(資料3) 委員からのご意見と条例原案の修正案について 前文 (A:委員からのご意見) @法の趣旨を条例の中で強調するなら,前文に障害施策の基本法である「障害者基本法」 を明記する必要がある。 A条例原案においては,障害者差別の「実態」とのみ規定してあるが,実態を踏まえた 条例をつくるために,つくる会の条例案に規定するように規定する必要がある。 (B:条例原案) すべて人は,障がいの有無にかかわらず,平等に,かけがえのない個人として尊重され,地域社会で自らの個性と能力を発揮しながら心豊かに生活する権利を有している。 しかしながら,現実には,日常生活の様々な場面で,障がいのある人が障がいを理由として不利益な取扱いを受けているという実態がある。また,障がいのある人が,自らの声を反映させるため社会活動へ参加したいと願っても,それを困難にしている物理的な問題に加え,障がいや障がいのある人に対する誤解,無理解,偏見などに基づく社会的障壁が存在し,障がいのある人の社会参加の妨げとなっている。 日本国憲法においては,個人の尊重と法の下の平等がうたわれており,我国では,障害者の権利に関する条約の批准や,障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定など,障がいを理由とする差別の解消に向けた様々な取組みがなされてきた。 福岡市においても,国際社会や国の動向を踏まえた取組みを進めてきたが,障がいを理由とするいかなる種類の差別もない社会を実現するためには,市,事業者及び市民が一体となって努力していくことが必要である。 このような認識のもと,障がいを理由とする差別の解消の推進に向けた基本理念を明らかにし,障がいの有無にかかわらず,すべての人が個人として尊重される社会の実現を目指して,この条例を制定する。 (C:条例原案(修正案)) すべて人は,障がいの有無にかかわらず,平等に,かけがえのない個人として尊重され,地域社会で自らの個性と能力を発揮しながら心豊かに生活する権利を有している。 しかしながら,現実には,日常生活の様々な場面で,障がいのある人が障がいを理由として不利益な取扱いを受けているという実態がある。また,障がいのある人が,自己実現を求め,自分の望むような社会参加をしたいと願っても,それを困難にしている物理的な問題に加え,障がいや障がいのある人に対する誤解,無理解,偏見などに基づく社会的障壁が存在し,障がいのある人の社会参加の妨げとなっている。障がいのある人の多くがこのような不利益な取扱いや社会的障壁のために,自ら望むあり方で生きることを諦めざるを得ず,日常生活の様々な場面において家族等に依存することを余儀なくされ,その家族等を失えばたちまち生活自体が困難になってしまう状況にある。 日本国憲法においては,個人の尊重と法の下の平等がうたわれており,我国では,障害者の権利に関する条約の批准や障害者基本法の改正,障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定など,障がいを理由とする差別の解消に向けた様々な取組みがなされてきた。 福岡市においても,国際社会や国の動向を踏まえた取組みを進めてきたが,障がいを理由とするいかなる種類の差別もない社会を実現するためには,市,事業者及び市民が一体となって努力していくことが必要である。 このような認識のもと,障がいを理由とする差別の解消の推進に向けた基本理念を明らかにし,障がいの有無にかかわらず,すべての人が個人として尊重される社会の実現を目指して,この条例を制定する。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) @ご指摘のとおり修正しております。 Aご指摘のとおり修正しております。 第1条 (A:委員からのご意見) 「自らの意思で社会のあらゆる分野における活動に参画」の後に,「政策決定に関わる」旨の文言を規定すべきだ。市の資料では,「前文や第1条でその趣旨を規定している」となっているが,条例原案では明確に読み取ることができない。 (B:条例原案) (目的) 第1条 この条例は,障がいを理由とする差別を解消するための基本理念を定め,市の責務並びに事業者及び市民の役割を明らかにするとともに,その実現のための施策の基本となる事項を定めることにより,障がい者が,社会を構成する一員として,自らの意思で社会のあらゆる分野における活動に参画することができる環境を構築し,もってすべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (C:条例原案(修正案))  (目的) 第1条 この条例は,障がいを理由とする差別を解消するための基本理念を定め,市の責務並びに事業者及び市民の役割を明らかにするとともに,その実現のための施策の基本となる事項を定めることにより,障がい者が,社会を構成する一員として,自らの意思で社会のあらゆる分野における活動に参画し政策決定に関わることができる環境を構築し,もってすべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) ご指摘のとおり修正しております。 第2条 (A:委員からのご意見) 条例原案の第2条3号を,「何人も社会的障壁の除去のためには,合理的配慮を行う必要があること。」とすべきだ。 (B:条例原案) (基本理念) 第2条 障がいを理由とする差別の解消の推進は,次に掲げる基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき行うものとする。 (1) すべての障がい者が,障がい者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 (2) 何人も,不当な差別的取扱いにより障がい者の権利利益を侵害してはならないこと。 (3) 社会的障壁の除去のためには,合理的配慮を行うことが促進される必要があること。 (4) 何人も,障がい者との交流を通じて障がい又は障がい者に対する理解を深めていくこと。 (5) すべての障がい者は,言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段及び情報の取得又は利用のための手段を選択する機会が保障される権利を有するとともに,障がい者に対しては,コミュニケーション及び意思決定の支援並びにこれらの選択の機会を保障する必要があること。 (6) 障がいを理由とする差別に関する紛争が発生した場合には,相手方の立場を踏まえた建設的な対話を行うことにより解決することを基本とすること。 (7) 障がいのある女性は,障がいに加えて女性であることにより更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること,及び障がいのある児童に対しては,年齢に応じた適切な支援が必要であることを踏まえること。 (8) 非常災害時において障がい者の安全を確保するため,非常災害に備えた地域における支援体制の整備及び非常災害発生時における適切な支援が求められること。 (C:条例原案(修正案)) (基本理念) 第2条 障がいを理由とする差別の解消の推進は,次に掲げる基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき行うものとする。 (1) すべての障がい者が,障がい者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 (2) 何人も,不当な差別的取扱いにより障がい者の権利利益を侵害してはならないこと。 (3) 社会的障壁の除去のためには,合理的配慮を行うことが促進される必要があること。 (4) 何人も,障がい者との交流を通じて障がい又は障がい者に対する理解を深めていくこと。 (5) すべての障がい者は,言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段及び情報の取得又は利用のための手段を選択する機会が保障される権利を有するとともに,障がい者に対しては,コミュニケーション及び意思決定の支援並びにこれらの選択の機会を保障する必要があること。 (6) 障がいを理由とする差別に関する紛争が発生した場合には,相手方の立場を踏まえた建設的な対話を行うことにより解決することを基本とすること。 (7) 障がいのある女性は,障がいに加えて女性であることにより更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること,及び障がいのある児童に対しては,年齢に応じた適切な支援が必要であることを踏まえること。 (8) 非常災害時において障がい者の安全を確保するため,非常災害に備えた地域における支援体制の整備及び非常災害発生時における適切な支援が求められること。 (D:委員意見を採用した場合に考えられる条文) (基本理念) 第2条 第7条に定めるもののほか,障がいを理由とする差別の解消の推進は,次に掲げる基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき行うものとする。 (1) すべての障がい者が,障がい者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 (2) 社会的障壁の除去のためには,何人も,その実施に伴う負担が過重でない限り,合理的配慮をする必要があること。 (3) 何人も,障がい者との交流を通じて障がい又は障がい者に対する理解を深めていくこと。 (4) すべての障がい者は,言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段及び情報の取得又は利用のための手段を選択する機会が保障される権利を有するとともに,障がい者に対しては,コミュニケーション及び意思決定の支援並びにこれらの選択の機会を保障する必要があること。 (5) 障がいを理由とする差別に関する紛争が発生した場合には,相手方の立場を踏まえた建設的な対話を行うことにより解決することを基本とすること。 (6) 障がいのある女性は,障がいに加えて女性であることにより更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること,及び障がいのある児童に対しては,年齢に応じた適切な支援が必要であることを踏まえること。 (7) 非常災害時において障がい者の安全を確保するため,非常災害に備えた地域における支援体制の整備及び非常災害発生時における適切な支援が求められること。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) 以下の疑問点があるため,事務局としては修正案(原案のとおりとする)が妥当と考えております。 ・合理的配慮は新しい概念であり,具体的な事例の集積が十分でない現状において,基本理念であるとはいえ,一般市民にも直接義務付ける規定とすることはいかがなものでしょうか。市や事業者であれば,「事務や事業を行うに当たり」という一定の制約がある中で合理的配慮を行うことになりますが,一般市民はそのような制約もなく,障がい者との関係性も一般の事業者と障がい者との関係以上に様々なものが考えられます。そのような中で,すべての市民に一律に義務付けをするということは妥当ではないと考えます。 ・「合理的配慮を早期に社会に浸透させる」という目的があるとのことですが,中長期的に見て,「条例で義務付けられているから合理的配慮を行う」というのが,この条例が本当に目指す形なのでしょうか。 合理的配慮という新しい概念を浸透させるために条例という『強制力』に頼ることが妥当なのかどうか,目的が達せられた(合理的配慮が十分に浸透した)と判断される場合には将来的により緩やかな表現に改正していくことも念頭に置いた上でその規定とするのかどうか,といった点を検討すべきではないでしょうか。 第3条 (A:委員からのご意見) @「障がい」の定義を,つくる会の障がいの定義(身体障がい,知的障がい,精神障がい,発達障がい,難治性疾患その他の心身の機能障がい及び社会的障壁によって,継続的又は断続的に日常生活又は社会的に相当な制限を受ける状態)にすべきだ。 A条例原案の第3条第4号について。「するように努めないこと」と規定することで,合理的配慮をしなければならないという色合いが薄まるので,「若しくはするように努めないこと」という文言は削除すべきではないか。 B事業者の合理的配慮は努力義務であり,障害者差別解消法でも事業者の合理的配慮の不提供が「差別」に当たるとか「違法」になるとは明確に規定していないのだから,「障がいを理由とする差別」の内容に合理的配慮を入れるのは慎重に考えるべきだ。条例原案の第3条第4号は全文削除する方がいいと思う。 (B:条例原案) (定義) 第3条 この条例において使用する用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障がい 身体障がい,知的障がい,精神障がい,発達障がい,難病その他の心身の機能の障がいをいう。 (2) 障がい者 障がいがある者であって,障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (3) 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。 (4) 障がいを理由とする差別 客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別の事情がないにもかかわらず,不当な差別的取扱いを行い,又は合理的配慮をせず,若しくはするように努めないことをいう。 (5)〜(9) 略 (C:条例原案(修正案)) (定義) 第3条 この条例において使用する用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障がい 身体障がい,知的障がい,精神障がい,発達障がい,難病その他の心身の機能の障がいをいう。 (2) 障がい者 障がいがある者であって,障がい及び社会的障壁により継続的,断続的又は周期的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (3) 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。 (4) 障がいを理由とする差別 客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別の事情がないにもかかわらず,不当な差別的取扱いを行い,又は合理的配慮をしないことをいう。 (5)〜(9) 略 (D:委員意見を採用した場合に考えられる条文) (定義) 第3条 この条例において使用する用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障がい 身体障がい,知的障がい,精神障がい,発達障がい,難治性疾患その他の心身の機能障がい及び社会的障壁によって,継続的,断続的又は周期的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態をいう。 ※「障がい者」の定義を削除していますが,その場合,厳密には,原案で「障がい者」としていた箇所をすべて「障がいのある人」と修正する必要があります(便宜上,以下では修正しておりません)。 (2) 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。 (3) 障がいを理由とする差別 客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別の事情がないにもかかわらず,不当な差別的取扱いを行い,又は合理的配慮をしないことをいう。 (4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なく,障がいを理由として,障がい者でない者と異なる不利益な取扱いをすることをいう。 (5) 合理的配慮 障がい者の性別,年齢及び障がいの状態に応じた社会的障壁の除去のための必要かつ合理的な現状の変更又は調整をいう。 (6) 事業者 市内で事業を行う者(国,独立行政法人等,地方公共団体(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第3章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。)及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (7) 独立行政法人等 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第2条第5号に規定する独立行政法人等をいう。 (8) 地方独立行政法人 法第2条第6号に規定する地方独立行政法人をいう (9) 自治組織 町内会,自治会その他の市内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体をいう。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) @以下の理由により,事務局としては修正案(原案のとおりとする)が妥当と考えております。 まず,「難病」を「難治性疾患」とする点について,今回の会議の前に委員にその趣旨を確認したところ,「『難病の患者に対する医療等に関する法律』の中で『難病』の定義があるが,対象を限定的に絞る趣旨の定義規定となっており,『支援の対象は,難病指定を受け入れている病気の患者に限られる』という誤解が生じるのを避けるために,当該定義(難治性疾患)をした」とのことでした。  「難病の患者に対する医療等に関する法律」の第1条では,難病とは,「発病の機構が明らかでなく,かつ,治療方法が確立していない希少な疾病であって,当該疾病に係ることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう」とされておりますが,この定義の中に「難病指定を受けたもの」という内容は含まれておらず,「指定難病」というものが第5条で「難病のうち,・・・厚生労働大臣が・・・指定するもの」という形で別途定義されております。  したがって,委員ご指摘のような,「難病」と表記することで「難病指定を受け入れている病気の患者に限られるという誤解が生じる」ことは,少なくとも「難病の患者に対する医療等に関する法律」との関係ではあり得ないと考えます(さらに言えば,「難治性疾患」について定義した法令がないため,仮に「難治性疾患」という言葉を使用する場合は,これを定義すべきかどうかを改めて検討する必要があるものと考えます)。 次に,障がいの定義に「及び社会的障壁によって,継続的又は断続的に日常生活又は社会的に相当な制限を受ける状態」を追加すべきとの点について,その趣旨を委員に確認したところ,「今回の条例制定に至る経過はそもそも障害者権利条約の批准のための取組みの流れの中で生まれたものである。その条約批准のための障害者基本法の改正であり,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定である。その趣旨からすれば,障害者権利条約で定める障害の定義により定めることは当然のことと考える。また,この定義により福岡市条例においては,障害者の定義も規定する必要がなくなると考えられる。」とのことでした。  この点,内閣府のQ&Aによれば,「障害者基本法の改正により,我が国の障害を理由とする差別の考え方が障害者権利条約に対応したものであることは明確に」なり,障害者差別解消法は「障害者基本法と同様に,障害者権利条約の考え方を反映したものである」とされております(問2−2)。したがって,一般的な考え方をすれば,そのような法律との整合性を考慮して条例の定義も考えるべきであり,条約と同じように規定しなければ何らかの問題が生じるという事情がない限り,事務局としては差別解消法と同じ規定の仕方をするべきと考えております。  さらに,「障がい」の定義をご指摘のように修正した場合,原案のままだと,「障がい」の定義の中に「社会的障壁」の文言がある一方,「社会的障壁」の定義の中に「障がい」の文言があるという循環論法となるため,「障がい」の定義から「社会的障壁」を削除するか,あるいは「社会的障壁」の定義から「障がい」を削除する必要が生じます。しかし,この問題を解消できるような定義の仕方はないものと考えます。   Aご指摘のとおり修正しております。  なお,前回の会議で「合理的配慮をしないこと」とした場合と,「合理的配慮をせず,若しくはするように努めないこと」とした場合とで,どのような違いが生じるのかというご質問がありましたが,結論として,実際的な違いはほとんどないと考えます。 例えば,「障がいを理由とする差別に関する相談」(修正案の第13条)において,「合理的配慮をせず,若しくはするように努めないこと」とした方が,「結果的に合理的配慮をしなかった場合」に限られなくなるため,相談の対象となる事案が若干広がるようにも思われますが,実際には,「結果的に合理的配慮をしなかった」からこそ相談が行われると考えられますので,「若しくはするように努めないこと」と規定したからといって相談対象となる事案が広がるということはないと思われます。 B以下の理由により,事務局としては第4号は削除すべきでないと考えております。 まず,合理的配慮の不提供は「差別」には当たらないはずであるとのご指摘については,たしかに法の条文で明確に規定されているわけではありませんが,内閣府の基本方針(第1回検討会議【参考資料4】)において,「法は,・・・障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し」(2頁)と記載されており,法においては合理的配慮の不提供も「差別」に当たることが明確に述べられております。  この条例においても,法と同様,「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」を差別と定義するものであり,それがどのような場合に違法になるのかというのは,後の規定(第7条や第8条)に規定しております。 第6条 (A:委員からのご意見) 地域コミュニティの分野での差別も多いため,条例に規定すべきだ。 (B:条例原案) (市民の役割) 第6条 市民は,基本理念にのっとり,障がいを理由とする差別をなくすよう努めるとともに,すべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の構築に寄与するよう努めるものとする。 (C:条例原案(修正案)) (市民等の役割) 第6条 市民及び自治組織は,基本理念にのっとり,障がいを理由とする差別をなくすよう努めるとともに,すべての人が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の構築に寄与するよう努めるものとする。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) ご指摘のとおり自治組織について規定しております(第9条も同じ)。 第6条と第7条の間に規定すべきとのご意見がある条文 (A:委員からのご意見) @条例原案の第7条について。「市及び事業者」とすることで,「市民は差別してよい」と解釈されはしないか。第6条と第7条の間に,「何人も」を主語にして差別禁止の条文を置くべきだ。 A義務規定であっても,本条例は,罰則によって取り締まったり規制する条例ではなく,罰則規定はなく違反しても罰せられることはないのではないか。 (B:条例原案) なし (C:条例原案(修正案)) なし (D:委員意見を採用した場合に考えられる条文) (障がいを理由とする差別の禁止に関する基本理念) 第7条 何人も,不当な差別的取扱いにより障がい者の権利利益を侵害してはならない。