福岡市障がい児・者等実態調査報告書 概要版 平成26年3月 福岡市 T 調査の概要 1.調査の目的 この調査は、福岡市に居住する障がい児・者等の生活実態や意識、福祉施策に対する要望等を把握することを目的として実施しました。調査結果は、次期の「福岡市障がい福祉計画」及び「福岡市障がい者計画」の策定に活用していきます。 2.調査の設計と回収(実施)状況 今回の調査では、過去概ね5年に一度実施してきた「身体・知的障がい児・者実態調査」と「精神障がい者の実態調査」に加え、「発達障がい児・者実態調査」や「難病患者実態調査」、「事業者等状況調査」等の調査を実施しました。   U 障がい児・者等の概況(統計データ) 1.身体・知的障がい児・者数 福岡市の身体・知的障がい児・者数(身体障害者手帳または療育手帳の所持者、重複含む)は、平成25年6月30日現在で60,863人となっています。人口1,000人あたりの出現率は41.5‰(パーミル)であり、市民の約24人に1人が身体または知的の障がいがあるという状況です。 身体障がい児・者は、9割以上(97.9%)が18歳以上です。 一方、知的障がい児・者では、身体障がいに比べて、18歳未満の障がい児の占める割合が高く、全体の3割弱(28.2%)が18歳未満です。 平成2〜25年度までの23年間の年次推移をみると、身体障がい児は1,000〜1,100人前後で大きな変動はないものの、その他はいずれも大きく増加しており、身体障がい者は平成2年度の2.4倍、知的障がい者は3.0倍、知的障がい児は2.2倍となっています。 人口1,000人あたりの出現率(‰)はいずれも上昇傾向にあり、特に身体障がい者では、高齢化の進行等の影響もあり、平成2年度:23.0‰から平成25年度:41.2‰へ18.2ポイント上昇しています。 2.身体障がい児・者の状況 身体障がい児・者の障がいの程度(手帳等級)をみると、平成25年6月30日現在、1・2級を合計した重度者が26,062人と全体の約半数(50.6%)を占めています。身体障がいの種別(主な障がいの部位)をみると、肢体不自由が27,925人(54.2%)と全体の過半数を占めて最も多くなっており、これに内部障がいが15,353人(29.8%)で続いています。 手帳等級別の年次推移をみると、平成2年度から平成25年度までの23年間で全体では2.3倍の増加ですが、重度者が2.6倍、中度者が2.5倍、軽度者が1.5倍と、特に重・中度者の増加が顕著です。 3.知的障がい児・者の状況 知的障がい児・者の障がいの程度(手帳判定)をみると、平成25年6月30日現在、A判定(A1-A3)の重度者が4,222人と全体の4割強(45.4%)を占めています。 平成2〜25年度までの23年間の年次推移をみると、重度者が2.2倍、中度・軽度者が3.3倍と、重度者に比べて、中度・軽度者の増加が顕著です。 4.精神障がい者の状況 今回の調査で把握した、現住所が福岡市にある精神障がい者(医学的にみて、精神疾患を有する者)の数は35,650人で、内訳は入院中の者が3,603人、通院中の者が32,047人となっています。 平成17年度からの推移をみると、平成25年度までの8年間で入院者数はほぼ横ばいですが、通院者数は1.6倍に増加しています。 5.発達障がい児・者の状況 発達障がいについては、身体・知的障がいのように手帳制度がないため、全国的に見ても、正確な人数が把握できない状況ですが、心身障がい福祉センター(あいあいセンター)、西部療育センター及び東部療育センターの新規受診児数の推移をみると、全体の数は近年増加傾向にあり、また、新規受診児の約6割強が発達障がいと診断された児童となっています。 6.難病患者の状況 難病について、特定疾患医療受給者証所持者数の年次推移をみると、平成21年度から平成24年度までの3年間で全体・女性・男性いずれにおいても1.2倍の増加となっていますが、平成23年度から平成24年度には若干減少しています。 V 主な調査結果 V―1 基本属性 1.