(参考資料5) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 Q&A集(抜粋) (7.対象分野) 問7−1 本法で差別の解消のための措置の対象としている分野の範囲如何。 (答) 1.本法では、教育、公共交通、医療、雇用、役務の提供、刑事手続等の行政機関による活動など、障害者基本法において「障害者の自立及び社会参加の支援等のための基本的施策」として規定されている分野も含めた広範な分野を対象としている。 2.なお、雇用分野については、本法の対象分野には含まれるものの、今国会で成立した障害者の雇用の促進に関する法律の改正法において、差別の禁止等の具体的な措置が定められることから、本法第3章に規定する差別の解消のための具体的な措置については、障害者雇用促進法の定めるところによることとしている。 問7−2 差別が禁止される分野毎に、場面・事項を具体的に明記するべきではないか。 (答) 1.差別が禁止される各分野において、何が差別に当たり得るのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのか、といった具体的な内容については、国や地方公共団体等が定める対応要領や主務大臣が定める対応指針により、今後明らかにしていくこととしている。 2.なお、障害を理由とする差別は障害者の自立と社会参加に関わるあらゆる場面で発生する可能性があることから、相談事例や裁判例の蓄積が必ずしも十分とは言えない現段階では、法文上網羅的に具体的な場面や事項を記載することは困難であり、仮に記載しようとした場合、かえって本法の対象が限定される恐れがある。 3.このため、本法においては対象分野を包括的に規定し、分野毎の具体的な場面・事項を法文上明記することについては、将来的に本法施行後の具体的な相談事例や裁判例の集積等を行った上で、必要に応じて検討することが適切と考えている。 (9.法の対象範囲) 問9−1 本法は、事業者でない一般私人の行為や個人の思想や言論も対象としているのか。 (答) 本法においては、事業者でない一般私人の行為や個人の思想、言論については、法により規制することは不適当と考えられることから対象としていない。一般私人については、第15条に規定する国や地方公共団体による啓発活動を通じ、本法の趣旨の周知を図っていくこととする。 問9−3 難病の方は、本法の対象になるのか。 (答) 難病のある方についても、難病に起因する心身の機能の障害があり、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けている状態にある方は、本法の対象となる。 問9−4 本法の障害者には障害児も含まれるのか。 (答) 1.本法の障害者の定義は、障害者基本法と同じであり、障害児も当然に含まれる。 2.なお、第7条第2項、第8条第2項に規定する「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮」については、障害者の年齢等に応じた配慮を行うべき旨、規定しているところ。 問9−14 事業を行う者の「事業」には、例えば、対価を得ない無報酬の事業や、社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も含まれるのか。 (答) 本法における「事業」は、営利目的か非営利目的かを問わず、反復継続して行われる同種の行為であり、対価を得ない無報酬の事業や社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も含まれる。 (10.差別の定義・概念) 問10−1 本法で「障害を理由とする差別」の定義規定を置かない理由如何。 (答) 1.個別の事案において特定の行為が差別に該当するか否かは、それぞれの事案に応じて個別具体的に判断されるものであり、本法では、「障害を理由とする差別」についてあらかじめ一律に定めることはしていない。 2.今後、本法に基づく対応要領や対応指針において具体的事例等を示すとともに、本法の施行後、具体的な相談事例や裁判例を積み上げていく中で、具体的にどのような行為が差別に当たり得るのかについて、国民の間で認識の共有が図られるよう、努めていくこととしている。 3.法施行3年後の見直しにおいて差別に関する定義を盛り込むかどうかについては、今後の具体的な相談事例や裁判例の集積を踏まえ、検討することになる。 問10−4 差別禁止部会で議論された差別の4類型と本法で禁止される差別の関係は。また、差別禁止部会意見で示された「間接差別」や「関連差別」が規定されなかった理由如何。 (答) 1.差別禁止部会で提起されたのは「直接差別」「間接差別」「関連差別」「合理的配慮の不提供」の4類型であるが、本法においては、「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮の不提供」を差別としている。 2.「直接差別」に関しては、基本的には「不当な差別的取扱い」に含まれる。