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) @以下の疑問点があるため,事務局としては修正案(原案のとおりとする)が妥当と考えております。 ・条例に通底する基本理念は第2条に規定しており,本条の内容が条例全体に及ぶ内容なのであれば,一般的には第2条で規定すべきです。この条文だけをここに規定することは,条例の構成としては異様であると考えております。 ・見出しに「基本理念」と謳うとしても,「何人も・・・してはならない」と規定する第7条と,「市及び事業者は・・・してはならない」と規定する第8条が連続することにより,かえって分かりにくい構成であると考えております。 A委員のご指摘は,「基本理念」とせずに「何人も・・・してはならない。」と規定しても,本条例は取締りを定めた条例ではないのだから何ら不都合はないのではないか,との趣旨であると考えます。  しかし,本条例は勧告や公表という事実上の制裁手段の規定を置いており,「取締りを定めた条例ではない」とのご指摘は当たらないと考えております。 第7条 (A:委員からのご意見) @条例原案の第1号アについて。障害者支援施設が不当な差別的取扱いを行っているように見えるので,削除していただきたい。 A条例原案の第1号アについて。この条例は障がい者のための条例なので,障害者支援施設と記載してよいと思う。 B条例原案の第1号アについて,障害者支援施設という文言について明記されることを希望する。 C条例原案の第7条第3号について。つくる会の条例案を参考に,より詳細に規定していただきたい。 (B:条例原案) (不当な差別的取扱いの禁止) 第7条 市及び事業者は,次に掲げる取扱いその他の不当な差別的取扱いにより,障がい者の権利利益を侵害してはならない。 (1) 福祉サービスの分野における次に掲げる取扱い ア 福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく,障がい者の意思に反して,障害者支援施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第11項に規定する障害者支援施設をいう。)その他の福祉サービスを行う施設における生活を強制すること。 イ 第三者の生命,身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障がいを理由として,福祉サービスの提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。 (2)  医療の分野における次に掲げる取扱い ア 他の法令に特別の定めがある場合を除き,障がい者の意思に反して,入院その他の医療を受けることを強制し,又は自由な行動を制限すること。 イ 第三者の生命,身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障がいを理由として,医療の提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。 (3) 教育及び保育に関し,客観的に合理的な理由がある場合を除き,障がいを理由として,教育若しくは保育を行うことを拒否し,若しくは制限し,又はこれらに条件を付すること。 (4)〜(7) 略 (C:条例原案(修正案)) (不当な差別的取扱いの禁止) 第7条 市及び事業者は,その事務又は事業を行うに当たり,次に掲げる取扱いその他の不当な差別的取扱いにより,障がい者の権利利益を侵害してはならない。 (1) 福祉サービスの分野における次に掲げる取扱い ア 第三者の生命,身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障がいを理由として,福祉サービスの提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。 イ 福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく,障がい者の意思に反して,障害者支援施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第11項に規定する障害者支援施設をいう。)その他の福祉サービスを行う施設における生活を強制すること。 (2)  医療の分野における次に掲げる取扱い ア 第三者の生命,身体又は財産を保護するためやむを得ない場合その他の客観的に合理的な理由がある場合を除き,障がいを理由として,医療の提供を拒否し,若しくは制限し,又はこれに条件を付すること。 イ 他の法令に特別の定めがある場合を除き,障がい者の意思に反して,入院その他の医療を受けることを強制し,又は自由な行動を制限すること。 (3) 教育及び保育の分野における次に掲げる取扱い ア 客観的に合理的な理由がある場合を除き,障がいを理由として,教育若しくは保育を行うことを拒否し,若しくは制限し,又はこれらに条件を付すること。  イ 障がい者若しくはその保護者(学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条に規定する保護者をいい,同条に規定する保護者のない場合における里親(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第27条第1項第3号の規定により委託を受けた里親をいう。)その他の政令で定める者を含む。)の意見を聴かず,若しくは意思を尊重せず,又はこれらの者に必要な説明を行わずに,障がい者が就学する学校(学校教育法第1条に規定する小学校,中学校,中等教育学校(前期課程に限る。)又は特別支援学校(小学部及び中学部に限る。)をいう。)を決定すること。 (4)〜(7) 略 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) @〜B以下の理由により,事務局としては修正案(原案のとおりとする)が妥当と考えております。 「福祉サービス施設」とは,障害者支援施設のように障がい者が普段よく利用する施設から,児童福祉施設や老人福祉施設など,障がい者が滅多に利用することのない施設まで,非常に多岐にわたっております。  また,「福祉サービス施設」について厳密に定義した法令はないため,本条で単に「福祉サービス施設」とだけ規定した場合,それがどのような施設を指すのかが一見して明らかではありません。  そこで,障がい者が生活を行う場として最も代表的な施設であり,万が一,実際に差別が行われた際に影響が大きいと考えられる「障害者支援施設」を例示として挙げることで,この条例における「福祉サービスを行う施設」とはどのような施設を指すのかが分かりやすくなるという効果があると考えております。 Cご指摘のとおり修正しております。 第8条 (A:委員からのご意見) @事業者は「過重な負担」を理由に合理的配慮を断ることができることを明示すべきだ(この場合,配慮を求めた障がい者及びその家族その他の関係者に,その理由を説明すること)。 A事業者も市と同様に合理的配慮の提供を義務とすべきだ。「障がいを理由とする差別」とは,不当な差別的取扱いと合理的配慮の不提供のことであり,同じようにすべきだ。 B合理的配慮には,できない配慮はしなくてもよいという適用の除外が担保されている。事業者の営業の自由を阻害するのではないかという危惧に対しては,できることをすればよいという発想に切り替えていただきたい。してもしなくてもよいという発想からは事態は前進しないと思う。 C「何人も」を規定し,「合理的配慮」を求める・促す文言にすること。 特に障害者基本法第4条「何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」と規定している。したがって,   その範囲は福岡市で生業を営むすべての市民・事業者である。 (B:条例原案) (合理的配慮) 第8条 市は,その事務又は事業を行うに当たり,障がい者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障がい者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をしなければならない。 2 事業者は,その事業を行うに当たり,障がい者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障がい者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をするように努めなければならない。 (C:条例原案(修正案)) (合理的配慮) 第8条 市は,その事務又は事業を行うに当たり,障がい者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障がい者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をしなければならない。 2 事業者は,その事業を行うに当たり,障がい者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障がい者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をするように努めなければならない。 (D:委員意見を採用した場合に考えられる条文) (合理的配慮) 第8条 市は,その事務又は事業を行うに当たり,障がい者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障がい者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をしなければならない。 2 市は,意思の表明の困難な障がい者が,その家族その他の関係者を伴っていない場合であって,社会的障壁の除去を必要としていることが明白なときは,当該障がい者から意思の表明がない場合であっても,その社会的障壁の除去に適切と思われる配慮をするよう努めなければならない。 3 事業者は,その事業を行うに当たり,障がい者及びその家族その他の関係者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障がい者の権利利益を侵害することとならないよう,合理的配慮をするように努めなければならない。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) 事務局としては修正案(原案のとおりとする)が妥当と考えております。 @本条の規定を根拠に,事業者は「過重な負担」を理由に合理的配慮を断ることができる(もちろん現場では丁寧な説明が必要と思われます)ため,「断ることができること」を明示する必要はないと考えます。 AB以下の理由により,事務局としては,原案のとおりとすべきと考えております。 努力義務とは「するように努めなければならない」というものであり,「してもしなくてもよい」というものではありません。  委員のご指摘は,「結果的にしなくても違法とはされないのであれば,しなくてもよいと言っているのと同じことではないか。」とのご趣旨と思われます。 しかしながら,第5条において,事業者には「積極的な」役割が求められており,条例全体の趣旨からすれば,「してもしなくてもよいという発想」とは解されないと考えます。 また,「事業者」の幅は大変広く,営利目的か非営利目的か,個人か法人かを問わず,同種の行為を反復継続して行う者が広く含まれるとされており,例えば,個人事業主やボランティア事業のような対価を得ない無報酬の事業,社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も対象となります。 したがって,「事業者」と障がい者の関係は具体的場面によって様々であり,求められる配慮も多種多様であることから,「事業者」を一括りにして一律に義務付けをする(その効果として,「義務違反でないこと」の説明責任が事業者側に転換される)ことは難しいと考えております。 C障害者基本法が理念を定めた法律であるのに対し,この条例は紛争解決手続や事実上の制裁手段を規定するものであるため,「何人も不当な差別的取扱いを行ってはならない」と規定した場合の意味合いも異なる(障害者基本法に規定されているから条例にも規定できるはずだということにはならない)ことについて,前回の会議でもご説明したとおりです。 第9条 (A:委員からのご意見) 市は合理的配慮の提供に関する情報を集積し,事業者に対し必要な情報の提供を行うという考え方をどこか適当なところに書き入れるよう提案する。 (B:条例原案) (啓発活動及び交流の推進) 第9条 市は,事業者,市民の障がい及び障がい者に対する理解を深めるために必要な啓発活動を行うとともに,障がい者と障がい者でない者の交流の推進に必要な施策を実施するものとする。 (C:条例原案(修正案)) (啓発活動等) 第9条 市は,事業者,市民及び自治組織の障がい及び障がい者に対する理解を深めるために必要な啓発活動を行うとともに,事業者が障がいを理由とする差別の解消のための取組みを積極的に行うことができるよう,事業者に対し,情報の提供を行うものとする。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) ご指摘のとおり修正しております。 第10条 (A:委員からのご意見) なし (B:条例原案) (啓発活動及び交流の推進) 第9条 市は,事業者及び市民の障がい及び障がい者に対する理解を深めるために必要な啓発活動を行うとともに,障がい者と障がい者でない者の交流の推進に必要な施策を実施するものとする。 (C:条例原案(修正案)) (交流の推進) 第10条 市は,障がい者と障がい者でない者の交流の推進に必要な施策を実施するものとする。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) 第9条の内容を変えたことに伴い,「交流の推進」を単独で規定することとしました。 第11条 (A:委員からのご意見) 相談体制についての専門性が「障がい及び障がい者に関」することとなっているが,差別案件に関しての相談となると差別内容を精査するための聞き取りや内容整理,さらに差別を行った側からの聞き取りなどを行うための専門性や両者の調整力など,差別に関しての相談は,多様な専門性が求められることを明記すべきだ。 (B:条例原案) (相談体制の整備) 第10条 市は,障がいを理由とする差別に関する相談体制を整備するに当たっては,当該体制が次の各号のいずれにも該当するよう考慮するものとする。  (1) 相談をする人にとって身近に相談窓口があること。  (2) 障がい及び障がい者に関し専門的知識を有する者が相談を受けること。 (C:条例原案(修正案)) (相談体制の整備) 第11条 市は,障がいを理由とする差別に関する相談体制を整備するに当たっては,当該体制が次の各号のいずれにも該当するよう考慮するものとする。  (1) 相談をする人にとって身近に相談窓口があること。  (2) 障がい及び障がい者に関し専門的知識を有する者が相談を受けること。 (D:委員意見を採用した場合に考えられる条文) (相談体制の整備) 第11条 市は,障がいを理由とする差別に関する相談体制を整備するに当たっては,次に掲げる要件を満たすよう考慮するものとする。 (1) 相談をする人にとって身近な相談窓口を置くこと。 (2) 障がい及び障がい者に関し専門的知識を有する者(次号において「相談員」という。)を相談窓口に置くこと。 (3) 相談窓口において相談を受けるほか,相談員に対し,専門的な見地から業務遂行に必要な技術について指導及び助言を行う者を置くこと。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) 条例においては基本的な事項のみを規定し,委員ご指摘のような要素については,施行規則等に書き込んでいくべきと考えます。 