主な細菌性食中毒の種類
サルモネラ属菌
(特徴)
- 家畜やペットの腸管内、河川水など自然界に広く存在します。
- 人の腸管内に保菌していることもあります。
- 熱には弱い。
(主な原因食品)
食肉や卵などの畜産製品、生卵やこれを使用した洋生菓子など
特にサルモネラ・エンテリティディスという菌は卵の中に存在することもあります。
(主な症状)
高熱(38~40度)、腹痛、下痢など
嘔吐を伴うこともあります。
(潜伏期間)
通常12~24時間
(予防方法)
- 食肉や卵は十分に加熱しましょう。
- 調理器具やふきんなどは、よく洗い熱湯や漂白剤などで殺菌しましょう。
- ペットとの過度な接触は避けましょう。
腸炎ビブリオ菌
(特徴)
- 普段は海底の泥などに住み、夏近くになって水温が上昇してくると海水中で急激に増殖します。
- 食品中での増殖も極めて速く、短時間で食中毒を起こす菌数になります。
- もともと海水中にいる菌ですので、塩分に強く真水に弱いという特徴があります。
- 熱に極めて弱く、短時間の加熱で死滅します。
(主な原因食品)
生の鮮魚介類(刺身、寿司など)
きゅうりの塩もみや一夜漬けなど(適度に塩分がある食品)
(主な症状)
腹痛、下痢など
嘔吐を伴うこともあります。
(潜伏期間)
8~24時間
(予防方法)
- 鮮魚介類は5度以下で低温保存しましょう。
- 刺身の調理前後は調理器具を十分に洗浄・消毒しましょう。
- 魚介類は調理前に真水で十分に洗浄しましょう。
- できるだけ加熱調理して食べましょう
(参考)
ビブリオ属に、ビブリオ・バルニフィカスという菌がいます。
菌の性質は腸炎ビブリオ菌とよく似ていますが、健康な人にとってはほとんど症状を起こしません。
しかし、肝臓に障害がある人や免疫障害・貧血などで薬を使用している人にとっては大変恐ろしい菌になります。
皮膚が広い範囲にわたって壊死したり、敗血症になったりして死亡する確率が高くなります。
実際、平成13年には国内で死亡者が発生しています。
この菌は食べ物以外にも皮膚の傷などから感染することがあるので、肝臓に障害がある人は魚介類を生で食べたり、海に入ったりしないようにしましょう。
黄色ブドウ球菌
(特徴)
- 人間の皮膚や髪の毛、鼻腔、口腔内、傷口などにいる常在菌です。
- 耐熱性の毒素を産生し、これが食中毒の原因となります。
- 通常の加熱調理では、菌は死滅しますが毒素は残ります。
(主な原因食品)
おにぎり、弁当、サンドイッチなど人の手指から汚染されやすく調理してから食べるまでの時間が比較的長い食品
(主な症状)
嘔気、嘔吐など
腹痛や下痢を伴うこともあります。
(潜伏期間)
通常30分~3時間
(予防方法)
- 調理の際、手洗いはこまめに行いましょう。
- 手指に傷があるときや風邪気味のときは上記のような食品の調理は避けましょう。
- 食品は低温で保存しましょう。
セレウス菌
(特徴)
- 土の中や空気中のホコリ等どこにでもいる菌で、腐敗菌やナットウ菌の仲間です。
- 耐熱性の芽胞を形成し、100度の煮沸程度では完全に死滅させることはできません。
- 菌型の違いで2通りの食中毒を起こします。
- 嘔吐型:食品中で耐熱性の毒素を産生します。
- 下痢型:嘔吐型と違って、食品中では増殖するだけで毒素を産生しません。
(主な原因食品)
焼き飯、スパゲッティ等の穀物調理食品
(主な症状)
嘔吐型:嘔気・嘔吐
下痢型:下痢・腹痛
まれに両方の症状が出ることもあります。
(潜伏期間)
嘔吐型:通常1~5時間
下痢型:通常6~16時間
(予防方法)
- 調理した食品はすみやかに食べましょう。
- 調理済食品を保存する必要がある場合は、冷蔵・冷凍保存を徹底しましょう。
- この菌は通常の加熱では死滅しません。加熱調理を過信しないようにしましょう。
ウェルシュ菌
(特徴)
- 土や泥の中に潜む偏性嫌気性(空気中では生きられない)菌です。
- セレウス菌と同様に耐熱性の芽胞を形成します。
(主な原因食品)
スープ・カレーなど大量に調理され、加熱後に室温で放置されることが多い食品
(主な症状)
