資料5 福岡市保健福祉総合計画(計画案) 福岡市保健福祉総合計画(計画案) 平成27年1月福岡市 目次 第1編 序論 第1部 計画の策定にあたって 第1章 計画策定の趣旨 第2章 計画の策定根拠と計画期間 第3章 計画の位置づけ 第2部 計画策定の背景 第1章 国と福岡市の動向 第2章 市民の意識 第3章 前計画の振り返り 第2編 総論 第1部 計画がめざすもの 第1章 計画の基本理念 第2章 10年後のあるべき姿(2025年を見据えた目標像) 第3章 政策転換(新たな発想による政策の推進) 第2部 政策転換による基本的方針 第1章 施策の方向性 第2章 担い手の役割 第3章 主要な成果指標 第3編 各論 第1部 地域分野(地域福祉計画を含む) 第2部 高齢者分野(老人福祉計画を含む) 第3部 障がい者分野(障害者計画を含む) 第4部 健康・医療分野 第4編 計画の推進方策 第1部 計画の進行管理と方法 第2部 重点施策と成果指標一覧 第1編 序論                        序論では,計画を策定するにあたっての基本的な事項である根拠法や計画の位置づけなどのほか,策定の背景として,国の動向や福岡市の各種データ,市民意識調査の結果等をまとめました。 第1部 計画の策定にあたって 第1部では,本計画を策定する際の前提となる課題認識や計画策定の根拠法のほか,本計画の位置づけや他の計画との関係性などを記載しています。 第1章 計画策定の趣旨 ・全国的に少子高齢化の進展により既に人口減少社会に突入していますが,平均寿命をみると,平成25年(2013年)で男性が80.21歳,女性が86.61歳と,日本は世界有数の長寿国と言えます。 ・長寿の実現に大きく寄与した現在の社会保障制度ですが,世界に類を見ない速度で進む少子高齢化など激変する社会経済情勢の変化にあわせて,国においても持続可能な社会保障制度へと見直しが進められてきました。 ・福岡市においては,明治22年(1889年)の市制施行から124年を経過した平成25年(2013年)5月に,人口が150万人を突破しました。 ・福岡市には大学などの高等教育機関が多数存在することなどから,全国でも若者(15歳から29歳まで)率が高い都市と言えますが,近年では若者が減少してきており,また,一方で平成27年(2015年)には団塊の世代が65歳以上を迎えました。 ・将来の人口推計によると,福岡市の人口は平成47年(2035年)に166万人にまで達することが見込まれており,全国でも数少ない人口が増え続ける都市ですが,同時に,高齢者人口が数万人単位で増加していくことも予測されています。 ・年少人口や生産年齢人口の割合が減少し,高齢者人口の割合の増加が顕著な全国と同様に,福岡市においても高齢化率は平成27年(2015年)に21パーセントを超えることが見込まれおり,これまでに経験したことのない超高齢社会の到来が,目前に迫っています。 ・福岡市ではこれまで,平成10年(1998年)に福岡市福祉のまちづくり条例を公布施行し,全国に先駆けて同条例に基づき保健・医療・福祉に関する施策を網羅した「福岡市保健福祉総合計画(計画期間は平成12年度(2000年度)から22年度(2010年度)まで)」を策定して施策を推進してきました。 ・その後,平成17年(2005年)3月には同計画の中間見直しを行い,平成23年度(2011年度)からは改定した保健福祉総合計画(計画期間は平成23年度(2011年度)から27年度(2015年度)まで)に基づき施策を推進してきたところです。 ・本計画では,超高齢社会を迎えるにあたり,「持続可能で生活の質の高いまち」を構築し,また,「10年後の将来に向けたあるべき姿」を達成するため,今後の道筋を示すものです。 第2章 計画の策定根拠と計画期間 (1)策定根拠 ・本計画は,福岡市福祉のまちづくり条例第10条に定める「福祉のまちづくりに関する基本となる計画」であり,前計画と同様に,福岡市における保健(健康)・医療・福祉など様々な分野の各計画を横断的につなぐ基本理念と,取り組む施策の方向性を明らかにする保健福祉行政のマスタープランとして策定します。 ・また,一方で本計画は,高齢者や障がいのある人など,誰もが地域で安心して生活していくための指針となる計画であり,本市の保健福祉施策の方向性を総合的に示す計画です。そのために,社会福祉法に定める市町村地域福祉計画や,老人福祉法に定める市町村老人福祉計画,障害者基本法に定める市町村障害者計画といった,法定計画を一体化して策定します。 (2)計画期間 ・本計画の計画期間は,平成28年度(2016年度)から平成32年度(2020年度)までの5年間とします。 ・なお,本計画に基づき施策を推進していくにあたっては,社会経済情勢の変化や関係法令の改正,社会保障制度改革などの動向にも対応する必要があるため,計画期間は前計画(計画期間は平成23年度(2011年度)から27年度(2015年度)まで)と同様に5年間としますが,計画期間中であっても,必要に応じて見直しを行うこととします。 第3章 計画の位置づけ (1)他の計画との相関関係 ・平成24年(2012年)12月に,福岡市が長期的にめざす都市像を示した「福岡市基本構想」及び,基本構想に掲げる都市像の実現に向けた方向性を示した「第9次福岡市基本計画」が策定されました。本計画は,生活の質の向上と都市の成長の好循環を創り出すという第9次福岡市基本計画の基本戦略のうち,「生活の質の向上」をめざすものであり,平成25年(2013年)度から28年(2016年)度までに重点的に取り組む事業を示す「政策推進プラン」及び行政運営の仕組みや手法を見直し財政健全化の取組みを示す「行財政改革プラン」(いずれも平成25年(2013年)6月策定)を踏まえた計画とします。 ・「第6期介護保険事業計画(平成27年(2015年)3月策定)」及び「第4期障がい福祉計画(平成27年(2015年)3月策定)」をはじめ,「健康日本21福岡市計画」や「福岡市バリアフリー基本計画」(いずれも平成25年度(2013年度)策定)などの,保健福祉施策に関する分野別計画は,本計画における基本理念や基本方針に基づき進めていくものです。 第2部 計画策定の背景 第2部では,計画策定の背景として,全国的な人口減少問題や社会保障制度改革などの動向,福岡市の人口動態や保健福祉に関連する各種データ,福岡市が実施した市民意識調査等の結果における特徴的な項目などから,現在の福岡市が置かれている状況について概括しました。 