資料4 福岡市が策定する次期障がい保健福祉計画に対する 意見提言について(案) 平成26年 ○○月 福岡市障がい者等地域生活支援協議会 目次 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 <意見提言> 1 医行為の必要な障がい者に対する支援について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2 行動障がいのある障がい者に対する支援について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3 発達障がい者及び精神障がい者(発達障がい者を除く)の就労支援の拡大について (今後の就労拡大に向けた取り組み案は,次回の協議会で提出予定) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 はじめに (1)福岡市障がい者等地域生活支援協議会の設置に至る経緯 福岡市では,平成18年度の障害者自立支援法の施行に伴い,地域における障がい福祉関係者のネットワーク構築という主旨から,平成19年6月に,福岡市内を4つの地域に分けて自立支援協議会を設置することとし,それぞれ独立した組織として運営してきた。 しかし,平成22年度の法改正により,自立支援協議会の設置が法定化されたこと,そして自立支援協議会が市の定める障がい福祉計画に対して意見を述べる機能が追加された。そのため,4つの自立支援協議会の会長を中心として,約1年間かけて,その機能に見合うように組織体制の見直しを進めるとともに,福岡市障がい保健福祉計画(平成24年3月策定)においても,「自立支援協議会は,障がい者等の地域生活の課題解決機能の強化が課題となっているため組織体制を見直す」としていた。 また,平成24年6月に成立した障害者総合支援法では,自立支援協議会は単に「協議会」と称されるようになり,地域の実情に合った名称が付けられるようになるとともに,その協議会には障がいの当事者とその家族を委員として入れることが規定された。障害者総合支援法は平成25年度からの施行だったが,協議会はそれを先取りする形で作る必要があった。 こうして従来の自立支援協議会の組織を再編し,平成24年8月に設置された福岡市障がい者等地域生活支援協議会(以下,「協議会」と言う。)は,全市域を対象として1か所設置するとともに,支援の現場関係者が集い,個別の事例検討などを通じてネットワークを強めるための部会を区ごとに設置するほか,専門的な調査・研究等を行う専門部会を必要に応じて設置するという組織とした(巻末資料@のとおり)。 また,協議会は,障害者総合支援法第89条の3第1項の規定に基づき設置された法定機関であるため,福岡市附属機関等の設置及び運営に関する要綱第2条第1項に規定される附属機関でもある。 (2)福岡市障がい保健福祉計画に対する意見提言 協議会は,支援の現場から上がってきた,障がい児・者が直面するいろいろな地域課題に対し,関係者が協議を行っていくことにより,障がい福祉の様々な関係機関とのネットワーク機能を高めるほか,人材育成を図ることなどを通じて,課題解決に結びつける大変重要な役割を担っている。 また,もう1つの重要な役割として,障害者総合支援法第88条第8項に規定されるとおり,市が市町村障害福祉計画を策定又は変更する場合には,協議会の意見を聴くこととなっている。そのため,協議会は支援の現場に立脚している強みを十分に活かし,地域で直面している障がい児・者の福祉課題にフィットする取組について意見提言を行うようにしている。 (3)意見提言に至る流れについて 協議会の下,各区に設置された区部会は,協議会が指定する様式で個別事例の検討を行い,「利用可能性のある社会資源の再検討」と「残された課題」を協議し,意見を整理する。 この残された課題を地域課題と呼ぶが,協議会では「解決が難しい個別の生活課題と地域特性や社会資源の状況を摺合せ,分析した結果,見出された課題」と定義している。その中で,全市的に検討すべき地域課題が出てきた場合は,協議会事務局へ報告することとなる。 次に,協議会事務局は区部会から報告のあった事例を,事務局合同会議(全ての区部会及び専門部会の事務局が集まり,情報交換や協議を行う場)で,再度事例の読み込みと内容把握を行った後,課題をカテゴリーごとに分類し,地域の社会資源の過不足を考慮し,協議会でどのような方向性で協議を行うかを整理する。 