(参考資料4) 奈良県障害のある人もない人もともに暮らしやすい社会づくり条例 目次 前文 第一章 総則(第一条―第七条) 第二章 障害を理由とする差別の禁止(第八条・第九条) 第三章 障害を理由とする差別を解消するための施策(第十条―第十五条) 第四章 奈良県障害者相談等調整委員会(第十六条) 第五章 障害及び障害のある人に関する理解の促進(第十七条) 第六章 雑則(第十八条) 第七章 罰則(第十九条) 附則 基本的人権が尊重される差別のない自由で平等な社会の実現は、人類全ての悲願であり、障害の有無にかかわらず、全ての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。また、障害のある人もない人も、等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられる社会の実現は、全ての人間の共通の願いである。 しかしながら、今なお、障害のある人に対する障害を理由とする不利益な取扱いが存在している。また、障害のある人の社会参加や自立を制限する物理的な障壁、誤解や偏見といった意識上の障壁等様々な社会的障壁も存在している。 このような状況を踏まえ、我々は、障害及び障害のある人に関することを身近な課題と捉え、障害の有無にかかわらず、誰もがともに学び生きるという意識を育み、障害を理由とする差別的言動その他の権利利益を侵害する行為をなくすとともに、全ての県民の障害への理解を深めるための取組が必要である。 ここに、我々は、障害のある人もない人も、ともに安心して幸せに暮らすことができる奈良県づくりを目指して、この条例を制定する。 第一章 総則 (目的) 第一条 この条例は、障害を理由とする差別の解消、障害のある人の権利擁護及び県民の理解(以下「障害を理由とする差別の解消等」という。)の促進に関する基本的な事項を定め、県の責務、県と市町村との連携並びに県民及び事業者の役割を明らかにし、障害を理由とする差別の解消等に関する施策を推進することにより、全ての県民が、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら、安心して幸せに暮らすことができる社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (基本理念) 第三条 全ての県民が、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら、安心して幸せに暮らすことができる社会の実現は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。 一 全ての障害のある人は、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 二 全ての障害のある人は、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 三 全ての障害のある人は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々とともに暮らすことを妨げられないこと。 四 全ての障害のある人は、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 五 障害のある人とない人が、ともに交流し、及び学び合い理解を深める必要があること。 (県の責務) 第四条 県は、前条の基本理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。 (県と市町村との連携) 第五条 県は、市町村が障害を理由とする差別の解消等に関する施策を実施する場合にあっては、当該市町村と連携し、及び協力するとともに、当該市町村に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。 (県民及び事業者の役割) 第六条 県民及び事業者は、第三条の基本理念にのっとり、障害及び障害のある人に対する関心と理解を深め、自己啓発に努めるとともに、県及び市町村が実施する障害を理由とする差別の解消等の推進に協力するよう努めるものとする。 (財政上の措置) 第七条 県は、障害を理由とする差別の解消等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 第二章 障害を理由とする差別の禁止 (不利益な取扱いの禁止) 第八条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。 一 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉サービス(以下「福祉サービス」という。)を提供する場合において、障害のある人に対して、その生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、福祉サービスの提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 二 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第一項に規定する障害福祉サービスを提供する場合において、障害のある人に対して、同条第十六項に規定する相談支援が行われた場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、その意に反して同条第一項に規定する厚生労働省令で定める施設若しくは同条第十一項に規定する障害者支援施設への入所を強制し、又は同条第十五項に規定する共同生活援助を行う住居への入居を強制すること。 三 不動産の取引を行う場合において、障害のある人又は障害のある人と同居する者に対して、建物の構造上やむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、不動産の売却若しくは賃貸、賃借権の譲渡若しくは賃借物の転貸を拒み、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 四 医療を提供する場合において、障害のある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 障害のある人の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、医療の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 イ 法令に特別の定めがある場合を除き、障害を理由として、障害のある人が希望しない長期間の入院による医療を受けることを強制し、又は隔離すること。 五 教育を行う場合において、障害のある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 障害のある人の年齢及び能力かつ特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするために必要と認められる適切な指導又は支援を講じないこと。 イ 障害のある人及びその保護者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいう。以下同じ。)への意見聴取及び必要な説明、情報提供を行わないで、又はこれらの者の意見を十分に尊重せずに、障害のある人が就学すべき学校(同法第一条に規定する小学校、中学校、中等教育学校(前期課程に限る。)又は特別支援学校(小学部及び中学部に限る。)をいう。)を決定すること。 六 雇用等において、障害のある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 労働者の募集又は採用を行う場合において、障害のある人に対して、従事させようとする業務を障害のある人が適切に遂行することができないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、募集若しくは採用を行わず、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 イ 障害のある人を雇用する場合において、障害のある人に対して、障害のある人が業務を適切に遂行することができないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件、昇進、 降格、配置転換、教育訓練、研修若しくは福利厚生について不利益な取扱いをし、 又は解雇すること。 