また,前計画の進捗状況から,どのような成果が上がったのか,また,どのような施策を市が進めてきたのかを振り返りました。 第1章 国と福岡市の動向 (1)国の動向 1平均寿命の延びと人口減少問題 ・日本人の平均寿命は,医療技術の進歩や,食生活,住環境などが向上したことにより,男性が平成25年(2013年)に初めて80歳を超え80.21歳となり,世界4位に,また,女性も過去最高の86.61歳となり,2年連続で世界一となるなど,男女ともに過去最高を更新しました。 ・「平成26年度版 高齢社会白書」によると,日本の総人口は,平成25年(2013年)10月1日現在 1億2,730万人と,平成23年(2011年)から3年連続減少しました。現在,総人口は長期の人口減少過程に入っており,平成38年(2026年)に人口1億2,000万人を下回ったあとも減少を続け,平成60年(2048年)には1億人を割って9,913万人となり,平成72年(2060年)には8,674万人になると推測されています。 2財政状況と社会保障制度改革 ・我が国の社会保障は,1960年代の高度経済成長期以降に,右肩上がりの経済成長と低失業率,正規雇用・終身雇用の男性労働者と専業主婦と子どもという核家族モデル,充実した企業の福利厚生,住民同士のつながりが強い地域社会を背景として,国民皆保険・皆年金を中心として形作られ,これまで国民生活を支えてきました。しかし,急速な少子高齢化の進展,非正規雇用労働者の増大などの雇用基盤の変化,家族形態・地域基盤の変化など,社会保障制度を支える環境が変わってきています。 ・加えて医療技術の高度化も進む中,社会保障費は増大し,平成23年度(2011年度)は107兆4,950億円と過去最高の水準となりました。こうした変化に対応し,主として高齢者世代を給付の対象とする社会保障から,全ての世代が安心感と納得感の得られる「全世代型」の社会保障へ転換することが求められています。 ・国においては,「社会保障の充実・安定化」と「財政健全化」を喫緊の課題として,平成20年(2008年)から「社会保障国民会議」を皮切りに,社会保障と税の一体改革が始まり,平成25年(2013年)12月5日,「社会保障制度改革プログラム法」が成立しました。 ・社会保障制度の安定財源確保のために消費税率が平成26年(2014年)4月から8パーセントに引き上げられ,平成29年(2017年)4月からは10パーセントに引き上げられる予定となっており,消費税引き上げによる増収分は,社会保障4経費(年金,医療,介護,子育て)に割り当てられるとされています。 3障がい者の権利擁護,差別解消に向けた取組み ・平成18年(2006年)度に国連で採択された障害者の権利に関する条約(略称 障害者権利条約)の締結に向けて,日本では,障害者基本法等の改正や障害者総合支援法の成立など,条約の批准に向けた種々の国内法の整備が行われました。 ・平成25年(2013年)6月には,障害者基本法第4条の差別禁止の基本原則を具体化し,全ての国民が障がいの有無によって分け隔てられることなく,相互の人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け,障害者差別解消法が成立しています(施行は平成28年4月)。この法律では,行政機関や事業者等は社会的障壁の除去に必要な合理的配慮の提供を求めています。福岡市では,今後「地方公共団体等職員対応要領」の策定や,相談及び紛争の防止等のための体制整備など,必要な施策を展開していくこととしております。 ・平成26年(2014年)1月,日本は障害者権利条約を締結し,翌月,同条約は我が国において効力を発生しましたので,福岡市も障がい者の権利の実現と人権尊重に向けた取組み等をより一層強化していく必要があります。 4生活困窮者の自立の促進に向けた取り組み ・平成25年(2013年)12月に生活困窮者自立支援法が成立し,平成27年(2015年)4月に施行となりました。これにより,全国の市及び福祉事務所を設置する町村において,生活保護に至る前の生活困窮者への支援が開始されました。 ・福岡市においても,生活困窮者自立支援センター(仮)を設置し,生活困窮者の自立に向けた支援を実施しています。 (2)福岡市の動向 1人口の推移 ・福岡市は平成25年(2013年)5月に人口150万人を突破しました。平成26年(2014年)8月1日現在では約151.7万人で前計画作成時の平成22年(2010年)10月1日時点の146.4万人から約5万人増加しています。今後も人口増加が続き,平成47年(2035年)には160.6万人でピークを迎えると予測されます。 2人口構造 ・福岡市の人口構造(平成26年7月時点)は,生産年齢人口(15歳から64歳まで)の割合が66.8パーセントで国の61.4パーセントを上回っている一方,高齢者人口(65歳以上)の割合は19.4パーセントで国の25.7パーセントを下回っており,全国平均と比較して若い年齢構成となっています。 3高齢化率及び高齢者数の推移 (1)高齢化率の上昇 ・全国的にも高齢化が進む中,福岡市も一貫して高齢化率は上昇し,平成22年(2010年)の高齢化率は17.3パーセントですが,平成37年(2025年)には24.9パーセント,平成52年(2040年)は31パーセント,その後も高齢化は進み,平成62年(2050年)には34.3パーセントになると予測されています。また,福岡市の特徴として仕事等で転入し定住する方も多く,地域と関わりが少ないまま高齢期になってしまった方も増加していると考えられます。 (2)高齢者人口の増加 ・65歳以上の高齢者人口は,平成22年(2010年)の25万4千人が,平成37年(2025年)は39万6千人(1.6倍),平成52年(2040年)では49万7千人(2.0倍)になります。福岡市は人口が増え続けている全国でも数少ない都市ですが,高齢者人口の増加はそれを大きく上回ります。そのなかでも伸びが大きいのは75歳以上の後期高齢者人口で,平成22年(2010年)は11万8千人ですが,団塊の世代がすべて75歳以上となる平成37年(2025年)には22万8千人(1.9倍)となり,この数は,平成26年(2014年)現在の,博多区や早良区の人口(それぞれ約21万2から3千人)を超えています。 4ひとり暮らし高齢者及び高齢者のみの世帯数の推移 ・後期高齢者の単身世帯は,平成22年(2010年)に3万1千世帯,平成37年(2025年)には7万4千世帯(2.4倍),平成52年(2040年)には11万1千世帯(3.6倍)と急激に増加します。 