そして,協議会では,事務局から報告された地域課題について情報共有するとともに,地域課題への対応策の案について協議を行う。その際,必要に応じて,専門部会を設置する。専門部会は特定の事項の調査,研究等を行い,その結果を協議会に報告する。 こうした活動の結果,地域課題とその対応策について意見提言としてまとめ,市に提出し,市はそれを障がい保健福祉計画の策定に役立てるという関係になっている。 1 医行為の必要な障がい者に対する支援について (1)現状 まず,医行為の定義については,平成17年7月26日付厚生労働省医政局長通知により,「医行為は,医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし,又は危害を及ぼすおそれのある行為」であるとされている。 医行為のうち,たんの吸引(口腔内,鼻腔内,気管カニューレ内部)及び経管栄養(胃ろう,腸ろう,経鼻経管栄養)については「医療的ケア」として整理され,平成24年4月1日から,一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下に実施できることとされた。 福岡市内の医行為の必要な障がい児・者数は,障がい者数は障がい程度区分認定調査票によると209人(平成25年3月現在),障がい児数は医療型短期入所を支給決定されている人数は183人(平成24年11月現在)であり,合計392人と考えられる。ただし,例えば障がい児で訪問看護だけを利用している児は短期入所の支給決定を受けておらず,障がい者でも筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者で介護保険のサービス対象者となる場合は,障害程度区分認定を受けていないことがあり,その場合には,この392人には含まれていない。 これら医行為の必要な障がい児・者を受け入れる短期入所としては,基本的には医療型短期入所がある。医療型短期入所とは,主に療養介護の対象となる障がい者又は重症心身障がい児(重度の知的障がい及び重度の肢体不自由が重複している障がい児を言う。)に対し,医療法第1条の5第1項に規定する病院等で実施する短期入所のことを指している。 福岡市の医療型短期入所は,平成23年度までは1か所の病院のみだったため,そこに利用が集中しており非常に高い稼働率となっていた。 福岡市では平成24年度から市内の病院に医療型短期入所を増やす努力を行い,その結果3病院が新たに指定を受けたが,人工呼吸器装着者に対応していないとともに,現在までほとんど利用もなされていない。 また,医行為の必要な障がい児・者が短期入所を利用する場合に,リフト車等による送迎の有無は大きな課題であるが,送迎のある医療型短期入所はほとんどない。 (2)具体的な事例から見られる地域課題 【事例概要】 重度身体障がいと重度知的障がいの重複障がい者で,平成23年6月頃から寝たきり(ADLは全介助)の状態となり,胃ろう造設,導尿(1日6回程度)を行っている。本人は音声言語での意思表出は困難で,支援者が本人の表情から快・不快を読み取る必要がある。また,寝たきりで紙おむつを着用している。 介護者である母は高齢で,80歳代の父の介護も行っているため,母の介護負担軽減のために短期入所を利用しようとしたが,施設が非常に限られており,必要なときに利用できるとは限らないため困っている事例。 【利用者の状態】 ・年齢:50歳代 ・障がいの程度:身体障害者手帳1級,療育手帳A2 ・障がい程度区分:区分6 ・利用しているサービス:居宅介護,生活介護,訪問入浴,訪問診療,訪問看護,訪問リハ,訪問歯科,日中一時支援 【地域課題】 この事例からは,母のレスパイトを進めるために必要な,「医行為の必要な障がい者を受け入れる短期入所事業所が不足している」ことを地域課題として認めた。 (3)地域課題の解決方法の案 協議会ではこの地域課題の解決のため,@医療型短期入所の増加,A医療型短期入所へ利用者をつなぐ仕組みの整備,の2点が必要と考えた。 この2点については,福岡市がNPOと共働で取り組んでいる「おうちで暮らそうプロジェクト事業」等を推進することを通じて実現を図っているが,おうちで暮らそうプロジェクト事業が実施した利用者に対するアンケートで,短期入所の利用に当たっては,「本人が慣れている施設が安心できて良い。」