性別 〜発達障がいでは「男性」が7割強を占める〜 障がいの種別により、男女構成比に違いがあり、身体障がい、精神障がい者(通院)、精神障がい者(入院)等では男女構成比の差は小さくなっています。発達障がい児・者は、男女構成比の差が大きく、男性が7割強を占めています。 2.年齢 〜身体障がい者は高齢者(65歳以上)が7割弱〜 障がい者の年齢構成をみると、身体障がい者では65歳以上の高齢層、知的障がい者では20歳代以下の若年層の占める割合が高くなっています。発達障がい者は、保護者の会等の関係団体等を通じて調査を実施したこともあり、20歳代以下の若年層が8割を占めて多くなっています。 精神障がい者は、通院者に比べて入院者の方が65歳以上の高齢層が多く、入院者では高齢層が半数を占めています。 難病患者は65歳以上の高齢層が4割強を占めていますが、40歳代〜60歳代前半もそれぞれ1割強となっています。 身体・知的障がい児の3歳毎の年齢構成をみると、概ね年齢が上がるほど割合が高くなっています。 V―2 生活の状況 1.住まいの形態 〜身体・知的障がい者、発達障がい児・者、難病患者の過半数は持ち家〜 住まいの形態は、精神以外の障がいでは「自分や家族の持ち家」が過半数を占めて、最も多くなっています。 精神障がい者(通院)では「民間の借家等」の割合が半数弱で最も多くなっています。一方、入院者では「その他」の割合が37.7%と最も高くなっていますが、そのうち「住居なし」が31.8%となっています。 2.世帯構成 〜知的・発達障がい者の7割〜8割強は親と同居〜 世帯構成は、高齢層が多い身体障がい者では「二世代同居(子と本人)」(31.1%)や「夫婦のみ」(29.4%)等が3割前後と多くなっています。また、難病患者でも同様の傾向が見られます。 若年層が多い知的障がい者や発達障がい者では「二世代同居(親と本人)」が7割〜8割強を占めており、親との同居率が高くなっています。 精神障がい者では、他の障がいに比べて「一人暮らし」の割合が高く、入院者では過半数となっています。 3.主な介助者 〜身体・知的障がい児や発達障がい児・者では「母親」が7〜8割〜 障がい者の主な介助者は、身体・知的障がい児や発達障がい児・者では「母親」が7〜8割を占めて最も多くなっています。また、若年層が多い知的障がい者でも「母親」が半数を占めています。 精神障がい者や難病患者では「世話をしてもらう必要がない」の割合が他の障がいに比べて高くなっています。また、「配偶者(夫・妻)」が介助している割合が2割台となっています。 4.主な日中の過ごし方 〜高齢層が多い身体障がい者では「自宅で過ごしている」が6割弱〜 障がい者の主な日中の過ごし方をみると、身体障がい者や難病患者では「自宅で過ごしている」が最も多くなっています。また、20歳代以下の若年層が多い知的障がい者、発達障がい児・者でも2割前後を占めています。 知的障がい者では「作業所や福祉施設で働いている」、難病患者では「社員・従業員として働いている」の割合がそれぞれ3割を占めており、他の障がいに比べてその割合が高くなっています。 V―3 外出の状況について 1.主な外出先 〜いずれの障がいにおいても「買い物」が6〜7割〜 主な外出先を見ると,「買い物」、「病院・医院など」、「食事・喫茶」、「散歩・散策」はいずれの障がいにおいても、上位5項目に入っており,特に「買い物」が6〜7割を占めています。 身体障がい者では「病院・医院など」が7割弱、身体・知的障がい児では「幼稚園・保育所(園)・学校」が7割強で最も多くなっています。 2. 外出時に不便や困難を感じること 〜歩道の整備や段差、道路の障害物が問題〜 外出時に不便や困難を感じることは「歩道がない道路に危険を感じる」や「歩道に段差が多い」、「道路に自転車などの障害物が多い」等、歩道の整備や道路関係に関する項目が上位を占めています。 身体・知的障がい児や精神障がい者(通院)、発達障がい児・者では「まわりの人の目が気になる」という意見が上位に挙がっています。発達障がい児・者では「困った時、まわりの人が助けてくれない」という意見も多くなっています。 V―4 就労について 1.