第13条 (A:委員からのご意見) 「特定相談」について,相談業務の委託をできることとし,委託先を明文化する必要がある。 (B:条例原案) (相談) 第12条 障がい者及びその家族その他の関係者又は事業者は,市に対し,障がいを理由とする差別に関する相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。 2 市は,特定相談を受けた場合は,必要に応じて次に掲げる対応を行うものとする。 (1) 必要な説明又は情報の提供 (2) 当該事案の関係者間の調整又はあっせん (3) 関係行政機関に対する通告,通報その他の通知 (C:条例原案(修正案)) (相談) 第13条 障がい者及びその家族その他の関係者又は事業者は,市に対し,障がいを理由とする差別に関する相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。 2 市は,特定相談を受けた場合は,必要に応じて次に掲げる対応を行うものとする。 (1) 必要な説明又は情報の提供 (2) 当該事案の関係者間の調整又はあっせん (3) 関係行政機関に対する通告,通報その他の通知 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) 委託については条文で規定せずとも行うことは可能ですので,規定しておりません(福岡市の他の条例においても,基本的には規定しておりません)。 第19条〜第22条 (A:委員からのご意見) @条例原案においては,推進体制について政策提言機能がない等具体的な規定がなく,結果的には現在の差別解消地域協議会と同じ内容の体制になることが想定されるので,つくる会条例案第31条のように,設置根拠,組織定員,所掌事務等について具体的に明確に規定する必要がある。 A市の案でだされている「勧告」だけを諮問する機関としての「審査会」ではなく,相談の次の段階の申出から「助言及びあっせん」その後の対応を踏まえての「勧告」までを第三者を交え,しっかりとした論議を踏まえて,方向性をだす「調整委員会」で審議されるべきだ。 その調整委員会は,幅広い行政機関や,事業者を含む民間団体,障がい当事者や家族関係者,有識者を構成員として,20名以内でもって構成するべきである。 また,事業者だけに限定することなく,行政機関による差別案件についても取り扱う必要があると考える。そのためにも,調整委員会は福岡市から独立した機関であるべきと考える。 (B:条例原案) (設置) 第18条 市長の附属機関として,福岡市障がい者差別解消推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。 (所掌事務) 第19条 推進会議は,次に掲げる事務を行う。 (1)  障がいを理由とする差別の解消に関し必要と認められる事項について調査審議すること。 (2)  法第18条第1項に規定する事務 (3) 前2号に掲げるもののほか,障がいを理由とする差別を解消するために必要な事務 (組織及び委員) 第20条 推進会議は,委員30人以内をもって組織する。 2 委員は,障がい者及び福祉,医療,教育,雇用その他障がい者の権利の擁護について優れた識見を有する者のうちから,市長が任命する。 3 委員は,職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,また同様とする。  (部会) 第21条 推進会議は,必要に応じて,部会を置くことができる。 (C:条例原案(修正案)) (設置) 第19条 市長の附属機関として,福岡市障がい者差別解消推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。 2 推進会議は,法第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会を兼ねるものとする。 3 推進会議は,障がいを理由とする差別の解消に関する重要な施策に関し,市長に対し,意見を述べることができる。 (所掌事務) 第20条 推進会議は,次に掲げる事務を行う。 (1)  障がいを理由とする差別の解消に関し必要と認められる事項について調査審議すること。 (2)  法第18条第1項に規定する事務 (3) 前2号に掲げるもののほか,障がいを理由とする差別を解消するために必要な事務 (組織及び委員) 第21条 推進会議は,委員30人以内をもって組織する。 2 委員は,障がい者及び福祉,医療,教育,雇用その他障がい者の権利の擁護について優れた識見を有する者のうちから,市長が任命する。 3 委員は,職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,また同様とする。  (部会) 第22条 推進会議は,必要に応じて,部会を置くことができる。 (D:委員意見を採用した場合に考えられる条文) (設置) 第19条 市長の附属機関として,福岡市障がい者差別解消推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。 2 推進会議は,法第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会を兼ねるものとする。 3 推進会議は,障がいを理由とする差別の解消に関する重要な施策に関し,市長に対し,意見を述べることができる。 (所掌事務) 第20条 推進会議は,次に掲げる事務を行う。 (1)  障がいを理由とする差別の解消に関し必要と認められる事項について調査審議すること。 (2)  法第18条第1項に規定する事務 (3)  特定相談に関する対応方針を協議すること。 (4) 前3号に掲げるもののほか,障がいを理由とする差別を解消するために必要な事務 (組織及び委員) 第21条 推進会議は,委員30人以内をもって組織する。 2 委員は,障がい者及び福祉,医療,教育,雇用その他障がい者の権利の擁護について優れた識見を有する者のうちから,市長が任命する。 3 委員は,職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,また同様とする。 (部会) 第22条 推進会議は,特定相談に関する対応方針を協議し,又は障がいを理由とする差別に関する相談体制について調査審議するため,相談部会を置くものとする。 2 推進会議は,前項に規定する事項以外の事項を調査審議するため,必要に応じその他の部会を置くことができる。 3 第1項の相談部会が行う調査審議の手続は,公開しない。 (E:委員意見に対する事務局の考え方・対応) @ご指摘のとおり修正しております。 なお,推進会議が地域協議会を兼ねる旨の規定が漏れていましたので,第19条第2項に規定しております。 A調整委員会という名称ではありませんが,委員ご指摘のような役割を部会に担わせることを考えております。  ただし,条例としては,詳細な事項は施行規則等に規定していくべきと考えます。 ●相談体制について (前回会議でお示しした事務局の考え方) 「身近に相談できる窓口があること(身近さ)」と「専門性のある相談員がいること(専門性)」の双方の要件を満たす仕組みとして,以下のように考えております。 考え方(案):市(委託を含む。)及び福岡市基幹相談支援センターを相談窓口とする。 理由: @ 内閣府作成の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」において,「法は,新たな機関は設置せず,既存の機関等の活用・充実を図ることとしており,国及び地方公共団体においては,相談窓口を明確にするとともに,相談や紛争解決などに対応する職員の業務の明確化・専門性の向上などを図ることにより,障害者差別の解消の推進に資する体制を整備するものとする。」とされており,福岡市においても,まずは既存の機関の活用・充実を図る方向で検討すべきである。 A 基幹相談支援センターは,障がい者(身体障がい者,知的障がい者,精神障がい者,発達障がい者,難病のある人すべてを含む。)