,「普段から本人の支援に関わっている人に支援してほしい。」というニーズが大変多かったことを踏まえ,今後の事業推進についてはこのニーズを反映した取り組みを行うことが必要である。 また,おうちで暮らそうプロジェクト事業の中で行った医療機関に対するアンケート調査で,16歳未満の障がい児については医療型短期入所での受け入れが困難なことが判明したため,短期入所以外のレスパイト事業の検討を進める必要がある。 加えて,医療的ケアの可能な福祉型短期入所事業所を増やすことも必要である。 その経緯としては,平成25年度第1回協議会(6月7日開催)において,「福祉の事業所は医行為の必要な障がい者を積極的に受け入れる姿勢をもっと見せるべきである。」という意見があったことを受けて,同年第2回協議会(8月9日開催)で福祉型短期入所部会を設置した。 この部会では,@医行為の必要な障がい者にとって主な日中活動である生活介護事業所に併設する短期入所で,障がい者の受入数を拡大できるようにすること,A日中活動に結びついていない居宅介護の利用者が,なるべく支援者を変えずに短期入所を利用できるようにすること,Bどの生活介護事業所でも応用可能な方法を検討すること,という3つの方向性に沿った協議を行っていただいた。 そして,各委員とも大変多忙な中,短期間集中的に熱心な議論を行っていただいた結果,下記のような意見提言を報告していただいたものである。 【福祉型短期入所部会の意見提言の内容】 1 福祉型短期入所で受け入れ可能な医行為の種類や程度 医療的ケア(たんの吸引,経管栄養)を基本とし,その他の医行為については種類を限定せず,利用者の状態が安定していれば受け入れる。 2 生活介護事業所が取り組むべきこと @法人全体で短期入所に取り組む方針を持ち,職員の意識を高める取組みをする。 A法人職員を喀痰吸引等研修に積極的に参加させ,医療的ケアの実施可能な職員数を増やす。 B日中勤務の看護師を常勤化し,短期入所に夜間・早朝スポット的にも配置する。 C夜間配置職員の人件費ねん出のため,医療連携体制加算を最大限に活用する。 D利用者の緊急時の対応に備えて,主治医との連携を強化する。 E夜間専門に働く職員の配置も検討する。 F事業所が登録研修機関となり,喀痰吸引等研修の回数を増やす。 G緊急時の円滑な受入れのために,利用者に複数の事業所を普段から定期的に利用してもらうよう,事業所間の連携を強化する。 3 福岡市が生活介護事業所等に対し支援すべきこと @生活介護事業所等が短期入所を開設するように促すための啓発・説明会を実施する。 A利用者に対し,緊急時の受け入れを円滑にできるように,普段から短期入所の複数利用や定期的な利用を行うように啓発する。 B強度行動障がい者支援事業を参考に,利用者の日常の介護をよく知る生活介護事業所の職員や居宅介護事業所のヘルパーを,異なる法人の短期入所に派遣し,支援の引き継ぎを行うための「共同支援事業」を創設することを検討する。 C生活介護事業所が短期入所のために,生活介護サービス提供時間外においても看護師を常時配置し,その人件費の確保が困難な場合は,市の独自加算を検討する。 D福祉型短期入所が増えず,利用者ニーズがどうしても満たせない場合は,一部の短期入所事業所を「重点型短期入所事業所」として,運営費の助成を検討する。 E短期入所が利用できないような最重度の医行為の必要な障がい者のために,居宅介護事業所による「訪問型レスパイト事業」の創設を検討する。 2 行動障がいのある障がい者に対する支援について (1)現状 厚生労働省は行動障がいについて特に定義を定めていないが,強度行動障がいの定義については,福岡市が平成18年5月に独自に設置した福岡市強度行動障がい者支援調査研究会の設置要綱において,「重度の知的障がい者で,ひどい自傷や著しい多動等の強度の行動障がいを伴う者」としており,具体的には前に厚生省が定めた「強度行動障害判定基準表」に該当する項目の点数の合計が10点以上の者としている。 強度行動障がい者(18歳未満の者を含む。以下同じ)の数については,平成24年度に強度行動障がい者支援調査研究会が実施した実態調査によると,入所施設利用者が74人,市内の通所施設・行動援護事業所・知的障がい者相談支援センターの利用者及び市立特別支援学校在籍者が116人となっている。 