○福岡市長の政治倫理に関する条例
平成10年10月5日
条例第48号
(目的)
第1条 この条例は、市長の政治倫理基準を定めるとともに、資産等の公開、市民の調査請求等の制度を設けることにより、市長の政治倫理の確立を期し、もって民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。
(市長及び市民の責務)
第2条 市長は、市民全体の代表者として市政に携わるに当たっては、その権能が市民から委ねられたものであり、市民のために行使すべき責務を負っているものであることを強く自覚し、その使命の達成に努めなければならない。
2 市民は、主権者として自ら市政を担い、公共の利益を実現する責任を負うことについて自覚を持つとともに、自己の利益又は第三者の利益若しくは不利益を図る目的をもって、市長に対して、その権限又は地位による影響力を不正に行使させるような働きかけを行ってはならない。
(政治倫理基準)
第3条 市長は、次の各号に掲げる政治倫理基準を遵守しなければならない。
(1) 政治不信を招くことのないよう、品位と名誉を損なう行為を慎み、その権限又は地位のもたらす影響力を私的な目的のために行使しないこと。
(2) その地位又は権限を利用して金品を授受しないこと。
(3) 市民全体の利益の実現のために全力を尽くすことを基本とし、特定の者の利益を実現するために、職務執行上の有利な取り計らいをしないこと。
(4) 政治活動に関し、道義的に批判を受けるおそれのある趣旨の寄附を受領しないものとし、その資金管理団体についても、当該寄附を受領させないこと。
2 市長は、政治倫理基準に違反する事実があるとの疑惑をもたれたときは、自ら誠実な態度をもって疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明らかにしなければならない。
(平成17条例112・一部改正)
(資産等報告書の作成)
第4条 市長は、その任期開始の日(再選挙により市長となった者にあってはその選挙の期日とし、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第259条の2の規定の適用がある者にあっては当該者の退職の申立てがあったことにより告示された選挙の期日とし、更正決定又は繰上補充により当選人と定められた市長にあってはその当選の効力発生の日とする。次項において同じ。)において有する次の各号に掲げる資産等(その配偶者又は扶養する親族が有する当該各号に掲げる資産等を含む。次項において同じ。)について、当該資産等の区分に応じ当該各号に掲げる事項を記載した資産等報告書を、同日から起算して100日を経過する日までに、作成しなければならない。
(1) 土地(信託している土地(自己が帰属権利者であるものに限る。)を含む。) 所在、面積、取得した年月日及び固定資産税の課税標準額並びに相続(被相続人からの遺贈を含む。以下同じ。)により取得した場合は、その旨
(2) 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権 当該権利の目的となっている土地の所在及び面積、当該権利を取得した年月日及びその価額並びに相続により取得した場合は、その旨
(3) 建物 所在、床面積、取得した年月日及び固定資産税の課税標準額並びに相続により取得した場合は、その旨
(4) 預金及び貯金(規則で定める普通預金及び普通貯金を除く。) 預金及び貯金の額
(5) 有価証券(金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第1項及び第2項に規定する有価証券に限る。) 種類、取得した年月日、額面金額の総額及び時価の総額(株券にあっては株式の銘柄、取得した年月日、株数及び時価の総額とし、金銭信託にあっては金銭信託の元本の額とする。)
(6) 自動車、船舶、航空機及び美術工芸品(取得価額が100万円を超えるものに限る。) 種類及び数量
(7) ゴルフ場の利用に関する権利(譲渡することができるものに限る。) ゴルフ場の名称
(8) 貸付金(生計を一にする親族に対するものを除く。) 貸付金の額
(9) 借入金(生計を一にする親族からのものを除く。) 借入金の額
(平成14条例39・平成19条例45・一部改正)
(所得等報告書の作成)
第5条 市長(前年1年間を通じて市長であった者(任期満了により市長でない期間がある者で当該任期満了による選挙により再び市長となったものにあっては、当該市長でない期間を除き前年1年間を通じて市長であった者)に限る。)は、市長並びにその配偶者及び扶養する親族に係る次の各号に掲げる事項を記載した所得等報告書を、毎年、4月1日から同月30日までの間(当該期間内に任期満了により市長でない期間がある者で当該任期満了による選挙により再び市長となったものにあっては、同月1日から再び市長となった日から起算して30日を経過する日までの間)に、作成しなければならない。
(1) 前年分の所得に係る次に掲げる金額及びその基因となった事実
ア 総所得金額(所得税法(昭和40年法律第33号)第22条第2項に規定する総所得金額をいう。)及び山林所得金額(同条第3項に規定する山林所得金額をいう。)に係る各種所得の金額(同法第2条第1項第22号に規定する各種所得の金額をいう。)
イ 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)の規定により、所得税法第22条の規定にかかわらず、他の所得と区分して計算された所得の金額であって規則で定めるもの
(2) 前年中において贈与により取得した財産について同年分の贈与税が課される場合における当該財産に係る贈与税の課税価格(相続税法(昭和25年法律第73号)第21条の2に規定する贈与税の課税価格をいう。)
