○福岡市男女共同参画を推進する条例
平成16年3月29日
条例第5号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 男女共同参画の推進を阻害する行為の制限(第9条・第10条)
第3章 男女共同参画の推進に関する基本的施策等(第11条―第25条)
第4章 施策に対する苦情の処理(第26条)
第5章 福岡市男女共同参画審議会(第27条―第32条)
第6章 雑則(第33条)
附則
日本国憲法において、個人の尊重と法の下の平等がうたわれており、我国では、国際的な連携のもと、法令の整備をはじめ、男女平等の実現に向けた取組がなされてきた。
福岡市においても、こうした国際社会や国の動向を踏まえ、男女平等の促進や女性の社会参画の支援などを積極的に進めてきたが、なお一層の努力が必要とされている。
一方、少子高齢化の進展、社会経済情勢の急速な変化、家族形態の多様化、地域社会の変化に対応し、本市が目指す自由かっ達で人輝く自治都市・福岡を形成していくうえでも、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、重要な課題となっている。
このような認識のもと、男女共同参画の推進に関する基本理念を明らかにし、市民一人ひとりが個人として尊重され、多様な生き方を選択できる男女共同参画社会の実現に向けて、市と市民が協力して取り組むため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性にかんがみ、男女共同参画の推進に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民、事業者、自治組織及び教育に携わる者の役割を明らかにするとともに、男女共同参画の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画を総合的かつ計画的に推進し、もって男女共同参画社会を形成することを目的とする。
(1) 男女共同参画 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことをいう。
(2) 積極的改善措置 前号に規定する機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。
(3) 事業者 市内で事業を行う者をいう。
(4) 自治組織 町内会、自治会その他の市内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体をいう。
(基本理念)
第3条 男女共同参画の推進は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。
2 男女共同参画の推進に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画の推進を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない。
3 男女共同参画の推進は、男女が、社会の対等な構成員として、市における政策、民間団体における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されることを旨として行われなければならない。
4 男女共同参画の推進に当たっては、男女が、家庭の重要性を認識し、相互の協力と社会の支援のもとに、子育て、家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、職場、学校、地域等における活動を行うことができるよう配慮されなければならない。
5 男女共同参画の推進が国際社会における取組と密接な関係を有していることにかんがみ、男女共同参画の推進は、国際的な協調のもとに行われなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、男女共同参画の推進を主要な政策として位置付けるとともに、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画の推進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、及び実施しなければならない。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、職場、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、男女共同参画の推進のための取組を積極的に行うとともに、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、社会経済活動における影響力の大きさその他その役割の重大性にかんがみ、事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、男女共同参画の推進のための取組を積極的に行うとともに、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(自治組織の役割)
第7条 自治組織は、地域社会における自治の主たる担い手として重要な役割を果たす存在であることにかんがみ、地域活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、男女共同参画の推進のための取組を積極的に行うとともに、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(教育に携わる者の役割)
第8条 教育に携わる者は、教育が男女共同参画についての適切な理解を深めるために果たすべき役割の重要性にかんがみ、教育を行うに当たっては、学校、家庭、地域等との連携を図りながら、基本理念にのっとり、男女共同参画の推進に配慮するよう努めなければならない。
第2章 男女共同参画の推進を阻害する行為の制限
(性別による差別的取扱いの禁止)
第9条 何人も、職場、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、性別による差別的取扱いを行ってはならない。
(配偶者等への暴力等の禁止)
第10条 何人も、配偶者等に対する暴力、セクシュアル・ハラスメント(性的な言動によって相手の生活環境を害し、又は性的な言動に対する相手の対応を理由に不利益を与える行為をいう。以下同じ。)その他男女間において相手方に身体的又は精神的苦痛を与える行為を行ってはならない。
第3章 男女共同参画の推進に関する基本的施策等
(福岡市男女共同参画基本計画)
第11条 市長は、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な計画(以下「福岡市男女共同参画基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 福岡市男女共同参画基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 総合的かつ長期的に講じるべき男女共同参画の推進に関する施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な事項