現在,福岡市では,強度行動障がい者の受け入れ先事業所の拡充を図るため,福岡市強度行動障がい者支援調査研究会における協議結果等を踏まえて,民間事業所の支援員養成研修,強度行動障がい者が利用している短期入所やケアホーム等の事業所において他の事業所の職員と共同で支援する「共同支援」を行っている。 行動障がいと発達障がいとは密接な関連があるが,発達障がい者の相談に専門的に応じている発達障がい者支援センターは行動障がいの相談も含めて,相談件数が年々増加しており,スタッフを増員しても相談待ちが続き,継続相談ケースも本来必要な頻度で相談を受けることができていない。そのため,支援の現場や家庭を訪問して,行動障がいのある発達障がい者への直接面談を行うことが難しくなっている。 そういう状況もあって,支援の現場においては,一部の相談支援センターや居宅介護事業所等によって,本人の行動の意味を解釈し,支援プログラムを作成・実施しているが,重作業であり,本来業務と併せてこのような作業を行うことは困難となっている(居宅介護事業所には特に報酬も無い)。 また,ホームヘルパーなど直接支援の担い手にも,行動障がいを理解し,適切な支援技術を持つ人材が不足しており,スキルを持つ一部のヘルパー等に負担が集中し,疲弊してしまっている。 (2)具体的な事例から見られる地域課題 【事例概要1】 特別支援学校高等部卒業後,福祉作業所に通所するが,奇声や他害(髪引き)が激しく10か月で退所した。その後,別の福祉作業所に所属するが,1度駐車場まで行ったきりで本人が外出を拒むようになった。その後,半引きこもり状態となり,数年が経過し,外出ができるのは特定の親族が同伴する時のみであった。居宅介護サービスを提供していた事業所の紹介で,相談支援センターに日中活動の場,短期入所の件で相談があった。 本人の発語は2語文レベルだが,日常習慣化している言語は理解可能である。人的・物的な刺激に過敏に反応し,それがきっかけとなって他害を行う特性がある。 本人の行動の意味を解釈するために,高度なスキルを持つ居宅介護事業所が,支援者と家族が共通に使用する書式を整え,不適応行動の状況把握と分析を行った。家族と支援者が一貫性のある対応を行ったことで,不適応行動が減少し,外出範囲が少しずつ拡大していった。しかし,このような不適応行動記録書式の作成や分析は,居宅介護事業所の業務の範疇を超えており,かつ,高度なスキルを持つ支援者も非常に限られているため,今後の有効な人材育成策が強く望まれる事例。 【利用者の状態】 ・年齢:20歳代 ・障がいの程度:身体障害者手帳1級,療育手帳A1 ・障がい程度区分:区分6 ・利用しているサービス:居宅介護,行動援護,福祉作業所 【この事例の地域課題】 この事例からは,「行動障がいのある障がい者の行動の意味を解釈できる人材が限られている」ことを地域課題として認めた。 【事例概要2】 もともと行動障がいのため既存サービスにつながりにくかった方が粗暴行為により自宅で生活できなくなり,ケアホーム入居に向けて体験利用中であったが,支援者への粗暴行為・飛び出し・破壊行為等で警察に保護され,市外の精神科病院へ医療保護入院となった。精神科病院に入院したことで本人は落ち着き,服薬にも応じるようになった。さらに,病院で誤学習の矯正にも取り組んでもらうことができた。しかし,発達障がいの専門性と支援力のある支援者が極めて少なく,受入れ施設が限られており,また,市内で成人の発達障がいをきちんと見立てることが可能な病院はほとんど無い。そのため,成人期の発達障がいのある人について,本人の行動の意味を理解し,継続的な個別療育プログラムを組み立ててくれる機関が限られており,今後の社会資源の整備が望まれる事例。 【利用者の状態】 ・年齢:20歳代 ・障がいの程度:療育手帳B2 ・障がい程度区分:区分4 ・利用しているサービス:ケアホーム(体験利用),生活介護,精神科病院,福岡市強度行動障がい者支援事業の共同支援 【この事例の地域課題】 この事例からは,「成人期の発達障がいのある人の,本人の行動の意味の解釈や,継続的な個別療育プログラムを組み立ててくれる機関が限られている」ことを地域課題として認めた。 【事例概要3】 特別支援学校中学部3年生。