


福岡は第二次世界大戦中の大空襲であまり古い建物が残っていません。建築史的に貴重な建物はないのかと思いきや、橋爪さんは「福岡には80年代後半から 90年代にかけての世界的水準の建築があるんですよ」と言います。「代表的なのが東区香椎にあるネクサスワールドや、早良区百道のシーサイドももち。この時期に世界的建築家を集めて、単に集合住宅を造るだけでなく街として計画されました。現代建築の場合は建て替えなどで残らない場合も多いのですが、福岡にはその時代の一流建築が競い合いながら残っている。このまま残っていけば、いつか再評価される時がくると思います。100年残ったら世界遺産になるかもしれませんね」
ネクサスワールドは建築家の磯崎新がコーディネーターとなり、レム・コールハース、スティーブン・ホール、石山修武など国内外の建築家たちによる集合住宅の開発。また埋立地の再開発事業であるシーサイドももちは、マイケル・グレイブスをはじめとした国内外の建築家たちによる街並みが続くほか、福岡市博物館、福岡市総合図書館、福岡タワー、ヤフードームやシーホークホテルなど近未来的な建物が建ち並び、独特の景観を生み出しています。いずれも建築を学ぶ学生など、建築好きが多く訪れる地でもあります。
このほか橋爪さんが福岡で見るべき建物としておすすめするのはキャナルシティ博多。96年に完成した日本における複合商業施設の先駆的存在です。「当時の日本では画期的な施設でしたし、今でも古びていない。商業施設を得意とするアメリカの建築家ジョン・ジャーディによるものですが、単なるアメリカの物まねではなく、ちゃんと日本の風土に合ったものになっている点が素晴らしいですね」。また、博多湾に浮かぶアイランドシティの中央公園内に、 2005年に誕生した「ぐりんぐりん」も橋爪さんおすすめのひとつ。日本の建築家・伊東豊雄による設計で、地表と一体となったような独特の形と、それを覆う緑が新しい時代の建築を感じさせます。


橋爪紳也さん
大阪府立大学特別教授・観光産業戦略研究所所長
1960年生まれ。大阪市立大学都市研究プラザ教授などを歴任し、都市計画家、建築史家として活躍。まちづくりへの提言を積極的に行なっている。著書に『集客都市』『ゆく都市くる都市』ほか。