢者や障がいのある人をはじめ,すべての人が安全かつ快適に利用 できる都市施設の整備を,ソフト面では,市民福祉の向上や健康増進などにつながる取 組みを一体的に進めていくまちづくりのこと。 A前計画で定めた健康福祉のまちづくりの視点 視点1「自助」 生きがいのある健康な暮らし いきいきと健やかに暮らせる社会参加と健康づくりの推進 市民一人ひとりにとって利用しやすい保健福祉サービスの仕組みづくりを 進めるとともに,自主的・自発的な社会参加活動や継続的な健康づくりを 推進することにより,「生きがいのある健康な暮らし」の実現をめざします。 視点2「共助」 支え合いのある地域づくり 相互に支え合い,尊重し合える地域福祉の総合的な推進 地域での支え合い活動への関心を高め,活動に参画しようという意識を醸 成するため,学習・教育の機会を拡充し,また,活動の担い手となる人材 を育成するとともに,活動の活性化を図り,活動の輪を広げることにより, 「支え合いのある地域づくり」を推進します。 視点3「公助」 安全・安心な市民生活 いつまでも住み慣れた地域で安全・安心に暮らせる基盤整備の推進 各種社会保障制度をはじめとする保健福祉サービスや,医療体制,健康危機 管理体制などの暮らしを守るセーフティネットが必要なときに適切に利用で きるよう基盤整備を推進し,いつまでも住み慣れた地域で暮らせる, 「安全・安心な市民生活」の実現をめざします。 (2)前計画に基づく健康福祉のまちづくりの取組み @各種計画の指標と進捗状況 前計画では,各種施策を推進することで,計画の基本理念にどの程度近づいて いるかを継続して見守り,モニターしていくために,「自助」「共助」「公助」 の視点で5つの「モニタリング指標」を設定しました。 また,前計画は総合計画であるとともに地域福祉計画としての性格を併せ持つ ものであったため,「モニタリング指標」とは別に,地域分野の進捗状況を把 握するための「計画目標」を定めました。 本計画では,地域分野に加え,高齢者分野及び障がい分野に関する実施計画を 一体化するため,高齢者保健福祉計画(計画期間:平成24年度(2012年度)〜平 成26年度(2014年度))及び障がい保健福祉計画(計画期間:平成24年度(2012 年度)〜平成26年度(2014年度))に定めた主要な数値目標とその成果をまとめます。 Aモニタリング指標の推移と,計画策定のための市民意識調査結果 ここでは,5つのモニタリング指標の推移と併せて,本計画の策定にあたり,5年ぶりに実施した市民意識調査の結果を比較します。 市民意識調査等の結果から,「自助・共助・公助」それぞれに定めた市民の満足 度や考え方等を示すいずれの指標も,若干ではありますが向上してきており, 市民の「健康福祉のまちづくり」に関する意識は総じて向上していると言えます。 このことは,前計画に基づき取り組んできた保健・医療・福祉施策が,市民の ニーズに沿ったものであったと,一定の評価が得られているものと考えられます。 しかしながら,いずれの指標に関する伸びも,数値としては僅か数ポイント程 度であり,福岡市の取組みとして,改善と充実の余地はまだまだあると考えら れ,市民の満足度を高めていく取組みを続けていく必要があります。 B計画目標の進捗(達成)状況 取組内容 1 ふれあいネットワークを構築している自治会・町内会の数 【目標(平成27年度)】 2,040(90.0%) 24年度 1,648 (72.0%) 25年度 1,671 (72.5%) ふれあいネットワーク事業については,地域福祉ソーシャルワーカー・モデル事業等を実施 し,既存ネットワークの充実や新規ネットワークの立ち上げ支援を行ってきました。 2 ふれあいサロンの箇所数 【目標(平成27年度)】 330 24年度 316 25年度 327 ふれあいサロンについては,年々実施箇所は広がってきており,目標数値は達成しました。 H26.9月末において,348箇所で実施。 3 地域福祉ソーシャルワーカー・モデル事業の実施 25年度を以て終了 24年度 7校区 1地域 25年度 7校区 1地域 地域福祉ソーシャルワーカー1人が1〜2校区を3年間(城南区は2年間)担当し,地域に密接 に関わることで地域活動を推進し,校区の高齢者の見守り活動の充実や,様々な地域支援の 手法の開発などの成果を得ることができました。 4 要援護者情報の提供に関する覚書を締結し た自治協議会等の数(校区・地区) 【目標(平成27年度)】149校区・地区 24年度 107 25年度 116 要援護者情報の提供に関する覚書の締結については,福岡西方沖地震を契機に,平成18年 度から,災害時要援護者の安否確認等を実施いただける自治協議会と「覚書」を締結し,要援護 者情報の提供を行っています。 