下痢・腹痛など
他の食中毒に比べて症状は軽いことが多い。
(潜伏期間)
通常8~12時間
(予防方法)
- 加熱調理後のスープなどはよくかき混ぜて空気を入れましょう。
- 食品を室温で放置しないようにしましょう。
- 保存しておいた食品は十分に再加熱しましょう。
カンピロバクター菌
(特徴)
- 鶏や牛、ペットなどの腸管内に棲んでおり、空気中では発育できません。
- 少量の菌で食中毒を起こし、ペットや人からの感染もあると言われています。
- 抵抗力の弱い乳幼児には危険な菌で、乳幼児の細菌性腸炎の原因中ではサルモネラ菌を抜いてトップになっています。
- 加熱にはそれほど強くありません。
(主な原因食品)
食肉などの畜産製品、特に「とり刺し」などの生の鶏肉
飲料水(生水、井戸水)が原因となったこともあります。
(主な症状)
下痢・腹痛・発熱など
菌型によっては、神経障害(ギランバレー症候群)を発症して死亡することもあります。
(潜伏期間)
通常2~3日
(予防方法)
- 井戸水の管理は徹底しましょう。
- 肉の生食は避け、十分に加熱してたべましょう。
- 肉類の調理は手指・調理器具の洗浄・消毒を徹底しましょう。
- ペットとの過度な接触は避けましょう。
病原大腸菌
大きく次の4種類に分けられます。
1.腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
(特徴)
- O136、O143などの菌型が知られています。
- わずかな量でも感染し、人から人への感染もあります。症状は赤痢菌に類似します。
(潜伏期間)
半日~2日間
(主な症状)
発熱・下痢・腹痛など
(予防方法)
- 手指をよく洗い、清潔にしておきましょう。
- 食材や調理器具の洗浄を徹底しましょう。
- 井戸水をそのまま飲むことは避けましょう。
2.腸管病原性大腸菌(EPEC)
(特徴)
- O55、O119、O126などの菌型が知られています。
- 乳幼児に腸炎を起こす細菌です。
- わずかな量で感染しますが、小学生以上の人はかなりの菌量が無ければ発症しません。
(潜伏期間)
半日~2日間
(主な症状)
発熱・下痢・腹痛など
(予防方法)
- 手指をよく洗い、清潔にしておきましょう。
- 食材や調理器具の洗浄を徹底しましょう。
- 井戸水をそのまま飲むことは避けましょう。
- 食肉は十分加熱して食べましょう。
3.腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
(特徴)
- O8、O27、O159などの菌型が知られています。
- わずかな量でも感染します。
- 海外旅行から帰国した人に多く見られ、コレラのような症状になります。
(潜伏期間)
半日~2日間
(主な症状)
下痢・腹痛など
(予防方法)
- 手指をよく洗い、清潔にしておきましょう。
- 食材や調理器具の洗浄を徹底しましょう。
- 海外旅行中は生ものを食べないようにしましょう。
4.腸管出血性大腸菌(EHEC)
(特徴)
- O26、O111、O157などの菌型が知られています。
- 猛毒のベロ毒素を産生します。
- この毒素は大腸の血管壁を破壊して出血を起こします。
- さらに腎臓に障害を与え、脳、神経にも作用して発症から短時間で死亡することもあります。
(主な原因食品)
加熱不十分な牛肉や牛レバーなどの食肉
糞便等により汚染された食品、飲料水
(潜伏期間)
3日~8日間
(主な症状)
腹痛・下痢・血便など
溶血性尿毒症症候群・意識障害を起こし死亡することもあります。
(予防方法)
- 手指をよく洗い、清潔にしておきましょう。
- 調理器具の洗浄を徹底しましょう。特に食肉を取り扱った後は念入りに消毒しましょう。
- 井戸水をそのまま飲むことは避けましょう。
- 肉類は十分に加熱して食べましょう。
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<問い合わせ先>
問い合わせ先は、福岡市保健所【食品衛生に関する相談窓口】のページをご覧ください。