その上で、「間接差別」「関連差別」については、具体的にどのような事例が該当するのか必ずしも定かではなく、現時点で一律に判断することは困難であるため、具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえた上で対応することとしている。 問10−5 「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮」とは何か。 (答) 1.本法第7条、第8条にいう「社会的障壁の除去についての必要かつ合理的な配慮」とは、障害者基本法第4条第2項を具体化するものとして本法に規定しているものであり、障害者が日常生活や社会生活において受ける様々な制限をもたらす原因となる社会的な障壁を取り除くため、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して個別の状況に応じて講じられるべき措置である。 2.典型的な例としては、たとえば、乗り物への乗車に当たっての職員等による手助けや、筆談、読み上げ等の障害の特性に応じたコミュニケーション手段による対応、段差の解消のための渡し板の提供等が考えられる。 3.具体的にどのような行為が差別に当たり得るのかについては、今後、本法に基づく対応要領や対応指針において示すこととしている。 問10−6 本法において、「合理的配慮の不提供」(社会的障壁の除去の実施に関する必要かつ合理的な配慮を行わないこと)は「障害を理由とする差別」に当たるのか。 (答) 1.いわゆる「合理的配慮の不提供」については、既に障害者基本法第4条第2項に規定が置かれており、法文上、社会的障壁の除去の実施に関する「必要かつ合理的な配慮」を行わないことが、一定の条件の下で「障害を理由とする差別」に当たる旨が明確に規定されている。 2.本法は、この基本法の規定を具体化するものであり、本法においても、社会的障壁の除去の実施に関する「必要かつ合理的な配慮」を行わないことによって障害者への権利利益侵害をもたらす場合には、障害を理由とする差別に当たる。 問10−9 合理的配慮の提供について、行政機関等のみが義務で民間事業者は努力義務としている理由如何。 (答) 障害者と相手方の関係は様々であり、求められる配慮も多種多様であることから、本法においては、合理的配慮について、一律に法的義務とするのではなく、国の行政機関や地方公共団体、独立行政法人等の政府の一部を構成するとみられる法人などの公的主体については法的義務を課し、民間事業者については、努力義務を課した上で対応指針により自発的な取組を促すこととしている。 問10−10 民間事業者の合理的配慮について、努力義務にとどめているが、どのようにして実効性を確保するのか。 (答) 1.障害者と相手方の関係は様々であり、求められる配慮も多種多様であることから、本法においては、合理的配慮について、一律に法的義務とするのではなく、国の行政機関や地方公共団体、独立行政法人等の政府の一部を構成するとみられる法人などの公的主体については法的義務を課し、民間事業者については、努力義務を課した上で対応指針により自発的な取組を促すこととしている。 2.その上で、主務大臣が特に必要があると認めるときは、報告の徴収、助言、指導、勧告といった措置を講ずることができることとしており、これらの権限が適切に行使されることにより、実効性が確保されるものと考える。 問10−11 「現に社会的障壁の除去の実施を必要としている旨の意思の表明」の具体的な意味如何。 (答) 1.個別具体的な場面において、社会的障壁の除去の実施に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話も含む。)その他の意思疎通のための手段により伝えることを指す。 2.「その他の意思疎通のための手段」とは、障害者が他人とコミュニケーションを図るに当たって必要な手段をいい、具体的には、筆談、実物や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達等をいう。 問10−12 障害者からの「意思の表明」があった場合に限定している理由如何。意思の表明がない場合には、「必要かつ合理的な配慮」を行う必要はないのか。 (答) 1.「意思の表明があった場合において」としているのは、「合理的配慮」とは、社会的障壁の除去を必要としている障害者が現に存在する場合における個別の対応として求められるものであり、配慮を求められる相手方から見て、当該者が障害者なのか、配慮を必要としているか否かが分からない場合についてまで、具体的に配慮を義務付けることが困難なためである。 2.合理的配慮については、障害者権利条約において「特定の場合において必要とされるもの」と定義され、個別具体的な場面で必要とされるものとの趣旨が表されており、これを踏まえた障害者基本法第4条第2条においても「それ(社会的障壁の除去)を必要とする障害者が現に存し」を規定されているところ。 3.なお、障害者からの意思の表明がない場合にも、法的な義務は発生しないものの、行政機関等や事業者が自主的に適切な配慮を行うことは、本法の趣旨に照らし望ましいことと考えている。 問10−13 「意思の表明」については、障害者本人からの意思の表明に限られるのか。