平成25年度末現在,116校区・地区(約78%)と覚書を締結しており,順次,提供校区・地区は拡大しています。 5 地域包括ケアシステムの構築 【目標(平成37年度)】 高齢者の要介護度が重度になっても,住み慣れた地域で生活を安心して続けること ができるよう,保健(予防),医療,介護,生活支援,住まいの5つのサービスが一体 的に切れ目なく提供される地域包括ケアシステムを構築する。 地域包括ケアシステムの構築については,検討会議を設置し,関係機関等の連携強化を進め るとともに,2つのモデル事業を実施しました。 また,地域包括支援センターを増設することにより,相談支援体制の充実強化を図りました。 ・地域包括ケアシステム検討会議」による検討 関係機関・団体からなる「地域包括ケアシステム検討会議」,「専門部会」を設置し,現状・課題の共有,相互の連携強化,具体的取組みの検討を実施。 【平成24年度設置】 ・「医療と介護の連携強化」と「地域で高齢者を支える仕組みづくり」の2つのモデル事業を 実施【平成25〜26年度】 医療,介護分野を中心とした多職種連携及び地域における支えあい助け合いの仕組みづくりを開始。 ・相談支援体制の充実 地域包括支援センターを39箇所から57箇所へ増設【平成27年度より】 C高齢者分野・障がい分野の計画の進捗状況 特別養護老人ホームの整備数 24年度 4,396人 25年度 4,797人 認知症高齢者グループホームの整備数 24年度 1,614人 25年度 1,687人 いきいきセンターふくおかの設置箇所数 24年度 39箇所 25年度 39箇所 施設入所者(平成17年10月1日時点)の地域生活への移行 施設入所者のうち,地域生活へ移行する者の数 24年度 261人 25年度 292人 平成17年10月1日時点と比較した施設入所者の減少数 24年度 95人 25年度 80人 入院中の精神障がい者の地域生活への移行 24年度 155人 (参考) 25年度 調整中 福祉施設から一般就労への移行 就労支援を目的とする通所施設から一般就労する者の数 24年度 138人 25年度 204人 就労支援を目的とする通所施設の利用者数 就労移行支援の利用者数 24年度 392人 25年度 460人 就労継続支援(A型)の利用者数 24年度 206人 25年度 409人 (4)「健康福祉のまち」の実現に向けて 福岡市では,福岡市福祉のまちづくり条例に掲げる健康福祉のまちづくりを進め るため,限られた財源の中でも,様々な課題を解決するための施策を実施してき ました。新規事業への着手や,既存事業の拡充を図ってきた結果,本市の保健福 祉費の規模は着実に増加を続け,一般会計総額に占める割合は約4分の1を占め るまでに至っています。 一方で,これまでに経験したことのない超高齢社会の到来が目前に迫っており, 地域においては,要介護認定者の増加をはじめ,単身高齢者や認知症高齢者の増 加,高齢化に伴う高齢障がい者の増加など,支援が必要になる方々が増えていく ことが予測されます。 また,高齢化率が高まる一方で,支え手となる生産年齢人口の割合は減少してい くことから,現役世代の負担が増加します。結果として世代間での公平感が失わ れるだけでなく,制度維持が難しくなるおそれさえ否定できません。 個々の課題を解決するために,施策の積み上げを繰り返す「従来どおりの計画」 では,持続可能な社会保障制度と健康福祉のまちの実現は困難な状況にあります。 そこで本計画では,各種統計の将来推計等から予測される福岡市の将来像を踏ま えた上で,まずは団塊の世代が75歳以上となる平成37年(2025年)を見据 え,10年後のあるべき姿を示すとともに,そこに至るまちづくりの方向性を示 し,推進施策や必要な取組みを明らかにしてまいります。 第2編 総論 第2編 総論 総論では,本計画でめざす基本理念と「10年後のあるべき姿」を示し,その実現のため に政策転換を実践することとし,政策転換によりどのような施策に重点的に取り組んでいく のか,その方向性を示します。 また,10年後のあるべき姿の実現に向けて,実際に地域における支え合い・助け合い 活動の担い手がどのような役割を果たすのかを整理するとともに,あるべき姿にどの程度 近づいているのか,本計画の成果を測る指標を設定します。 第1部 計画がめざすもの 第1部では,本計画でめざす基本理念と,基本理念を踏まえた近い将来の具体的な 目標像として,新たに「10年後のあるべき姿」を掲げます。また,その実現のための「政 策転換」の考え方について示します。 第1章 計画の基本理念 前計画に掲げた福岡市福祉のまちづくり条例に基づく基本理念は,今日でも普 遍性を持つものであるため,本計画でも継承いたします。 