○公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例
平成22年3月29日
条例第25号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 生活交通の確保に関する施策等
第1節 公共交通空白地等に関する施策等(第8条―第10条)
第2節 移動制約者に関する施策等(第11条)
第3章 福岡市地域公共交通会議(第12条)
第4章 雑則(第13条)
附則
生活交通は、市民の諸活動の基盤であり、日常生活において重要な役割を果たし、地域社会の形成を支えるだけでなく、社会経済を発展させるとともに、文化を創造するなど豊かな社会の実現のために不可欠なものである。
近年、高度経済成長時代を経て、住宅や大規模集客施設の郊外への立地が進み、個人のライフスタイルの多様化とあいまって、自動車への依存が一層高まっているとともに、都市部への人口流出等による人口減少、高齢化の進展などにより、地域公共交通を取り巻く環境は大変厳しい状況にある。こうした状況の中、乗合バス路線網の維持に加え、コミュニティバス、乗合タクシー、福祉有償運送など市場で供給が困難であり、かつ、通院、買物などの日常生活を支える新しい交通サービスへの期待が高まっている。
福岡市においても、自動車に依存したライフスタイルの進展や需給調整のための規制の緩和により、乗合バスの不採算路線の廃止や縮小が相次ぎ、地域公共交通の衰退が現実のものとなっている。このことは、高齢者や障がい者の通院及び買物、子どもたちの通学などの日常生活に必要な移動の手段を奪うことになりかねず、ひいては地域社会の衰退を引き起こすことが懸念されるものである。
このような状況に対処するため、福岡市が地域の生活支援のための交通の在り方を制度的にも政策的にも主体的に整備する必要に迫られている。
今こそ、市民の生活交通を確保し、すべての市民に健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障するとともに、これまでの公共交通事業者の取組を踏まえ、福岡市による「公助」を市民及び市民団体による「共助」及び「自助」並びに公共交通事業者のさらなる「努力」で補い合う仕組みづくりが求められている。
よってここに、公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通を確保し、もって活力ある地域社会の再生に寄与するという決意のもと、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保を図るため、市民、市民団体、市及び公共交通事業者の役割を明らかにし、生活交通の確保に関する施策を定めるとともに、市民、市民団体及び公共交通事業者による主体的な取組を促進することにより、すべての市民に健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障し、もって活力ある地域社会の再生を目指すことを目的とする。
(1) 生活交通 通勤、通学、通院、買物その他の日常生活に欠かすことのできない人の移動をいう。
(2) 市民団体 福岡市市民公益活動推進条例(平成17年福岡市条例第62号)第2条に規定する市民公益活動団体をいう。
(3) 公共交通事業者 道路運送法(昭和26年法律第183号)による一般乗合旅客自動車運送事業者及び一般乗用旅客自動車運送事業者並びに鉄道事業法(昭和61年法律第92号)による鉄道事業者をいう。
(4) 福祉有償運送事業者 道路運送法第79条の登録を受けた者のうち、道路運送法施行規則(昭和26年運輸省令第75号)第49条第3号に規定する福祉有償運送を行う者をいう。
(5) 移動制約者 高齢者、障がい者等のうち移動に関し制約を受ける者をいう。
(6) 公共交通空白地 道路運送法による一般乗合旅客自動車運送事業(以下「路線バス」という。)における停留所(以下「バス停」という。)から概ね1キロメートル以上離れ、かつ、鉄道事業法による鉄道事業(以下「鉄道」という。)における駅(以下「鉄道駅」という。)から概ね1キロメートル以上離れた地域をいう。
(7) 公共交通不便地 バス停から概ね500メートル以上離れた地域(鉄道駅までの距離が概ね1キロメートル未満の地域及び公共交通空白地を除く。)をいう。
(8) 公共交通空白地等 次のいずれかに該当する地域をいう。
ア 公共交通空白地
イ 公共交通不便地
ウ 公共交通不便地に準ずると市長が認める地域
(市民の権利等)
第3条 市民及び市民団体(以下「市民等」という。)は、その居住し、又は活動する地域に係る生活交通の確保に向けた取組に参画する権利を有する。