就労状況・就労形態 〜身体障がい者は「正社員」、知的障がい者は「施設」で就労〜 仕事をしている人は、64歳以下の身体障がい者の44.3%、知的障がい者の37.4%、発達障がい児・者の32.1%、精神障がい者(通院)の30.9%、難病患者の34.6%となっています。 就労形態をみると、64歳以下の身体障がい者、精神障がい者(通院)、発達障がい児・者、難病患者では「正規の社員・従業員」が全体の4割弱〜半数弱を占めていますが、知的障がい者では1割強に留まっています。また、知的障がい者では、施設で働いている人が4割強(42.6%)を占めて最も多くなっています。 2.就労支援として必要なこと 〜知的・発達障がい者では『ジョブコーチ』のニーズが高い〜 障がい者の就労支援として必要なことをみると、「調子の悪いときに休みを取りやすくする」や「短時間勤務などの労働(作業)時間の配慮」は各障がいに共通して上位にあがっています。 知的障がい者・発達障がい者では「仕事(作業)上の援助や本人・周囲への助言を行う者による支援」、いわゆる『ジョブコーチ』に関するニーズが高くなっています。 なお、発達障がい者では、「発達障がいの特性を踏まえた作業手順の視覚化などの配慮」(71.2%)が第1位となっています。 V―5 福祉サービスの利用と提供について 1-1.福祉サービスの利用状況と利用意向(身体障がい者、知的障がい者、身体・知的障がい児) 〜「地下鉄料金の助成」の利用状況が上位〜 身体障がい者では、「地下鉄料金の助成」(29.3%)や「福祉乗車券の交付」(27.2%)の利用状況が3割弱と高くなっています。今は利用していないサービスの今後の利用意向としては、「福祉タクシー料金の助成」(22.0%)が最も高いです。 知的障がい者と身体・知的障がい児では、「福岡市重度心身障がい者福祉手当」や「地下鉄料金の助成」の利用状況が3割前後と高くなっています。 知的障がい者では「グループホーム・ケアホーム」(19.3%)の利用意向が2割と高くなっています。 身体・知的障がい児では「放課後等デイサービス」(25.9%)や「短期入所」(22.9%)の利用意向が高くなっています。また、「就労移行支援」(16.9%)や「就労継続支援(B型)」(16.5%)、「就労継続支援(A型)」(15.6%)など、就労関係のサービスの利用意向が2割弱となっています。 1-2.福祉サービスの利用状況と利用意向(難病患者) 〜「移動支援」や「居宅介護」の利用意向が高い〜 難病患者では「居宅介護」(8.7%)や「日常生活用具」(6.3%)、「補装具」(6.3%)を利用している人が1割弱を占めています。 今後の利用意向としては「移動支援」(11.3%)や「居宅介護」(10.7%)が上位に挙がっています。 他の障がいに比べて、福祉サービスの利用状況・利用意向はともに低い傾向が見られます。 1−3.医療・福祉サービスの利用状況と利用意向(精神障がい者[通院]) 〜「デイケア」の利用が最も多いが、利用意向としては「地下鉄料金の助成」等が上位〜 精神障がい者(通院)では「デイケア」を利用している人が3割(29.7%)と最も多く、次いで「地下鉄料金の助成」(20.8%)と「訪問看護」(17.4%)が2割前後となっている。 利用意向としては、「地下鉄料金の助成」(35.5%)や「福祉乗車券の交付」(31.4%)が3割を超えて高くなっている。 2.事業者が提供しているサービス 〜「居宅介護」が最多〜 サービス事業者に対して、提供しているサービスをたずねたところ、「居宅介護」(46.9%)が最も多く、次いで「重度訪問介護」(31.5%)、「移動支援」(30.0%)等となっています。 3.事業者側からみた不足している社会資源 〜「医療ケアが可能な短期入所施設」が不足〜 相談支援事業者及び施設事業者に対して、福岡市に不足している社会資源は何かたずねたところ、7割弱(67.6%)は「医療ケアが可能な短期入所施設」が不足していると感じており、次いで「障がい者支援施設(入所)」(40.4%)、「障がい者が入居できる住まい」(36.9%)等となっています。 