七 不特定かつ多数の者が利用する建物その他の施設又は公共交通機関を障害のある人の利用に供する場合において、障害のある人に対して、建物その他の施設の構造上又は公共交通機関の車両等の構造上やむを得ないと認められる場合、障害のある人の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、建物その他の施設若しくは公共交通機関の利用を拒み、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 八 障害のある人に情報を提供し、又は障害のある人から情報の提供を受ける場合において、障害のある人に対して、次に掲げる取扱いをすること。 ア 障害のある人から情報の提供を求められた場合において、障害のある人に対して、当該情報を提供することにより他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、情報の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 イ 障害のある人が意思を表示する場合において、障害のある人に対して、障害のある人が選択した意思表示の方法によっては障害のある人の表示しようとする意思を確認することに著しい支障がある場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、意思の表示を受けることを拒み、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 九 障害のある人に、商品を販売し、又はサービスを提供する場合において、障害のある人に対して、その障害の特性により他の者に対し提供するサービスの質が著しく損なわれるおそれがあると認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、障害を理由として、商品の販売若しくはサービスの提供を拒み、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。 十 前各号に掲げるもののほか、障害のある人に対して、障害を理由として不利益な取扱いをすること。 (社会的障壁の除去のための合理的な配慮) 第九条 何人も、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害のある人の保護者、後見人その他の関係者が本人に代わって行ったもの及びこれらの者が本人の補佐人として行った補佐に係るものを含む。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、本人の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 第三章 障害を理由とする差別を解消するための施策 (相談及び支援) 第十条 何人も、県に対し、第八条各号に掲げる行為及び前条の規定による配慮をしないこと(以下「不利益な取扱い等」という。)に関する相談をすることができる。 2 県は、前項に規定する相談があったときは、次に掲げる措置を講ずるものとする。 一 相談に応じ、相談者に必要な助言、情報の提供等を行うこと。 二 相談に係る関係者間の調整を行うこと。 三 関係行政機関への通告、通報その他の通知を行うこと。 (相談員の配置) 第十一条 知事は、前条第二項各号に掲げる業務を行わせるため、適正かつ確実に行うことができる者を相談員として委嘱することができる。 2 相談員は、この条例に基づき業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。相談員でなくなった後においても、同様とする。 (必要な措置の求め) 第十二条 障害のある人は、第十条第一項の相談を経ても不利益な取扱い等に関する事案(以下「対象事案」という。)が解決しないときは、知事に対し、その解決のために必要な措置を講ずるよう求めることができる。 2 前項の規定は、対象事案に係る障害のある人の保護者、後見人その他の関係者について準用する。ただし、当該求めをすることが明らかに障害のある人の意に反すると認められるときは、この限りでない。 (助言又はあっせん) 第十三条 知事は、前条第一項又は第二項の規定による求めがあった場合において、助言若しくはあっせんの必要がないと認めるとき又は対象事案の性質上助言若しくはあっせんを行うことが適当でないと認めるときを除き、奈良県障害者相談等調整委員会に助言又はあっせんを行わせるものとする。 2 奈良県障害者相談等調整委員会は、前項の規定による助言又はあっせんのため必要があると認めるときは、対象事案の当事者(以下「関係当事者」という。)に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることその他必要な調査を行うことができる。 3 奈良県障害者相談等調整委員会は、対象事案の解決に必要なあっせん案を作成し、これを関係当事者に提示することができる。 4 奈良県障害者相談等調整委員会は、助言を行ったとき又はあっせんが終了し、若しくは打ち切られたときは、その結果を知事に報告しなければならない。この場合において、関係当事者があっせんに従わなかったときは、その旨その他規則で定める事項を併せて報告しなければならない。 (勧告等) 第十四条 知事は、前条第四項による報告を受けた場合において次の各号のいずれかに該当するため調査をすることを要すると認めるときは、関係当事者に対し、説明又は資料の提出を求めることができる。 一 正当な理由なく、前条第二項の規定による調査等を拒み、妨げ、又は忌避したとき。 二 前条第二項の規定による調査に対して虚偽の資料の提出又は説明を行ったとき。 三 前条第四項の規定によるあっせんを受け入れた不利益な取扱い等をしたと認めら れる関係当事者が、正当な理由なく、当該あっせんに基づいた措置を履行しないとき。 2 前項の説明又は資料の提出により、関係当事者が前項各号のいずれかに該当すると認めるときは、知事は、関係当事者に対し、必要な措置を講ずるべきことを勧告することができる。 (公表) 第十五条 知事は、前条第二項の規定による勧告を受けた関係当事者が、正当な理由なく、当該勧告に従わないときは、規則で定めるところにより、その旨を公表することができる。 2 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表に係る者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、意見を述べる機会を与えなければならない。 第四章 奈良県障害者相談等調整委員会 第十六条 この条例の規定によりその権限に属させられた事項を処理させるほか、障害のある人の権利擁護等のための施策に関する重要事項について、知事の諮問に応じて調査審議させるため、奈良県障害者相談等調整委員会(以下この条において「調整委員会」という。)を置く。 2 調整委員会は、委員十五人以内で組織する。 3 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が委嘱する。 一 学識経験を有する者 二 障害のある人及び障害のある人の福祉に関する事業に従事する者 三 事業者を代表する者 四 その他知事が適当と認める者 4 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 5 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 6 前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。 第五章 障害及び障害のある人に関する理解の促進 第十七条 県は、障害を理由とする差別をなくすことの重要性について、県民の関心と理解を深めるため、障害及び障害のある人に関する知識等の普及啓発その他必要な事業を行うものとする。 第六章 雑則 (その他) 第十八条 この条例で定めるもののほか、この条例の実施に関し必要な事項は、知事が規則で定める。 第七章 罰則 第十九条 第十一条第二項又は第十六条第五項の規定に違反して秘密を漏らした者は、 一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 附 則 (施行期日) 1 この条例は、平成二十七年十月一日から施行する。ただし、第二章、第三章及び第七章の規定は、平成二十八年四月一日から施行する。 (準備行為) 2 第十一条第一項の規定による相談員の委嘱に関し必要な行為は、この条例の施行前においても、同項の規定の例により行うことができる。