基本理念 「市民が自立し,かつ相互に連携して支え合うという精神のもとに,高齢者や障がいの ある人をはじめすべての市民が一人の人間として尊重され,住み慣れた家庭や地域 で安心して暮らし続けることができるハード・ソフト両面に調和のとれた健康福祉のまちづくり」 福岡市福祉のまちづくり条例 (基本理念) 第2条 福祉のまちづくりは,市民が自立し,及び相互に連携して支え合うという 精神のもとに,次の各号に掲げる社会の実現を目指すことを基本理念として行う ものとする。 (1) すべての市民が個人として尊重される社会 (2) すべての市民が生きがいをもてる社会 (3) すべての市民が地域での生活を保障される社会 (4) すべての市民が相互に支え合い連帯する社会 (5) すべての市民が安全かつ快適に生活できる社会 (6) すべての市民が福祉のまちづくりに参加する社会 (7) すべての市民が積極的に福祉の国際交流を行う社会 第2章 10年後のあるべき姿(2025年を見据えた目標像) (1)10年後にもたらされる状況 @客観的な事実に基づく予測 少子化の進展により現役世代の割合が減少する一方,支えられる側となる支援 が必要な高齢者が増加するため,医療機関や介護施設などの受け皿不足や,介護 人材などの働き手・支え手の供給が先細りし,地域社会を支える人材が不足します。 高齢化の進展により,平成25年(2013年)と平成37年(2025年)の将来 予測とを比較すると,介護が必要となる方が約1.8倍になり,認知症高齢者数も 約1.9倍に増加します。 医療や介護の需要が急速に拡大する結果,介護費・医療費が劇的に増嵩し,保険 料など現役世代の負担増加に直結するため,需給バランスが崩れ,持続可能な社 会保障システムの維持に課題が生じます。 このため,若い頃から(生活習慣病の予防をはじめとした)健康づくり・介護 予防に取り組むとともに,必要性が高まる生活支援サービスの担い手を増やすこ となどが重要になっています。 地域において見守りや支え合いを進めていく上では,支援が必要な高齢者や障 がい者に関する情報を共有しておくことが必要となりますが,個人情報保護法の 影響もあり,自治協議会等の各種団体の活動にも支障をきたすなど,個人情報の 取扱いは更に困難になっています。 さらに,加齢により身体機能が低下した結果,転倒・骨折により身体に障がい を負う高齢者が増加するなど,高齢化は,身体障がい者数にもその影響が見られ,60歳代以上の身体障がい者数は,身体障がい者全体の約8割を占めるに至っています。 また,知的障がい者や精神障がい者が増加するとともに,親の世代も含めた高齢化が進んでいます。 障がい分野では,平成23年(2011年)の障害者基本法の改正で社会モデルに 基づく障がい者の概念が盛り込まれるなど法整備が進んでいます。事業者による 「合理的配慮※」の提供などにより,社会のあらゆる場面で障がいのある人の社 会参加を支援する取組みが進み,福岡市政の柱の一つである「ユニバーサル都市・福岡」の取組みが一層強化されています。 合理的配慮:障がいのある方が日常生活や社会生活で受けるさまざまな制限のもたらす原因となる社会的障壁 を取り除くために,障がいのある方に対し,個別の状況に応じて行われる配慮(内閣府HP参照) 社会的障壁:障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度, 慣行,観念その他一切のものをいう。(障害者基本法第2条第2項) A将来的に見込まれる要素 ICT(情報通信技術:Information and Communications Technology)の利活用 により,データ分析に基づく施策の企画・実施・評価や,医療・介護関係者や 地域住民間で適切な情報共有が図られ,個々人の状態にあった質の高い医療・ 介護サービスが,切れ目なく効果的・効率的に提供されています。また,ICT端末の活用などにより,地域の支え合い活動が活発に行われています。また, 高齢者施設など,さまざまな場面でRT(ロボット技術:Robotics Technology)が活用されています。 一層の国際化の進展に伴い,福岡市には,高齢化が進むアジアの国々から,地 域包括ケアシステムをはじめ,医療・福祉・介護・健康分野の政策・専門知識・ 産業活動などの視察・学習にたくさんの人が訪れています。高齢化に関するさ まざまな国際会議が開催され,この分野に関する課題解決に先進的に取り組む 「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」として,アジア の中で存在感のある都市となっています。 (2)福岡市がめざす10年後のあるべき姿 誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには,健康であることが何より大切です。 若い頃からの健康づくりや高齢期を迎える前からの介護予防などによって,健 康寿命の延伸に努め,結果として医療費・介護費の伸びを抑えるとともに,支 え手となる人材の育成・確保や保険料の供給増加を図り,「制度の安定=暮らしの安定」を実現します。 様々な課題が見込まれる中,本計画を実行することによって福岡市がめざす3つの10年後のあるべき姿を,次に示します。 10年後のあるべき姿 @生涯現役社会 市民がそれぞれのライフステージに応じた健康づくりや生活習慣 の改善を実践し,社会全体で健康寿命の延伸に取り組み,高齢になっても 健康で意欲を持ちながら地域社会で活躍しています。 A「地域の力」・「民間の力」が引き出される社会 地域全体で地域課題を共有し,地域包括ケアシステムも活か しながら,地域の皆がその解決に向けて互いに助け合っていま す。民間企業などもそれぞれの特色を活かし,市民生活を支える 存在として積極的に社会貢献を行っています。 B福祉におけるアジアのモデルとなる社会 高齢者や障がいのある人をはじめ,支援が必要な誰もが安心し て地域で自立した暮らしを営める社会づくりを進め,今後,高齢化 を迎えるアジアの国々のモデルとなっています。 第3章 政策転換(新たな発想による政策の推進) 今後,福岡市においても,少子高齢化が一層進展し,支え手が不足する一方で 支援が必要な方々が増加する超高齢社会が確実に到来します。 福岡市では,これまで様々な課題に対して幅広くかつ十分に手当をすることを めざし,新たな事業を展開するとともに既存事業を拡充してきました。人口の 増加が今後も見込まれ,税収の伸びは期待できるものの,社会保障関係費等の 増加により,更に厳しい財政運営となってまいります。 このような中で事業の拡大を続けていくことは難しい状況にあるため,社会保 障制度を維持しつつ,将来を見据えて推進していく施策の在り方を再検討する ことが求められます。 そこで,10年後のあるべき姿とそこに辿り着くための道筋となる施策の方向 性を定め,市民にとって必要度の高い事業に資源を集中的に投下できるよう「政策転換」を行います。 政策転換に当たっては,社会経済情勢の変化や市民ニーズを踏まえ,施策の必 要性・有効性を検証すると同時に,市民や地域及び行政の役割分担を明確化していきます。 政策転換 超高齢社会の到来に備え, 1「10年後のあるべき姿」を明確化し, 2 あるべき姿の実現のために推進施策の方向性を定め, 3 限りある資源を最大限に活用するよう市民にとって必要度の高い事業へ 「選択と集中」を図ることにより, 「健康福祉のまちづくり」を進めます。 具体的な政策転換の考え方 @施策の進め方の転換 従来,様々な課題に対応した事業をきめ細やかに行政が立案し,その実施によって,課題を解決してきました。 しかしこれからは… 施策の対象者は拡大を続けており,限られた財源の中で優先順位を検討の上,実施事業の選択と集中を進めなければならない。 事業実施に当たっては,あるべき姿を定め,その達成の為に,より必要性が高い施策を充実します。 A高齢者の捉え方の転換 一般的に「高齢者」と言えば「65歳以上」のこと。 しかし実際は… 平均寿命到達まで約20年の期間がある。 身体能力が高く,まだまだ元気で社会に貢献したいと思う方が多い。 自身が高齢者と呼ばれることには違和感がある。 これからの「高齢者」とは,一律にではなく個人のちからに着目します。 65歳以上人口の増加により,社会における「特別な存在」とは言えない。 ・平成25年(2013年):4人に1人が高齢者(高齢化率:25.1%) ・平成37年(2025年):3.3人に1人が高齢者(高齢化率:30.3%) 平均寿命の延び ・昭和31年(1956年)男性:63.59歳 ・平成25年(2013年)男性:80.21歳  +16.62歳 ・昭和31年(1956年)女性:67.54歳 ・平成25年(2013年)女性:86.61歳 +19.08歳 「高齢」であることは特別なことではない! 高齢者の支え手が減少し,もはや現役世代だけでは支えられない。 65歳以上になってもできる範囲で「支えられる側」から「支える側」へ 「支える側」とは 一人ひとりができる範囲で地域活動や社会活動に参加するだけでなく,創業したり 就業したりと,様々な形で社会参加することです。 高齢者が少しでも支える側になると,「支え手」が多くなり, 支える側も支えられる側も, 安心感が高まります。 B障がい者の捉え方の転換 これまで障がいのある人は,社会において支援を受ける側として捉えられ, 障がい福祉施策は,「障がいのある人を支援することで社会に適合させていく」という考え方が主流であった。 