V―6 障がいに対する差別について 1.差別等を受けた経験 〜知的障がい者、障がい児、発達障がい児・者は6割前後が経験あり〜 障がいがあるために差別を受けたり、嫌な思いをした経験がある人は、身体障がい者では2割(20.6%)精神障がい者(通院)では3割強(33.2%)、難病患者では2割弱(17.7%)ですが、知的障がい者(56.3%)や身体・知的障がい児(61.5%)、発達障がい児・者(63.8%)では6割前後を占めています。 2.差別を受けた内容 〜「近所の人達の対応」「学校、職場、施設などでの不当な扱い」等が上位〜 差別を受けた内容では、すべての障がいに共通して「近所の人達の対応で不愉快な思いをした」や「相談機関・相談窓口に行った時、職員の対応で不愉快な思いをした」が上位5位内にあがっています。 身体・知的障がい児では「施設や園、学校の職員及び他児童生徒の対応で不愉快な思いをした」(44.6%)が第1位となっています。 身体障がい者と精神障がい者(通院)、難病患者では「障がい(病気、疾患)を理由とした不採用や解雇」がそれぞれ3位以内に入っています。 3.障がい者の人権に関して問題があること 〜「障がい者に対する理解を深める機会が少ないこと」等が上位〜 障がい者の人権に関して問題があると思うことでは、すべての障がいに共通して「人々の障がい者に対する理解を深める機会が少ないこと」や「差別的な言動を受けること」等が上位5位内にあがっています。 身体障がい者と難病患者では「道路の段差や建物の階段など外出先での不便が多いこと」が第1位となっています。 発達障がい者では「発達障がいの特性から生じる困難さに対し、配慮がなされないこと」(67.3%)の割合が7割弱と高く、第1位となっています。 身体障がい者と知的障がい者、精神障がい者(通院)、難病患者では「障がい者の意見や行動が尊重されないこと」が上位5位以内に入っています。 V―7 地域とのかかわり・障がい福祉全般について 1.地域から受けたい支援や交流の内容 〜ほとんどの障がいで「定期的な声かけ(見守り)」、精神障がい者(通院)では「相談相手」が第1位〜 地域から受けたい支援や交流の内容は、精神以外の障がいでは「普段から定期的に声かけなどをする(見守る)」が第1位となっています。精神障がい者(通院)では「相談相手になる」(26.5%)が第1位であり、「普段から定期的に声かけなどをする(見守る)」は第3位となっています。 知的障がい者と身体・知的障がい児では「外出時に付き添う」が第3位にあがっています。 2.障がい者福祉施策として国や県、市に力をいれてほしいこと 〜「医療」「所得保障」「就労支援」等が上位〜 身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者(通院)、難病患者では「障がい者に配慮した保健、医療体制及び医療費公費負担制度の充実」、「年金など、所得保障の充実」が共通して上位1・2位にあがっています。 身体・知的障がい児では「特別支援教育の充実」(34.7%)、発達障がい児・者では「就労支援の充実」(44.7%)が第1位にあがっています。 身体・知的障がい児、発達障がい児・者では「乳幼児から成人期までの支援を一貫して実施できる仕組みづくり」が上位に入っています。 3.障がい者支援として地域社会や企業等に望むこと 〜「障がいに対する理解を深める」「企業での積極的な雇用」等が上位〜 障がい者支援として地域社会や企業等に望むことをみると、身体障がい者では「公共交通機関や建物等を障がい者が利用しやすいようにつくる」、それ以外では「障がいに対する理解を深める」がそれぞれ第1位となっています。 全ての障がいに共通して「障がいに対する理解を深める」や「企業で障がい者を積極的に雇用する」、「公共交通機関や建物等を障がい者が利用しやすいようにつくる」、「障がい者等を支える地域活動やボランティア活動を活発にする」が上位5位以内となっています。 精神障がい者(通院)では「一般企業で働ける(働き続ける)ための支援」が第2位にあがっています。