5要介護者数と認知症高齢者数の増加 ・高齢者人口の増加に伴い,介護が必要となる方も増えていきます。現状のまま推移すると,平成25年(2013年)現在の要介護認定者数約5万7千人が,平成37年(2025年)には約10万人(1.8倍)になると予測されます。 ・また,認知症高齢者の数も,平成25年(2013年)現在の約2万9千人が,平成37年(2025年)には約5万5千人(1.9倍)になると予測されます。 ・女性の平均寿命は男性より長く,高齢者の人口は女性の方が多いことから,要介護認定を受けている人のうち,要介護3から5までの認定者の男女比は,年齢が高くなるほど女性が多くなります。 6障がいのある人の推移 ・福岡市の障がい児・者数(身体障害者手帳,療育手帳または精神障害者保健福祉手帳の所持者数,重複含む)は,平成25年(2013年)6月30日現在(精神障害者保健福祉手帳所持者数は3月31日現在)で71,196人,人口に対する出現率は4.9パーセントであり,市民の約21人に1人が身体,知的又は精神障がいがあるという状況です。 ・また,人口に占める身体・知的・精神障がい者の割合はいずれも増加傾向にあり,特に精神障がい者の割合は,平成22年度(2010年度)から平成25年度(2013年度)の伸び率が33.4パーセントと,高い伸び率を示しています。精神障害者保健福祉手帳の所持者数は10,333人であり,平成12年度(2000年度)と25年度(2013年度)を比較すると,5.4倍となっています。 ・発達障がいについては,身体・知的障がいのような手帳制度がないため,全国的に見ても正確な人数が把握できていない状況ですが,福岡市発達障がい者支援センターの相談状況をみると成人の相談が特に増加しています。 (1)身体障がい児・者 ・平成25年(2013年)6月現在の身体障がい児・者数(身体障害者手帳所持者数)は51,557人で,20歳代以下2,438人(身体障がい児・者数全体の4.7パーセント)に対して,30歳以上は49,119人(同95.3パーセント)となっています。 ・特に60歳代以上は,他の年代に比べて,増加人数も相対的な割合も伸びてきています。 (2)知的障がい児・者 ・知的障がい児・者数(療育手帳所持者数)は9,306人で,このうち,20歳代以下が5,258人(知的障がい児・者数全体の56.5パーセント),30歳以上が4,048人(同43.5パーセント)であり,身体障がいに比べて20歳代以下の占める割合が高く,全体の6割弱を占めています。 (3)精神障がい児・者 ・また,精神障がい児・者数(精神障害者保健福祉手帳所持者数)は10,333人で,30歳代以上はほぼ同じ割合ですが,20歳代以下は他の年代の半分程度になっています。 7生活保護世帯の推移 ・生活保護世帯数は,平成25年度(2013年度)32,014世帯で,保護率28.93パーミルとなっています。雇用情勢の悪化に伴い生活保護世帯は急増しており,ここ数年,伸びは鈍化してきたものの,高齢化に伴い,依然増加傾向が続いています。 8充実した医療環境 ・福岡市は,人口10万人当たりの医療施設数が政令市の中でも上位であり,暮らしの身近なところに医療機関が存在している環境にあります。 9平均寿命と健康寿命の差 ・平成22年度(2010年度)の福岡市の平均寿命は,男性が79.84歳,女性が86.71歳であり,また,日常生活に制限のない期間である健康寿命は,男性が70.38歳,女性が71.93歳となっています。その差は,それぞれ9.46年,14.78年であり,できるだけ健康寿命を延ばし,この期間の差を縮めていくことが必要です。 10医療費の推移 ・福岡市国民健康保険の医療費は,平成24年度(2012年度)には,医療費総額が約1,120億円,一人当たり医療費が306,738円となっており,年々増加しています。 ・福岡市の後期高齢者の医療費は,平成24年度(2012年度)には,医療費総額が約1,528億円,一人あたり医療費が1,240,285円となっており,年々増加しています。 11医療費に占める生活習慣病の割合 ・福岡市の医療費の内訳をみると,国民健康保険及び後期高齢者医療費の約4割を生活習慣病関連が占めています。 ・悪性新生物(がん),心疾患,高血圧,糖尿病等の生活習慣病は,喫煙,食べ過ぎや塩分の多い食事,運動不足など,長い間の生活習慣によってもたらされるため,その多くは,生活習慣の改善により,その発症や重症化を回避することができます。 ・市民一人ひとりの行動によって予防が可能であり,できるだけ早い時期から改善に取り組むことが必要です。 12市の予算の推移(保健福祉関係一般会計の推移) ・福岡市では,これまでも様々な事業を実施して課題に対処してきました。福岡市の一般会計予算額が増減して推移する中,保健福祉費の予算額は年々増加を続けており,一般会計の約4分の一を占めるに至っています。このことは,保健福祉関係事業の規模拡大や内容の充実を図り,着実に市民サービスの向上をめざしてきた結果であると言えます。 ・しかしながら,今後,扶助費や医療・介護保険繰出金等,経常的経費が増加傾向にあるため,改革を怠れば,重要施策の推進や新たな課題に対応するために使える財源(政策的経費に使える一般財源)は減少していく傾向にあります。 第2章 市民の意識 本計画を策定するに当たり,平成25年度(2013年度)から26年度(2014年度)にかけて,市民等を対象とした各種調査を実施いたしました。その中から特徴的な結果をまとめます。 (1)市民意識調査(実施時期は平成26年(2014年)8月) ・調査の目的 福岡市に在住する20歳以上の住民の保健福祉施策に関する意識やご意見などのデータを収集・分析し,「福岡市保健福祉総合計画」の策定に活かすことを目的に,調査を実施しました。 1福祉の満足度 ・前計画を策定するために実施した平成21年度(2009年度)の調査結果と,今回の計画策定のために実施した平成26年度(2014年度)の調査結果を比較すると,「満足」の割合が33.0パーセントから43.5パーセントに増加し,逆に「不満」の割合が40.1パーセントから28.5パーセントに減少しています。 ・福祉の充実について満足している項目の上位には,各種健診や健康教育などの「健康づくり(48.9パーセント)」,「保健・福祉・医療に関する情報提供や案内(37.6パーセント)」,国民健康保険や生活保護などの「生活の安定確保(25.6パーセント)」,救急医療や感染症対策の充実といった「医療体制・健康危機管理体制(21.9パーセント)」が挙がっています。 ・一方で,不満がある項目では,犬猫の飼い方マナー,殺処分減少などの「動物愛護・適正飼育(24.7パーセント)」が最も多く,続いて満足している項目にも挙がった国民健康保険や生活保護などの「生活の安定確保(23.8パーセント)」,建物や道路等の都市施設のバリアフリー化など「ユニバーサルなまちづくりの推進(20.8パーセント)」が上位となっています。 2地域活動への参加実績と参加意向 (全体傾向) 住民参加による地域での助け合い活動等への参加状況をみると,「参加している」(14.4パーセント),「たまに参加している」(18.7パーセント)を合わせた「参加している」人の割合は33.1パーセントとなっています。 また,「参加していない」(26.5パーセント)と「ほとんど参加していない」(18.0パーセント)を合わせた「参加していない」人の割合は44.5パーセントと,「参加していない」(44.5パーセント)人が「参加している」(33.1パーセント)人の割合をやや上回っています (全体傾向) 住民参加による地域での助け合い活動等への今後の参加意向をみると,「参加したい」(6.8パーセント)と「機会があれば参加したい」(52.8パーセント)を合わせた「参加意向のある」人の割合は59.6パーセントで,「参加したくない」(10.2パーセント)と「どちらかといえば参加したくない」(25.4パーセント)を合わせた「参加意向のない」人の35.6パーセントを大きく上回っています。 また,「参加意向のある」人の割合(59.6パーセント)は,実際に参加していると答えた人の割合(33.1パーセント)を大きく上回っています。 3行政に望むこと (全体傾向) 福岡市に力を入れて取り組んでほしい保健・医療・福祉分野の施策については,「4. 高齢者・障がい者になっても自宅で生活が続けられるサービスの充実」の割合が56.5パーセントで最も高く,次いで「1. 保健・福祉・医療に関する情報提供や案内の充実」(50.8パーセント),「2. 身近なところでの相談窓口の充実」(49.1パーセント),「7.災害時などに地域で助け合う体制づくり」(41.4パーセント)などとなっています。 4サービス水準と負担(税金)のバランス (全体傾向) 福岡市が提供するサービスの水準と,市民が負担する税金のバランスについての考えは,「負担は現状維持のまま,サービスの内容を見直すべきである」が63.4パーセントと過半数を占めています。 以下「負担が増えても,サービスの維持・充実に努めるべきである」(21.0パーセント),「負担が減るよう,サービスを縮小・廃止すべきである」(6.1パーセント)の順になっています。 (2)高齢者実態調査(実施時期は平成25年11月) ・調査の目的 福岡市に在住する高齢者などの保健福祉に関するニーズ・意識などを把握することにより,「福岡市介護保険事業計画」の策定に必要な基礎的データを収集・分析するとともに,福岡市の高齢者福祉施策の向上に資することを目的に,調査を実施しました。 1健康状態 ・健康状態は,「健康で,普通に生活している」の46.5パーセント,「何らかの病気や障がいはあるが,日常生活は自立,外出もできる」の45.2パーセントを合わせた9割の人が自立した生活を送っています。 ・高齢者のみの世帯では,「健康で,普通に生活している」人と,「何らかの病気や障がいはあるが,日常生活は自立,外出もできる」人を合わせた『自立した生活をしている』人は90.7パーセントと,前回調査の88.9パーセントをやや上回っています。 2今後の介護意向 ・介護が必要になったときは,「在宅で,家族の介護と介護サービスを併せて介護を受けたい」,「施設等に入所したいが,サービスが充実すれば,在宅で生活したい」,「在宅で,介護保険サービスを中心に介護を受けたい」,「在宅で,できるかぎり家族だけの介護を受けたい」を合わせた58.6パーセントが「在宅で生活したい」との意向を持っています。 3行政への要望 ・高齢者施策の充実に向けて,行政に今後,特に力を入れてほしい高齢者に関する施策は,「医療や介護の在宅サービスを充実させる施策」が42.6パーセントで最も多く,次いで「在宅生活困難者に対し,施設・居住系サービスを充実させる施策」が30.7パーセントで続いており,医療,介護に関するサービスの充実に関する内容が上位になっています。 (3)障がい児・者等実態調査(実施時期は平成25年(2013年)9月) ・調査の目的 この調査は,福岡市に居住する障がい児・者等の生活実態や意識,福祉施策に対する要望等を把握するとともに,「福岡市障がい福祉計画」及び「福岡市障がい者計画」の策定に活用することを目的に実施しました。 1地域から受けたい支援や交流の内容(複数回答 上位5項目) ほとんどの障がいで「定期的な声かけ(見守り)」,精神障がい者(通院)では「相談相手」が第1位 ・地域から受けたい支援や交流の内容は,精神以外の障がいでは「普段から定期的に声かけなどをする(見守る)」が第1位。精神障がい者(通院)では「相談相手になる」(26.5パーセント)が第1位であり,「普段から定期的に声かけなどをする(見守る)」は第3位。 ・知的障がい者と身体・知的障がい児では「外出時に付き添う」が第3位に挙がっています。 2障がい者福祉施策として国や県,市に力を入れてほしいこと(複数回答 上位5項目) 「医療」「所得保障」「就労支援」等が上位 ・身体障がい者,知的障がい者,精神障がい者(通院),難病患者では「障がい者に配慮した保健,医療体制及び医療費公費負担制度の充実」,「年金など,所得保障の充実」が共通して上位1・2位に挙がっています。 ・身体・知的障がい児では「特別支援教育の充実」(34.7パーセント),発達障がい児・者では「就労支援の充実」(44.7パーセント)が第1位に挙がっています。 ・身体・知的障がい児,発達障がい児・者では「乳幼児から成人期までの支援を一貫して実施できる仕組みづくり」が上位に入っています。 3障がい者支援として地域社会や企業等に望むこと(複数回答 上位5項目) 「障がいに対する理解を深める」「企業での積極的な雇用」等が上位 ・障がい者支援として地域社会や企業等に望むことをみると,身体障がい者では「公共交通機関や建物等を障がい者が利用しやすいようにつくる」,それ以外では「障がいに対する理解を深める」がそれぞれ第1位となっています。 ・全ての障がいに共通して「障がいに対する理解を深める」や「企業で障がい者を積極的に雇用する」,「公共交通機関や建物等を障がい者が利用しやすいようにつくる」,「障がい者等を支える地域活動やボランティア活動を活発にする」が上位5位以内となっています。 ・精神障がい者(通院)では「一般企業で働ける(働き続ける)ための支援」が第2位に挙がっています。 第3章 前計画の振り返り ・前計画に基づき,保健福祉施策にどのように取り組んできたのか,また,その取組状況を振り返ります。 (1)前計画に基づく施策推進の考え方 1前計画の基本理念 「福岡市福祉のまちづくり条例」に基づく前計画の基本理念は,市民の自立と連携を基にした普遍的なものでもあることから,前計画でもこれを継承し,基本理念を次のとおりとしました。 市民が自立し,かつ相互に連携して支え合うという精神のもとに,高齢者や障がいのある人をはじめすべての市民が一人の人間として尊重され,住み慣れた家庭や地域で安心して暮らし続けることができるハード・ソフト両面に調和のとれた健康福祉のまちづくり 2前計画の健康福祉のまちづくりの視点 視点1「自助」 生きがいのある健康な暮らし いきいきと健やかに暮らせる社会参加と健康づくりの推進 市民一人ひとりにとって利用しやすい保健福祉サービスの仕組みづくりを進めるとともに,自主的・自発的な社会参加活動や継続的な健康づくりを推進することにより,生きがいのある健康な暮らしの実現をめざします。 視点2「共助」 支え合いのある地域づくり 相互に支え合い,尊重し合える地域福祉の総合的な推進 地域での支え合い活動への関心を高め,活動に参画しようという意識を醸成するため,学習・教育の機会を拡充し,また,活動の担い手となる人材を育成するとともに,活動の活性化を図り,活動の輪を広げることにより,支え合いのある地域づくりを推進します。 視点3「公助」 安全・安心な市民生活 いつまでも住み慣れた地域で安全・安心に暮らせる基盤整備の推進 各種社会保障制度をはじめとする保健福祉サービスや,医療体制,健康危機管理体制などの暮らしを守るセーフティネットが必要なときに適切に利用できるよう基盤整備を推進し,いつまでも住み慣れた地域で暮らせる,安全・安心な市民生活の実現をめざします。 (2)前計画に基づく健康福祉のまちづくりの取組み 1各種計画の指標と進捗状況 ・前計画では,各種施策を推進することで,計画の基本理念にどの程度近づいているかを継続して見守り,モニターしていくために,「自助」「共助」「公助」の視点で5つの「モニタリング指標」を設定しました。 ・また,前計画は総合計画であるとともに地域福祉計画としての性格を併せ持つものであったため,「モニタリング指標」とは別に,地域分野の進捗状況を把握するための「計画目標」を定めました。 ・次期保健福祉総合計画では,地域分野に加え,高齢者分野及び障がい分野に関する実施計画を一体化するため,高齢者保健福祉計画(計画期間は平成24年度(2012年度)から平成26年度(2014年度)まで)及び障がい保健福祉計画(計画期間は平成24年度(2012年度)から平成26年度(2014年度)まで)に定めた主要な数値目標とその成果をまとめます。 2モニタリング指標の推移と,計画策定のための市民意識調査結果 ・市民意識調査等の結果から,「自助・共助・公助」それぞれに定めた市民の満足度や考え方等を示すいずれの指標も,若干ではありますが向上してきており,市民の「健康福祉のまちづくり」に関する意識は総じて向上していると言えます。 ・このことは,前計画に基づき取り組んできた保健・医療・福祉施策が,市民のニーズに沿ったものであったと,一定の評価が得られているものと考えられます。 ・しかしながら,いずれの指標に関する伸びも,数値としては僅か数ポイント程度であり,福岡市の取組みとして,改善と充実の余地はまだまだあると考えられ,市民の満足度を高めていく取組みを続けていく必要があります。 (4)「健康福祉のまち」の実現に向けて ・福岡市では,福岡市福祉のまちづくり条例に掲げる健康福祉のまちづくりを進めるため,限られた財源の中でも,様々な課題を解決するための施策を実施してまいりました。新規事業への着手や,既存事業の拡充を図ってきた結果,本市の保健福祉費の規模は着実に増加を続け,一般会計総額に占める割合は約4分の1を占めるまでに至っています。 ・一方で,これまでに経験したことのない超高齢社会の到来が目前に迫っており,地域においては,要介護認定者の増加をはじめ,単身高齢者や認知症高齢者の増加,高齢化に伴う高齢障がい者の増加など,支援が必要になる方々が増えていくことが予測されます。 ・また,高齢化率が高まる一方で生産年齢人口の割合は減少していくことから,高齢者の支え手が減少することとなり,負担の増加につながります。社会保障費の増加は避けられず,結果として世代間での公平感が失われるだけでなく,制度維持が難しくなるおそれさえ否定できません。 ・様々な課題を解決するために手当てする施策の積み上げを繰り返す「従来どおりの計画」では,持続可能な社会保障制度と健康福祉のまちの実現は困難な状況にあります。 ・そこで本計画では,各種統計の将来推計等から予測される福岡市の将来像を踏まえた上で,今後,市民一人ひとりの健康寿命を延ばし健康福祉のまちを実現するために,まずは団塊の世代が75歳以上となる平成37年(2025年)を見据え,10年後のあるべき姿を示すとともに,そこに至るまちづくりの方向性を示し,推進施策や必要な取組みを明らかにしてまいります。 第2編 総論                         総論では,本計画でめざす基本理念と「10年後のあるべき姿」を示し,その実現のために政策転換を実践することとし,政策転換によりどのような施策に重点的に取り組んでいくのか,その方向性を示します。 また,10年後のあるべき姿の実現に向けて,実際に地域における支え合い・助け合い活動の担い手がどのような役割を果たすのかを整理するとともに,あるべき姿にどの程度近づいているのか,本計画の成果を測る指標を設定します。 第1部 計画がめざすもの 第1部では,本計画でめざす基本理念と,基本理念を踏まえた近い将来の具体的な目標像として,新たに「10年後のあるべき姿」を掲げます。また,その実現のための「政策転換」の考え方について示します。 第1章 計画の基本理念 前計画に掲げた福岡市福祉のまちづくり条例に基づく基本理念は,今日でも普遍性を持つものであるため,本計画でも継承いたします。 