○福岡市中小企業振興条例

平成29年6月26日

条例第46号

福岡市中小企業振興条例(昭和48年福岡市条例第21号)の全部を改正する。

福岡・博多のまちは、アジアに近いという地理的特性から、「金印」や「鴻臚館」に象徴されるように、古来、アジアと日本の交流の窓口として発展してきた。中世においては、博多湾に面する国際貿易都市として、博多商人が活躍し、その進取、自由、自治の精神に富む気質は、脈々と受け継がれ、まちに活力を生み出している。

今日、福岡市は、陸海空の交通の拠点を擁し、アジアに開かれた交流拠点都市として、国内外から多くの人々が観光やビジネスのために訪れている。市民生活を支える卸売業、小売業、サービス業などに加えて、新たな経済の活力を生み出す情報関連産業、クリエイティブ産業などの創業や集積も進んでおり、九州・西日本を代表する大都市として、また、日本経済を牽引する創業、成長の拠点として発展を続けている。

こうした福岡市の発展の原動力となってきたのは、市内に所在する事業所の多くを占める中小企業である。中小企業は、地域資源を活用し、創意工夫を凝らしながら、新しい商品やサービスの開発などに積極的に挑戦している。また、その事業活動を通じて、市民の雇用や暮らしを支えるとともに、地域社会においても、コミュニティの活性化、防災や災害時の対応などに、重要な役割を果たしている。

しかしながら、急速な人口の減少、少子高齢社会の進展、自然災害リスクの増大など、深刻な社会的課題に加え、世界経済の変動リスク、グローバル化に伴う国内外の企業間競争の激化、IoT、ビッグデータ、人工知能等による第4次産業革命とも呼ぶべき技術革新など、中小企業は、これまでにない経営環境の変化に直面している。

このような状況の下、人と環境と都市活力の調和がとれた都市として、生活の質の向上と都市の成長の好循環を創り出していくためには、直面している経営環境の変化を新たなビジネスチャンスと捉え、中小企業が自主的な経営の革新、第二創業やイノベーションの実現に果敢に挑戦するとともに、福岡市における産業振興の特色である産学官の連携をさらに推し進め、中小企業の活動を、市、中小企業支援団体等、金融機関等、大企業者、教育機関、大学等研究機関及び市民が一丸となって支援していく必要がある。

よって、地域社会全体で中小企業の振興を図り、中小企業が生き生きと活動する、活力ある福岡市の実現を図るため、ここに、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、中小企業が本市経済において果たす役割の重要性に鑑み、中小企業の振興に関し、基本理念を定め、市の責務、中小企業者が努めるべき事項等を明らかにするとともに、中小企業の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、中小企業の振興を総合的かつ計画的に推進し、もって中小企業の健全な発展、本市経済の活性化及び市民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号。以下「法」という。)第2条第1項の中小企業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 協同組合等 次に掲げる中小企業者の団体又はこれに準じるもので市長が認めたものをいう。

 中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号)第3条第1項に規定する事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、企業組合、協業組合、商工組合及び商工組合連合会

 商店街振興組合法(昭和37年法律第141号)第2条第1項の商店街振興組合及び商店街振興組合連合会

 生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号)第3条の生活衛生同業組合

(3) 中小企業支援団体等 商工会議所、商工会、協同組合等その他の中小企業に対する支援を行う団体又は個人をいう。

(4) 金融機関等 銀行、信用金庫、信用協同組合その他の金融機関及び信用保証協会であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(5) 大企業者 中小企業者以外の事業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(6) 教育機関 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条の学校その他の教育、学術又は文化に関する事業を行う機関であって、市内においてこれらを行うものをいう。

(7) 大学等研究機関 学校教育法第1条の大学及び高等専門学校その他の研究開発を行う機関であって、市内においてこれを行うものをいう。

(基本理念)

第3条 中小企業の振興は、中小企業者が経営基盤の強化、生産性の向上をはじめとする経営の改善及び経営の革新(法第2条第2項の経営の革新をいう。以下同じ。)に自主的に努めるとともに、市、国、関係地方公共団体、中小企業支援団体等、金融機関等、大企業者、教育機関、大学等研究機関及び市民の協力を得ることを基本として、推進されなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、中小企業の振興に関し、施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施しなければならない。

2 市は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、中小企業者の実態の把握に努めるとともに、国、関係地方公共団体、中小企業者、中小企業支援団体等、金融機関等、大企業者、教育機関、大学等研究機関及び市民と連携し、及び協力して効果的に実施するよう努めなければならない。

(中小企業者の努力)

第5条 中小企業者は、基本理念に基づき、経済的社会的環境の変化に対応して、自主的に経営基盤の強化、生産性の向上をはじめとする経営の改善及び経営の革新を図るよう努めなければならない。

2 中小企業者は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、中小企業者相互の連携及び協力に努め、その事業活動を通じて、地域社会の発展及び市民生活の向上に貢献するよう努めるものとする。

3 中小企業者は、雇用の安定及び人材の育成並びに従業員の労働環境の整備及び福利厚生の充実に努めるものとする。

4 中小企業者は、市が実施する中小企業の振興に関する施策(以下「中小企業振興施策」という。)に協力するよう努めるものとする。

(中小企業支援団体等の役割)

