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更新日: 2018年12月19日

グローバル コミュニティ FUKUOKA 報告書(パネルディスカッションその1)

★パネルディスカッション★
「求められるグローバル人材の姿や福岡でのグローバル人材の活躍について」

◆コーディネーター

  • 太田浩氏(一橋大学国際教育センター教授)

◆進行

  • 八塩圭子氏(フリーアナウンサー/学習院大学特別客員教授)

◆パネリスト

  • 太田和秀氏(九州大学工学研究院教授/九州大学アジア人財プログラムリーダー)
  • 龍造寺健介氏(本多機工株式会社 代表取締役社長)
  • 藤見哲郎氏(スタートアップカフェ エグゼクティブコンシェルジュ)
  • 桜井貴史氏(株式会社リクルートキャリア 新卒斡旋統括部 新卒エージェントサービス部マネージャー)
  • 福岡市長 髙島宗一郎


進行・八塩圭子氏

本日のパネルディスカッションのテーマは「求められるグローバル人材の姿や福岡でのグローバル人材の活躍について」です。これから5人のパネリストの皆さまと意見交換を行ってまいりたいと思います。まずは、パネリストの皆さまから、現在のそれぞれの取組みについてご紹介いただきます。


1 福岡市の現状と取組み

1.はじめに

 福岡市長の髙島です。これから皆さまには、福岡市の現状と取組みについて紹介させていただきます。


2.福岡市が目指すもの

 福岡市は、人、環境、そして都市活力の調和が取れた「アジアのリーダー都市」を目指しています。これは決して、高層ビルが建ち並ぶだけのまちにしたいわけではなく、また、ただ豊かな自然が広がっているだけのまちにしたいわけでもありません。文化的な豊かさを備え、伝統的な祭りがあり、困った時はお互い助け合うことができるような人と人とのつながりがあって、それでいて自然が豊かで、そこでとれた食べ物は安心して食べることができる。また、多くの留学生が集まり、世界各国と空路・海路でつながり、グローバル企業が集積してビジネスにもチャレンジすることができる。そのような、人、環境、そして都市活力の調和が取れた、ロール・モデルとなれるまちを福岡市は目指していきたいと思っています。

パネルディスカッションにおける福岡市長の画像

3.グローバル都市・福岡の歩み

 アジア太平洋こども会議・イン福岡が始まったのは今から26年前(平成元(1989)年)です。福岡市では、そのころから、まちの方向性として「アジア」を前面に打ち出すようになり、現在では、総人口に占める留学生の割合が、政令指定都市の中で京都市に次いで第2位、外国公館の数が全国第3位と、日本でも有数の国際都市となっています。

 毎年、福岡市には、海外から大勢の外国人観光客が訪れます。入込観光客数は1,782万人(平成25(2013)年)と過去最高を更新しており、外国船社が運航するクルーズ船の寄港回数ランキングでは、昨年(平成26(2014)年)、博多港は、99回で全国第1位でした。今年(平成27(2015)年)は240回以上の寄港が確実視されており、来年(平成28(2016)年)は400回以上を見込んでいます。今や、福岡市は、日本のクルーズ船の聖地になっています。

 国際会議の開催件数も、福岡市は東京都に次いで全国第2位です。平成21(2009)年に全国で第2位になって以降も開催件数が毎年伸び続けており、平成26(2014)年には、年間336件の国際会議をここ福岡市で開催しています。


4.スタートアップカフェ

 福岡市は今、スタートアップを応援しています。平成26(2014)年10月に開設した「スタートアップカフェ」では、多言語対応はもちろん、弁護士・行政書士への相談やビジネスプランのブラッシュアップなど、ビジネスの立ち上げに関するあらゆることが1カ所で、無料で相談できます。これが福岡市の強みです。


5.国家戦略特区とスタートアップビザ

 福岡市は「国家戦略特区」に指定されています。先週開催された国家戦略特区の区域会議では、福岡市が提案していた「スタートアップビザ」が国内で初めて認定されました。これまでは、新しくビジネスを立ち上げたい外国人がビザを取得するためには、事務所の開設に加えて常勤職員を2人以上雇用するか、あるいは、資本金の額または出資総額が500万円以上となっているなどの要件を整えておく必要があり、非常に高いハードルとなっていたのですが、国家戦略特区として「スタートアップビザ」が認定されたことで、これから福岡市では、これらの要件が整っていなくても、創業活動計画書などを福岡市に提出し、要件を満たす見込みがあるかなどの確認を受けることで、6ヶ月間の在留資格が認められるようになりました。

