^ 福岡市政だより No.1316 平成17年 (2005年) 5月1日号 1面 復旧に向け活動本格化 「市地震災復旧・復興本部」を設置 福岡県西方沖地震から1か月 福岡市を突然襲った「福岡県西方沖地震」で、市は「福岡市地震災害復旧・復興本部」を4月12日に設置し、市民の生活再建や施映復旧などに向けた取り組みを開始するとともに、西区玄界島に復異事務所を開設しました。また4月下旬には、玄界島の皆さんが入居する仮設住宅が完成。西区西浦地区、能古島、東区志賀島でも仮設住宅の建設が進んでいます。震災から1か月余り。大きな余震もあったものの、復旧・復興に向けた動きが本格化しています。(この記事は4月20日時点で書いています) 「こんな時こそ明るく」 入学の季節を迎え、玄界小学校にも六人の新1年生が入ってきました。同校の児童数は、これで30人になりました。児童たちは、避難所そばの平尾小学校の空き教室を利用した「仮校舎」に毎日通学しています。この仮校舎は、5月上旬には、仮設住宅に近い簀子小学校内に移ることになっています。 「早く島に帰りたいと 思うし、子どもたちもそう思っているだろうと思います」。そう話すのは、一年生を受け持つ荒武克己教諭(51)です。 玄界島では、子どもたちは毎朝「がんぎ段」と呼ばれる300段以上ある階段を上って、おしゃべりをしながら登校していました。がんぎ段の途中で振り返ると海も見えます。荒武教諭は「子どもたちが非常階段を上って仮校舎に登校するのを見ていると、島での姿を思い出してさびしい気持ちになる」と言います。 「今回のことは、努めてよい方に考えるようにしています。こちらでは、例えば公共施設の見学など、島ではできない経験もできます。いろんな体験や発見をして、島に戻った時に、子どもたちと『あの時は大変だったけど、いい経験もしたね』と話し合えるように、こういう時だからこそ明るく元気にやっていきたいと思っています」と荒武教諭は話していました。 ●生活再建プロジェク卜 市民の生活再建に向け、相談の受け付けや仮設住宅の運営などを行います。 ●産業支媛プロジェク卜 農林漁業者や中小企業者の経営再建に向けた支援を行います。 ●インフラ復旧プロジェクト 道路や港、公共施設の復旧や、仮設住宅の建設などを行います。 ●玄界島復興プロジエクト 玄界島の復興に向け、あらゆる面で支援を行います。 また、復旧・復興を的確に進めるため、同本部事務局の運営に携わる職員五人を配置しました。市は、同本部のもと、全庁を挙げて全力で復旧・復興に取り組んでいきます。なお、市災害対策本部は、当面の間、引き続き設置します。 玄界島に復興事務所 市職員5人を配置 「玄界島復興プロジェクト」の一環として、市は、4月20日、現地に「玄界島復興事務所」を設置しました。 同事務所では、須川哲治部長以下5人の職員が「住民の生活支援に関する相談の受け付け・地盤や建物などの現状調査・今後のまちづくりに向けた住民の意向調査・復興計画の策定に関する調整」などにあたります。 また市役所内には、同事務所との連絡調整を行う職員2人を配置。現地での活動を支えます。同事務所は、まず、貨物用のコンテナニ個を利用した仮事務所で業務を開始しました。住民の帰島が始まれば業務量が増えることが予想されるため、今後、本格的な事務所を建設し、完成次第、新しい事務所に移る予定です。 復興事務所の須川部長は「今後のまちづくりについて、どんな制度をどう活用すればよいかなど、住民の立場に立って、一番よい方法を一緒に考えていきたいと思っています。そのために、住民の皆さんの意向を十分に把握し、その意向に最大限沿えるようがんばりたい」と決意を語りました。 仮設住宅がいよいよ完成 玄界島の住民の皆さんは、地震が発生した日に着の身着のままで避難して以来、1か月以上にわたって、市九電記念体育館で避難生店を送ってきました。その皆さんが待ちわびていた仮設住宅がいよいよ完成します。 仮設住宅は玄界島に100戸、中央区港の「かもめ広場」に100戸の計200戸です。3月29日から県が建設を進めてきました。各戸の間取りは、四畳半二問と六畳の台所の2DKで、広さは29.7平方メートルです。 玄界島の住民の皆さんは、ようやく体育館での生活から解放され、不自由ながらも、新しい住まいに移ることになります。