「意思の表明」ができない障害者については、「必要かつ合理的な配慮」はできないことになるのか。 (答) 知的障害等により本人が自ら意思を表明することが困難な場合には、その家族等が本人を補佐して意思の表明をする場合も、解釈上含み得るものと考えている。 問10−15 「その実施に伴う負担が過重でないとき」かどうかを判断するに当たっては、どのようなことが考慮されるのか。また、その検討過程において、関係者の意見の聴取は行われるのか。 (答) 1.「その実施に伴う負担が過重でないとき」の判断に当たっての考慮要素としては、例えば、事業等の規模やその規模からみた負担の程度、財政状況、業務遂行に及ぼす影響といったものが考えられる。 2.今後、本法第6条に規定する基本方針において典型的な考慮要素を例示するとともに、対応要領や対応指針において具体的な内容を明らかにすることを想定しており、その検討過程においては、障害者や事業者等の関係者の意見を反映させるための措置を講ずることとしている。 (14.法的効力、実効性の確保) 問14−1 本法には私法上の効果が規定されていないが、本法の私法上の効力如何。また、どのようにして本法の実効性を確保するのか。 (答) 1.本法においては、損害賠償請求権、契約の無効等の私法上の効果については規定しておらず、本法の私法上の効力については、民法等の一般規定に従い個々の事案に応じて判断されることになる。 2.一方、本法においては、主務大臣が特に必要があると認めるときは、報告の徴収、助言、指導、勧告といった措置を講ずることができることとしており、これらの権限が適切に行使されることにより、実効性が確保されるものと考える。 問14−2 民間事業者については報告の徴収等が規定されているが、行政機関等については、特に実効性担保の措置が定められていない。例えば、行政機関等による処分等が問題となる場合や、行政機関等の職員が本法に違反する行為をした場合には、どのようにして是正が図られるのか。 (答) 行政機関等の処分等が問題となるような場合には、例えば、行政不服審査法に基づく不服申立てを行うことが考えられる。また、仮に行政機関等の職員において本法に違反する行為があった場合には、例えば行政機関等の内部における服務規律確保のための仕組みや行政相談等の仕組みにより、是正が図られることになる。 問14−4 第12条にいう「特に必要があると認めるとき」とは、具体的にどのような場合を想定しているのか。 (答) 具体的な場合として主として想定しているのは、例えば、事業者が障害者に対し障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いを行い、その結果障害者の権利利益が侵害される懸念がある場合であって、同一の事業者によるものと考えられる事案が頻発しているなど、事業者による自主的な改善を期待することが困難である場合などである。 問14−5 「特に必要があると認めるとき」の判断が難しい場合があると考えられるが、本規定について、実際にどのように運用していくのか。 (答) 本規定については、各主務大臣が定める対応指針に基づきその適切な運用が図られるものと認識している。また、基本方針において、「特に必要があると認められるとき」として想定される場合等、主務大臣の権限行使の在り方に関する基本的な考え方を示すことが考えられる。 (16.障害者差別解消支援地域協議会) 問16−4 地域協議会が調停等の紛争解決を行うことは可能か。地域協議会は、地域における問題解決にどのように寄与するのか。 (答) 1.地域協議会においては、地域において障害者差別に関する相談や紛争の防止・解決を推進するためのネットワークを構築し、協議会の構成機関等の間で障害を理由とする差別に関する事案の情報を共有するとともに、それぞれの機関等における経験や専門知識を持ち寄り、障害者からの相談への対応等について協議することを想定している。 2.協議会が自ら調停を行うことは想定していないが、行政措置の権限を有する行政機関等に橋渡しをしたり、調停やあっせん等の機能を有する既存の紛争解決機関へ結びつけていく、という形で問題の解決を後押ししていくことが、重要であると考えている。 3.このように、協議会が適切な機関へ事案をつなぐ役割を担うことや、情報やノウハウの共有を通じた既存の相談・紛争解決機関の機能の向上により、地域全体として障害を理由とする差別に関する相談・紛争解決機能の向上が図られることが期待される。 問16−5 地域協議会における協議の結果に基づき、行政機関が事業者に対して指導等を行うことは、可能か。 (答) 協議の結果を踏まえ、地域協議会から、本法第12条による主務大臣の権限行使など行政措置の権限を有する行政機関に橋渡しを行うことは、可能であると考える。 (18.施行3年後の見直し等) 問18−1 法の施行状況についての検討に要する期間を3年と定めた理由如何。 (答) 本法を施行した後、その施行状況の検討に当たっては具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえる必要があることから、そのような事例等の集積に最低限必要な期間として3年としているもの。