3 市長は、福岡市男女共同参画基本計画を策定しようとするときは、福岡市男女共同参画審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、福岡市男女共同参画基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表するものとする。
5 前2項の規定は、福岡市男女共同参画基本計画の変更について準用する。
(実施状況等の公表)
第12条 市長は、毎年1回、男女共同参画の推進に関する施策の実施状況及びその評価について報告書を作成し、これを公表するものとする。
(施策の策定等に当たっての配慮)
第13条 市は、男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画の推進に配慮するものとする。
(政策の立案及び決定の過程への男女共同参画)
第14条 市は、政策の立案及び決定の過程における男女共同参画の推進のために、次に掲げる事項に取り組むものとする。
(1) 附属機関その他これに準じる合議制の機関の委員を委嘱し、又は任命する場合には、当該機関における男女の数の均衡を図るよう努めること。
(2) 男女の別なく、職員の能力及び意欲に応じた登用を図るため、女性職員に係る職域の拡大、能力向上の機会の確保、勤務環境の整備等に努めること。
(調査研究)
第15条 市は、男女共同参画の推進に関する施策の総合的かつ計画的な実施のために、情報の収集及び分析その他の調査研究を行うものとする。
(事業者への支援等)
第16条 市は、事業者に対し、男女共同参画の推進のための積極的な取組を促すため、情報提供その他の必要な支援を行うものとする。
2 市は、男女共同参画の推進に関する施策の策定又は実施に当たって必要があると認める場合は、事業者に対し、その者の事業に係る男女共同参画の状況を報告することその他必要と認める協力を求めるものとする。
(自治組織への支援)
第17条 市は、自治組織に対し、当該自治組織における方針決定過程への男女共同参画の推進を図るため必要な支援その他男女共同参画の推進のための支援を行うものとする。
(市民及び団体への支援)
第18条 市は、男女共同参画の推進に関する活動を行う市民及び団体に対し、当該活動について、情報提供その他の必要な支援を行うものとする。
(家庭生活における活動と他の活動との両立の支援)
第19条 市は、男女が共に、子育て、家族の介護等の家庭生活における活動と職場、学校、地域等における活動とを両立して行うことができるよう、必要な支援に努めるものとする。
(性及び妊娠、出産等に関する理解並びに健康の保持に対する支援)
第20条 市は、男女が対等な関係のもとに、性及び妊娠、出産等に関する事項について互いの理解を深め、尊重し合うことにより、生涯にわたって健康な生活を営むことができるよう、必要な支援に努めるものとする。
(暴力等の防止及び被害者等への支援)
第21条 市は、配偶者等からの暴力及びセクシュアル・ハラスメントを防止する施策を講じるとともに、これらの被害を受けた者等に対し、必要な支援を行うよう努めるものとする。
(相談への対応)
第22条 市は、性別による差別的取扱いその他の男女共同参画の推進を阻害する要因による人権侵害について、市民等(市内に住所を有する者及び市内に通勤又は通学をする者をいう。以下同じ。)から相談があった場合は、関係機関との連携のもとに適切な措置を講じるよう努めるものとする。
(市民等の理解を深めるための措置)
第23条 市は、男女共同参画に関する市民等の理解を深めるため、広報、啓発及び教育の充実に努めるものとする。
(国際的協調)
第24条 市は、アジア地域をはじめ海外諸地域の人々との情報交換その他男女共同参画の推進に関する国際的な相互協力を円滑に進めるために必要な措置を講じるよう努めるものとする。
(拠点施設)
第25条 福岡市男女共同参画推進センター条例(昭和63年福岡市条例第8号)第1条の規定により設置された福岡市男女共同参画推進センターは、市が男女共同参画の推進に関する施策を実施し、及び市民等による取組を支援するための拠点施設とする。
(平成17条例99・一部改正)
第4章 施策に対する苦情の処理
(施策に対する苦情の処理)
第26条 市長は、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策又は男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる施策について、市民等から苦情の申出があった場合は、福岡市男女共同参画審議会の意見を聴いたうえで、必要に応じて、適切な措置を講じるものとする。
2 市長は、前項の申出をした市民等に対し、当該申出に係る意見及び講じた措置の内容を通知しなければならない。
第5章 福岡市男女共同参画審議会
(設置)
第27条 市長の附属機関として福岡市男女共同参画審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第28条 審議会は、次に掲げる事務を行う。
(1) 市長の諮問に応じ、男女共同参画の推進に関する基本的かつ総合的な施策及び重要事項について調査審議し、その結果を市長に答申すること。
(2) 男女共同参画の推進に関し必要と認められる事項について調査審議し、市長に意見を述べること。
(組織及び委員)
第29条 審議会は、市長が任命する委員20人以内をもって組織する。
2 市長は、委員の一部については、公募に基づいて任命するものとする。
3 委員のうち男女いずれか一方の委員の数は、審議会の委員の総数の10分の4未満であってはならない。
4 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 委員は、再任されることができる。
6 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また同様とする。
(会長)
第30条 審議会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
(会議)
第31条 審議会の会議は、会長が招集し、会長がその議長となる。
2 審議会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。
3 審議会の議事は、出席委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(部会)
第32条 審議会は、必要に応じて、部会を置くことができる。
2 部会に属する委員は、審議会の委員のうちから会長が指名する。
3 部会に部会長を置き、部会に属する委員の互選によりこれを定める。
4 部会長は、部会の会務を総理する。
5 部会長に事故があるとき、又は部会長が欠けたときは、部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
6 審議会は、その定めるところにより、部会の決議をもって審議会の決議とすることができる。
第6章 雑則
(委任)
第33条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則 抄
(平成16年規則第99号により平成16年10月1日から施行)
附則(平成17年3月31日条例第99号)抄
この条例は、公布の日から施行する。