2 市民等は、市が実施する公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通を確保するために必要な施策(以下「生活交通施策」という。)について、共働(福岡市市民公益活動推進条例第2条第6号に規定する共働をいう。以下同じ。)して推進するよう努めなければならない。
3 市民団体は、その社会的な役割を自覚し、生活交通に関する活動について、市民の理解と協力が広く得られるようにするとともに、団体相互の多様な連携を図るよう努めなければならない。
(市の役割)
第4条 市は、生活交通施策をまちづくり施策その他の市の施策と一体的に推進するものとする。
2 市は、市民等及び公共交通事業者に対し、生活交通施策に関する情報を提供し、かつ、分かりやすく説明するよう努めるものとする。
3 市は、国及び他の地方公共団体と協力して生活交通施策の推進に努めるものとする。
(公共交通事業者の役割)
第5条 公共交通事業者は、その社会的な役割を自覚し、市が推進する生活交通施策を尊重し、公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通を確保するため、最大限の配慮を払うよう努めなければならない。
2 公共交通事業者は、自ら行う生活交通に係る事業の情報を、市及び市民等に対して積極的に提供するよう努めなければならない。
(生活交通施策の推進に当たっての役割)
第6条 市、市民等及び公共交通事業者は、生活交通施策の推進に当たっては、路線バス、鉄道等の基幹的な交通手段とのネットワークの維持及びその拡大を図り、人の移動の連続性を確保するよう努めなければならない。
2 市、市民等及び公共交通事業者は、相互に情報交換を行い、かつ、協力関係を構築するよう努めなければならない。
(市民等による施策の提案等)
第7条 市民等は、市に対して、その居住し、又は活動する地域に係る生活交通に関する施策を提案することができる。
2 市は、前項の規定に基づき市民等が提案する施策等について、共働して推進するよう努めるものとする。
第2章 生活交通の確保に関する施策等
第1節 公共交通空白地等に関する施策等
(公共交通空白地等に関する施策)
第8条 市は、公共交通空白地等に係る生活交通を確保するため、市民等及び公共交通事業者と相互に連携協力し、必要な支援を行うよう努めるものとする。
(特別対策区域の指定)
第9条 市長は、公共交通空白地等のうち、当該地域における生活交通の確保に向けた取組の状況を踏まえ、生活交通の確保のための支援が必要と認められる地域を生活交通特別対策区域(以下「特別対策区域」という。)として指定することができる。
2 市長は、特別対策区域を指定し、変更し、又は解除しようとするときは、あらかじめ、第12条に規定する福岡市地域公共交通会議の意見を聴くものとする。
3 市長は、特別対策区域を指定し、変更し、又は解除したときは、規則で定めるところにより、その旨を告示するものとする。
(特別対策区域における支援等)
第10条 市は、特別対策区域において、予算の範囲内で、生活交通の確保のために必要な支援を行うものとする。
2 市は、前項の特別対策区域における支援を行うに当たっては、当該特別対策区域における生活交通の質の向上に努めるものとする。
3 市民等及び公共交通事業者は、特別対策区域において、市の生活交通の確保に関する施策を共働して推進し、かつ、最大限の協力をするよう努めなければならない。
第2節 移動制約者に関する施策等
第11条 市は、移動制約者に係る生活交通を確保するため、福祉有償運送事業者に対し、運営等に関する相談、助言、指導その他の必要な支援を行うものとする。
2 福祉有償運送事業者は、前項に規定する市の助言、指導等に対し、最大限の配慮を払うよう努めなければならない。
第3章 福岡市地域公共交通会議
第12条 この条例の適正な運用を図るため、福岡市地域公共交通会議(以下「交通会議」という。)を置く。
2 交通会議は、次に掲げる事項について、調査、協議及び関係者の意見の調整の事務を行う。
(1) 生活交通の在り方に関する事項
(2) 特別対策区域に関する事項
(3) 前2号に掲げるもののほか、市民の生活交通の確保に関し市長が必要と認める事項
3 交通会議は、道路運送法に基づく地域公共交通会議を兼ねるものとし、前項の事務のほか、同法に定められた協議を行う。
4 交通会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第4章 雑則
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から起算して9月を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。
(平成22年規則第133号により平成22年12月28日から施行)