4月25日にまずかもめ広場の仮設住宅への入居、続いて翌26日に玄界島への帰島と高内の仮設住宅への入居が行われる予定です。 地震による被害からの本格的な復旧・復興活動は、まだ始まったばかりです。市は、今後も引き続き、市民の皆さんの生活が1日でも早く元の状態に戻るようがんばっていきますので、ご理解とご協力をお願いします。 ^ 福岡市政だより No.1316 平成17年 (2005年) 5月1日号 2面 福岡県西方沖地震 西浦、宮瀧、志賀島でも被害大 住宅と道路で支援 福岡県西方沖地震により、西区西浦地区、宮浦地区や東区志賀島などでも大きな被害がありました。住まいや仕事場が震災により大きな打撃を受け、 地域の皆さんは将来に不安を抱えています。市は、災害の復旧・復興のため被災支援策を進めています。 地域のつながり 震災により影響 西区今津から海沿いの道を北へ向かい、西浦地区や宮浦地区を擁する北崎校区へ入ると、屋根の上にプルーシートを掛けた住宅の数々が視界に入ります。瓦が滑り落ちたり壁がはげ落ちたりするなど、住宅が地震の被害を受けた世帯数は、同校区全体の世帯数900弱のうち600を超えており、うち3割強を宮浦地区、四割強を西浦地区が占めています。 左上の写真は宮浦地区にある住宅で、地震の直後に撮影したものです。 屋根瓦が落ちた母屋、壁がはげ落ち構造がむき出しになった蔵など、地震の影響がいかほどだったか、知ることができます。現在、母屋の入りロには、市の応急危険判定で「危険」を示す赤い紙、納屋には「要注意」を示す黄色の紙が張ってあります。 写真の住宅の持ち主である寺田準一さん(53)は、西区周船寺の親類宅に身を寄せています。寺田さんによると、住宅に被害を受けた人の中には、被害が少なかった納屋などで寝泊まりしている人もいるそうです。 また、著しく損壊した住宅のうちいくつかは、既に更地になっています。そこにかつて住んでいた世帯の中には、損壊した家屋を復旧する経済的なめどが立たず、長年住み慣れた場所を離れて引っ越したところもあり、これから引っ越す予定の世帯も含め、その数は校区全体で十世帯を超えています。 同校区の被害状況を案内してくださった北崎校区自治協議会会長の稲永徹彦さん(68)は、「北崎は高齢者が多く過疎化が進んでいる地域。そこへ今回の震災で打撃を受けた。住む場所が痛んだ世帯は多く、中にはやむを得ず北崎を離れる世帯が出てしまい、誠に残念でならない」と、震災の被害が地域に与えた影響に、悔しさをにじませていました。 漁業や農業にも震災の猛威及ぶ 北崎校区は、漁業や農業が盛んな地域です。西浦地区の西ノ浦漁港では、荷さばき場に走った亀裂のため、水揚げした魚を運ぶリフトが運転できず、4月6日まで漁業が中断していました。 農業は、花の栽培が中心で、至る所にビニールハウスが見られます。 「花々は卓上に置かれ出荷待ちだったが、地震のため卓から地面へ落ち痛んでしまった。また、ハウス内を温めるための火力として使う重油が入ったタンクが倒れたところもあった」と、同校区自治協議会副会長の小賦京太さん(73)は被害の状況を話してくれました。 主要道路で土砂崩れ 島民の「足」を奪う 志賀島は、島を囲うように海沿いを道路が巡っています。海を眺められるためドライプには絶好で、休日になると行楽客が車を走らせます。島西側の道路から沖に目をやると、目と鼻の先に玄界島が浮かぶのが見えます。 この地震で、島を囲む道路の陸側ががけ崩れを起こし、島の東西2か所が土砂でふさがれました。地震が発生した日は日曜日でしたが、幸い、住民や行楽客など人が土砂災害に巻き込まれずに済みました。 島の北部にある勝馬地区は、他の地区へ抜ける海沿いの道を土砂でふさがれてしまいまいました。特に同地区から西側海岸へ向う道は、同地区に住む中学生が海の中道にある中学へ通学するときに使うなど住民が「足」として利用する西鉄バスが走っており、島民の交通にとって重要な道路です。しかし、海沿いの道路は東側海岸へ抜ける道も土砂でふさがれ、車両が通行止めになっています。現在、島の中心を南北に貫く山越えの道路しか使えず、もし山道もふさがれていたら、同地区は「陸の孤島」と化していたことでしょう。 志賀公民館長の折居力曽さん(69)は、「志賀島の住民は高齢者が多く、交通には主にバスを使っている。パスが通る海沿いの道路は大事な交通路。