基本理念「市民が自立し,かつ相互に連携して支え合うという精神のもとに,高齢者や障がいのある人をはじめすべての市民が一人の人間として尊重され,住み慣れた家庭や地域で安心して暮らし続けることができるハード・ソフト両面に調和のとれた健康福祉のまちづくり」 第2章 10年後のあるべき姿(2025年を見据えた目標像) (1)10年後にもたらされる状況 1客観的な事実に基づく予測 ・少子化の進展により現役世代の割合が減少することから,支えられる側となる支援が必要な高齢者の増加に伴い,必要となる医療機関や介護施設などの受け皿不足や,高齢者を支える介護人材などの働き手・支え手の供給体制が先細りし,地域社会を支える人材が不足します。また,医療費・介護費の需要が劇的に拡大し,介護需要の増加や医療費の増加は,保険料など現役世代の負担の増加に直結するため,需給バランスが崩れ,持続可能な社会保障システムの維持に課題が生じます。 ・高齢化の進展により,平成25年(2013年)の実数と平成37年(2025年)の将来予測とを比較すると,介護が必要となる方が約1.8倍になり,認知症高齢者数も約1.9倍に増加します。 ・このような介護を必要とする方の増加に伴い,若い頃から(生活習慣病の予防をはじめとした)健康づくり・介護予防に取り組むとともに,必要性が高まる生活支援サービスの担い手を増やすことなどが重要になっています。 ・さらに, 高齢化に伴って加齢により身体機能が低下し,転倒・骨折を原因とする高齢者の身体障がい者数が増加するなど,高齢化は,身体障がい者数にもその影響が見られ,60歳代以上の身体障がい者数は,身体障がい者全体の約8割を占めるに至っています。 ・また,知的障がい者や精神障がい者が増加するとともに,親の世代も含めた高齢化が進んでいます。 ・障がい分野では,平成23年(2011年)の障害者基本法の改正で社会モデルに基づく障がい者の概念が盛り込まれ,障がい者の社会参加へのアプローチは,従来の医学モデルによるリハビリ(や介護)だけではなく,今後は社会側の障害の改善が強く求められ,社会のあらゆる場面で障害者権利条約にいう「合理的配慮」が必要となります。このため,福岡市政の柱の一つである「ユニバーサル都市・福岡」の取組みが一層強化されています。 2将来的に見込まれる要素 ・ICT(情報通信技術 Information and Communications Technology)の利活用により,データ分析に基づく施策の企画・実施・評価や,医療・介護関係者や地域住民間で適切な情報共有が図られ,個々人の状態にあった質の高い医療・介護サービスが,切れ目なく効果的・効率的に提供されています。また,ICT端末の活用などにより,地域の支え合い活動が活発に行われています。また,高齢者施設など,さまざまな場面でRT(ロボット技術 Robotics Technology)が活用されています。 ・一層の国際化の進展に伴い,福岡市には,高齢化が進むアジアの国々から,地域包括ケアシステムをはじめ,医療・福祉・介護・健康分野の政策・専門知識・産業活動などの視察・学習にたくさんの人が訪れています。高齢化に関するさまざまな国際会議が開催され,この分野に関する課題解決に先進的に取り組む「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」として,アジアの中で存在感のある都市となっています。 (2)福岡市がめざす10年後の目標像 ・誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには,健康であることが何より大切です。 ・若い頃からの健康づくりや高齢期を迎える前からの介護予防などによって,健康寿命の延伸に努め,結果として医療費・介護費の伸びを抑えるとともに,支え手となる人材の育成・確保や保険料の供給増加を図り,「制度の安定(イコール)暮らしの安定」を実現します。 ・様々な課題が見込まれる中,本計画を実行することによって福岡市がめざす3つの10年後の姿を,次に示します。 10年後のあるべき姿 1生涯現役社会 市民がそれぞれのライフステージに応じた健康づくりや生活習慣の改善を実践し,社会全体で健康寿命の延伸に取り組み,高齢になっても健康で意欲を持ちながら地域社会で活躍しています。 2「地域の力」と「民間の力」が引き出される社会 地域課題を地域の誰もが共有し,解決に向けて互いに助け合っており,また,民間企業などもそれぞれの特色を活かし,市民生活を支える存在として積極的に社会貢献を行っています。 3福祉におけるアジアのモデルとなる社会 高齢者や障がいのある人をはじめ,支援が必要な誰もが安心して地域で暮らしていける社会づくりをすすめ,今後,高齢化を迎えるアジアの国々のモデルとなっています。 第3章 政策転換(新たな発想による政策の推進) ・福岡市では,これまで様々な課題に対して幅広くかつ十分に手当をすることをめざし,新たな事業を展開するとともに既存事業を拡充してきましたが,人口増加が今後も見込まれる福岡市でも,低成長時代を反映して税収の伸びが期待できる状況にはないことを踏まえた上で,施策を展開していく必要があります。 ・国が消費税率を引き上げ,歳入を増加できたのと対照的に,一地方都市である福岡市にとっては,その手立てが容易に見出せない中,事業の拡大を続けていくことは非常に難しい状況にあるため,推進していく施策の在り方を再検討することが求められます。 ・なにより,少子高齢化が進展し,支え手が不足する一方で支援が必要な方々が増加する今後の超高齢社会の確実な到来に備えて,限りある資源を最大限に活かす必要があります。 ・10年後のあるべき姿を実現するためには,国の「社会保障と税の一体改革」と同様に,またはそれ以上の社会システムの変革を,福岡市においても覚悟を持って実践していかねばならない状況が待ち受けています。 ・そこで,市民にとって優先度の高い,真に必要な事業に資源を集中的に投下するため,これまで取り組んできた事業の選択と集中を行い,社会経済情勢や市民ニーズに則した改変や,他の主体との役割分担,類似事業との再編,必要性・有効性の再確認を行うなど,限られた財源を最大限に活かす視点で検討を進めてまいります。 ・また,保健・医療・福祉に関する施策を進めるにあたっては,安全・安心な市民生活を守る「持続可能な保健福祉行政」を追求し,市民に対する安定的な保健福祉施策の提供につながり,10年後のあるべき姿が達成できるよう,これまでの保健・医療・福祉に関する政策推進の考え方を,次のとおり転換します。 