これからは,障がいのある人も必要な支援を受けながら,主体性をもっ て生き生きと生活し,あらゆる分野の活動に参加する社会の一員である と捉えます。また,ユニバーサルデザインの思想に基づき,社会が変わ っていくことで,障がいのある人もない人も相互に人格と個性を尊重し合 いながら共生する社会の実現を目指します。 障害者基本法では,障がいのある方が各自の能力を最大限発揮できるよう,意思決定 支援や,コミュニケーション支援,相談支援,日常生活のための支援など,それぞれの 障がいの特性や生活実態等に応じて,必要な支援を行うことをうたっています。 福岡市福祉のまちづくり条例に基づく基本理念 「市民が自立し,かつ相互に連携して支え合うという精神のもとに, 高齢者や障がいのある人をはじめ,すべての市民が一人の人間 として尊重され,住み慣れた家庭や地域で安心して暮らし続ける ことができるハード・ソフト両面に調和のとれた健康福祉のまちづくり」 本計画がめざすところ H37(2025)あるべき姿の達成 H32(2020)計画期間の終了 H28(2016)計画スタート@10年後のあるべき姿を明確化する。 A計画期間に推進する施策の方向性を定める。 B必要度の高い施策に選択と集中を図る。 第2部 政策転換による基本的方針 第2部では,福岡市がめざす10年後のあるべき姿を実現する為に必要な「政策転換」 により,どのような施策に取り組むのか,その方向性を示すとともに,計画期間中に取り組 む代表的な施策を定めます。 また,健康福祉のまちづくりの担い手となる市民・地域・行政の役割をそれぞれ整理します。 総論の最後に,本計画の進捗状況を測るために設定する成果指標と,その指標設定の考え方を示します。 第1章 施策の方向性 (1)基本的な考え方 将来,確実に到来する「人口急減・超高齢社会」というこれまでに福岡市が経 験したことがない状況を克服して行く必要があります。 第9次福岡市基本計画に掲げる都市経営の基本戦略である,「都市の成長」を「生 活の質の向上」につなげ,その好循環を創り出すとともに,本計画の基本理念 である「誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくり」を実現してい くため,本計画で取り組む施策の方向性を,次のとおり定めます。 (2)3つの方向性 @ 自立の促進と支援(施策の方向性1) 市民一人ひとりが,社会を構成する一員として,自ら主体的に社会参加活動や健康 づくり活動に取り組めるよう,また,市民の健康づくりを支える民間活動が活性化 するよう,社会全体で支援に取り組みます。 A 地域で生活できる仕組みづくり(施策の方向性2) 地域での見守り活動の充実を図るなど,いつまでも誰もが自信と誇りを持って住み 慣れた地域で生活できる環境を整えるため,様々な形で住民同士が助け合い・支え 合い活動に参画できる仕組みづくりを進めます。 B 安全・安心のための社会環境整備(施策の方向性3) 高齢者や障がいのある人も,地域で誰もが当たり前に暮らせるように,ユニバーサ ルデザインの理念に基づき心のバリアフリーを推進するとともに,安全な施設や安 心して生活できる住環境などを整備するなど,ソフト・ハード両面にわたる社会の バリアフリー化を推進し,アクセシビリティ※の向上を図ります。 ※アクセシビリティ:施設・設備,サービス,情報,制度等の利用しやすさのこと。 (3)3つの方向性に基づく推進施策 施策を推進する方向性は,保健福祉行政全体を見通したうえで3つを定めた ものであり,それぞれの方向性は相互に関わり合う関係にあります。 また,方向性を定めて重点的に取り組む具体的な保健福祉施策は,全ての世 代を対象とする「地域分野」及び「健康・医療分野」,並びに対象者別の「高 齢者分野」及び「障がい者分野」との4分野に分けて,「第3篇 各論」で整理します。 3つの方向性に基づき取り組む各種施策は,それぞれの分野ごとに厳密に分 けられる性格のものばかりではなく,複数の分野に関わるものがあることか ら,ここでは,その中から代表的な施策と施策推進の考え方を整理します。 @社会参加活動の支援 誰もがいつまでも生きがいを持って活躍できるように,ボランティア活動や生 涯学習,就労支援,余暇活動などへの社会参加活動を促進するために支援していきます。 また,高齢者や障がいのある人の社会参加を促すため,外出や移動の支援を行います。 A健康づくり・介護予防 健康寿命の延伸には,日々の健康の維持増進や体力づくりだけでなく,職場や 医療機関,保健所等で実施する健(検)診の機会を積極的に活用するなど,若い 頃から市民一人ひとりが健康に高い関心を持ち,その実践に取り組むことが必要 です。