


キュレーターという仕事柄、地域の文化資産や伝統に詳しい砂田光紀さん。遠方から訪ねてきた人をどんな場所へ案内するのか聞いてみました。「時間が限られているときによく連れて行くのはキャナルシティ博多と櫛田神社界隈でしょうか。福岡は超モダンなものと伝統的なものが混在しているのですが、その代表的な場所。こんなに近い距離で博多の新旧が味わえる場所はほかにありません。博多の伝統文化を感じさせる櫛田神社や博多町家ふるさと館、下町らしさが残る川端商店街、昔ながらの商売を続ける焼き餅屋やうどん屋。その一方で5分も歩けば近代的商業施設であるキャナルシティ博多にたどり着く。キャナルシティの中にあるグランドハイアット福岡のバーで一杯というのもいいですね」
このほかにモダンな場所としてあげてくれたのがヤフードームやシーホークホテルなどが建ち並ぶシーサイドももち地区。また伝統的な静けさを感じられる場所として、日本庭園の楽水園や友泉亭にもよく案内するそうです。実は砂田さん、この楽水園のすぐ隣に住んでいるとか。「うちは普通のマンションだけど、人が来たら『茶室に案内しましょう』と言って楽水園に連れて行きます。入園料も安いし、静かで美しい庭もある。本格的な茶室でお茶も飲める。こんな贅沢はありません」。楽水園の向かいは緑豊かな住吉神社。砂田さんが毎朝目覚めて窓を開けると、住吉神社の緑が目の前に広がり、巫女さんが朝の掃除をしているそうです。木造の風情ある能楽殿も境内にあり、能楽だけでなく現代音楽のコンサートも開かれています。
「福岡はコンパクトな中に何でも揃っている。モダンも下町も、和でも洋でも、すぐに案内できます。街を自分の家や庭だと思って使うことができるんです」。福岡市民の多くは福岡を観光地だと思っていませんが、砂田さんは福岡はまさに観光地だと言います。「福岡は見に来る、楽しみに来る街。遊びにあふれた、毎日が祝祭の街です。いつまでもこの良さをなくさず祝祭の街であってほしいですね」


砂田光紀さん
キュレーター(学芸員)
1963年、鹿児島市生まれ。博物館学芸員を経て独立。各地のミュージアムや公共空間を統括プロデュースする「オフィスフィールドノート」を主宰。著書に『九州遺産 近現代遺産編101』ほか。