の権利擁護に関する事業を行うものとされており,差別解消に関する事業を行うことは可能である。 B 上記の考え方と同様の仕組みをとる新潟市においては,基幹相談支援センターと虐待防止センターが別々の組織となっているところ,福岡市では両者の機能を基幹相談支援センターに集約しており,障がい者の虐待防止も含めた総合的な見地から相談に応じることが可能となるため,相談をする側にとってもメリットがある。 C 従来,福岡市の基幹相談支援センターは中央区の1箇所のみであったが,先般,「中央一元型から拠点分散型へ」という観点から障がい者の相談支援体制の見直しを行い,平成29年度からは各区にも基幹相談支援センターが設置される。 D 「身近さ」の要件を重視して相談窓口を過度に増やした場合,個々の相談員のノウハウの蓄積が遅れる可能性がある。特に,合理的配慮は新しい概念であり,具体的事案を通じた理解が不可欠であるため,ノウハウを早期に蓄積していくことが重要である(基幹相談支援センターは,業務の効率化やノウハウの早期蓄積というメリットを考慮して,虐待防止センターの機能と一体的に運営することとしたという経緯がある)。 E 市及び市が委託する福岡市基幹相談支援センターが相談窓口を一括して担うことにより,推進会議で特に取り上げるべき相談案件等を適切かつ効率的に選定することができ,推進会議との連携もスムーズになる(相談窓口が多くなればなるほど,各相談員の能力や経験も様々であるため,推進会議で特に取り上げるべき相談案件の選定が難しくなる可能性がある)。 (委員からのご意見) 現在の想定されている基幹相談の相談支援体制では差別解消の対応は想定されていず,人員の確保は不十分であり,各区に専門の相談員を置くべきである。 原案の審査会は,ほとんど想定されない勧告,公表に対応した形式的機関に過ぎず,他の自治体同様,調整委員会を設け,事例の課題整理や相談体制の充実等を担保すべきである。 (1) 合理的配慮を含む差別事象の調整にあたって,市当局や少人数の委員のみでは解決は難しいと思う。様々な障害種別や特性を理解した多くの委員からなる調整委員会が必要である。 (2) 「市(委託を含む。)及び福岡市基幹相談支援センターを相談窓口とする。」について 基幹相談支援センターに新たに差別案件の相談窓口を置くには,人的体制が最も不足すると思われる。他都市での差別案件での専門員の相談実績をみてみると時間をかけた両者からの聞き取りを行い,必要な場合,何回も両者の調整を行う場面もある。さらに「合理的配慮」に関する事項となると初めての取り扱いとなり,基幹相談支援センターの相談業務は非常に多岐にわたり,さらに地域のネットワークづくりに奔走している実態を考えると差別案件での相談にしっかりとのり,具体的案件を通じてのノウハウの蓄積していく余力はないと思う。 差別案件の相談を専門に行い,そこでの差別案件相談の蓄積を行い,地域での広く相談にのる支援センターに対してのバックアップを行えるためにも,各区に差別案件の専門の相談員を配置するか,市の委託先に十分な専門相談員の配置を行うなどの差別案件を専門に行える体制をつくり,そこが中核となって,各地域での広い相談体制を作っていくことが必要である。その幅広い相談窓口には,地域の身体障害者相談員や知的障害者相談員なども含まれる。 その中核となる専門相談員が配置されているところで,毎年の差別案件の相談関係の実績整理や差別案件を深く分析し,課題を整理していくことを協議していく場に提出する資料となる。 (委員意見に対する事務局の考え方・対応) ・調整委員会という名称ではありませんが,委員ご指摘のような役割を部会に担わせることを考えております。 ただし,規定としては,詳細な事項は施行規則等に書いていくべきと考えます。 ・具体的な人員体制等については,条例施行に向けた予算編成過程において決まっていくことではありますが,その中で必要かつ十分な体制を確保できるようにしていきたいと考えております。 ●特にご意見をいただきたい事項について (前回会議でお示しした事務局の考え方) 内閣府作成の基本方針(第1回検討会議【参考資料4】)においては,「意思の表明が困難な障害者が,家族,介助者等を伴っていない場合など,意思の表明がない場合であっても,当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には,法の趣旨に鑑みれば,当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的な対話を働きかけるなど,自主的な取組に努めることが望ましい。」とされております。  このことから,「意思の表明がない場合であっても,社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には何らかの配慮をすべきである」旨を条例で規定することは一つの考え方であり,福岡市としても,規定することが可能なのであれば規定すべきと考えております。  しかしながら,以下のア〜エに記載している疑問点があり,現在のところ規定することは慎重に考えているため,これらの点について特にご意見をいただければと存じます。  ア 内閣府の基本方針では,合理的配慮とは明確に区別して,「当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかける」と記載されており,「意思の表明がない場合であっても,社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合」に直ちに合理的配慮をすべきものとはされていません。このことから,「意思の表明がない場合であっても,社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合」に,合理的配慮を直接義務付ける規定とすべきなのか,それとも「当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するための建設的対話」等を義務付ける規定とすべきなのかが明らかではありません。  イ 仮に合理的配慮を義務付けるとすると,何らの意思疎通もない状態で現状の変更等(車いすの手助けなど)を行うことが義務付けられることになりますが,それは妥当なのでしょうか。基本方針によれば,合理的配慮とは,「双方の建設的対話による相互理解を通じて」行われるものとされており,そもそも意思疎通のない状況では合理的配慮という概念を持ち出すこと自体がなじまないのではないでしょうか。  ウ 仮に「当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するための建設的な対話」等を義務付けるとしても,以下の疑問点があります。 (ア) 「意思の表明が困難」な障がい者を前提としながら,当該障がい者に対して建設的な「対話」を働きかけるというのは,矛盾しているのではないでしょうか。意思の表明が困難な障がい者から,どのように「対話」をして「当該障がい者に対して適切と思われる配慮」を導き出すのでしょうか(もちろん現実的には,困っている障がい者に対して声掛け等を行って障がい者の意思を汲み取ろうとするプロセスがあると思われますが,条文として規定する際に,「意思の表明が困難」というキーワードと「対話」というキーワードは両立しないのではないかという意味です)。 (イ) 仮に「対話」というキーワードを使わず,「当該障がい者に対して適切と思われる配慮をしなければならない」などと規定するとしても,  ・この場合の配慮とは具体的にどのような意味なのでしょうか(文字どおりの意味であれば,「心くばり」や「気遣い」という意味になりますが,合理的配慮の定義にはそのような意味は含まれていません)。  ・仮に「配慮」が文字どおりの意味だとして,合理的配慮が具体的な行動としての「現状の変更又は調整」を意味するのに対し,「心くばり」や「気遣い」という,具体的な行動を伴うものかどうかやや曖昧な概念を義務付けることが妥当なのでしょうか。  