このため,市民が自主的に取り組む健康づくりを支援します。 また,高齢者や障がいのある人等が,一日でも長く自立した生活が送れるよう, 自主的な健康管理やいつまでも要介護状態にならないような取組みを支援します。 B相談体制の充実と自立の支援 必要な人が必要な時に最適なサービスを受けることができるよう,身近な生活圏 域で,福祉サービスの利用に関する情報提供や相談体制の充実を図ります。 若い頃から高齢期の生活を想定し,自らの健康だけでなく,生活の自立,経済的 な自立などの自立度を高めていけるよう支援します。 また,「障がいがある人の自立」を,『障がいのある人が地域において必要な支 援を受けながら,自己選択と自己決定に基づき生活できる状態』ととらえ,障が いのある本人が適切に意思決定を行い,その意思を表明することができるよう, 相談の実施等による意思決定を支援するとともに,意思疎通のための手段を選択 する機会の提供を進めます。 C差別解消 社会的に弱い立場の方々に対する全ての差別が無くなるように,心のバリアフリーを進めます。 特に,障がいを理由とする差別は障がいのある人の自立や社会参加に深刻な悪影 響を与ます。そのため,企業,市民団体等の差別解消の活動を支援するとともに, 障がいに対する正しい理解を持ち,同じ地域に暮らす住民同士の相互理解を深め るために,様々な場面での広報・啓発活動に取り組んでいきます。 D権利擁護 すべての高齢者や障がいのある人が,基本的人権を持つ個人としての尊厳を保ち ながら,日常生活や社会生活を営むことができるよう,住み慣れた地域での自立 や社会参加の支援を推進するため,その人なりの意思決定を支援するとともに, 成年後見制度の利用促進,虐待への対応など権利擁護の取組みを進めます。 E地域単位の支え合い 高齢になっても障がいがあっても住み慣れた地域でつながり関わり合いが保て るよう,住民同士がお互いに見守りや支え合いができる仕組みを充実します。 F地域包括ケアシステムの構築 医療と介護の連携や,住まいの確保など,支援が必要な高齢者等を取り囲む様々 な分野からの一体的な支援により,誰もが住み慣れた地域で自立した生活を安 心して続けられる環境づくりを進めます。 G認知症対策 認知症高齢者等が住み慣れた地域で安心して尊厳を保ちながら生活できるよう, 認知症の早期の段階からの適切な診断と対応,認知症に関する正しい知識と理解に 基づく本人や家族への支援など,総合的かつ継続的な支援体制を整えます。 H障がい特性等に配慮した総合的な支援 性別,年齢,障がいの状態,生活の実態等に応じた施策を充実します。 また,障がいのある人が人生における全段階を通じて適切な支援が受けられるよ う,教育,福祉,医療,雇用等の各分野の有機的な連携の下,施策を総合的に展開 し,切れ目のない支援を行います。 I人材育成 それぞれの地域で活動を行うのは,行政であり地域の住民であり,あらゆる立場 の市民です。介護の現場などの人材確保が困難な場面でそれぞれが異なる役割をき ちんと果たし,誰もが誰かの役に立てるように,人材育成を行います。 J公共施設・公共交通機関の整備 道路や公園等の都市基盤施設や官公庁舎や学校等の公共施設を整備・改修をする 際のバリアフリー化推進をはじめ,ノンステップバスの導入促進等により,誰もが 安心して外出できる環境を整えます。 K住環境整備 住まいは安定した生活を実現する上での拠点です。高齢になっても障がいがあっ ても,住み慣れた地域で暮らせる住環境を整えます。 LICT(情報通信技術)の活用等 保健・福祉・医療等に関する情報を一元的に集約・管理する仕組みを構築し, 地域分析,事業分析等を行い,データに基づく施策展開を図ります。 また,医療や介護関係者等,多様な主体間の情報連携により,切れ目のない効 果的・効率的なサービスの提供や,地域での支え合い活動の負担軽減や活性化を 図ります。 さらに,介護現場やさまざまな場面でのロボットの導入促進を図ります。 M医療体制,健康危機管理体制の充実及び生活環境の向上 市民が安全安心な生活を送る上で必要な,救急医療体制の整備,医療安全対策な ど,市民が安心して医療が受けられる医療体制の充実強化を図ります。 また,結核,ウイルス性肝炎,エイズ・性感染症,風しんなど各種感染症対策を 講じるとともに,今後,発生が懸念される新型インフルエンザ等に備え,健康危機 管理体制の充実を図ります。 市民生活の基盤をなす食品衛生,環境衛生の確保,動物管理の推進などにより, 暮らしの衛生向上を図ります。 N持続可能な社会保障制度の維持 持続可能な社会保障制度となるよう国に対して要請していくとともに,国におい て進められる社会保障と税の一体改革による社会保障制度改革を踏まえ,受益と負 担の均衡がとれた制度を維持します。 