「10年後のあるべき姿」をめざして, 1 本計画に沿って推進する施策の方向性と重点化する施策を厳選し, 2 計画期間に実施する事業の「選択と集中」を図ることにより, 3 限りある資源を最大限に活用し, 市民の皆さんと一緒に健康福祉のまちづくりを進めてまいります。 ・その結果,地域で暮らす誰もが,いつまでもできる範囲で自分のちからを最大限に発揮することにより,福岡市は「一定の年齢や状態に達したから」といって,一括りにして直ちに支援を行うことなく,個々人の状態に応じた,真に支援が必要な人に対して優先的に施策を展開できることになります。 具体的な政策転換の考え方 1施策の進め方の転換 従来,様々な課題に対応した事業をきめ細やかに行政が立案し,その実施によって,課題を解決してきました。 しかしこれからは,施策の対象者は拡大を続けており,限られた財源の中で優先順位を検討の上,実施事業の選択と集中を進めなければならない。 事業実施に当たっては,めざす目標像を定め,その達成の為に,より必要性が高い施策の充実を図ります。 2高齢者の捉え方の転換 一般的に「高齢者」と言えば「65歳以上」のこと。 しかし実際は ・平均寿命到達まで約20年の期間がある。 ・身体能力が高く,まだまだ元気で社会に貢献したいと思う方が多い。 ・自身が高齢者と呼ばれることには違和感がある。 これからの「高齢者」とは,一律にではなく個人のちからに着目します。 65歳以上人口の増加により,社会における「特別な存在」とは言えない。 ・平成25年(2013年)は4人に1人が高齢者(高齢化率25.1パーセント) ・平成37年(2025年)は3.3人に1人が高齢者(高齢化率30.3パーセント) 平均寿命の延び ・昭和31年(1956年)男性は63.59歳,女性は67.54歳 ・平成25年(2013年)男性は80.21歳,女性は86.61歳 「高齢」であることは特別なことではない。 65歳以上になってもできる範囲で「支えられる側」から「支える側」へ。 3障がい者の捉え方の転換 これまで障がい者は,社会において支援を受ける側として捉えられ,障がい福祉施策は,「障がい者を支援することで健常者の社会に適合させていく」という考え方が主流であった。 これからは,障がい者は社会を構成する一員として,必要な支援を受けながら,自らの意思に基づきあらゆる分野の活動に参加する主体であると捉えます。また,ユニバーサルデザインの思想に基づき,社会(健常者側)が変わっていくことで,障がいのある人も無い人も当たり前に暮らせる社会を目指します。 第2部 政策転換による基本的方針 第2部では,福岡市がめざす10年後のあるべき姿を実現する為に必要な「政策転換」により,どのような施策に取り組むのか,その方向性を示すとともに,計画期間中に取り組む代表的な施策を定めます。 また,健康福祉のまちづくりの担い手となる行政・地域・市民の役割をそれぞれ整理します。 総論の最後に,本計画の進捗状況を測るために設定する成果指標と,その指標設定の考え方を示します。 第1章 施策の方向性 (1)基本的な考え方 ・将来,確実に到来する「人口急減・超高齢社会」というこれまでに福岡市が経験したことがない状況を克服して行く必要があります。 ・本計画に基づき取り組む施策について3つの方向性を定め,基本理念である「誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくり」を実現していきます。 (2)3つの方向性 1自立の促進と支援(施策の方向性1) 市民一人ひとりが,社会を構成する一員として,自ら主体的に社会参加活動や健康づくり活動に取り組めるよう,また,市民の健康づくりを支える民間活動が活性化するよう,社会全体で取り組みます。 2地域で生活できる仕組みづくり(施策の方向性2) 地域での見守り活動の充実を図るなど,いつまでも誰もが自信と誇りを持って住み慣れた地域で生活できる環境を整えるため,様々な形で住民同士が助け合い・支え合い活動に参画できる仕組みづくりを進めます。 3安全・安心のための社会環境整備(施策の方向性3) 高齢者や障がい者も,地域で誰もが当たり前に暮らせるように,ユニバーサルデザインの理念に基づき心のバリアフリーを推進するとともに,安全な施設や安心して生活できる住環境などを整備するなど,ソフト・ハード両面にわたる社会のバリアフリー化を推進し,アクセシビリティの向上を図ります。 (3)3つの方向性に基づく推進施策 ・施策を推進する方向性は,保健福祉行政全体を見通したうえで3つを定めたものであり,それぞれの方向性は相互に関わり合う関係にあります。 ・また,方向性を定めて重点的に取り組む具体的な保健福祉施策は,全ての世代を対象とする「地域分野」及び「健康・医療分野」,並びに対象者別の「高齢者分野」及び「障がい者分野」との4分野に分けて,「第3編 各論」で整理します。 ・3つの方向性に基づき取り組む各種施策は,それぞれの分野ごとに厳密に分けられる性格のものばかりではなく,複数の分野に関わるものがあることから,ここでは,その中から代表的な施策と施策推進の考え方を整理します。 1 社会参加活動の支援 誰もがいつまでも生きがいを持って活躍できるように,ボランティア活動や生涯学習,就労支援,余暇活動などへの社会参加活動を促進するために支援していきます。 また,高齢者や障がいのある人の社会参加を促すため,外出や移動の支援を行います。 2 健康づくり・介護予防 健康寿命の延伸には,日々の健康の維持増進や体力づくりだけでなく,職場や医療機関,保健所等で実施する健(検)診の機会を積極的に活用するなど,若い頃から市民一人ひとりが健康に高い関心を持ち,その実践に取り組むことが必要です。このため,市民が自主的に取り組む健康づくりを支援します。 また,高齢者や障がい者等が,一日でも長く自立した生活が送れるよう,自主的な健康管理やいつまでも要介護状態にならないような取組みを支援します。 3 相談体制の充実と自立の支援 必要な人が必要な時に最適なサービスを受けることができるよう,身近な生活圏域で,福祉サービスの利用に関する情報提供や相談体制の充実を図ります。 若い頃から高齢期の生活を想定し,自らの健康だけでなく,生活の自立,経済的な自立などの自立度を高めていけるよう支援します。 