早く土砂を撤去してパスが通れるようにしてほしい」と、島で最も重要な道路の復旧を持ちこがれていました。 仮設住宅が着工し 道路の復旧が進む 市は、仮設住宅の建設を玄界島以外の地域でも行うよう県に要請しました。それを受けて県は、志賀島に16戸、西補に11戸、西区能古島に3戸の仮設住宅の建設 を決定しました。西ノ浦漁港内の公園など市が管理する土地を利用して、4月19日から建設工事が始まっています。住宅の完成は5月下旬の予定です。 一方、土砂でふさがれた志賀島の道路のうち、島の西側道路の復旧工事が3月29日から始まっています。 震災が起こった3月20日以来、通行止めになっていましたが、復旧作業終了後、4月25日に通行止めを解除する予定です(4月21日現在)。 ^ 福岡市政だより No.1316 平成17年 (2005年) 5月1日号 3面 福岡県西方沖地震 震度5強、本震以降最大の余震 4月20日 市民生活に不安 3月20日の本震以降、断続的に発生した余震のうちで最大のものとなった4月20日の余震は、規模がマグニチュード5.8、中央区や博多区などで震度5強を観測しました。市内各所で人や建物に被害が発生し、交通網は混乱して、再び市民の皆さんに恐怖をよみがえらせ、生活を脅かしました。 人や建物に被害 通勤の足乱れる 市消防本部には、地震でけがをした市民から119番通報が相次ぎました。七十代の男性がアキレスけんを切るなど約50人がけがをしました。 西区玄界島ではがけ崩れが発生し、住宅一棟が全壊しました。市内で被害があった住宅は100棟を上回っています。また、玄界島の皆さんが避難する九電記念体育館でガラスが割れたり、商業ビルの壁がはげ落ちたりするなど、建物にも被害が及びました。 交通では、市営地下鉄が一時連行を見合わせ、改札口の外に運行を待つ人があふれました。また、都市高速道路が一時通行止めになり主要道路が混雑するなど、朝の通勤時に多くの人の足が乱れました。 避難所の住民 地震への不安 余震のため公民館などに避難した人は、市内全体で220人強に上りました。余震直後の警固公民館(中央区)では、近隣のマンションなどに住む高齢者や児童などが落ち着かない様子で時間を過ごしていました。 自宅の状況を聞くと、「水屋が倒れて食器が割れた」(70代、女性)「棚が倒れてガラスが散乱した」(20代、女性)など、家財道具に被害が出た一方、「前回の地震後、棚の扉が揺れても開かないように細工していた」(30代、女性)「物を低い場所に置き直していた」(50代、女性)など、地震に備えて工夫していた人も見られました。 余震が続く中、避難者の皆さんは気もそぞろで、「夜中に地震が来たら怖いので灯りをつけて眠っていたが、今日の余震時は停電してて恐ろしかった」(20代、女性)「七階に住んでいるが、足が不自由なので、もし地震でエレベーターが止まったら逃げられなくなり、怖い」(80代、女性)など、地震への不安を抱いていました。 玄界島をモデルケースに 災富に強い地域をつくリましょう 望まれる自主防災組織 3月20日に起こった福岡県西方沖地震は、災害の恐ろしさを、わたしたち行政や市民の皆さんに伝えました。 皆さんの中には、「もし地域を巻き込むほどの災害が起こったら、そのときになってどうするか考えて困った者同士で助け合えばよい」という安易な気持ちで、これまで過こしてきた人がいるかもしれません。 しかし、今回の地震が示すように、災害とは予期しない時に起こるものです。大規模な災害が発生した後、皆さんがそれぞれ地域の中で、災害に対してどのように動くか役割が決まっていないと、住民同士が地域の中で意思の疎通をうまくできず、適切な行動が取れなくなることでしょう。 玄界島の防災 被害を最小に 先の地震により最も大きな被害を受けた地域は、西区玄界島です。しかし、あれほどの被害を受けたにもかかわらず、島では地震による死亡者が一人も出ていません。これは奇跡だったのでしょうか。 玄界島で生まれ育った漁師の細江一さん(65)は、震災直後を振り返り「島の男は漁に出ていた。ちょうど昼食前で、家庭の多くはガスを使っていた最中だったが、皆が慌てずガスを消して外へ逃げたので、火事にならなかった」と、島の皆さんが冷静に対応し火災を防いだことを強調しました。 島の皆さんがなぜ冷静でいられたのか聞くと「漁業の島なので、男性が海に出たときに島を預かるのは女性。