第2章 担い手の役割 本計画に掲げる「10年後のあるべき姿」を実現するためには,行政だけでなく, 地域の住民はもちろん,事業者やボランティアなど地域社会を構成する多様な 主体が,相互に連携を図るとともに,それぞれ主体的に様々な取組みを実践し ていくことが必要です。 地域に暮らす誰もが,できる範囲で何らかの形で地域社会の中で支え合い,助 け合いに携わることで,支えられるだけでなく支え手としての役割を果たし, 支援が必要な高齢者も障がいのある人も,住み慣れた地域で暮らすことが当た り前の社会づくりを進めます。 (1)市民の役割 将来的に,誰もが支えられる側になる可能性は否定できません。できる限り 長く自立した生活を送ることができるよう,運動・食生活・休養など生活習慣 を改善するほか,定期的な健康診断やがん検診の受診など,自身の健康づくり を心掛けます。 また,元気に活動できる市民は,地域活動に参加したり就労したりするなど, ある場面では支援を受ける立場であっても,できる分野では支える側になるな ど,お互いに支え合い,助け合います。 (2)地域の役割 支援が必要な高齢者や障がいのある人などが安心して地域で暮らせるように, 住民に最も身近な自治組織である自治会・町内会をはじめ,校区を運営してい く住民自治組織である自治協議会や,地域福祉活動に取り組む校区社会福祉協 議会,地域住民からの相談に応じて必要な援助を行う民生委員・児童委員など が連携し,活動します。また,こども会,婦人会,老人会,PTA等の地域の任 意団体や,NPOやボランティアも見守り・支え合いに関わります。 また,地域において市民の健康づくりや要介護者,障がいのある人などを幅 広く支えていくため,地域社会を構成する一員として,企業や社会福祉法人等 の法人も,それぞれの専門性を活かして社会的責任を果たします。 なかでも,地域での様々な活動の多くを実際に担っている高齢者や女性の働 きを補うため,民間企業においても企業活動を行うだけでなく,社員が企業か らの支援を受けながら地域活動に参加するなど,地域と共存していく役割が期 待されます。 (3)行政の役割 福岡市は,自らの健康づくりに自主的に取り組む市民を支えるとともに,市民 や地域だけでは解決が難しい共助の仕組みづくりや人材育成,広報・啓発など を支援します。 また,要介護者や障がいのある人など,地域で暮らすうえで支援が必要な市民 のほか,介護に携わる方々に対する支援を行います。 第3章主要な成果指標 本計画に定める「3つの施策の方向性」に基づいた取組みを進めることにより, 10年後のあるべき姿にどの程度近づけたのか,その成果を把握し,その後の 施策に反映するため,下記のとおり計画の成果指標を設定します。 毎年度,それぞれの指標の進捗状況を調査し,保健福祉審議会の各分科会に報 告してまいります。 第3編各論 第1部 地域分野(地域福祉計画を含む) 参考 福岡市保健福祉総合計画(含:地域福祉計画)(H23〜H27) 第1部 総論 第1章 計画の基本事項 1 計画策定の趣旨 2 計画の位置づけ 第 2章 計画策定の背景 1 全国的な保健・医療・福祉の動向 2 福岡市の保健・医療・福祉を取り巻く現状と課題 3 市民意識調査 4 前計画の進捗状況 5 健康福祉のまちづくりにおける主要課題 第 3章 計画のめざす姿 1 基本理念 2 健康福祉のまちづくりの視点 3 施策体系 第2部 各論 第 1章 市民一人ひとりへの適切な情報提供 第 2章 相談しやすい体制づくり 第 3章 良好なサービスを選択できる仕組みづくり 第 4章 社会全体で進める生きがい・健康づくり 第 5章 学習・教育機会の拡充 第 6章 人材の育成 第 7章 地域における保健福祉活動の活性化 第 8章 要援護者の支援 第 9章 生活の安定確保 第10章 生活の安心確保 第11章 医療体制・健康危機管理体制の充実 第12章 くらしの衛生向上 第13章 「ユニバーサルなまちづくり」の推進 第3部 計画の進行管理 1 計画の進行管理と方法 2 モニタリング指標と計画目標 資料編 第2部 高齢者分野(老人福祉計画を含む) 参考 福岡市高齢者保健福祉計画(H24〜H26) 老人福祉計画 第5期介護保険事業計画 第1章 計画の策定にあたって 1. 計画策定の趣旨 2. 計画の位置づけ 3. 計画期間 4. 計画策定体制 第2章 高齢者を取り巻く現状と課題 1. 高齢化の進展 2. 高齢者実態調査に基づく現状 3. 高齢者を取り巻く課題 第3章 基本理念と取り組みの視点 1. 基本理念 2. 取り組みの視点 3. 高齢者保健福祉施策体系 4. 地域包括ケアの推進 第4章 高齢者保健福祉施策の総合的な推進 1. 