 また、留学生は、卒業後1年以内に就職先が決まらなければ、帰国しなければいけません。しかし、わずか1年間という短い期間では本当に就職したい企業と出会えるかどうか分かりません。福岡市では、今後、国家戦略特区で、現在の1年という期間を2年に延長してもらえるよう、しっかりと議論していきたいと考えています。


6.ウォーターフロント地区

 福岡市では多くの国際会議が開催されている一方で、実際にはそれ以上に国際会議を開催したいという要望があっています。しかし、全てのニーズに応えられるだけの会場を持ち合わせていないため、一昨年だけでも52件の国際会議をお断りしている状況です。このことによる経済損失は190億円に上ります。

 この状況を打開するため、現在福岡市では、公募によるウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)の再整備計画を進めています。MICE施設の整備やクルーズ船受入環境の強化など、再整備計画へ向けた提案が世界中から福岡市へ寄せられています。


7.福岡空港

 福岡空港には、国内外から多くの路線が就航しており、新たに、平成28(2016)年春のフィンランド航空就航も決定しています。今後も、国内外から多くの路線就航が期待される中、福岡空港の離着陸回数は能力の限界に達しています。そこで、空港のキャパシティを向上させて新たな需要に応えていくため、福岡空港では、平成27(2015)年7月から滑走路増設工事に着手しています。


8.天神ビッグバン

 福岡市は空港が近くてとても便利なまちです。しかし、空港が都心部に近いことから、天神エリアなどでは高層ビルの建設規制がかけられています。そこで、国家戦略特区を活用し、航空法の高さ制限についてエリア単位で特例承認を得ることで、福岡市では、天神エリアで現在より2フロア分高いビルを建設できるようになりました。さらに、福岡市の独自施策で容積率緩和を実施することで、今後10年間で、天神エリアにあるビル30棟の建て替えを目指しています。都市機能の大幅な向上と増床を図る「天神ビッグバン」というプロジェクトが、現在、福岡市でスタートしています。


9.終わりに

 福岡市は次のステージへ進んで行くために様々なチャレンジをしています。日本だけで考えるのではなく、グローバルな視点に立って物事を考え、皆さまと一緒に福岡市を素敵なまちにしていきたいと思っています。本日はよろしくお願いします。



2 九州大学のグローバル人材育成への取り組み


1.はじめに

 九州大学工学研究院の太田です。これから皆さまには、九州大学のグローバル人材育成への取組みについて紹介させていただきます。


2.留学生数

 九州大学の留学生数は、国が平成202008)年に打ち出した「留学生30万人計画」から急激に伸び、現在2,000人を超えています。そのうち55%が中国からの留学生、12%が韓国、以下インドネシア、ベトナムと続いています。
 九州大学の日本人学生の海外留学は、短期留学や語学研修も含めても約760名で、留学生数の約3分の1にとどまっています。日本人学生の海外留学という部分では、今後力を入れていかなければいけないと思っています。


九州大学太田教授

3.スーパーグローバル大学創生支援

 九州大学における留学生関連のプロジェクトの一つに「スーパーグローバル大学創成支援」があります。このプロジェクトの一環として、平成222010)年から工学部と農学部の学士課程で国際コースを開設しています。また、大学院では全ての学府で国際コースを開設しています。
 その他にも、九州大学と海外の大学との両方で学位が取得できる制度の導入や、様々な短期留学プログラム、カリフォルニア州の九州大学オフィス支援による理系の学生を対象としたIT企業訪問などがセットになったシリコンバレーの研修プログラム、オーストラリアのクイーンズランド大学における夏の英語研修プログラムなどを実施しています。
 留学生向けのインターンシップも実施しています。また、日本企業への就職を希望している留学生がスムーズに、そして十分なポテンシャルを持って日本企業へ就職できるよう、九州大学では平成202008)年から「アジア人財プログラム」を実施しています。 


