


橋爪さんに福岡市内でお気に入りの場所は?と聞くと、返ってきた答えが「能古島」。福岡市西区にある能古島は博多湾に浮かぶ島で、市街地の姪浜港からフェリーでわずか10分。都会の目の前にありながら、喧騒を忘れられるスポットとして市民にも人気が高い場所です。能古島は周囲12キロ、いちばん高い山でも 195メートルの小さな島ですが、緑豊かな自然に恵まれ、また奈良時代には防人が置かれるなど歴史的にも重要な島でした。島全体に自然探索路があり、島北部には菜の花やコスモスで有名な「のこのしまアイランドパーク」もあります。夏には海水浴やキャンプも楽しめ、とれたての魚介類も味わうことができます。
「福岡に来る楽しみのひとつが魚を食べることですが、能古島では島の漁師がとったばかりの魚介類を出す店があって、それを味わいたくて以前はよく行ってました」と橋爪さん。実は、橋爪さんの能古島に対する思い入れはそれだけではありません。「もう故人ですが、私の大先輩にあたる都市計画家の水谷穎介(えいすけ)さんが能古島に住み、ここで亡くなったんです。神戸大学の講師を務めていたときは、能古島から神戸まで通っていました。ですから前から一度は訪れたいと思っていた場所だったんです」。現在、水谷さんの自宅はレストランになっています。能古島を愛した文化人は多く、作家の檀一雄が晩年を能古島で過ごしたことでも有名です。歴史と自然に彩られた能古島は多くの人を魅了する場所だったのでしょう。
博多湾に面した福岡市には、人が住む島だけでも志賀島、能古島、玄界島、小呂島(おろのしま)と4つの島があります。いずれも街の中心部から船で渡ることができ、それぞれの島では漁業や農業も行われています。海や山といった自然に近い街・福岡は、こんなところからも感じ取ることができます。


橋爪紳也さん
大阪府立大学特別教授・観光産業戦略研究所所長
1960年生まれ。大阪市立大学都市研究プラザ教授などを歴任し、都市計画家、建築史家として活躍。まちづくりへの提言を積極的に行なっている。著書に『集客都市』『ゆく都市くる都市』ほか。