(3) 前年中において、生計を一にする親族以外の者から金銭、物品その他の財産上の利益の供与(供応接待に該当するもの、1件につき3万円に満たないものその他規則で定めるものを除く。)を受けた場合における当該供与により受けた利益の内容及び価額、供与を受けた年月日並びに利益を供与した相手方の氏名及び住所
(4) 前年中において、生計を一にする親族以外の者から供応接待(1件につき5万円に満たないものその他規則で定めるものを除く。)を受けた場合における当該供応接待の内容及び価額、供応接待を受けた年月日並びに供応接待をした相手方の氏名及び住所
(関連会社等報告書の作成)
第6条 市長は、毎年、市長又はその配偶者若しくは扶養する親族が4月1日において報酬を得て会社その他の法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。以下この条において同じ。)の役員、顧問その他の職に就いている場合には、当該会社その他の法人の名称及び住所並びに当該職名を記載した関連会社等報告書を、同月2日から同月30日までの間(当該期間内に任期満了により市長でない期間がある者で当該任期満了による選挙により再び市長となったものにあっては、同月2日から再び市長となった日から起算して30日を経過する日までの間)に、作成しなければならない。
(資産等報告書等の保存及び閲覧)
第7条 市長は、前3条の規定により作成した資産等報告書、所得等報告書及び関連会社等報告書(以下「資産等報告書等」という。)を、これらを作成すべき期限又は期間の末日の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならない。
2 何人も、市長に対し、前項の規定により保存されている資産等報告書等の閲覧を請求することができる。
(福岡市政治倫理審査会の設置)
第8条 政治倫理に関する審査、調査等を行うため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定に基づき、福岡市政治倫理審査会(以下「審査会」という。)を置く。
(審査会の所掌事務)
第9条 審査会は、次の各号に掲げる事務を行う。
(1) この条例の規定に基づき市長から求められた審査又は調査を行い、その結果を市長に報告すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、政治倫理の確立を図るため、市長から諮問を受けた事項について調査し、若しくは答申し、又は建議すること。
2 審査会は、前項の事務のほか、福岡市議会議員の政治倫理に関する条例(平成10年福岡市条例第49号)第1条の目的を達成するために必要な事務を、同条例の定めるところにより行う。
3 審査会は、前2項の事務を行うため、関係人に対し、説明又は資料の提供を求め、その他の必要な調査を行うことができる。
(審査会の組織及び委員)
第10条 審査会は、委員11人をもって組織する。
2 委員は、資産等報告書等の審査又はこの条例の規定に基づく調査に関して専門的知識を有する者及び市民(地方自治法第74条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「有権者」という。)に限る。)のうちから市長が議会の同意を得て選任する。
3 委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。
4 補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 審査会に、会長及び副会長各1人を置き、委員の互選によってこれを定める。
6 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
7 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。
8 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また同様とする。
(平成16条例40・一部改正)
(審査会の会議)
第11条 審査会の会議は、会長が招集し、会長がその議長となる。
2 審査会は、委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができない。
3 審査会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
4 審査会の会議は、公開とする。ただし、特別な理由がある場合において出席委員の3分の2以上の同意を得たときは、非公開とすることができる。
(資産等報告書等の審査)
第12条 市長は、資産等報告書等の写しを、これらを作成すべき期限又は期間の末日の翌日から起算して30日を経過する日までに審査会に提出し、その審査を求めなければならない。
2 審査会は、前項の規定により審査を求められたときは、速やかに審査を行い、審査を求められた日の翌日から起算して90日を経過する日までに、審査の結果及び意見を記載した審査報告書を作成し、市長に提出しなければならない。
3 市長は、前項の規定による審査報告書の提出を受けたときは、その要旨を速やかに公表しなければならない。
(市民の調査請求権)
第13条 市民は、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、有権者50人以上の者の連署をもって、これを証する資料を添付した調査請求書を提出して、審査会が調査を行うよう市長に請求することができる。
(1) 資産等報告書等の記載内容に疑義があるとき。
(2) 市長が政治倫理基準又は第21条に規定する請負契約等に関する遵守事項(以下「政治倫理基準等」という。)に違反する行為をした疑いがあるとき。