また,障がいのある人を施策の客体ではなく,必要な支援を受けながら,自らの決定に基づき社会参加する主体ととらえ,障がいのある本人が適切に意思決定を行い,その意思を表明することができるよう,相談の実施等による意思決定を支援するとともに,意思疎通のための手段を選択する機会の提供を進めます。 4 差別解消・権利擁護・虐待防止(心のバリアフリー) 社会的に弱い立場の方々に対する全ての差別が無くなるように,こころのバリアフリーを進めます。 特に,障がいを理由とする差別は障がいのある人の自立又は社会参加に深刻な悪影響を与えるものであり,その解消に向けて広報・啓発活動を実施するとともに,企業,市民団体等の取組みを支援します。 5 地域単位の支え合い 高齢になっても障がいがあっても,地域でつながり関わり合いが保てるよう,地域の中でお互いに見守りや支え合いができる仕組みを充実します。 6 地域包括ケアシステムの構築 医療と介護の連携や,住まいの確保など,支援が必要な高齢者等を取り囲む様々な分野からの一体的な支援により,誰もが住み慣れた地域で自立した生活を安心して続けられる環境づくりを進めます。 7 障がい特性等に配慮した総合的な支援 性別,年齢,障がいの状態,生活の実態等に応じた施策を充実します。 また,障がいのある人が人生における全段階を通じて適切な支援が受けられるよう,教育,福祉,医療,雇用等の各分野の有機的な連携の下,施策を総合的に展開し,切れ目のない支援を行います。 8 人材育成 それぞれの地域で活動を行うのは,行政であり地域の住民であり,あらゆる立場の市民です。介護の現場などの人材確保が困難な場面でそれぞれが異なる役割をきちんと果たし,誰もが誰かの役に立てるように,人材育成を行います。 9 公共施設・公共交通機関の整備 道路や公園等の都市基盤施設や官公庁舎や学校等の公共施設を整備・改修をする際のバリアフリー化推進をはじめ,ノンステップバスの導入促進等により,誰もが安心して外出できる環境を整えます。 10 住環境整備 住まいは安定した生活を実現する上での拠点です。高齢になっても障がいがあっても,住み慣れた地域で暮らせる住環境を整えます。 11 ICTの活用等 保健・福祉・医療等に関する情報を一元的に集約・管理する仕組みを構築し,地域分析,事業所分析等によるさまざまな分野の「見える化」を図り,エビデンスに基づいた施策実施を目指します。 また,これをベースに医療介護関係者等多様な主体間との情報連携により,切れ目のない効果的・効率的なサービスの提供や,地域での支え合い活動の負担軽減や活性化を図ります。 さらに,介護現場やさまざまな場面でのロボットの導入促進を図ります。 12 医療体制,健康危機管理体制の充実及び生活環境の向上 市民が安全安心な生活を送る上で必要な,救急医療体制の整備,医療安全対策など,市民が安心して医療が受けられる医療体制の充実強化を図ります。 また,結核,ウイルス性肝炎,エイズ・性感染症,風しんなど各種感染症対策を講じるとともに,今後,発生が懸念される新型インフルエンザ等に備え,健康危機管理体制の充実を図ります。 市民生活の基盤をなす食品衛生,環境衛生の確保,動物管理の推進などにより,暮らしの衛生向上を図ります。 13 持続可能な社会保障制度の維持 国において進められる社会保障と税の一体改革による社会保障制度改革を踏まえ,受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を維持します。 第2章 担い手の役割 ・本計画に掲げる「10年後のあるべき姿」を実現するためには,行政だけでなく,地域の住民はもちろん,事業者やボランティアなど地域社会を構成する多様な主体が,相互に連携を図るとともに,それぞれ主体的に様々な取組みを実践していくことが必要です。 ・地域に暮らす誰もが,できる範囲で何らかの形で地域社会の中で支え合い,助け合いに携わることで,支えられるだけでなく支え手としての役割を果たし,支援が必要な高齢者も障がいのある人も,地域で暮らすことが当たり前の社会づくりを進めます。 (1)市民の役割 ・将来的に,誰もが支えられる側になる可能性は否定できません。できる限り長く自立した生活を送ることができるよう,運動・食生活・休養など生活習慣を改善するほか,定期的な健康診断やがん検診の受診など,自身の健康づくりを心掛けています。 ・また,元気に活動できる市民は,地域活動に参加したり就労したりと,例え,ある場面では支援を受ける立場であっても,できる分野では支える側になるなど,お互いに支え合い助け合っています。 ・地域において市民の健康づくりや要介護者,障がいのある人などを幅広く支えていくため,地域社会を構成する一員として,企業や社会福祉法人等の法人も,それぞれの専門性を活かして社会的責任を果たしています。 (2)地域の役割 ・支援が必要な高齢者や障がいのある人などが安心して地域で暮らせるように,住民に最も身近な自治組織である自治会・町内会をはじめ,校区を運営していく住民自治組織である自治協議会や,地域福祉活動に取り組む校区社会福祉協議会,地域住民からの相談に応じて必要な援助を行う民生委員・児童委員などが活動しています。また,こども会,婦人会,老人会,PTA等の地域の任意団体や,NPOやボランティアも連携し,見守り・支え合いに関わっています。 (3)行政の役割 ・福岡市は,自らの健康づくりに自主的に取り組む市民を支えるとともに,市民や地域だけでは解決が難しい共助の仕組みづくりや人材育成,広報・啓発などを支援します。 ・また,要介護者や障がいのある人など,地域で暮らすうえで支援が必要な市民のほか,介護に携わる方々に対する支援を行います。 第3章 主要な成果指標(各論を審議後,再検討) ・本計画に定める「3つの施策の方向性」に基づいた取組みを進めることにより,10年後のあるべき姿にどの程度近づけたのか,その成果を把握し,その後の施策に反映するため,下記のとおり計画の成果指標を設定します。 ・毎年度,それぞれの指標の進捗状況を調査し,保健福祉審議会の各分科会に報告してまいります。 施策の方向性 1自立の促進と支援 成果指標 「初めて要介護1以上の認定を受けた年齢の平均」プラス1歳を目指します。 健康であると感じている人の割合80パーセントを目指します。 施策の方向性 2地域で生活できる仕組みづくり 成果指標 地域の支え合い活動に参加している市民の割合40パーセント以上を目指します。 施策の方向性 3安全・安心のための社会環境整備 成果指標 福岡市では,ハード・ソフト両面でのバリアフリー化が進んでいると感じている市民の割合100パーセントを目指します。