第6条 中小企業支援団体等は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、基本理念に基づき、中小企業者が行う自主的な経営基盤の強化、生産性の向上をはじめとする経営の改善及び経営の革新を図るための取組を積極的に支援するとともに、中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。

(金融機関等の役割)

第7条 金融機関等は、事業活動を行うに当たっては、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、基本理念に基づき、中小企業者の経営努力を支援するよう努めるものとする。

2 金融機関等は、中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。

(大企業者の役割)

第8条 大企業者は、事業活動を行うに当たっては、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、基本理念に基づき、中小企業者との連携及び協力に努めるものとする。

2 大企業者は、中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。

(教育機関等の役割)

第9条 教育機関は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、基本理念に基づき、次世代を担う児童生徒等に対し教育活動を通じて、勤労及び職業に対する意識の啓発並びに中小企業が果たす役割等に対する理解の促進に努めるものとする。

2 大学等研究機関は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、基本理念に基づき、中小企業者との共同研究、中小企業者の技術の革新と向上を図るための支援及び中小企業の振興に資する人材の育成を行うとともに、中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。

(市民の理解と協力)

第10条 市民は、基本理念に基づき、中小企業が果たす役割並びに地域社会と中小企業との連携の重要性を理解し、中小企業の健全な発展に協力するよう努めるものとする。

(経営基盤の強化)

第11条 市は、中小企業者の経営基盤の強化を促進するため、次に掲げる施策の推進を図るものとする。

(1) 中小企業者の経営に関する相談及び助言に関すること。

(2) 中小企業者に対する資金の供給の円滑化に関すること。

(3) 中小企業者が行う販路開拓の促進に関すること。

(4) 中小企業者の経営の承継の円滑化に関すること。

(5) 中小企業者における人材の確保及び育成に関すること。

(6) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認めること。

(持続的発展の促進)

第12条 市は、中小企業者の持続的発展を促進するため、次に掲げる施策の推進を図るものとする。

(1) 商店街の振興に関すること。

(2) 伝統産業その他の地域資源や特産品に係る地場産業の振興に関すること。

(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認めること。

(多様で活力ある成長発展の促進)

第13条 市は、経済的社会的環境の変化に対応した、中小企業者の多様で活力ある成長発展を促進するため、次に掲げる施策の推進を図るものとする。

(1) 中小企業者の創業及び第二創業(既に事業を営んでいる中小企業者が、事業の形態の転換又は新しい事業若しくは分野に進出することをいう。)並びに経営の革新に関すること。

(2) 中小企業者の新商品及び新役務に係る研究開発、技術革新及び事業化の促進に関すること。

(3) アジアをはじめとする海外市場への事業展開や海外需要の取込みの促進に関すること。

(4) 知識創造型産業(ソフトウェアの開発、半導体製品の設計その他の電子計算機を用いて情報、知識等の知的資源を活用した製品開発を行う事業及びこれに付随するものをいう。)その他の本市経済の次代を担う産業の振興に関すること。

(5) 観光及びMICE(国際会議その他の多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントをいう。)の振興に関すること。

(6) 企業立地及び産業集積の促進に関すること。

(7) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認めること。

(小規模企業者への配慮)

第14条 市は、中小企業の振興に関する施策を講じるに当たっては、経営資源の確保が特に困難であることが多い小規模企業者(法第2条第5項の小規模企業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。)の事情に配慮するよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第15条 市長は、規則で定めるところにより、組織化(中小企業者が第2条第2号に規定する事業協同組合、事業協同小組合、企業組合、協業組合、商工組合及び商店街振興組合を組織することをいう。)、集団化(独立行政法人中小企業基盤整備機構施行令(平成16年政令第182号)第3条第1項第3号の事業又はこれに準じる事業で、市長が認めたものをいう。)及び共同施設(同項各号(第3号を除く。)に掲げる事業を行うための施設又はこれらに準じる施設で、市長が認めたものをいう。)の設置に要する助成金の交付その他の助成措置を講じることができる。

2 市は、前項に定めるもののほか、中小企業の振興に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講じるよう努めるものとする。

3 市は、工事の発注、物品及び役務の調達等に当たっては、予算の適正な執行並びに透明かつ公正な競争及び契約の適正な履行の確保に留意しつつ、中小企業者の受注の機会の確保に努めるものとする。

(基本計画の策定)

第16条 市長は、中小企業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 市長は、基本計画を策定しようとするときは、第18条第1項の福岡市中小企業振興審議会の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。

4 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(実施状況の公表)

第17条 市長は、毎年度、中小企業の振興に関する施策の実施状況を公表しなければならない。

(中小企業振興審議会)

第18条 この条例の適正な運用を図り、本市の中小企業の振興に関し広く意見を反映させるため、市長の附属機関として福岡市中小企業振興審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(委任)

第19条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成29年7月1日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行の際現にこの条例による全部改正前の福岡市中小企業振興条例(以下「旧条例」という。)の規定による助成を受けている中小企業者及び協同組合等に係る取扱いについては、この条例による全部改正後の福岡市中小企業振興条例(以下「新条例」という。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。

3 旧条例第16条第1項の規定により置かれた福岡市中小企業振興審議会は、この条例の施行の日において、新条例第18条第1項の規定により置かれた審議会となり、同一性をもって存続するものとする。

福岡市中小企業振興条例

平成29年6月26日 条例第46号

(平成29年7月1日施行)