自閉性障がいがあり,特別支援学校の小学部3年生頃から,他害,急な飛び出し,破壊行動,服脱ぎ,道端での排せつ行為等が始まった。自宅ではほぼ母と2人暮らし。母は本人の言いなりで問題行動を止めることができなくなっており,本人も中学部進学による環境変化等のギャップにより,行動障がいが激しくなっていった。学識経験者の助言により生活環境を見直し,スケジュールを再構築するなどして生活支援を行っているが,ホームヘルパーには高度な支援スキル(行動障がいを理解し,行動の意味を察知でき,危険予測をした上での動き方が可能など)が要求されるため,支援者が限定されてしまっている事例。 【利用者の状態】 ・年齢:10歳代 ・障がいの程度:療育手帳A2 ・障がい程度区分:なし ・利用しているサービス:居宅介護,放課後支援,日中一時支援,短期入所 【この事例の地域課題】 この事例からは,「@行動の意味を解釈し,それに応じた生活の具体的なプログラムや療育方法を作成し,継続的にモニタリングを行う専門機関が不明確であること,A自閉症の特性に応じた特別な支援ができるホームヘルパーが不足していること」を地域課題として認めた。 【総合的に考えられる地域課題】 これら3つの事例を総合的に考慮し,「行動障がいのある障がい者の行動の意味を解釈及び生活支援プログラムを組み立てることができる人材,専門機関が限られている」ことを最終的な地域課題とすることとした。 (3)地域課題の解決方法の案 行動障がいのある障がい者への望ましい支援体制としては,市内の専門機関に,行動障がいの行動の意味を解釈し,生活支援プログラムを作成できる人材を数人配置し,利用者が在宅サービスを利用する場合や,通所先に行動障がいの支援に不慣れな職員しかいない場合に,相談支援機関の要請に基づき現場へ派遣できるような体制を作ることが必要である。 このような人材の育成と派遣体制づくりについては,福岡市が進める「福岡市における強度行動障がい者の支援拠点のあり方」の検討の中で併せて検討し,できる限り早期に実現することが必要である。 3 発達障がい者及び精神障がい者(発達障がい者を除く)の就労支援の拡大について (1)現状の問題点 @当事者への支援に関する問題点 発達障がいの当事者は自らの障がい特性を理解し,それを受容し,適切な対応をとれるようになるためには,かなりの時間がかかるが,そのための職場体験,職場訓練の場が少ない。引きこもりなど就労意欲が乏しい発達障がい者や就労イメージの希薄な発達障がい者に対し,生活訓練などで時間をかけて訓練を行い,就労までつなげられる事業所が少ない。 また,高校や大学の在学中は,就職活動前に必要な自己の障がいを理解するための就労支援機関などとの関わりがないため,就労に必要なビジネスマナーなどのスキルを身につけることなく,就職活動に突入し,そのために就職できなかったり,就職できても二次障がいを抱えるという状態になることがある。 発達障がい者を除く精神障がい者は,身近に目標とするような就労のモデル的な存在がいないことが多く,就職しても精神的な不安定さや職場の支援不足により,就労を継続することが難しい場合がある。 A支援者側の問題点 発達障がい者は,本人と周辺との認知のずれを説明できる人を必要としているが,就労移行支援事業所など支援機関の中に発達障がいの特性を十分に理解している人が少なく,本人の自己理解をサポートできていないことが多い。 さらに,発達障がい者には支援の継続性を確保することが必要であるが,就労移行支援事業所は就職し,ジョブコーチ支援期間が終了すれば,そこで支援が終わってしまう。本人は,会社内で上司等に相談することも難しいため,会社外に相談する場所が必要になってくる。 また,本人が退職後,1人で求職を行う場合にはうまく行かず,相談機関に戻ってきてしまうことが多い。 B企業側の問題点 企業側においては,障がい者の求人数は増えているが,精神障がい者の受け入れについてはまだ消極的な企業が多い状況である。これは企業の精神障がいに対する理解が不足している部分も大きいためと考えられる。精神障がい者にとってはオープンで就職したいと思っても,本人が希望するような障がい者求人は少なく,クローズで就職せざるを得ない現状がある。クローズで就職した場合には,直接的な支援が受けられないため,職場定着が難しい場合がある。 (2)今後の就労拡大に向けた取り組み案 就労支援部会の報告を受けて記入予定