4.九州大学アジア人財プログラム

 平成192007)年度に始まった経済産業省と文部科学省による「アジア人財資金構想」プロジェクトに基づき、九州大学では、日本企業への就職を希望する工学系の留学生を対象とした「アジア人財プログラム」を平成202008)年から開始しました。国のアジア人財資金構想プロジェクトが平成242012)年度をもって終了した後も、九州大学単独の自立化したプログラムとして継続実施しています。これまでにアジア人財プログラムから送り出した留学生は100名を超えています。
 九州大学アジア人財プログラムの対象者は、留学生の約15%ですが、企業とのマッチングも行い、プログラムの対象者全員を就職させるという目標を掲げており、これまで就職内定率100%を達成しています。
 九州大学アジア人財プログラムでは、企業から直接講師を招聘し、日本企業に関する講義を実施しています。就職の壁となる日本語についても、九州大学留学生センターから日本語講師を専任で確保し、習得支援を行っています。また、企業の協力により、インターンシップも積極的に行っています。
 企業から講師を招聘する場合は、その企業のトップの方に来ていただいています。企業のトップから直接話を聞くことで、就職して社会に出た時に、自分たちがどういうものづくりをして、どういうビジネスをやるのか、留学生は具体的なイメージを持つことができます。
 産学連携講義の中で人気があるのは、TOTOウォシュレットテクノ株式会社の林良祐社長による講義です。30年前、日本初のウォシュレットはこのようにして開発したという内容で、とてもインパクトのある人気の講義になっています。  


5.終わりに

 これからも九州大学アジア人財プログラムを継続していけるように、私たちもしっかりと取り組んでいきたいと考えています。本日はよろしくお願いします。   



3 本多機工のグローバル展開とグローバル人材の活用


1.はじめに

 本多機工株式会社の龍造寺です。これから皆さまには、本多機工のグローバル展開とグローバル人材の活用について紹介させていただきます。


2.本多機工株式会社

 本多機工は、工場の心臓部と呼ばれるポンプを製造している九州のメーカーです。グローバル・ニッチトップを目指し、現場主義を徹底して100年企業を目指しています。
 福岡県嘉麻市にある本社工場のほか、現在では、福岡市、大阪市、東京都などに営業拠点があり、海外のポンプメーカーとも提携し、海外パートナーは26社に及びます。
 昭和241949)年の創業以来、本多機工では、国内大手の工場にて様々な液体に対応するポンプを受注生産してきました。その大手企業が海外に進出するたびに、海外の工場の心臓部にも本多機工のポンプが次々と使われていき、現在では世界60カ国以上で本多機工のポンプが使われています。



本多機工株式会社龍造寺社長


3.アジアに焦点を当てたグローバル展開

 本多機工がグローバル展開に移ったのは、今から10年ほど前です。日本が低迷する一方でアジアは成長し続けています。欧米の企業も、アジア戦略を立てる中でアジアにパートナーを探しており、本多機工もパートナーとして申し込まれたことがあります。成長するアジアでは水ビジネスが拡大し続けており、そのことをきっかけとして、本多機工はグローバル展開へと移っていきました。
日本のものづくりは、まだ世界で十分に通用すると我々は考えています。巨大なアジア市場が広がり続ける中、九州の地の利を生かし、そして多くの留学生がいる福岡市の地の利を生かすことで、本多機工ではグローバル展開へと移っていきました。
 


4.高度人材の積極的活用

 本多機工では、積極的に高度外国人材を採用しており、社内は非常に活性化されています。いろいろな人と一緒に仕事し隣の机は外国人という社内環境の中で、様々な化学反応が生まれ、新しい時代に合う、新しい会社風土が生まれたと思っています。
 これまでに本多機工が採用した高度外国人材には、チュニジア人、カナダ人、中国人、ドイツ人、スペイン人、スリランカ人、アメリカ人、タイ人、韓国人、マレーシア人、フランス人と、様々な国の留学生がいます。
 リヤド君はチュニジア出身で、九州工業大学の卒業生です。本多機工に入社後4年で部長になり、現在は独立して中東で本多機工の代理店の社長をしています。福岡大学の卒業生のチョウ君も、中国で本多機工の製品を取り扱う代理店を立ち上げて、現在社長をしています。
 その他にも、九州大学や同志社大学、立命館アジア太平洋大学の卒業生など、たくさんの留学生が本多機工に入社しています。
 インターンシップも積極的に受けており、インターンシップから2016年の入社が決まった学生もいます。
 本多機工に入社し、一緒に働いてもらって、本多機工のこだわりのものづくりを知ってもらう。何がこだわりなのか、何が優れているところなのかについて留学生にも日本人の社員と一緒になって学び、現場を中心として取り組んでもらう。我々は、ただの通訳ではなく、本多機工のこだわりのものづくりを自ら世界に発信できる人材を育てていきたいと考えています。


5.終わりに

 本多機工のグローバル人材を介して、現在ではアメリカ、ドイツ、デンマークなど、海外パートナーのネットワークが26社にまで拡大しています。本多機工では、これらの海外パートナーと共にグローバル人材のネットワークを広げ、仕事を拡大してきました。グローバル人材を活用しながら海外パートナーと共にラインナップを組み、トータルソリューションをお客さまに提供するとともに海外から様々な情報を入手できる企業へと成長してきました。本日はよろしくお願いします。