2 市長は、前項の規定による調査の請求がなされたときは、調査請求書及び添付資料の写しを審査会に直ちに提出して、その調査を求めなければならない。
4 市長は、前項の規定による調査報告書の提出を受けたときは、その要旨を速やかに公表しなければならない。
(市長の協力義務)
第14条 市長は、審査会の要求があるときは、審査若しくは調査に必要な資料を提出し、又は審査会の会議に出席して説明をしなければならない。
(信頼回復のための措置)
第15条 市長は、審査会の審査報告書若しくは調査報告書において資産等報告書等に事実と異なる記載がある旨又は市長の行為が政治倫理基準等に違反している旨の指摘がなされたときは、これを尊重して、市長自ら資産等報告書等の記載の訂正その他の市民の信頼を回復するために必要と認められる措置を講じなければならない。
(虚偽説明等の公表)
第16条 審査会は、市長が審査会に対し、事実と異なる説明をし、審査若しくは調査に協力せず、又は審査会の審査報告書若しくは調査報告書の要旨の公表を怠っていると認めるときは、期限を定めてその是正を市長に求めることができる。
2 審査会は、市長が期限までに正当な理由がなく前項の是正をしないときその他必要があると認めるときは、その内容を公表することができる。この場合において、審査会は、市長に対しあらかじめ弁明の機会を与えなければならない。
(贈収賄罪容疑による逮捕後の説明会)
第17条 市長は、刑法(明治40年法律第45号)第197条から第197条の4までの各条及び第198条に規定する罪(以下「贈収賄罪」という。)の容疑により逮捕された場合において、その職にとどまろうとするときは、その理由を市民に対して説明する会(以下「説明会」という。)の開催を審査会に求めることができる。
2 審査会は、前項の規定による請求があったときは、説明会を開催しなければならない。
3 市長は、説明会が開催されたときは、説明会に出席し、説明をするものとする。
(贈収賄罪容疑による起訴後の説明会)
第18条 市長は、贈収賄罪により起訴された場合において、その職にとどまろうとするときは、審査会に説明会の開催を求めなければならない。
2 審査会は、前項の規定による請求があったときは、説明会を開催しなければならない。
3 市民は、説明会が開催されないときは、有権者50人以上の者の連署をもって、審査会に説明会の開催を請求することができる。
4 前項の規定による請求は、市長が起訴された日の翌日から起算して50日以内に行わなければならない。
5 第3項の規定による請求があったときは、審査会は、開催することができない特別の理由がない限り、説明会を開催しなければならない。
6 市長は、説明会が開催されたときは、説明会に出席し、説明をしなければならない。
7 市民は、説明会において、市長が行った説明に関し市長に質問することができる。
(贈収賄罪確定後の措置)
第20条 市長が贈収賄罪により有罪とする判決の宣告を受け、その判決が確定したときは、公職選挙法第11条第1項及び地方自治法第143条第1項の規定により失職する場合を除き、市長は、その名誉と品位を守り、市民の信頼を回復するために必要と認められる措置を講じなければならない。
(市等との請負契約等に関する遵守事項)
第21条 市長、その配偶者若しくは扶養する親族又はこれらの者が実質的に経営に携わる法人(市の出資法人(市が設立した地方住宅供給公社、地方道路公社、土地開発公社及び地方独立行政法人並びに市が資本金、基本金その他これらに準じるものを出資している一般社団法人及び一般財団法人並びに株式会社をいう。以下同じ。)を除く。)は、地方自治法第142条の規定の趣旨を尊重し、市若しくは市の出資法人との間の工事、製造その他の請負契約、業務の委託契約及び物品の購入契約又はこれらの契約の下請負若しくは再委託に関する契約を締結しないよう努めなければならない。
(平成22条例3・一部改正)
附則
(平成11年規則第17号により平成11年3月26日から施行)
(政治倫理の確立のための福岡市長の資産等の公開に関する条例の廃止)
4 政治倫理の確立のための福岡市長の資産等の公開に関する条例(平成7年福岡市条例第64号。以下「旧条例」という。)は、廃止する。
(旧条例の廃止に伴う経過措置)
5 旧条例第2条から第4条までの規定により作成された資産等報告書及び資産等補充報告書、所得等報告書並びに関連会社等報告書の保存及び閲覧については、旧条例第5条の規定は、この条例の施行後においても、なおその効力を有する。
附則(平成14年3月28日条例第39号)抄
この条例は、公布の日から施行する。
附則(平成16年3月29日条例第40号)抄
この条例は、公布の日から施行する。
附則(平成17年10月3日条例第112号)
この条例は、平成18年1月1日から施行する。
附則(平成19年9月28日条例第45号)
(施行期日)
1 この条例は、平成19年9月30日から施行する。ただし、第4条第1項第4号の改正規定及び次項の規定は、平成19年10月1日から施行する。
(経過措置)
2 この条例による改正後の福岡市長の政治倫理に関する条例第4条第1項第4号の規定の適用については、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第102号)附則第3条第10号に規定する旧郵便貯金(同法附則第5条第1項第1号に掲げる通常郵便貯金を除く。)は預金と、同法附則第3条第10号に規定する旧郵便貯金(同法附則第5条第1項第1号に掲げる通常郵便貯金に限る。)は普通預金とみなす。
附則(平成22年3月29日条例第3号)
この条例は、地方独立行政法人福岡市立病院機構の成立の日から施行する。ただし、「民法(明治29年法律第89号)第34条の法人、株式会社及び有限会社」を「一般社団法人及び一般財団法人並びに株式会社」に改める部分は、公布の日から施行する。