


博多といえば食文化が豊かなことで知られていますが、岡野博一さんがおすすめする博多の味は「うどん」です。「あまり知られてませんが博多はうどんがうまいんですよ。全国的ブームの讃岐うどんも美味しいですが、それとは違う味わいがあります。実際、讃岐の人を博多のうどん屋に案内したことがありますが、美味しいと言ってました」。うどんは岡野さんの本業である博多織とも深いつながりがあります。というのも、うどんも博多織も聖一国師が開いた承天寺が発祥地とされているからです。承天寺には「饂飩蕎麦発祥之地」という碑が建っています。
岡野さんのおじいさんの大好物だったのが、上川端町にある「かろのうろん」のうどん。もともとは店の屋号などもなく、地元の人が「かど(角)のうどん」屋という意味で名づけたらしいのですが、博多の人は「ど」をうまく発音できないため、いつのまにか「かろのうろん」と呼ばれるようになりました。博多のうどんは麺が太くもっちりしていて、ダシは昆布やカツオの風味がきいた甘めの薄味です。そして地元の人々が好んで食べるのがゴボウ天うどん。他の地域にはあまりないのですが、博多のうどん屋には欠かせないメニューです。これにテーブルに置かれたネギを好きなだけ入れて食べるのが博多風。「博多というとラーメンが有名ですが、飲んだ後に食べるうどんもいいものですよ」と岡野さん。
もうひとつ、岡野さんおすすめの博多の味は焼き鳥。といっても博多の焼き鳥屋のメニューは鶏だけではありません。「焼き鳥屋に入ってまず頼むのは豚バラ。よく考えると焼き鳥じゃなくて豚なんですけどね(笑)。それに皿に盛られたキャベツもよそでは見かけません。お代わり自由で、キャベツにかかっているタレがまた美味しい」。このキャベツのタレは九州のメーカーが商品として売り出しています。スーパーなどで簡単に手に入れることができ、博多の隠れた人気商品なのです。


岡野博一さん
博多織元・岡野 社長
1971年生まれ。1897年創業の博多織元「岡野」の5代目。東京の大学を卒業後、着物とは無関係な仕事をしていたが、98年に帰郷。博多織を日本発の世界ブランドにしたいと東京・六本木にも店舗を展開。