健康でいきいきとした豊かなシニアライフの実現 (1) 社会参加活動への支援 (2) 社会参加活動の環境整備 (3) 就業機会の確保 (4) 健康づくりの推進 (5) 介護予防の推進 2. 要援護高齢者の総合支援の充実 (1) 在宅生活支援の充実 (2) 施設・居住系サービスの充実 (3) 介護サービスの質の確保・向上 (4) 認知症高齢者の支援体制の充実 (5) 権利擁護の推進 3. 地域生活支援体制の充実 (1) 総合相談機能の充実 (2) 地域ネットワーク体制の構築 4. 安全・安心な生活環境の向上 (1) 高齢者居住支援 (2) 人に優しいまちづくりの推進 第5章 サービスの量の見込みと確保方策 1. 老人福祉事業 (1) 主な老人福祉事業の目標量 (2) 主な老人福祉事業の目標量の考え方 2. 要介護認定者の現状と推計 (1) 要介護認定者の現状 (2) 要介護認定者数の推計 3. 介護サービス (1) 介護保険事業計画の進捗状況 (2) 介護サービスの量の見込み (3) 日常生活圏域 (4) 介護サービス見込量の確保のための方策 4. 地域支援事業 (1) 介護予防事業 (2) 包括的支援事業 (3) 任意事業 (4) 地域支援事業の量の見込み (5) 地域支援事業の量の考え方 (6) 見込量確保のための方策 5. 市町村特別給付等 6. 介護保険事業の円滑な推進のための方策 (1) 健全で効率的な事業運営 (2) 公正な要介護認定の取り組み (3) 市民への積極的な情報提供 (4) 介護サービスの質の向上 (5) 利用者保護の充実 (6) 市民参加が支える介護保険事業 第6章 介護保険事業に係る費用の見込みと第1号被保険者保険料 1. 第5期介護保険事業計画における事業費 (1) 保険給付費等の見込み方 (2) 第5期計画期間における保険給付費等の見込み (3) 保険給付費等の負担割合 2. 第1号被保険者保険料の算出方法 (1) 所得段階別被保険者数 (2) 第1号被保険者保険料の低所得者への配慮 (3) 第1号被保険者保険料の算出方法 参考資料 第3部 障がい者分野(障害者計画を含む) 参考 福岡市障がい保健福祉計画(H24〜H26)(市町村障害者計画 市町村障害福祉計画) 第1 計画の概要 1 計画策定の趣旨 2 計画の位置付け 3 計画の対象者 4 計画の期間 第2 障がい保健福祉施策をめぐる現状 1 障がい者の現状 2 障がい保健福祉施策関連事業費の現状 第3 障がい保健福祉施策の取組の方向性 1 施策推進による目標像 2 施策推進に当たっての視点 3 各障がい保健福祉施策及び取組の方向性 第4 障がい福祉サービス等の数値目標及び見込量 (第3期福岡市障がい福祉計画) 1 計画策定の趣旨及び位置付け 2 障がい福祉サービスに関する数値目標 3 障がい福祉サービスに関する各サービスの見込量 4 地域生活支援事業に関する各事業の見込量 第5 計画の推進体制 1 計画の進行管理 2 国・県への要望 3 自立支援協議会との連携 第6 資料編 第4部 健康・医療分野 参考 健康日本21福岡市計画(H25〜H32) 第1章 基本事項 1 策定の趣旨・背景 2 計画の位置づけ 3 計画期間 第2章 健康づくりを取り巻く状況 1 高齢化の進展と単身世帯の増加 2 厳しい財政状況と増加する社会保障関係費 3 医療と介護の状況 4 様々な場面での健康づくりとその支援 第3章 前計画の結果と課題 1 前計画の概要 2 結果概要 3 健康づくり推進の主要課題 第4章 計画のめざす姿 1 基本理念 2 基本方針 3 重点施策 4 主要指標 第5章 具体的な展開 1 生活習慣病対策の推進 (1)生活習慣の改善 @栄養・食生活 A運動・身体活動 B休養 C飲酒 D喫煙 E歯・口腔の健康 (2)生活習慣病の早期発見と重症化予防 @がん A循環器疾患(心疾患・高血圧・脳卒中) B糖尿病・慢性腎臓病(CKD) 2 こころの健康づくり 3 次世代の健康づくり (1)親と子の健康づくり (2)学校における児童生徒の健康づくり 4 女性の健康づくり (1)若い女性の健康づくり (2)中高年の女性の健康づくり 5 高齢者の健康づくり (1)高齢者の社会参加・地域の支え合い (2)介護予防 (3)認知症予防 6 みんなで取り組む健康づくり (1)地域の健康づくり支援 (2)企業・NPO・民間団体等との連携・支援 (3)健康支援の仕組みづくり (4)健康づくりの環境整備 第6章 計画の推進 1 計画の推進体制 2 推進手法 3 進行管理と評価 4 役割と連携 資料編 第4編 計画の推進方策 第1部 計画の進行管理と方法 第2部 重点施策と成果指標一覧 1 重点施策 2 成果指標 (1)主要な成果指標【再掲】 (2)成果指標一覧