島では婦人消防隊が戦後長らく組織され活動している。日ころから災害に対して備えができていた」と語りました。島の皆さんの防災意識が高く非常時に何をなすべきか理解していたからこそ、被害を最小限に抑えられたのです。 災害に備えて 自主防災組織 自主防災組織は、「自分たちのまちは自分たちで守る」という意識のもとに、住民の皆さんが地域で連帯し災害に備えて組織する団体です。 活動内容は例えば、災害時に避難する場所とそこに至る経路の確認、応急手当の演習など、実際に経験しておけば緊急時に役立つ技能や知識を取得します。また、避難場所の所在地や経路を記した防災地図の作成など災害時に必要な情報を整理し、地域の各所に掲示板を立てたり地域の皆さんに地図を配布したりしています。 市内の自主防災組織は、おおむね小学校区毎の自治協議会を基本に構成されています。平成17年3月現在、144の小学校区のうち70校区に組織があります。 皆さんが住む地域に自主防災組織はありますか。あれば、活動や避難訓練に参加するなどして災害時のノウハウを学んでおきましょう。なければ、新たに組繊を作り活動すると災害時に役立つことでしょう。 「備えあれば憂いなし」という格言があります。福岡県西方沖地震のような誰もの予想を覆して起こる災害に備えて、皆さんの地域でも自主防災組織を結成しませんか。 防災の冊子あリます さて、自主防災組織をいざ作ろうと思い立っても、どうやって作ればよいのでしょう。いざ作ったとしてもどのように活動すればよいのでしょう。 市民局防災課では、自主防災について必要な情報を盛り込んだ冊子を2冊、用意しています。 「自主防災ガイドプック」は、組織のつくり方や運営の方法などを、絵や表で簡略にまとめた全18ページの冊子で、自主防災について概略を知りたい人に最適な入門書です。 「自主防災リーダーマニュアル」は、同ガイドプックの単元を全80ページに及んで個別に詳しく著しています。自主防災の理念から応急手当の詳しい解説まで、防災について幅広い知識を得られます。 詳しくはお問い合わせください。 【問い合わせ先】市民局防災課(電話番号711-4056 FAX番号733-5861) 水害対策 止水板の設憤費用を補助 中小企業を対象 市は、浸水対策として止水板などを設置する中小企業者の費用負担を軽減するため、融資に必要な信用保証料の補助を行います。 止水板とは、製造会社によって止水板、防水板、防水扉など名称はまちまちですが、建物の地下や一階部分への浸水を防ぐため出入り口に設置する、鉄やアルミなどでできた板をいいます。人が持ち運んで設置するものや、機械式により自動的に設置されるものがあります。 福岡市では平成15年7月19日に、集中豪雨による水害が起こりました。まもなく雨量が多くなる季節がやってきます。市民の皆さんを災害から守るための一助として、止水板などの設置をご検討ください。 対象 市中小企業サポートセンター(博多区博多駅前2、福岡商議所ビル2階)が実施する商工金融資金制度(市内で事業を営む中小企業者が必要とする事業資金を敵資するための制度)の要件を満たす企業で、要件は次のとおりです。 ①本市に主たる事業所があり、六か月以上同一事業を営んでいるもの ②県信用保証協会の保証対象業種で、中小企業社であるもの ③許認可などが必要な業種は、許認可後6か月以上経過しているもの ④市税にかかる徴収金に滞納がないもの ⑤銀行取引停止処分中でなく、6か月以内に第1回目の不渡りを出していないもの ⑥同協会との関係で事故(求償権行使中、延滞中)でないもの・ ⑦融資金の返済が確実なもの これに加えて、同制度のうち「情報化等経営改善資金」の融資を受け浸水対策として止水板などを設置する予定があることが必要です。 補助額 同融資にかかる信用保証料のうち止水板などの設置に必要な経費(200万円を限度)に星づき算定した信用保証料相当額を補助します。 申し込み方法 詳しくはお問い合わせください。 【問い合わせ先】市民局防災課(電話番号711-4056 FAX番号733-5861) 編集・発行/福岡市広報課 〒810-8620 福岡市中央区天神一丁目8-1 電話 092-711-4016 FAX 092-732-1358 毎月1日・15日発行(1月15日は休刊)