エ 仮に上記ア〜ウの疑問点をすべてクリアしたとして,義務付ける対象は「市及び事業者」なのでしょうか,それとも「市」なのでしょうか。また,その義務は法的義務なのでしょうか,それとも努力義務なのでしょうか。 (委員からのご意見) @内閣府の基本方針を素直に読めば,意思の表明が困難な障がい者が,家族,介助者等を伴っていない場合,意思の表明がない場合でも自主的な合理的配慮をするのが望ましいとの考え方を示していると理解できる。  「建設的対話」はあくまで手段の一つと考えるべきで,知的障がい者や難病の人がスムーズなコミュニケーションを取れない状況も考えられる。意思疎通がないから建設的対話はできないとか,合理的配慮の概念になじまないと決めつける必要はないであろう。  障がい者との意思疎通がなくても,@段差があるところに携帯スロープを用意しておく,A車いすの人も取りやすいよう商品の陳列を工夫する,B手話ができる人を商品売り場に配置する,など様々な社会的障壁の除き方はある。  合理的配慮は,努力義務と位置づけていいと思う。ただし,配慮をしなければ,何らかのペナルティを課すというものではなく,特に事業者に対しては,できる範囲でいろいろと工夫して,障壁を取り除くよう促すことがこの条例の本来の目的ではないか。  よって,「意思の表明があった場合において」と限定せず,「または意思の表明がない場合であっても,当該障がい者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白な場合には」を付け加えて表記するのが妥当と考える。  第2項の事業者についても同様の表記にそろえるのがいいと考える。 A「意思の表明がない」の概念の捉え方は,医学的な「機能的にできない」という意味だけに解すべきではない。誰が見ても,当事者が置かれている状況から,ご本人の意思が推測,察知できる場合を具体的に想定して議論がなされるべきである。  意思の表明がない場合,対話を行うという状況は自己矛盾であるという。ことはない。 そもそも合理的配慮が必要なことの社会的理解が少ない状況で,周囲が気づかない。当事者が,自己制御,あるいは,精神的な圧迫等で意思表明が難しいことも想定されるべきである。 対話とは,字句通り言葉による語りかけをのみの対話でなく,ボディランゲージやYES,NOの意思確認をしてみる。等の幅広い意思確認のためのコミュニケーションととらえるべきである。 ※合理的配慮とは,意思の表明があるか否かという点にのみ着目すべきでなく,障がい者が,健常者よりもはるかに,社会的障壁により通常の市民生活,社会参加が難しいマイノリティの立場や状況を健常者が想起するというセンス,配慮が必要である。ということを考えるべきである。 Bつくる会の条例案に明記しているように「社会的障壁の除去の実施について,その実施に伴う負担が過重でないときは,必要かつ合理的な変更,調整をしなければならない。」と規定しているので本市担当部署の云う危惧については杞憂である。 C内閣府の基本方針の考え方は,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の第3条(国及び地方公共団体の責務),第4条(国民の責務)の規定するように「障害を理由とする差別の解消の推進に」取り組まなければならないとする趣旨であり,これを踏まえれば,条例に規定すべきであると考えます。  先行事例として存在する明石市の条例においては,その第3条(定義)(5)合理的配慮の提供に関して,「障害者が現に社会的障壁の除去を必要としていることが認識できる場合において,当該障害者が障害者でない者と同等に権利を行使することが出来るようにするため,その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で,当該障害者の意向を尊重しながら,その性別,年齢及び障害の状態に応じて,必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うことをいう。」と規定しています。 また,「明石市障害者差別解消に関するガイドライン」においては,大意「困っていそうだな」と思ったときにはいつでも配慮を 現に社会的障壁の除去を必要としていることを認識できる場合 障害のある人から手伝ってほしいことをはっきりとは言われてはいないが,合理的に考えて何らかの配慮が必要であるときと規定している。 (委員意見に対する事務局の考え方・対応) @内閣府の基本方針では,合理的配慮とは明確に区別して,「当該障害者に対して適切と思われる配慮」という言葉を使っております。その背景には,合理的配慮が双方の建設的対話による相互理解を通じて行われるものであり,意思の表明がない場合に合理的配慮という言葉を使うのはなじまないからという理由があるものと考えられます。  したがって,内閣府の基本方針では,「自主的な取組に努めることが望ましい」とは書いてあっても,「合理的配慮をすることが望ましい」とは書いておりません。 事務局としても,意思の表明が困難な障がい者に対して「自主的な」取組みをすることが望ましいと考えている点は委員のご意見と全く同じなのですが,それを「合理的配慮」という言葉を使わずに条文として表現するのが難しいと考えているところです。  なお,委員ご指摘の@〜Bにつきましては,法では第5条で「環境の整備」と規定されているもので,福岡市では主に「福岡市福祉のまちづくり条例」という条例で規定されております。この条例でいう「合理的配慮」とは,そのような事前にできる環境の整備のことではなく,その場その場の状況に応じた配慮の提供のことを指しております。 A委員のご指摘は,「医学的・機能的には意思の表明ができるけれども,状況的に意思の表明が困難な場合」も,「意思の表明が困難」の類型として含めるべきだとのご趣旨と思われます。  事務局としては,「医学的・機能的に意思の表明が困難な場合」を想定しているため,「状況的に意思の表明が困難な場合」を含めるかどうかというのは検討すべき事項であると考えます。ただ,「状況的に意思の表明が困難な場合」といっても様々な状況が考えられ,そのすべてを「合理的配慮をしなければならない」状況と一括りにしてしまってよいかは疑義があります。  また,「状況的に意思の表明が困難な場合」を含めるとしても,その際に行う行為を合理的配慮といってよいかという問題はなお残ると考えます。  なお,意思表明の手段は言語に限られないため,委員ご指摘の「ボディランゲージやYES,NOの意思確認」があれば,それは「意思の表明があった」ものと考えられます。  ※については,センスや配慮といったものを法令上どのように義務付けるのかという疑問を,前回の会議でお示ししております。 Bつくる会の条例案のように規定すれば「意思の表明がない」場合に合理的配慮を義務付けても問題は生じないとのご趣旨だとすれば,その根拠をお示ししていただければ幸いです。 C障がいを理由とする差別の解消の推進に取り組むべきことと,意思の表明がない場合の取扱いは直接結びつくものではないと考えます。  また,明石市の条例は,その逐条解説によれば,「意思の表明はないが,合理的に考えて何らかの社会的障壁の除去が必要と認められる場合」も「現に社会的障壁の除去を必要としていることが認識できる場合」に含まれるとしています。 しかし,その具体例として,「たとえば,ある会議の場に聴覚障害者がいた場合,最初のうちは筆談で要約して伝えることが多いだろう。しかし,会議が進行するうちに,聴覚障害者への配慮は途切れがちになり,最後は列席者全員が要約筆記を失念してしまう,ということを聴覚障害者はよく経験する。この場合,要約筆記が途切れるたびに聴覚障害者から筆記を継続するよう意思表明がなかったとしても,その聴覚障害者に対して情報保障が必要であることが明白である。このため,こうした場面で情報保障を途切れたままにすることは,合理的配慮の不提供となりうる。」と記載されています。 しかしながら,この事例は「すでに意思の表明があった」事例として考えるべきであり,「意思の表明がない」場合の具体例としては不適当であると考えております。